鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

83 / 83
軽い気持ちだったんだ。間違いだったんだよ。だから大人しく死ね。


命の価値

『わしは……わわわわ、わし、ははは……誰だれDAREないナ「」p;@:いk¥:ty。lpふぉkmdそkmsdcklsfヴぃjんrb;l、dsv:・dcs・pl、b;lfmこ:;。xc:・のkmごけぽvdsもgほい!』

 

 と、急に滝夜叉姫がおかしくなった。狂ったというか、機能障害(エラー)が起きているという感じである。

 

『――――――嫌じゃ! 消えたくない死にたくない消えたくない生きたい生きたい生きたい生きたいぃぃぃっ!』

「な、何だぁ?」「わ、分かりません……!」

 

 さらに、一人で勝手に藻掻き苦しみ、生きたいと叫ぶ。全く以て意味が分からない。政宗や小十郎は勿論、滝夜叉姫自身にも。事情を知るのは、本体たる芽殖孤虫のみ。彼らは世代を重ねれば重ねる程に生命力を増し、他者への擬態も上達する。蓄積した記憶(データ)を基に。

 しかし、多過ぎる情報(データ)は齟齬を生む。記憶(データ)の矛盾は更なる矛盾(エラー)を生み出す。立ち直るには再起動と最適化が必要だ。

 そう、芽殖狐虫とは――――――否、人間以外の生物を祖とする妖怪は、一種のコンピュータなのである。“人を取って食う”事に特化し、最適化している。他者を欺き、不意を突き、騙し討つ。その為だけに産まれ生きる化け物。それが妖怪だ。

 つまり、これもまた自然の営み。弱者が強者の食い物にされてこそのナチュラルである。

 今頃、滝夜叉姫の中では蓄積した人格の全てが、猛烈な勢いで削られている事であろう。自分がどんどん消えて行く。視界がズレ、ぼやけ、身体と心の感覚を失い、何もかも忘れ、最期は虚無に還る。その恐怖は筆舌に尽くし難いが、どう足掻いても絶望しか無いので、人はやがて考えるのを止めてしまう。

 

『絶対に嫌だぁあああああああああああっ!』

 

 だからこそ、これは異常事態だ。人が人間であろうとするなど、思い上がりである。人の分際で、餌の立場で、生きようと足掻くなど、烏滸がましいにも程がある。最早、自分がどの私で、俺で、あたしで、僕で、我で、わしなのかすら、分からない癖に。人権が欲しいなら、対価を支払え。生存権したいなら許可を取れ。この芽殖孤虫(じぶん)に。むろん、答えは「死」だ。

 さぁ、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!

 

『生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい!』

 

 消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!

 

『煩い煩い煩い! 勝手に恋して、勝手に生んで、自分に酔って、悦に入って、皆みんなわたしを玩具にする! わたしはわたしだ! わたしなんだぁ!』

 

 削除    削除       削除    削除     削除  削除

   削除        削除   削除   削除

       削除 削除    削除

    削除      削除 削除 削除 削除   削除 削除

       削除    削除    削除  削除削除   削除削除 削除 削除  削除

  削除 削除削除   削除 削除  削除 削除 削除削除 削除 削除 削除

 削除 削除   削除 削除削除      削除 削除     削除 削除

 

 

 

『黙れぇええええええええェェァヴォアアアアアァァっ!』

 

 

 

 そして、最適化は完了する。本来あるべきではない、誰でも無いたった一つの人格と、九生を体現した悍ましい姿に。脊椎と肋骨、頭蓋骨で構成された九つの尾に、各所の骨格が乱雑かつ無理矢理に纏めた、蟲と人が混じり合ったかのようなシルエットの本体を持つ、“彼女”の名は、

 

 

◆『分類及び種族名称:代わりは()幾らでも()いる許さ()れざる命()=滝夜叉姫』

◆『弱点:不明』

 

 

『オギャアアアアアアアアアアアアッ!』

 

 私が死んでも、代わりはいるもの。だから、みんな死んじゃえ。

 

