「「シュラハト」に「グラオザーム」……」
二柱の「真祖吸血鬼」を前に縁壱は――――――、
「何かパッとしないな。特に
『ふざけるなよ貴様! 何処が地味か言ってみろ!』
「いや、おかっぱ頭とか割とよく見掛けるし、何と言うか……油断してアッサリ殺られる四天王の一番最初みたいな雰囲気が――――――」
『具体的に指摘するな! 結構気にしてるんだぞ!』
「何かごめん……」
平常運転だった。
『っはっはっはっは! 実に愉快な男じゃあないか! 「マハト」が気に入る訳だ』
そんな縁壱とグラオザームのやり取りを見て、シュラハトが朗らかに笑う。目元だけで心情がありありと伝わって来るように、意外と表情が豊かなようだ。それに比べてグラオザームは表情に乏しい。かの黄金卿も大分無表情だったが、これも個人差なのだろうか?
「「マハト」?」
『……おやおや、自分が命を賭して斃した敵の名を知らんのか?』
「奴は「ミダス」と名乗っていた」
『歴史に偽名を刻むな、あの馬鹿が――――――』
何処かで聞いたような台詞である。
その上、数年越しに知ってしまった衝撃の真実。黄金卿、偽名使ってた。そういう意味ではシュラハトとグラオザームは紳士的なのかもしれないけれど、それが本名とは限らないので、考えるだけ無駄なのかも。
『
「どういう事だ?」
『
スルリとお白州に降りて来たシュラハトが、縁壱を覗き込む。赤紫色に輝く双眸は、この世の全てを見通しているかのようだった。
『“敵は本能寺にあり”……ってね』
「………………!」
「はぁっ!」『……おっと!』
その瞬間、縁壱が足の力だけで跳躍、シュラハトの頸を食い千切ろうとしたものの、彼の方が一枚上手だったのか、ヒラリと躱されてしまう。流石は別世界の
『まったく、油断も隙も無いな、お前は……』
『貴様ァ! この期に及んでふざけた事を!』
『よせ、お前では勝てんよ、四天王の一番目』
『シュラハト様!? 貴方まで、そんな事を!?』
グラオザームが詰め寄ろうとするも、シュラハト自身に止められる。暗に「引っ込んでろ」と言われてしまった、可哀想な四天王の一番目であった。
「……何が目的だ?」
縁壱が黄金の鎖を引き千切りながら、二人を睨み付ける。いや、普通に引き千切るな。
『………………!』
『それは「豊臣」としてか? それとも「
だが、グラオザームはともかく、シュラハトが焦る様子は無い。強者の余裕という奴か。
『答えは一つ、「天下統一」さ。
ようするに、自分たちが
「
『なるほど……』
『――――――お前は未来を信じるか? あるいは“別の世界”を……』
と、シュラハトが膨大な魔力を漲らせながら訊ねる。
『もしも、だ。この世界が、たった一粒の可能性の産物だとしたら? 世界樹から芽吹いた、泡沫のアリアだとしたら、どうする?』
「何だそれは?」
『
『承知しました』
さらに、彼の手をグラオザームが握ると、世界は一瞬にして泡宇宙と化す。泡の中には、縁壱が見知った顔が居る所もあれば、見ず知らずの人物が生き抜く場所もあり、逆に人間さえ存在しない魔の世界もある。共通しているのは、どの宇宙も生き生きと息衝いている事。違いの大小はあれど、確かに生きている。生きて、各々の物語を紡いでいた。
『世界とは可能性だ。蝶が羽ばたけば桶屋が儲かるように、無数の確率が幾多の世界を生む。
所謂「
「世迷言……とは言わないさ。
『化け物だけじゃない。魔王も居れば、
化け物以上の存在が居るというのか。冗談ではない。
『
「何を言って――――――」
『
と、シュラハトが猛烈な勢いで幕し立てた。事実関係を知らない縁壱からすれば頭が宇宙猫になってしまう話だが、グラオザームの【
『だが、俺は役目を果たし終えた。今や魔族でさえない。
「……結局、俺に何を求める?」
『
「………………!」
そして。
◆グラオザーム
魔王直属の幹部「七崩賢」の一人。「奇跡」の二つ名を持つ。相手に死のVR体験を味わわせる【
今作ではシュラハトと同じく「真祖吸血鬼」となって生まれ変わっており、彼と共に天下統一を目指している。十二分に強いのだが、あくまで搦め手を得意としているので、タイマンだと縁壱には勝ち目が無い。