鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

75 / 76
イェ~ガ~♪


自由への進撃

「「シュラハト」に「グラオザーム」……」

 

 二柱の「真祖吸血鬼」を前に縁壱は――――――、

 

「何かパッとしないな。特にグラオザーム(そこのお前)

『ふざけるなよ貴様! 何処が地味か言ってみろ!』

「いや、おかっぱ頭とか割とよく見掛けるし、何と言うか……油断してアッサリ殺られる四天王の一番最初みたいな雰囲気が――――――」

『具体的に指摘するな! 結構気にしてるんだぞ!』

「何かごめん……」

 

 平常運転だった。

 

『っはっはっはっは! 実に愉快な男じゃあないか! 「マハト」が気に入る訳だ』

 

 そんな縁壱とグラオザームのやり取りを見て、シュラハトが朗らかに笑う。目元だけで心情がありありと伝わって来るように、意外と表情が豊かなようだ。それに比べてグラオザームは表情に乏しい。かの黄金卿も大分無表情だったが、これも個人差なのだろうか?

 

「「マハト」?」

『……おやおや、自分が命を賭して斃した敵の名を知らんのか?』

「奴は「ミダス」と名乗っていた」

『歴史に偽名を刻むな、あの馬鹿が――――――』

 

 何処かで聞いたような台詞である。

 その上、数年越しに知ってしまった衝撃の真実。黄金卿、偽名使ってた。そういう意味ではシュラハトとグラオザームは紳士的なのかもしれないけれど、それが本名とは限らないので、考えるだけ無駄なのかも。

 

まぁ(・・)日本に(・・・)呼び寄せた(・・・・・)のは俺だから(・・・・・・)奴からすれば(・・・・・・)文句を言われる(・・・・・・・)筋合いは無いか(・・・・・・・)

「どういう事だ?」

そのままの(・・・・・)意味だよ(・・・・)奴が赴くままに(・・・・・・・)暴れてくれた(・・・・・・)おかげで(・・・・)容易く天下人(・・・・・・)を下せた(・・・・)

 

 スルリとお白州に降りて来たシュラハトが、縁壱を覗き込む。赤紫色に輝く双眸は、この世の全てを見通しているかのようだった。

 

『“敵は本能寺にあり”……ってね』

「………………!」

 

 なるほど(・・・・)そういう事か(・・・・・・)

 

「はぁっ!」『……おっと!』

 

 その瞬間、縁壱が足の力だけで跳躍、シュラハトの頸を食い千切ろうとしたものの、彼の方が一枚上手だったのか、ヒラリと躱されてしまう。流石は別世界の勇者(ばけもの)と相討った男。万全の縁壱でも、もしかすると……。

 

『まったく、油断も隙も無いな、お前は……』

『貴様ァ! この期に及んでふざけた事を!』

『よせ、お前では勝てんよ、四天王の一番目』

『シュラハト様!? 貴方まで、そんな事を!?』

 

 グラオザームが詰め寄ろうとするも、シュラハト自身に止められる。暗に「引っ込んでろ」と言われてしまった、可哀想な四天王の一番目であった。

 

「……何が目的だ?」

 

 縁壱が黄金の鎖を引き千切りながら、二人を睨み付ける。いや、普通に引き千切るな。

 

『………………!』

『それは「豊臣」としてか? それとも「七崩星(グロセ・ベーア)」としてかな?』

 

 だが、グラオザームはともかく、シュラハトが焦る様子は無い。強者の余裕という奴か。

 

『答えは一つ、「天下統一」さ。わざわざマハトを(・・・・・・・・)囮にしてまで(・・・・・・)魔王を討ったんだ(・・・・・・・・)。分かるだろう? 我々は自称(・・・・・)では無い(・・・・)真なる魔王(・・・・・)を求めている(・・・・・・)のだよ(・・・)

 

 ようするに、自分たちが織田(おだ) 信長(のぶなが)に次ぐ魔王として、この日ノ本を支配しようというのだ。

 

いいや(・・・)俺はお前に(・・・・・)聞いている(・・・・・)

『なるほど……』

 

 しかし(・・・)縁壱が(・・・)聞きたいのは(・・・・・・)そんな分かり(・・・・・・)切った事ではない(・・・・・・・・)

 

『――――――お前は未来を信じるか? あるいは“別の世界”を……』

 

 と、シュラハトが膨大な魔力を漲らせながら訊ねる。

 

『もしも、だ。この世界が、たった一粒の可能性の産物だとしたら? 世界樹から芽吹いた、泡沫のアリアだとしたら、どうする?』

「何だそれは?」

世界は一つ(・・・・・)じゃないって(・・・・・・)事だよ(・・・)。グラオザーム』

『承知しました』

 

 さらに、彼の手をグラオザームが握ると、世界は一瞬にして泡宇宙と化す。泡の中には、縁壱が見知った顔が居る所もあれば、見ず知らずの人物が生き抜く場所もあり、逆に人間さえ存在しない魔の世界もある。共通しているのは、どの宇宙も生き生きと息衝いている事。違いの大小はあれど、確かに生きている。生きて、各々の物語を紡いでいた。

 

『世界とは可能性だ。蝶が羽ばたけば桶屋が儲かるように、無数の確率が幾多の世界を生む。俺はその中の(・・・・・・)一つから来た(・・・・・・)生まれ変わってな(・・・・・・・・)

 

 所謂「並行世界(パラレルワールド)」という概念である。

 

「世迷言……とは言わないさ。鬼や妖怪(ばけもの)が蔓延る世界だからな」

『化け物だけじゃない。魔王も居れば、神も居る(・・・・)。それがこの世界の実情なのさ』

 

 化け物以上の存在が居るというのか。冗談ではない。

 

俺は世界が欲しい(・・・・・・・・)。神も天使も悪魔も鬼も妖怪も居ない、平和な世界だ』

「何を言って――――――」

俺はこれまで(・・・・・・)魔王様の為に(・・・・・・)身を粉にして来た(・・・・・・・・)! 千年先の魔族の(・・・・・・・)繁栄を実現(・・・・・)する為に(・・・・)!』

 

 と、シュラハトが猛烈な勢いで幕し立てた。事実関係を知らない縁壱からすれば頭が宇宙猫になってしまう話だが、グラオザームの【楽園へと導く魔法(アンシレーシエラ)】のおかげで、どうにかこうにか呑み込める。

 

『だが、俺は役目を果たし終えた。今や魔族でさえない。だから今度は(・・・・・・)俺が好きに(・・・・・)するのさ(・・・・)。義理立てする相手は、大体皆置いて来たからな』

 

 つまり(・・・)そういう事だ(・・・・・・)

 

「……結局、俺に何を求める?」

神を殺す(・・・・)。その手伝いさ。嫌いなんだろう? 神様って奴が……』

「………………!」

 

 そして。




◆グラオザーム

 魔王直属の幹部「七崩賢」の一人。「奇跡」の二つ名を持つ。相手に死のVR体験を味わわせる【楽園へと導く魔法(アンシレーシエラ)】を使う。女神の魔法で時間跳躍したフリーレンから未来の記憶を読み取ろうとしたが、ヒンメルを筆頭としたフリーレンのかつての仲間たちによって討ち取られた。
 今作ではシュラハトと同じく「真祖吸血鬼」となって生まれ変わっており、彼と共に天下統一を目指している。十二分に強いのだが、あくまで搦め手を得意としているので、タイマンだと縁壱には勝ち目が無い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。