鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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久し振りのこいつら


湯煙の向こう側

 無限城、蒸し風呂部屋(サウナルーム)

 鬼の始祖・鬼舞辻(きぶつじ) 無惨(むざん)と、その側近・鳴女(なきめ)が、タオル一丁で汗を流していた。ロウリュは玉壺が担当している。室内温度は百二十度に達しているものの、無惨たちは鬼なので大した効果は無く、気分を味わうだけの物と言えよう。

 

『無惨様無惨様』

『何だ、鳴女よ』

『「下弦の肆」、「夜行」がソリテール一派と接触。ソリテールとアウラを【血鬼術:「決闘王国(デュエリスト・キングダム)」】に捕らえました。今、決闘の真っ最中です』

『ほほぅ、あまり期待していなかったが、少しは役に立つではないか。……とは言え、あの“決闘札(カードバトル)”とやらは、どうにかならん物かね』

『確かあいつが一から考えたんでしたっけ? ですが、法則(ルール)があるからこそ、圧倒的上位者にも勝ちの目があるとも言えます。下弦の鬼では、身体能力を強化する程度の能力じゃあ返り討ちにあるのが目に見えてますからね』

『そうだけど……こう、さぁ? あくまでこれ、仕事よ? 任務なのよ? その最中に、花札みたいな事されるとさぁ!』

『あ、それパワハラですよ~。夜行だって彼なりに一生懸命に頑張ってるんですから、認めてあげないのは器が小っちゃいですよ~?』

『誰の器が小さいだ! そしてパワハラって何だ!?』

『無惨様みたいな奴の事です』

『みたいな奴言うな』

 

 相も変わらず仲良く喧嘩している無惨と鳴女であった。そんな二人を、心ここに非ずというか、空気となって熱気と蒸気を送り続ける玉壺。ここで余計な茶々を入れてもロクな事にならない。

 

『……まぁ、勝負の結果はどうあれ、奴らが東北に活動拠点を置いている事は分かった。ならば、幾らでもやりようはあるさ。それよりも、今は夜行が捕えている人間(・・)の方だ』

 

 と、映像が檻に囚われたアルビノの少女――――――零余子(むかご)へ向けられる。

 

『ああ、夜行が行き掛けの駄賃に拾ったガキでしたっけ? 人間(・・)の癖に、ソリテール(もしくはアウラ)の使い魔と一緒に居た、稀有な女。大方“面白そうだから”ってソリテールが現地調達したんでしょうけど、こいつがどうかしたんですか?』

『こいつを回収して、鬼に作り変える。まだ人間(・・)である事を鑑みるに、後でどうにかするつもりだったんだろうが、先にこっちが弄らせて貰う。そうすれば、ソリテールの奴も悔しがるだろう?』

『そうですかねぇ? 何かあからさま過ぎて、罠っぽく思えるんですけど?』

『何だ、私が間違えると思っているのか?』

『はい、確信してます。こういう時の無惨様は宇宙で一番信用なりません』

『お前、マジでいい加減にしろよ? 不敬処の話じゃないからな? 舐めるのも大概にしろ!』

『むしろ舐めても良いんですよ? さぁ来なぁ!』

『誘うな! 布を取って仁王立つな! 座ってろ、この破廉恥が!』

『褒めないで下さい♪』

『褒めてねぇよ!』

 

 鳴女は反対気味だが、無惨は零余子の回収と改造を押し通すつもりのようである。

 

『玉壺、貴様ちょっと現場に行って来い。夜行は最悪どうでも良いが、あの小娘だけは回収しておけ。「上弦の弐(・・・・)」としての威厳を見せてみろ』

『御意。では、こっそりと向かわせて頂きます』

 

 無惨の命令で、「上弦の弐」……玉壺が動いた。それはもう、嬉々として。

 

『……随分と嬉しそうだな?』

『ええ、それはもう。久方振りにソリテール氏と会えますので』

『何だ貴様、奴に懸想しているのか?』

『まさか。彼女に懸想するなど有り得ませんよ。むしろ、雪辱を晴らす為です』

『なるほど。ならば良い、行け』

『はい、仰せの通りに……』

 

 玉壺はニマリと嗤うと、「決闘王国」の闇へと飛び込んで行った。

 

『(黒死牟は「上弦の壱」。言わば特級戦力。軽々には動かせん。そういう意味では、威力偵察も器用に熟せる玉壺は使い勝手が良い。以前よりも遥かに強化されたしな)』

 

 そんな彼の姿を、満足そうに見送る無惨。彼の中で一番評価が高いのは、実は玉壺だったりする。罠の設置や簡易拠点の形成、偵察も強襲も可能な上に、四国平定の際は大金星を挙げた。これで気に入らない筈が無かろう。戦闘能力では黒死牟に軍配が上がるが、玉壺自身もかなり腕を上げている。使い易さで言えば、やはり玉壺が一番なのだ。

 

『(それに比べて……)』

 

 無惨は目の前でジャングルを広げる鳴女(ばか)を見て溜息を吐いた。どうしてこいつはこう、自由奔放乱暴狼藉なのだろうか。

 

『あ、剃った方が良いですか?』

『お前、もうマジで黙れ……!』

 

 無限城は今日も平和だった。




◆上弦の鬼

 「十二鬼月」の強い方の六人。無惨の中では、「下弦の鬼」は偵察役かつ囮みたいな扱いなので、「上弦の鬼」はなるべく固定のメンバーで行きたいと考えている為、あまり積極的に動かそうとはしない。その中でも古参かつ便利過ぎる仕事人、玉壺は一番のお気に入り。原作と違って、そこまで気持ちの悪い絡み方もして来ないし。
 ちなみに、黒死牟は「上弦の壱」。便利さでは玉壺の方が上だが、戦闘力という一点に絞って考えた結果の形である。
 ……では、鳴女は?
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