鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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坊や良い子だ金だしな!


置いてけ森

 にゃっはろ~、エリート魔族、ソリテールお姉さんよ~♪

 とりあえず、次の依頼場所に移動しつつ、

 

『「お話」しましょ?』

『じっけんする、のまちがいでは?』

『良く分かってるじゃない』

『ほめられてもうれしくない……』

『私は嬉しいわよ~♪』

『かいわして?』

『嫌よ』

『いやなんだ……』

 

 私がしたいのは「お話」であって、会話じゃないのよ。

 さて、この子について「お話」しましょうか。彼女は「零余子(むかご)」。「縊鬼(くびれおに)」の被害者の一人だったんだけど、何故か襲われている最中に「真祖吸血鬼(トゥルー・ヴァンパイア)」へと覚醒しちゃったの。アウラ曰く「素質ある者が死に瀕した時に生き延びる為に覚醒する」らしいわ。なぁにそれぇ?

 でも、生まれ立てで弱いし、私としては始末したかったんだけど、基礎スペックで「不死身の再生力」を持っているから、殺すに殺せなくて困っちゃった。

 結局、アウラの提案で研究の助手として雇う事にしたのだけれど……この子、使えそうね。元が村娘とは思えないぐらいに頭が良いし、機転も利く。何より自分の気持ちに正直なのが素晴らしいわ。私を“人語を介するだけの化け物”として見ている事も含めて、気に入っちゃったわ♪

 帰ったら大活躍して貰うとして――――――今はそう、「柴田(しばた)」に行こう。「縊鬼」の分と合わせて、せめて一週間以内に後二件は解決しなきゃ♪

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 陸奥国柴田郡の、とある峠道。標高や道のりこそ険しくはないが、昼間でも薄暗くジメジメしており、今日に限っては霧まで掛かっている。

 

「……はぁ、何だってこんな時に、ここ通らなきゃならねんじゃ」

 

 そんな峠の夜道を、一人の男がおっかなびっくり歩いていた。彼の目的は隣町。病気の母に薬を買いに行く所である。

 だが、男としては今直ぐ引き返したかった。最近この峠では、恐ろしい噂が流れている。何でも、霧の深い夜にここを通ると鎧武者の化け物に襲われる、という物だ。既に何人も行方不明になっているし、唯の噂と流す事も出来ないだろう。

 しかし、母親の病気は重く、少しの油断が命取りとなってしまうので、帰る訳にもいかない。男はゴクリと生唾を飲みつつ、歩を進めた。

 

 

 ――――――置いてけぇ……置いてけぇ……っ!

 

 

 すると、深い夜霧の奥地から、不気味な声が聞こえてきた。古びた呪術書より漏れ出た、怨嗟の言霊に似ている。

 

「な、何だ!? 何やオメェさんは!?」

『置いてけ……置いてけ……』

 

 さらに、男へ向かって少しずつ近付いている。ミシリ、ミシリと、まるで死が歩み寄って来ているようである。是非とも遠慮願いたいが、向こうが足踏みする理由など無かろう。

 

「だ、誰じゃ!? 誰なんじゃあっ!」

 

 やがて音は男の直ぐ傍に到達し、

 

『有り金、全部置いてけぇっ!』

「ひぁあああああああああっ!?」

 

 その恐ろしい姿を顕わにする。噂通り、鎧武者のような容姿をしていた。

 

「ぎゃあああああああああっ!」

 

 「置いてけ森」に、男の悲鳴が木霊する……。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

『「置いてけ森」? なぁに、それ?』

「はぁ……はぁ……ここ最近、噂になっている、森……です。はぁ、ぅ……っ……通りすがる者に、金を集る……妖怪が居ると……」

『へぇ、そうなの。さよなら』

「げふっ!」

 

 とりあえず、今日の一殺。「お話」が終わったら、もう用は無いわ。

 

『本当に容赦無いわね、あんた……』

 

 アウラがちょっと呆れてるけど、別に構わない。どうせ食うんでしょ?

 

『要らないわよ、そんな腐り(・・・・・)掛けの肉(・・・・)

『酷い言い草ね。……私はあなたと違って誠実だから、しっかりと血肉にしてあげるわ。むしろ(・・・)苦しみから(・・・・・)解放して(・・・・)あげたんだし(・・・・・・)感謝して(・・・・)欲しいくらいよ(・・・・・・・)

『本気で思ってる?』

『まさか~♪』

 

 唯の勿体無い精神よ。

 

『あ、リーニエはどう?』

『アウラ様が要らないなら、別に良い』

『零余子は?』

 

 と、零余子に聞いてみたら、ほんの僅かに考え、

 

『……いただきます』

『お行儀良いわね♪』

 

 まさかのご相伴に与る選択を取ったわ。どういう心境なのかしらね。是非とも「お話」を聞きたいわぁ~♪

 いや、今は事件の解決ね。世の為(にく)の為私の為に、早期に決着を付けてやるわよ。

 

『――――――というか、カツアゲする妖怪って何?』

 

 冷静に考えて、そんなチンピラみたいな妖怪居る?

 

『いるわよ』

『あら、そうなの零余子ちゃん?』

 

 すると、肝臓を一呑みにした零余子が、ポツリと答えを吐いた。早速役に立ったじゃない。素晴らしいわ。それでそれで、そいつは一体何なのかしら?

 

『そいつはうちすてられたやしろやほこらにすみつき、ちかくをとおるものからかねをまきあげ、はらえないものはたべてしまう。そのなは――――――』

牙狼(GARO)?』

『それはわがな……』

 

 面白いわぁ~。

 まぁ、おふざけはこのくらいにして、行動に移ろうかしらね。




◆置いてけ掘

 江戸の本所七不思議の一つ。かつて錦糸町の堀には、魚が良く釣れる名所があった。しかし、魚を釣り過ぎると、水底から「置いてけ」という不気味な声が聞こえ、恐ろしい幻覚を見せて気絶させた隙に、全て奪い取ってしまうらしい。その噂を聞き付けたとある若者は、道中の幻覚に惑わされる事無く家まで帰ったが、既に先回りして妻に化け、この世の者とは思えない形相で驚かせ、若者は心臓を破裂させて死んでしまった。
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