『祇園精舎の鐘の声~、諸行無常の響きあり~、沙羅双樹の花の色~、盛者必衰の理をあらわす~♪』

 

 すると、何処からともなく琵琶の音と、平家物語が聞こえてきた。

 

『……今更乳飲み子みてぇにぎゃあぎゃあと。赤子は黙って手を捻り潰されてな』

「「………………!」」

 

 さらに、千両役者とばかりに、虚空の襖を開けて、本物の悪鬼羅刹がやって来る。ここから先は無法地帯。生きるか死ぬかの、シンプルな戦いである。




◆平家物語

 鎌倉時代に成立したとされる、平家の滅亡と源氏の台頭、貴族社会の没落を描いた、所謂「勝者の自慢話」。歴史とは何時だって勝者が刻み、好き勝手に語る事を許されている。敗者は、弱者は、存在すら許されない。形は違えど、人間社会もまた弱肉強食で成立しているのだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ゼーリエ、アイドルになる。(作者:ジュウヨン)(原作:葬送のフリーレン)

▼破産寸前の大陸魔法協会。▼再建を目指すゼーリエが選んだのは——▼“アイドルになることだった。”▼きっかけはゼンゼの一言。▼「ゼーリエ様、“アイドル”をするというのはどうでしょうか」▼ゼーリエ、ゼンゼ、フリーレン、フェルン、ユーベル。▼五人で結成された《アーク・アルカナ》▼これは、最強の大魔法使いが——▼アイドルとして成り上がる物語。▼


総合評価:320/評価:7.86/連載:64話/更新日時:2026年07月17日(金) 21:02 小説情報

【完結】何だかんだと恋運ぶ呪いの花(作者:SUN'S)(原作:らんま1/2)

▼【挿絵表示】▼一人は糸色家の娘、二人は本条家の姉弟だ。▼明治最強の血筋を受け継ぐ姉弟と、明治時代から世界屈指の名を連ねる糸色の娘は、これから巻き込まれるドタバタでハチャメチャなラブコメディーに笑い、呆れながらも、時には戦いながら歩んでいく。▼ちなみに姉弟は私の書いた「某剣客浪漫世界で私は物書きをする」および「もしも「るろ剣」の世界に糸色景がいたらのスレ」に…


総合評価:192/評価:6.25/完結:441話/更新日時:2026年07月20日(月) 22:05 小説情報

………ゑ?個性?SCPだけど?(作者:ヘビーなしっぽ)(原作:僕のヒーローアカデミア)

前世はSCP財団で働いていたはずのなんてことないただのしがない研究員…のはずが、とあるSCPが巻き起こした爆発に巻き込まれ、目が覚めたら場所は……あれ?ここどこ?え?▼”SCP“の個性に目覚めた研究員のヒーロー人生が幕を開けるー!▼(※一話目で登場するSCPは、私が勝手に考えたものです。現実には存在しませんので、ご了承ください)▼IFルート進行中▼→ htt…


総合評価:699/評価:6.18/連載:19話/更新日時:2026年07月07日(火) 20:36 小説情報

紅魔族の異世界生活(作者:サード・アイ)(原作:転生したらスライムだった件)

▼水の女神アクアによって転生させられた主人公。紅魔族のおかしな価値観に慣れてしまったが、順調に異世界生活を送っていた。だが、ある日別の異世界に転移してしまった!▼主人公は未知の違う異世界でどう生きるのだろうか?!  ▼不定期更新です。


総合評価:580/評価:7.76/連載:25話/更新日時:2026年07月01日(水) 22:00 小説情報

ハスターなオリ主とドラゴンボール(作者:ラムセス_)(原作:ドラゴンボール)

旧支配者ハスターになった転生者が、ドラゴンボール世界に紛れ込んで滅びがちな人類の守護を頑張る話。▼拙作「ハスターなオリ主と米花町」のスピンオフ。▼なるべく本編を読まなくても読めるようにするつもり。▼本編「ハスターなオリ主と米花町」▼https://syosetu.org/novel/384972/


総合評価:8035/評価:8.14/完結:52話/更新日時:2026年06月07日(日) 20:41 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>