『ほ~ら、見て頂戴♪ こんなに“依頼”が集まったわ♪』
『凄いな~。皆暇なんかな?』
『暇というか余裕が無いんでしょ。世の中、戦、行き倒れ、病に飢え。この世は亡者の魂が犇めいているのよ』
『詩的な事言いますね、アウラ様』
『そう、アウラ様は何時だって思春期なの』
私――――――ソリテールが“仕掛けた餌”に食い付いたであろう、
『それで何なのよ、この書簡の山は?』
すると、アウラが真っ先に尋ねて来た。やっぱり説明を聞いてなかったわね。これはお仕置きが必要ね。
『もちろん、怪奇文書よ』
『いや、怪奇文書て……』
『冗談じゃなくて本当よ。
『陸奥国全土!?』
『そうよ。この「ことりばこ」にね♪』
さらに、「ことりばこ」をお披露目してあげたわ。一見すると木枠を複雑に組み合わせた小さな木箱だけど、その正体は私の生み出した端末。鳴女の使い魔を参考に作った、箱型の魔法生物――――――所謂「ミミック」の類ね。これを陸奥国の各所に配置し、妖精さんたちの力で噂を流して、顧客を集めているのよ。
『だけど、何でこんな事をしたんですか、ソリテール様?』
と、お猿の子供みたいにアウラへ引っ付いているリーニエが、首を捻った。角が刺さるから止めてあげなさいな。
『簡単に言えば、あなたのテストと実益を兼ねた、お遊びね』
ただし、一人遊びではない。皆で一緒に愉しむのよ。
『なるほど! つまり、リーニエの実践訓練の舞台を、人間たちに用意して貰うって事ですね!』
『まぁ、そういう事よ。偉いわね~♪』
『えへへへ~♪』
私がユンの頭を撫でてやると、彼は嬉しそうにはにかんだ。可愛いわね~♪
『アウラ様』
『はいはい、分かってるわよ~♪』
唯でさえくっ付いているのに、まだ嫉妬し足りないのか、リーニエがナデナデをせがみ、アウラはしょうがないな~とばかりに応える。こっちも可愛いわね。
『皆仲良しこよしやね~』
『ぼくたちもなでるです!』『ですです~!』
残る禰々子は待機組の妖精さんたちと戯れていた。何か牧歌的な光景だわ。
まぁ、それはそれとして、
『どの依頼から応えるかは、もう少し精査してからにするとして……先ずは腹ごしらえからよ』
腹が減っては何とやら、ってね。
◆◆◆◆◆◆
桜と紫陽花、芍薬など、季節ごとに様々な花木が咲き乱れる美しく小高い山だが、ここには一ノ関方面の「磯良神社」と並ぶ大きな神社、「
その昔、坂上田村麻呂が東征した際水害に遭うも、現地の武芸者が激流の中でも恐れずに従軍・先導した事で命を拾い、その報酬として「
まぁ、「川童明神社」の方は妖怪側を祀っていたからか、段々と廃れて忘れられ始めているけど。おそらく、将来的には「磯良神社」に統合されて消滅するんじゃないかしら?
『我々は償いの血を注ぎます♪』
そんな廃れて久しい「川童明神社」の地下にコッソリと作った穴倉の門戸に、私は
『ようこそいらっしゃいました、教祖様』
すると、扉がゴトリと開いて、中から吸血鬼の女の子が迎え入れてくれた。この常に眠たそうで幼い顔立ちと
人間とは哀れで愚かしいわね。汚れ仕事というだけで見下し、差別するんだから。自分たちだって大して偉くないのに。おかげで便利で従順な駒が手に入ったから、別に良いけど。彼女にはソリティア教の考えを引き継いだ新興宗教団体「
『こちらが
『そう。良くやったわね、
眷属の少女――――――「
だから、消費期限を過ぎないように、美味しい時に頂く事にしているわ。そうじゃないと勿体無いしね。
ある意味、当初のソリティア教に求めていた、“人間牧場”が形を成したと言っても良いわね。将来的には一人の子供から同じ規格のコピーを沢山造れる設備を整えたいと思ってるの。そうなれば、わざわざ狩りに出掛けずとも、安定して食料を得られるようになる。夢が膨らむわね♪
『それで、“例の件”ですが……』
『……なるほど、分かったわ。これからもよろしく頼むわね、膳儕』
『はい、ありがとうございます。……眠いので、そろそろ寝ますね』
『ええ、お休み……』
そして、膳儕から生け贄を沢山受け取って、私は拠点へ戻ったわ。今夜は
『さぁ皆、頂きましょうか♪』
『『『『いただきま~す♪』』』』
――――――ぐちゅぐちゅ、ミチミチ、ずるずる……バキゴキメキ、ごっくん!
……ああ、とっても美味しい♪
◆
東北地方で蔓延し始めている、不思議な宗教……というより、現実に嫌気が差したり、現状に憂いを持つ者たちが、お互いの傷を舐め合う為のヤバい系のサークルみたいな物。中部・関東地方で浸透して来ている「極楽教」、もっと言えば島原の「ソリティア教」に似通った部分があるが、そんな物は当たり前である。何せ名前が違うだけで、教義も教祖も同一人物なのだから。
名前の由来は「
ちなみに、教祖代理の膳儕ちゃんは、河原者(穢多・非人の前身)の男女の間に生まれた子で、生まれた時から差別の対象であり続け、しかもソリテールたちがやって来る少し前に村人に親を殺されている為、すんなりと吸血鬼化を受け入れたし、元同族である人間に対しては恩人に対する貢物としか思っていない。能力は髪の毛を自在に操り、武器や防具として扱う事。