『(こいつは……)』
リーニエは今頃になってコソコソと現れた
『お前、何しに来た? 隻腕の足手纏いが……』
「お前、そんな事言っちゃうと、自分の主人を貶す事になるぞ?」
『それは何時もの事だから大丈夫』
『ちょっと、リーニエ!?』
「ええぇ……」
後からアウラが出て来てリーニエの発言に憤るが、当人は何処吹く風だ。さっき呆気無く負けたからね、仕方無いね。これには泰斗もドン引きである。きっとこれも愛のカタチよ。
『それで結局、何しに出て来たの?』
「鬼狩りの剣士が出て来た時点で、やる事は決まってるだろ?」
『私は鬼じゃない』
「別の化け物ではあるだろう?」
『………………』
泰斗の物言いに、リーニエは口を紡ぐ。日輪刀を抜いているし、言葉は不要だ。
『(ソリテール様の考えが分からない……けど、これもテストの一環なのだとしたら、見せ付けてやるまでだ。アウラ様も見ている)』
そして、リーニエが翼に加えて尻尾も展開して、本気の臨戦態勢を取る。こんな片腕しかない人間如きに、後れを取る訳にはいかない。
――――――ヒュォォォォ……ッ!
と、泰斗が【霜の呼吸】をし始める。準備は万端、という事だろう。ならば、後は刃を交えるだけ。
『【
早速リーニエが仕掛けた。アウラの記憶を基にコピーした、【月の呼吸】を使い責め立てる。少女という肉体の縛りがある以上、馬鹿力よりも手数で勝負する方が良い。先ずはガラスのように炸裂する月の斬撃を二回。
「【霜の呼吸・陸ノ型
対する泰斗は高速で跳び退きつつ、まるで団扇を仰ぐような動作で、花弁状の雹を発生させて相殺する。どうやら、潜伏中に新しい型を創っていたようである。
「【霜の呼吸・参ノ型
さらに、泰斗は蔓状の氷蓮華でリーニエを絡め取ろうとした。
――――――カヴォオオオオッ!
だが、リーニエも口から火炎放射する事で蔓を焼き払い、次いで泰斗に高熱を浴びせ掛ける。
「チッ……【霜の呼吸・漆ノ型
すると、泰斗は日輪刀に力を込め、冷気の煙幕を張って熱を防いだ。
「【霜の呼吸・玖ノ型
『くっ……!』
「【霜の呼吸・肆ノ型
『しつこい……!』
しかも、地面と空中から野太い氷柱を幾つも発生させ、猛烈な勢いで反撃に転じる。
「【霜の呼吸・伍ノ型
そして、巫女のような氷結晶を五体生み出し、時間差で襲い掛からせながら、自分も突貫する。普通の鬼殺隊士では単なるエフェクトに過ぎない筈だが、【霜の呼吸】の攻撃は実体を持ち始めていた。死線を潜り抜けた影響で、泰斗もまた、巌勝レベルに片足を突っ込んでいるのだろう。とても隻腕とは思えない。
『キャァァアアアアッ!』
「ぐぉっ!?」
しかし、逆に言えば、まだ黒死牟のレベルには至っていないという事。ユンの後釜たるリーニエが、そこまで劣る筈も無かろう。彼女が体内放射の衝撃波を生めば、泰斗は結晶ノ巫女ごと吹き飛ばされた。粉微塵にさなかっただけでも褒めるべきかもしれない。
『どう? もう諦める?』
「……冗談!」
だが、泰斗はまだ諦めていなかった。技術は抜きにしても、地力で勝ち目が無さそうなのだが……何か秘策があるのか?
「フゥ……」
と、泰斗が徐に日輪刀を天に掲げ、冷気の軌跡で魔法陣を描く。
――――――ガオンッ!
その瞬間、円陣を
『冰の鎧……?』
それは、青白い鎧だった。氷の結晶と
【
『(こいつ……何かヤバい!)』
鎧を纏った泰斗の姿を見たリーニエが戦慄するも、もう遅い。
《時間が無いんでね……一気に決めるぜ!》
『がっ……!?』
気付けば、リーニエは泰斗に四肢と翼を斬り飛ばされ、心臓に切っ先を突き付けられた状態で仰天していた。速過ぎて見えず、力強過ぎて斬られた感覚すら無かった。一体どんな力を持っているんだ、その鎧は。
しかし、流石に過ぎた力なのか、持続時間は本当に一瞬のようであり、二分も保てず鎧は霧散してしまった。
まぁ、結果は火を見るよりも明らかだったから、勝負はこれまでなのだけれど。
『ヴンダバ~♪』
すると、何処からともなく拍手をする音が。
『いや~、面白い物を見せて貰ったわ、泰斗くん♪』
「ご、ご主人様、どうも~」
さらに、ゾリテールを伴って、
◆魔戒騎士
文字通り「魔を戒める騎士」。「
……泰斗くんの鎧はホラーではなく、「鬼」や「吸血鬼」、「妖怪」の血肉に由来しているので、バリバリに特級呪具である。