鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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※泰斗くんも人間を辞め始めました。


童磨

『(こいつは……)』

 

 リーニエは今頃になってコソコソと現れた賽之目(さいのめ) 泰斗(たいと)という男を睨み付けた。お化け蛤の足止めをしてくれたようだが、そんなの知った事では無い。リーニエには視えて、分かっていたからだ。コソコソと物陰に隠れて、こっちが事を済ませたのを見計らい、難癖を付ける為にノコノコと出て来た。それか漁夫の利を得るつもりだろう。何にしてもロクな一物しか腹に抱えてい無さそうである。

 

『お前、何しに来た? 隻腕の足手纏いが……』

「お前、そんな事言っちゃうと、自分の主人を貶す事になるぞ?」

『それは何時もの事だから大丈夫』

『ちょっと、リーニエ!?』

「ええぇ……」

 

 後からアウラが出て来てリーニエの発言に憤るが、当人は何処吹く風だ。さっき呆気無く負けたからね、仕方無いね。これには泰斗もドン引きである。きっとこれも愛のカタチよ。

 

『それで結局、何しに出て来たの?』

「鬼狩りの剣士が出て来た時点で、やる事は決まってるだろ?」

『私は鬼じゃない』

「別の化け物ではあるだろう?」

『………………』

 

 泰斗の物言いに、リーニエは口を紡ぐ。日輪刀を抜いているし、言葉は不要だ。

 

『(ソリテール様の考えが分からない……けど、これもテストの一環なのだとしたら、見せ付けてやるまでだ。アウラ様も見ている)』

 

 そして、リーニエが翼に加えて尻尾も展開して、本気の臨戦態勢を取る。こんな片腕しかない人間如きに、後れを取る訳にはいかない。

 

 

 ――――――ヒュォォォォ……ッ!

 

 

 と、泰斗が【霜の呼吸】をし始める。準備は万端、という事だろう。ならば、後は刃を交えるだけ。

 

『【模倣する魔法(エアフアーゼン)】……【月の呼吸・弐ノ型 珠華ノ弄月(しゅかのろうげつ)】』

 

 早速リーニエが仕掛けた。アウラの記憶を基にコピーした、【月の呼吸】を使い責め立てる。少女という肉体の縛りがある以上、馬鹿力よりも手数で勝負する方が良い。先ずはガラスのように炸裂する月の斬撃を二回。

 

「【霜の呼吸・陸ノ型 ()蓮華(れんげ)】!」

 

 対する泰斗は高速で跳び退きつつ、まるで団扇を仰ぐような動作で、花弁状の雹を発生させて相殺する。どうやら、潜伏中に新しい型を創っていたようである。

 

「【霜の呼吸・参ノ型 蔓蓮華(つるれんげ)】!」

 

 さらに、泰斗は蔓状の氷蓮華でリーニエを絡め取ろうとした。

 

 

 ――――――カヴォオオオオッ!

 

 

 だが、リーニエも口から火炎放射する事で蔓を焼き払い、次いで泰斗に高熱を浴びせ掛ける。

 

「チッ……【霜の呼吸・漆ノ型 ()(ぐもり)】!」

 

 すると、泰斗は日輪刀に力を込め、冷気の煙幕を張って熱を防いだ。

 

「【霜の呼吸・玖ノ型 枯園垂(かれそのしづ)り】!」

『くっ……!』

「【霜の呼吸・肆ノ型 (ふゆ)ざれ氷柱(つらら)】!」

『しつこい……!』

 

 しかも、地面と空中から野太い氷柱を幾つも発生させ、猛烈な勢いで反撃に転じる。

 

「【霜の呼吸・伍ノ型 結晶ノ御子(けっしょうのみこ)】!」

 

 そして、巫女のような氷結晶を五体生み出し、時間差で襲い掛からせながら、自分も突貫する。普通の鬼殺隊士では単なるエフェクトに過ぎない筈だが、【霜の呼吸】の攻撃は実体を持ち始めていた。死線を潜り抜けた影響で、泰斗もまた、巌勝レベルに片足を突っ込んでいるのだろう。とても隻腕とは思えない。

 

『キャァァアアアアッ!』

「ぐぉっ!?」

 

 しかし、逆に言えば、まだ黒死牟のレベルには至っていないという事。ユンの後釜たるリーニエが、そこまで劣る筈も無かろう。彼女が体内放射の衝撃波を生めば、泰斗は結晶ノ巫女ごと吹き飛ばされた。粉微塵にさなかっただけでも褒めるべきかもしれない。

 

『どう? もう諦める?』

「……冗談!」

 

 だが、泰斗はまだ諦めていなかった。技術は抜きにしても、地力で勝ち目が無さそうなのだが……何か秘策があるのか?

 

「フゥ……」

 

 と、泰斗が徐に日輪刀を天に掲げ、冷気の軌跡で魔法陣を描く。

 

 

 ――――――ガオンッ!

 

 

 その瞬間、円陣を(ゲート)に“ナニカ”が召喚され、泰斗の全身に装着される。

 

『冰の鎧……?』

 

 それは、青白い鎧だった。氷の結晶と虎狼狸(コレラ)の意匠が込められており、神々しくも禍々しい。片手剣(エクスカリバー)を思わせる形に変化した日輪刀も相俟って、まるで騎士のようである。

 

 

魄冰騎士(はくひょうきし):「童磨(ドーマ)」】

 

 

『(こいつ……何かヤバい!)』

 

 鎧を纏った泰斗の姿を見たリーニエが戦慄するも、もう遅い。

 

《時間が無いんでね……一気に決めるぜ!》

『がっ……!?』

 

 気付けば、リーニエは泰斗に四肢と翼を斬り飛ばされ、心臓に切っ先を突き付けられた状態で仰天していた。速過ぎて見えず、力強過ぎて斬られた感覚すら無かった。一体どんな力を持っているんだ、その鎧は。

 しかし、流石に過ぎた力なのか、持続時間は本当に一瞬のようであり、二分も保てず鎧は霧散してしまった。

 まぁ、結果は火を見るよりも明らかだったから、勝負はこれまでなのだけれど。

 

『ヴンダバ~♪』

 

 すると、何処からともなく拍手をする音が。

 

『いや~、面白い物を見せて貰ったわ、泰斗くん♪』

「ご、ご主人様、どうも~」

 

 さらに、ゾリテールを伴って、大魔族(ソリテール)が現れた。




◆魔戒騎士

 文字通り「魔を戒める騎士」。「陰我(いんが)」をゲートに魔界より現れる魔獣「ホラー」を狩る、守りし者たち。「ソウルメタル」と呼ばれる魔界由来の特殊金属を用いる事で、この世ならざる者であるホラーに対抗しているが、物が物なので扱い方を間違えるとあっさりと心が闇に飲まれてしまう。特に騎士の象徴たる「鎧」は全身に纏う為、時間制限があり、それを過ぎると肉体そのものが魔へと変じる。
 ……泰斗くんの鎧はホラーではなく、「鬼」や「吸血鬼」、「妖怪」の血肉に由来しているので、バリバリに特級呪具である。
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