私の名前は「リーニエ・リュグドラーナ」。ソリテール様に創られ、アウラ様に仕える側近よ。
……えっ、お前の家名は「ヘレロコースト」だし、「フォン」の称号は何処行ったのかって?
馬鹿だな。泰斗なんて気に食わない奴に、折角頂いた今生の本名を名乗らなきゃいけないのさ。あんな調子こいたガキンチョ、生前の家名だけ教えときゃ良いのよ。
ちなみに「ヘレロコースト家」は、かの有名な「ハープスブルク家」みたいに近親婚を繰り返して奇形児だらけだったし、一応マシな部類である私自身も女の子にしか欲情出来ない上に、顔の良い男を拷問をするのが好きな精神疾患持ちだったから、当然の事ながら子孫なんて存在する筈も無く、私が吸血鬼となったと同時に断絶が確定したので、文字通り「戒名」となっている事だろう。何か牛肉とチーズをご飯に盛って食っていそうな泰斗に名乗るのには、相応しい家名だと思うわ。死ね、チー牛。
とまぁ、それはそれとして、別の事で
『何がどうなっちゃってんのさ、これ?』
「「
『いや、そもそも「十二鬼月」って何? 「下弦の肆」って何様? あと様を付けろよデコ助』
「何だお前ら、そんな事も知らずに活動してたのか? とても無惨や黒死牟、鳴女と対峙したとは思えんなぁ?」
『死ねぇえええええっ!』
「お前が言っちゃ駄目だろそれは……」
煩い、黙れ、そして死ね。良いから私の質問に答えろよ。質問に質問で返すな。質問文には疑問文で答えろとテメェの爺は教えているのか?
『私はっ、「十二鬼月」は何だと、聞いているんだ!』
「はいはい、分かりましたよ。世良、紙を用意してくれ」
「了解ですわ! はい、高級和紙です!」
「『何故谷間から出した?』」
紙が湿っぽいんですけど。大地もちょっとモジモジしてるけど、まさか挟んでいるのか?
ともかく、泰斗の紙を交えた解説が始まった。別に気になってるわけじゃないけど、お前が「教えさせて下さいお願いします」って土下座して来たから、聞いてやるだけなんだからね!
「何か事実を捻じ曲げられている気もするが、続けるぞ? ……
『本人が居ないからって滅茶苦茶失礼な事言ってない?』
「奴は頭が無惨だから大丈夫だ」
うーん、この……まぁ、以前聞いた話を鑑みるに、肝心な所でポカをやらかす事は間違いないので、無惨は根本的にはお馬鹿なのだろう。何度もソリテール様に出し抜かれてるし、鳴女の手綱がまるで握れていないし。
「そんで、「十二鬼月」は上位六人と下位六人で階級が区別されていて、上位は「上弦」、下位は「下弦」となっている。奴は「下弦の肆」だから、下から数えた方が早い実力しかないって事だな」
『じゃあ、滅茶苦茶弱いって事?』
「流石にそこまで言うつもりは無いし、そもそも全国平均の上位十二人の一人なんだから、少なくとも雑魚ではないかな。俺が強くて
『縁壱に様を付けてやれよタコ助』
「俺は蛸が嫌いだから嫌だ」
そういう事じゃないんだよ、ゴミめ。問題は、アウラ様たちが無事で済むかどうかだけだ。
『……結局、アウラ様たちは大丈夫なの?』
「まぁ、大丈夫だろ。俺が知る限り、下弦の連中は搦め手に特化した奴ばかりだし、理不尽の塊みたいな鳴女に引き分けたのなら問題無いさ。こういうチンケな小細工は、本当の上位者には通じないからな」
『そんな物かな?』
「それとも何だ、自分の主人が信用ならないのか?」
『黙れ外道』
「そこまで言われるような事したか俺?」
アウラ様たちの前で恥を掻かせた。万死に値するわ。
「むしろ、無惨は支配下の鬼と視界を共有出来るから、無惨に嗅ぎ付けられたかもしれない事が問題だな」
『そこは別にどうでも良い。どうせまた失敗するのが目に見えているし。それよりも――――――』
そんな事より、ソリテール様が秘匿しようとしていた零余子が見付かってしまったのが問題なんだよね。はてさて、どうした物か……ん?
『――――――いや、やっぱり問題無いわ』
「何の話だ?」
『こっちの話よ』
そして、私はある一点を見詰めた。
『………………』
◆零余子の能力
元より優秀な彼女が、ソリテールたちのせいで様々な危機に晒される中、魔法や「血鬼術」に近い能力が開花しつつある。その一つが「姿隠し」で、他者から認識され難くなる事に加え、物理的にも見えなくなる。「透き通る世界」よりも見通せるリーニエの眼にはバッチリと見抜かれているが。