『あんたも災難ねぇ?』
絶望の淵に叩き込まれた村娘を見下ろしつつ、私――――――アウラは溜め息を吐く。
でも、この言葉は紛れも無い本音。この村娘は、おそらく物の怪の類に両親を消され、天涯孤独な身になった上に、村人からは穀潰しとして口減らしの憂き目に遭い掛け、その上ソリテールに依頼を出しちゃうなんてさ。唯生きようとしているだけなのに、何て運が無いのかしら。別に情けを掛ける気は無いけど、可哀想な奴だとは思うわ。
いえ、この子に同情なんて無用かもね。だって、今この瞬間も生への執着で目がギラ付いてるもの。
「真祖吸血鬼」は文字通り始まりの吸血鬼。噛まれて変異した通常種ではなく、最初からそうあれかしと生まれてきた存在だ。
だが、現実がそうである通り、無から有は生まれない。魔法でさえも、魔力を感知出来る者が操作しているに過ぎず、その理屈は「真祖吸血鬼」にも言える事。
生きながらにして心が魔道に堕ち、魂が完全な外道のそれに変質した時、血を介したナニカに見初められると、真祖はこの世に生まれ落ちる。そのナニカは天使や悪魔、精霊に近いモノかもしれないし、もしくは世の理その物かもしれないが、ともかく人ならざる存在が、
この子には、その素質がある。口先や見た目だけではない、闇の心と邪悪な魂を持っている。得てしまっている。後は切欠だけ。その時が訪れれば、彼女は新たな真祖となるだろう。
『ここで生き延びても、この先辛い事だらけよ?』
まぁ、それがこの子にとって良い事なのかどうかは、知らないけどね。成った身としては、思う所はあるわよ。
「いやだ。わたしはいきたい。なにがなんでも。これいじょう、わたしのじんせいからうばわれてたまるか」
どうやら、馬の耳に念仏だったみたい。頑迷固陋とはこの事だわ。
……そうよね、言われて止められるくらいなら、ここまで堕ちはしないわよね。“あいつ”はどう思っていたのかしら?
――――――おいで……おいで……おいで……。
「あっ……」
『………………』
そう、この子はもう止まれない。最早、運命の奴隷である。形を成した人生という
それ以上を求めるならば、人間を超えるモノにならねば!
『
人間の目には見えない、細い糸のような……あるいはか細い腕のような物に釣られて、フラフラと歩き出す村娘を、私は唯見送った。見捨てたりはしないわ。まだその時じゃないからね。
これで終わるようならそれまでだけど、そうじゃあないと、私は信じてるわ。
いえ、違うわね。これは私が勝手に決めた、
ようするに、これは単なるソリテールへの八つ当たりである。この村娘にベットして、優越感に浸りたいのよ。
でも、それも仕方ないでしょう?
◆
「吸血鬼」の感染源にして、最初から化け物として生まれた者。通常種の持ち得る弱点が一切無く、陽光も銀も大蒜も十字架も効かない。彼らを殺すには、死ぬまで殺し続けるしかない。
その正体は、生きながらにして心と魂が「魔族」と成った者が、世界の修正を受ける形で“あるべき姿”となった存在。単なるシリアルキラーや悪逆非道程度では成り得ず、適合者に至れるかどうかは「運命」次第。