鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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それは暴食。


「お話」

 はぁ~い、こんばんは~♪ ソリテールお姉さんの時間よ~♪

 私は今、以前より計画していた、作戦名(オペレーション)「お手神様(てがみさま)」の栄えある第一号に選んだ村に来ているの。ここ川内は氾濫と地滑りのせいでダメージを受け易いけど、その肥沃さ故に人だけは寄り付いて来るから、餌には困らない(・・・・・・・)。何せ村の因習って奴は、平気で倫理観を上回るからね。村の皆で決めた事なら、殺しだって正当化されるのよ。「口減らし」や「落ち武者狩り」なんかが良い例だわ。死人に口無しって訳。

 そんな因習村の犠牲として、超○姦の刑(スーパーレ○プタイム)に処されようとしていた女の子を助けたんだけど、実は彼女、私の依頼者なのよ。今は解いてるけど、さっきまで後ろ手を縄で縛られ、口に猿轡を嵌められてたからね。大人って乱暴だわ~。

 まぁ、私に助けられたのが幸福だとは限らないんだけど。だって私と(・・・・・)お話(・・)したんだし(・・・・・)

 

『……いきなり派手にやり過ぎじゃない? それに、こんなに血を撒き散らせて。はしたないし、勿体無いわよ』

 

 すると、追ってアウラが現れて、部屋中に飛び散り、私にも掛かっている血液を、足元から植物のように吸い上げ、証拠を跡形も無く消してしまったわ。吸血鬼の面目躍如ね。血液掃除機として優秀よ。便利よね~。

 

『それで「お話」とやらは終わったの?』

『いえ、今からよ。まだ拘束を解いただけだし。さ~て、どんな愉しい「お話」を聞かせてくれるのかしら?』

「………………」

 

 一応は自由の身になった依頼者だが、逃げる様子は無い。逃げても無駄だと悟っているのだろう。もしくは恐怖心で動けないだけか。何れにしろ、無駄な抵抗して来ない子は可愛いわねぇ~♪

 

「ここでははんつきくらいまえから、おとながかみかくしにあってる。わたしのおっかあもおっとうも、きえちゃった。……だから(・・・)かたきを(・・・・)とってほしい(・・・・・・)

 

 それでも言うべき事は言う。強い子ね、心が。両親がもう(・・・・・)助からない(・・・・・)と、本能的に分かっているみたい。

 なら、私も遠慮無く質問してあげるわ。

 

『どういう条件で選ばれているのかしら?』

「……わからない。おとなってだけなら、ろうにゃくなんにょかんけいなくさらわれてる。ただ、どのひともきえるまえにふこうなことがあって、いきしょうちんしてた」

『難しい言葉使うわね、あんた。唯の村娘が、何処でそんな言葉を覚えたのよ?』

 

 と、アウラも話に混ざってきた。暇なのね。

 

「……もっとちいさいころ、ぎょうしょうにんのむすこからもらったほんでべんきょうした」

『へぇ、どれどれ? ……あら、この商人知ってるわ。確か薬師の一家よね? 私も色々とお世話になったわ。本当に、色々とね……』

 

 しかし、無関係という訳でも無く、「首切り役人」たちが派遣されていた時に接触した事があるらしい。なるほど、そう繋がるのか。商いも馬鹿に出来ないわね。

 

『それで、この子はどうすんのよ?』

『そうねぇ……』

 

 この子から聞く事は聞けた。獲物(あいて)は、人生に絶望した人間をターゲットに、神隠しに遭わせているみたいね。心の隙間を縫うようにして誘い出す、魔法染みた能力を持っているのだ。果たして「鬼」が出るか、「魔」が出るか。面白くなって来たわ。

 だからこそ、この子の生死はどうでも良い。というか、生かしておいても目撃証言に繋がるだけ。あくまで噂が(・・・・・・)独り歩きして(・・・・・・)いるのが(・・・・)大事なのである(・・・・・・・)。だから、殺してしまうのが手っ取り早い。殺っちゃおうかしら♪

 

「……たぶん、つぎにねらわれるのは、わたし! “そいつ”ははためにはふこうにみえるにんげんだけをねらってる! だから、おっとうもおっかあもいなくなって、くちべらしにされそうになったわたしを、ぜったいにねらうはず!」

 

 と、何かを察したらしい娘が、慌ててそんな事を言い出した。それがほんの僅かな延命措置だとしても、謂わなければ村人たちと同じ運命を辿ると理解してしまったんでしょう。この歳で聡明な事だけど、全く救いにはなっていないわね。

 

『ねぇ、どうせなら使い捨てたら? 餌がある方が釣り易いし、元々今晩までの命だったんでしょ? なら、利用した方が安上がりだと思うんだけど』

『そう? でも、今直ぐ現れる訳じゃ無いし、下手に生かしておく方がデメリットだと思うんだけど?』

『だけど、生け贄になる人間を見付け直す方が、それこそ面倒でしょ。だったら、先ずはこの子を釣り針に掛けて、投げ込みをしてからでも遅くないんじゃない?』

『どうしたの、アウラ? 見ず知らずの人間(・・・・・・・・)の子供を庇う(・・・・・・)なんて(・・・)……』

『そんなんじゃ無いわよ。ただ勿体無いと思っただけよ』

『………………』

 

 だけど、何故かアウラがやたらと突っ掛かって来る。何が彼女の琴線に触れたのかしら?

 

『まぁ良いわ。なら、この子のお世話はあなたがして頂戴。私は他の村人と、もう少し「お話」をしてくるわ』

『……はいはい、さっさと行きなさいな』

「………………!」

 

 私とアウラの言葉に、娘がカッと目を見開く。そこに僅かな喜色が混じっているのを、私は見逃してはいない。哀れな物ね。私が人間と(・・・・・)お話(・・)をする意味が(・・・・・・)既に理解(・・・・)出来てる(・・・・)でしょうに(・・・・・)。頭の良い子は馬鹿ねぇ。

 

『……それじゃあ、また後で』

 

 さぁ、愉しい夜と行きましょうか。リーニエも(・・・・・)待ってるしね(・・・・・・)




◆旅の薬師

 依頼を出してきた村娘が、過去に出会った旅の行商人。薬がメインではあるが、他にも便利な日用品や食べ物を売り買いする、雑貨屋のような形態だった。冬場で動けなくなった彼らを田吾作が家を貸した事で縁が生まれ、春を迎えるまでの数ヵ月を共に過ごした。その過程で、元々病弱で長く生きられないと言われていた娘に、薬師が秘伝の薬を処方。一時的に副作用も見られたが、後に回復し、普通の人間と同じように生活出来るようになった。
 ただし、元よりアルビノで日光に弱かった彼女だが、回復と引き換えに日光で重度の火傷を負う程の弱点となってしまった為、引きこもりに拍車が掛かった。娘の頭が妙に良いのも、そのせい。
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