鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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鯨はお刺身が一番!


海が呼んでる

『ふぅ……』

『賢者タイムやめて?』

『私が賢者なら襲われる側じゃない?』

『それもそうね……』

 

 と、意味☆不明★な会話をしつつ、私たちは移動する。目指すは馬鈴薯(ジャガイモ)、ではなく海の幸が豊富な牡鹿郡(おしかぐん)、「遠島(とおしま)」。区域の殆どがリアス式海岸で囲まれている、所謂「半島」に該当する地形で、様々な魚介類が獲れる。海流の関係上、冬でもそこまで寒く無く、非常に暮らし易い地域である。地震とセットで付いて来る津波を気にしなければ、ね。

 

『アウラ様アウラ様』

『なぁに、リーニエ』

『海にも葡萄やパイナップルがあるって本当?』

『……たぶんそれ、甘くもへったくれも無いわよ。だって、それ海藻とホヤの事だもの』

『なんだぁ~……』

 

 リーニエは相変わらず果物に目が無いわねぇ。下手すると人肉(しゅしょく)より拘ってるんじゃないかしら。趣味趣向はヒトの勝手だから、別に良いんだけど。

 ちなみに、ユンは泣きながら帰ったわ。「折角颯爽登場したのに、もうお嫁に行けないじゃないですか……」とか言ってたけど、君の半分は男の子でしょ?

 

『……ここではどんないらいをうけていて、なにをするんですか?』

 

 すると、零余子(むかご)が今後の方針を尋ねてくる。

 

『バウッ!』

 

 見覚えのある熊に跨って。この熊はリーニエ(・・・・・・・・)が餌付けして(・・・・・・)いた個体で(・・・・・)零余子の初めて(・・・・・・・)の使い魔(・・・・)でもある(・・・・)。元々誰かに餌付けされていたのか、やたらと人慣れしているとは思ってたけども、まさか零余子のペットになるだなんてね。これが普通の人間なら問題だろうけど、彼女は「真祖吸血鬼(トゥルー・ヴァンパイア)」だから何の障害にもならない。血の繋がりと力による主従関係は、下らない絆よりも信用出来る。力こそ正義よ。

 

『……そう言えばこの子、何で昼間も歩けるの?』

 

 さらに、この熊は種族で言えば「吸血鬼」になっているにも関わず、何故か昼間も歩けている。例えアウラの生み出した使い魔であっても陽光が弱点である事に変わり無いので、この熊の異常性が窺えるだろう。イコールで零余子の特異性も浮き彫りになったと言える。帰った時の愉しみが増えたわ~♪

 

『熊、ほら林檎林檎』

『そのこのなまえは「ポーラスター」。「ポラちゃん」ってよんであげて』

『ポラちゃん、林檎林檎』『ガウガウ』

『『かわいい~』』

 

 ……可愛いのか、これ?

 まぁ良いわ。現状戦闘能力に期待出来ない零余子を持ち運ぶのに便利だからね。そんな事よりも今は、依頼の方を熟すとしましょうか。

 

『それで、ここではなにがおこってるんです?』

『よくある話よ。人が次々と消えているみたい』

『……なら、なんでここをえらんだんですか?』

消え方が(・・・・)面白いからよ(・・・・・・)その人選についても(・・・・・・・・・)

 

 零余子の質問にとびっきりの笑顔で応える。

 そう、今回の依頼は今までの妖怪と違って、人の意思を感じる(・・・・・・・・)。最初から別生物である物の怪や魔族とは違う、元人間だった(・・・・・・)者による犯行(・・・・・・)、とでも言いましょうか。依頼内容を読んでみて、そう思ったの。

 

『まぁ、聞くより読む方が、読むより見る方が早いわ』

 

 さぁ、着いたわ。依頼主の待つ目的地にね……。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 牡鹿郡遠島、「鮎川(あゆかわ)」。

 牡鹿半島の先端に位置する地域であり、「金華山(きんかざん)」や「網地島(あじしま)」への渡し口でもある。地区名の通り「鮎」の漁獲は勿論、マッコウクジラを始めとした捕鯨も非常に盛んで、「抹香城」の別名で呼ばれる事も。その分、地上の殆どが山岳地である為、農業はロクな物が無い。典型的な漁村として発展した地域だ。

 

「さてと……」

「着きましたわね、ご主人様!」

「ここに“彼女ら”が……」

 

 そんな鮎川に、三人の男女がやって来た。一人は隻腕の剣士、一人は銃で武装した修道女、一人は身重の女剣士。彼らは「鬼殺隊」と「ソリティア教」の生き残りにして、現在は「極楽教(ごくらくきょう)」として活動する鬼狩りたち。

 そう、賽之目(さいのめ) 泰斗(たいと)世良(せいら) ゾリテール、水尾根(みずおね) 大地(だいち)の「鬼殺三銃士」である。全員剣士ではあるものの、銃もちゃんと持っているので、間違いという訳でも無い。

 彼らの目的は、言うまでもなく「鬼狩り」だが、本命は違う。最近、「万世教(ばんせいきょう)」という「ソリティア教」とよく似た密教が跋扈し、化け物退治の真似事まで始めている為、調査目的に鮎川へと訪れたのだ。

 

「――――――でも、何で鮎川なんですか、ご主人様?」

 

 ふと、ゾリテールが己のご主人様たる泰斗に尋ねる。「万世教」……いや、ソリテール一派が関わったと思われる事件は内陸部の方であり、海岸沿いではまだ何も起こしていない。事件を追うのではなく、何の由縁もない鮎川に訪れたのか。

 

「“女の勘”です」

 

 すると、泰斗の代わりに大地が素っ頓狂な事を言い出した。

 

「はぁ? 何ですか、それは。そんなあやふやな理由で鮎川下んだりまで来たのですか? ご主人様も、何故そんな曖昧な方針で来られたのです?」

「それが当てにならない勘だったらな。しかし(・・・)大地は(・・・)産屋敷の血筋(・・・・・・)を身に宿した(・・・・・・)女だ(・・)。面倒事を良く当てる、厄介な血筋だよ。捨て置くには危険過ぎる」

 

 当然、ゾリテールはまるで意味が分からん言い分に物申すが、泰斗が制する。お目付け役の関係者である彼にとって、産屋敷家の「勘」は馬鹿に出来ない物だった。

 

「………………」

 

 当の大地としては全く嬉しくない事実だが、最早お腹の子に八つ当たりする気は失せており、むしろ依存しているような状態である。能力の便利さは然る事ながら、変わり果てたユンとの邂逅を経て、お腹の子供を自分の気持ちだけで死なせたく無くなったのだ。完全に精神疾患だけど、気にしたら負け。

 

「さてさて、一体何が出て来るのやら……」

 

 憂いてばかりの大地を呆れ半分で見遣りつつ、泰斗は歩き出す。この地に根付くナニカを求めて。

 その先に待っている物とは、果たして――――――。




◆極楽教

 世良 ゾリテールが自らを教祖として新たに立ち上げた、「ソリティア教」の後継宗教。「つらいことや苦しいことはしなくていい」という部分はそのままに、「償いの血を注ぐ事で極楽へと至る」という血生臭い部分だけを削って、代わりに「全ての善行は極楽へと通ずる」という教義を付け加えている。これは表向きこそ「一日一善」みたいなほんのりした物だが、裏の顔は「それを邪魔する悪しき者々は地獄に落として良い」という、結構物騒な思想だったりする。側近かつ実動隊として賽之目 泰斗と水尾根 大地が居る時点でお察し下さい。
 当座の目標は「万世教」との接触、及び吸収。
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