「「
自称:滝夜叉姫の名乗りを聞いて、政宗は滅茶苦茶に白けた。
滝夜叉姫とは、
その上、将門の本来の娘(三女)は「
『冗談だと思うか?』
「そりゃあな。化け物の類だと言うのは分かるが……」
「狐の窓を使うまでもありませんね」
と言うか、目の前のこいつは妖狐の類だった筈。元よりお前は人間じゃねぇ。自称するのなら、せめて怨霊の類として出て来て欲しい物である。
『何もおかしい事は無いわ。
「あぁん?」
だが、滝夜叉姫はコロコロと嗤うばかりか、政宗を煽る煽る、煽りよる。馬鹿に付ける薬は無いと言わんばかりに。
「無礼な獣ですね。いや、
と、言われた政宗以上に怒る小十郎が刀を構えた。
『ほぅ……少しは頭が回るようじゃな。行け!』
『コカカカ!』『キキキキ!』『カカカカァ!』
しかし、滝夜叉姫は気にした様子も無く、代わりに周囲の骸骨軍団を差し向ける。カタカタという音に混じって、腐った肉が擦れるような音を立てながら、骸骨たちが一斉に襲い掛かった。これだけ見ると伝説通りの滝夜叉姫に思えてならないのだが……。
「来ます!」
「任せろや」
だが、こちらもまた伝説に残るであろう人間たち。物語の中で言えば英雄や勇者の類だ。怪物のお仲間と言っても良いだろう。政宗も小十郎も全く怯む事無く、迫り来る骸骨軍団を次々と斬り伏せた。お前らも人間じゃねぇ。
『中々やるではないか。では、これではどうだ?』
すると、滝夜叉姫は突撃命令を中断し、次なる指令を骸骨軍団に与えた。骸骨たちは幾つかの点で寄り集まると、巨大な三体となり、政宗らに改めて襲い掛かる。全長数十メートルもある馬鹿デカい骸骨が暴れ回る様は、正しく「相馬の古内裏」その物である。
◆『分類及び種族名称:反骨大怪獣=
◆『弱点:不明』
『ゴヴアァアアアッ!』
餓者髑髏の一体が寄生虫と粘液に塗れた隙間だらけの掌を振り下ろす。地面が岩盤ごと捲れて、土砂を巻き上げた。
「このっ! 無駄にデカくて硬い野郎だ!」
その一撃を紙一重で躱した政宗は、尺骨と上腕骨を伝って肩甲骨まで駆け上がり、頸椎に二連撃を食らわせたのだが、骨格部分には僅かな傷しか付かず、接着部はある程度裂けたものの瞬く間に再生せれてしまう。硬い上に治癒するとか、ズルいにも程がある。小十郎の方も手応えを得られていないようだ。
『ギィグヴァアアッ!』
「ぐっ!?」「小十郎!」
さらに、そこへ手隙の餓者髑髏最後の一体が、小十郎を着地している個体諸共殴り飛ばす。再生するが故のフレンドリーファイヤーである。
『ボァアアアアアッ!』
「げ、下呂ビームっ!?」
しかも、ゴキリと政宗の方へ首だけ振り返ると、口から黄緑色の流動体を猛烈な勢いで吐き出してきた。寄生虫たっぷりの
もちろん、浴びたら確実に寄生されて内部から食い破られる。何せ後の時代に「
「くっ……政宗様ぁ!」
「すまん、助かった!」
いよいよ八方塞がりに追い詰められた時、復活した小十郎が餓者髑髏の背骨を伝って政宗を掻っ攫い、間一髪でトリプルゲボブレスを回避した。ゲロに塗れて死ぬとか嫌過ぎる。
『ハッハッハッハッハッ! 本当にやるではないか! あの頃を思い出すのぅ!』
それを見た滝夜叉姫が高笑いしながら拍手した。悪女と言うより、蟻で遊ぶ小さな子供のようである。それ故に見た目や態度のギャップが凄過ぎて、頭がバグって来る。
「……まーた笑えない冗談をっ!」
『そっちこそ、まだ認めぬのか?』
「認められる訳ねぇだろ! アロンソ・キハーノの妄想に付き合う程、俺も暇じゃねぇんだよ! テメェは唯の猿真似野郎だ!」
『――――――猿真似の何が悪い』
すると、さっきまで上機嫌だった滝夜叉姫の顔が、一気に曇る。次いで顔を出したのは、一番触れられたくない部分を踏み抜かれた事に対する憤怒の情念だ。
『わしは滝夜叉姫! かの平 将門の娘にして、
◆餓者髑髏
餓死者の怨念が寄り集まって生まれたとされる巨大な骸骨の妖怪。そのオリジナルは「相馬の古内裏」に登場する、滝夜叉姫の召喚獣。こちらは平家の怨念によって生み出されているので、実態はかなり異なる。何れにしろ、主人と共に滅び去り、それを真似たナニカが同じ様な姿を取って現れるようになったのであろう。
正体は成虫が知られていない、「芽殖孤虫」の成体。食い殺した人間の骨格と己の分泌液により動く骸骨となり、巨大な一体として顕現した後は、野山に擬態して獲物を待つようになる。