にゃっはろ~、エリート魔族、ソリテールお姉さんよ~♪
とりあえず、次の依頼場所に移動しつつ、
『「お話」しましょ?』
『じっけんする、のまちがいでは?』
『良く分かってるじゃない』
『ほめられてもうれしくない……』
『私は嬉しいわよ~♪』
『かいわして?』
『嫌よ』
『いやなんだ……』
私がしたいのは「お話」であって、会話じゃないのよ。
さて、この子について「お話」しましょうか。彼女は「
でも、生まれ立てで弱いし、私としては始末したかったんだけど、基礎スペックで「不死身の再生力」を持っているから、殺すに殺せなくて困っちゃった。
結局、アウラの提案で研究の助手として雇う事にしたのだけれど……この子、使えそうね。元が村娘とは思えないぐらいに頭が良いし、機転も利く。何より自分の気持ちに正直なのが素晴らしいわ。私を“人語を介するだけの化け物”として見ている事も含めて、気に入っちゃったわ♪
帰ったら大活躍して貰うとして――――――今はそう、「
◆◆◆◆◆◆
陸奥国柴田郡の、とある峠道。標高や道のりこそ険しくはないが、昼間でも薄暗くジメジメしており、今日に限っては霧まで掛かっている。
「……はぁ、何だってこんな時に、ここ通らなきゃならねんじゃ」
そんな峠の夜道を、一人の男がおっかなびっくり歩いていた。彼の目的は隣町。病気の母に薬を買いに行く所である。
だが、男としては今直ぐ引き返したかった。最近この峠では、恐ろしい噂が流れている。何でも、霧の深い夜にここを通ると鎧武者の化け物に襲われる、という物だ。既に何人も行方不明になっているし、唯の噂と流す事も出来ないだろう。
しかし、母親の病気は重く、少しの油断が命取りとなってしまうので、帰る訳にもいかない。男はゴクリと生唾を飲みつつ、歩を進めた。
――――――置いてけぇ……置いてけぇ……っ!
すると、深い夜霧の奥地から、不気味な声が聞こえてきた。古びた呪術書より漏れ出た、怨嗟の言霊に似ている。
「な、何だ!? 何やオメェさんは!?」
『置いてけ……置いてけ……』
さらに、男へ向かって少しずつ近付いている。ミシリ、ミシリと、まるで死が歩み寄って来ているようである。是非とも遠慮願いたいが、向こうが足踏みする理由など無かろう。
「だ、誰じゃ!? 誰なんじゃあっ!」
やがて音は男の直ぐ傍に到達し、
『有り金、全部置いてけぇっ!』
「ひぁあああああああああっ!?」
その恐ろしい姿を顕わにする。噂通り、鎧武者のような容姿をしていた。
「ぎゃあああああああああっ!」
「置いてけ森」に、男の悲鳴が木霊する……。
◆◆◆◆◆◆
『「置いてけ森」? なぁに、それ?』
「はぁ……はぁ……ここ最近、噂になっている、森……です。はぁ、ぅ……っ……通りすがる者に、金を集る……妖怪が居ると……」
『へぇ、そうなの。さよなら』
「げふっ!」
とりあえず、今日の一殺。「お話」が終わったら、もう用は無いわ。
『本当に容赦無いわね、あんた……』
アウラがちょっと呆れてるけど、別に構わない。どうせ食うんでしょ?
『要らないわよ、
『酷い言い草ね。……私はあなたと違って誠実だから、しっかりと血肉にしてあげるわ。
『本気で思ってる?』
『まさか~♪』
唯の勿体無い精神よ。
『あ、リーニエはどう?』
『アウラ様が要らないなら、別に良い』
『零余子は?』
と、零余子に聞いてみたら、ほんの僅かに考え、
『……いただきます』
『お行儀良いわね♪』
まさかのご相伴に与る選択を取ったわ。どういう心境なのかしらね。是非とも「お話」を聞きたいわぁ~♪
いや、今は事件の解決ね。世の為
『――――――というか、カツアゲする妖怪って何?』
冷静に考えて、そんなチンピラみたいな妖怪居る?
『いるわよ』
『あら、そうなの零余子ちゃん?』
すると、肝臓を一呑みにした零余子が、ポツリと答えを吐いた。早速役に立ったじゃない。素晴らしいわ。それでそれで、そいつは一体何なのかしら?
『そいつはうちすてられたやしろやほこらにすみつき、ちかくをとおるものからかねをまきあげ、はらえないものはたべてしまう。そのなは――――――』
『
『それはわがな……』
面白いわぁ~。
まぁ、おふざけはこのくらいにして、行動に移ろうかしらね。
◆置いてけ掘
江戸の本所七不思議の一つ。かつて錦糸町の堀には、魚が良く釣れる名所があった。しかし、魚を釣り過ぎると、水底から「置いてけ」という不気味な声が聞こえ、恐ろしい幻覚を見せて気絶させた隙に、全て奪い取ってしまうらしい。その噂を聞き付けたとある若者は、道中の幻覚に惑わされる事無く家まで帰ったが、既に先回りして妻に化け、この世の者とは思えない形相で驚かせ、若者は心臓を破裂させて死んでしまった。