『くしゅん!』
「どうした、風邪か?」
『そんな軟な物に罹る程雑魚じゃないわ。大方、誰かが私の悪口でも言ってるんじゃない?』
「お前が人の悪口を気にするようなタマか?」
『それもそうね……』
ハァ~イ、女心の一つすら分からない伊達男に貶されたソリテールお姉さんよ。
まぁ、私も分かんないんだけどね。そもそも性別云々の前に人の心が無いのよ、魔族だから。何それ、美味しいの?
あ、もちろん、身の方は美味しいわよ。今日もこれから頂きますご馳走様するんだからさ。
という訳で、「お話」は済んだんだし、伊達男にはお帰り願いたいんだけど?
「ヘイヘイ、野郎はとっとと帰りますよ。薔薇だの百合だの、好きな華を咲かせておいてくれ。シー・ユー・アゲイン♪」
「失礼致す。我々は一度米沢城へ戻って、相応の支度をせねばならぬのでな」
『ばいばいき~ん』
こうして、レッツパーリィしそうな野郎共は去って行った。忙しいし喧しい奴だったわね。
『……あんた、本気であいつらと同盟組む気なの? 四国の時みたいにトンズラすれば良いじゃないの』
すると、当事者が居なくなったのを良い事に、アウラが文句を垂れた。あなたの性格的にはそうなるわよね。
『でも、まだ「万世極楽教」としての実績が無いわ。今撤退しても、「万世教」と「極楽教」が陸奥国を引っ掻き回した挙句に自然消滅するだけの結果しか得られない。今が正に本番なのよ。それに――――――』
『それに?』
『「
『………………!』
政宗は一言も豊臣が「
だが、これまでの経緯や状況を鑑みるに、間違い無く「真祖吸血鬼」が関わっているだろう。魑魅魍魎を意のままに操って手駒にするなんて、魔法でも無ければ不可能である。
「結局、どうするつもりなんだよ? 同盟は良いとして、言いなりになるつもりなのか?」
と、荒ら屋から
『まさか。……
『……はい』
「………………!」
なので、百聞するより一見させる事にしたわ。これには泰斗くん他数名もビックリ。驚いていないのは、見抜く能力がずば抜けたリーニエと、直感力を借り受けている大地だけだった。うんうん、良い反応。
『あんた、玉壺の奴に攫われたんじゃなかったの?』
『……まほうでかくれてました。いそうくうかんにてんいして、このせかいからにんちできなくしたんです』
『ごめんなさいね、何言ってるかちょっと分からないわ……』
たぶん一番びっくりしていたアウラが種明かしを求めたが、難し過ぎて分からなかったみたい。
『ようするに、“見えるけど見えないモノ”になっていたって事よ』
『「友情かよ」』
分かり易く捕捉してあげたのに、アウラと泰斗くんの両方から同時に突っ込まれたわ。解せぬ。もっと簡単に言ってしまえば、
ともかく、「位相空間」という“雰囲気しか残らない場所”に避難する能力だと思えば良いわ。普通は見えないし、見えたとしても触れる事さえ叶わないので、一度退避されると物理的には一切手を出せないチートスキルと言える。透明な立体映像みたいな物だからね。手を出した所で空を切るだけだわ。
しかも、彼女の能力はそれだけではない。零余子は自身の血肉から分身を生み出せる。ただし、それは吸血鬼ではなく完全な人間であり、ある意味「有から無を生み出す能力」と言えるだろう。
……本当に便利で使い勝手の良い子ねぇ、零余子。差し詰め、【
『いや~、全然気付きませんでしたね~』
『はっ……やはり私の方が優秀なようね』
『凄いですね、流石ですね、リーニエ!』
『……何か手放しで喜ばれるとムカつく』
ユンとリーニエは本当に仲良しさんね~。可愛い、何なのこの義兄妹~♪
「えっと、つまり計画通りって事ですか?」
『その通りよ、ゾリテール』
「あ~ん、ソリテール様♪」
世良も良い子よ、本当よ。
『……そいつ、絶対にそこまで考えてないわぁ~い♪』
『ウィンガーデム・レビオーサー♪』
無礼なアウラは叩きにしてやった。シャラップよ。
『ともかく、
『……分かりました』
とりあえず、予定通り零余子は蝉儕に預けるとするわね。零余子は隠せば隠し通す程価値があるもの。
『さてと……』
次の行動に移るとしようかしら。
◆【
自身の存在率を弄る事で、分身を生み出したり、本来は干渉出来ない位相空間へ逃げ込む事が可能となる魔法。その本質は「自分さえ良ければそれでいい」という彼女自身の“生への執着”である。