「こいつが……!」
急に現れた
「お前が鳴女か」
『そういうお前は伊達 政宗か。初めましてだなぁ、有名人?』
「………………」
流石に知っているか。鳴女も無惨も人喰いの鬼であり、人間は食糧でしかないものの、それでも世情くらいは知っているらしい。何時からマークしていたのか。
「いやぁ~、やっぱりオレ様って有名なんだな~?」
「真面目にやれ伊達野郎」
「おい、お前今、一族郎党まで馬鹿にしたよなぁ?」
「そんな事はあるますん」
「打ち首だわマジで~」
『おいコラ、何二人だけで盛り上がってやがる? この私が特別に話し掛けてやってんだぞ?』
「いや、お前こそ何様なんだよ?」
『神様だぁ!』
「自分の上司を差し置いて!?」
『無惨様はズッ友であり音楽仲間だ。そこらの雑魚鬼と一緒にするんじゃない。だから何を言っても良いのさ!』
「お前も小十郎の類なのかよ! リスペクトは!?」
『強い奴は凄い。凄くぶっ殺したい。それだけだ。そういう意味では、お前らは合格点だぞ。少なくとも、黒死牟のクソガキ程度の実力はありそうだからな』
「う~ん、戦闘狂が過ぎる……」
まぁ、実際には無惨は知識しか持っておらず、鳴女は戦闘狂故に強者への興味があるだけなのだが……。
『オグヴァアアアアアアアッ!』
と、一瞬呆けていた滝夜叉姫が、雄叫びと共に襲い掛かって来た。
『う~ん、もう少し話してみたい所だが、どうやらそうも行かないらしいな』
だが、鳴女は逃げも隠れもしない。その必要が無いからだ。
『まぁ、見ていなって』
「
『どういうつもりも何も無いさ。……
そして、鳴女の琵琶が戦場に鳴り響く。
『驕れる者久しからず~、ただ春の夜の夢の如し~♪ 猛き人も遂には滅びぬ、一重に風の前の塵に同じ~♪』
『オグヴァアアアヴォッ!』
滝夜叉姫の巨掌を躱し、平家物語の続きを語る。嫌みもここまで来ると笑いが込み上げてくる。
「……今の内に撤退しましょう」
「そうしたいのは山々だが、とりあえず今は回避に専念した方が良さそうだぜ?」
下手に今背を向けたら、流れ弾であっという間に死んでしまう。ここは様子見をしつつ、隙を見て撤退する方が良さそうである。
『黙って聞き入れろよ、自分が誰かも分かっていない“神擬き”が。
『バヴォオオオオオッ!』
すると、煽りに煽られた滝夜叉姫が、今度は尻尾や口から寄生虫の奔流を放ってきた。圧力も然る事ながら、触れただけでアウトな芽殖孤虫が無数に含まれるこの攻撃は、普通の生物には致命的だ。
――――――ゥゥヴォオオオオン! ヴァォオオオオオオオン!
しかし、それは限りある命を持つ者にとっての話。他者の命を喰らい、無尽蔵に成長して暴走する、【
『……ヴヴォァアアアアアアアアッ!』
『オギァヴヴヴッ!?』
さらに、蒼い稲妻と共に力を解放した鳴女が、逆に滝夜叉姫へ襲い掛かる。体格差など知った事じゃないと言わんばかりに滝夜叉姫の腕を鷲掴み、力尽くで持ち上げ、ゴミの如く投げ捨てた。巨体が空中から叩きつけられた事で岩盤が捲れ、舞い上がった粉塵が暗雲となって立ち込める。
『ギャヴォオオオオッ!』
だが、鳴女は追撃を止めない。咆哮しつつ腕を振り上げ、爪を叩き付け、雷撃の津波と嵐を巻き起こす。膨大なエネルギーにより周囲の原子がイオン化し、分離した電子を鳴女が吸収する事で更なる暴走を招くのである。攻撃すれば攻撃する程激昂し、もっとずっと破壊を求める。無惨がドン引きするのも納得の怪物っぷりだった。
『オギャヴォオオオッ!』
『グルヴォルルル……!』
ただ、滝夜叉姫もやられっ放しではなく、宙を舞い躍り必殺の連撃を繰り出す鳴女の、一瞬の隙を突いて払い除け、口内に凄まじい力を込め始める。寄生が目的ではない、芽殖狐虫自体を燃料とした地獄の業火を召喚しようとしているのだ。
『コォォォォォ……!』
対する鳴女も髪手を爛々と蠢かせながら、まだ被害が及んでいない地域の命すら吸い取り、破滅の光をその身に宿す。
『オギャアアアアアッ!』
先に撃ったのは滝夜叉姫だった。小島程の直径を誇る青白い焔が鳴女を襲う。身長二メートル程度の人型生物に対する火力ではない。
――――――ドギャヴォォォォオオオンッ!
しかし、それは鳴女も同じ事。インプロージョン方式の原子爆弾の如く、一気にエネルギーを放出。火柱を真っ向から穿ち、引き裂きながら滝夜叉姫を直撃、不忘山諸共吹き飛ばした。巨大なキノコ雲が聳え立ち、黒い雨を降らせる。後には何も残らず、焼け野原だけが広がっていた。
『ギャヴォオオオオァアアアアアアアッ!』
そんな
「まったく、冗談じゃねぇぜ」
「あんな化け物、本当に斃せるんですか?」
「殺らなきゃならんのよ。何れはな」
まるで世界の終わりを告げるかのような有様を遠目に、政宗と小十郎が毒づく。どうやら一足早く爆心地から逃れられたようだ。このまま逃げ切れるかどうかは、鳴女の気分次第なのだけれど。
『……何処へ行こうと言うのだね?』
「「………………!」」
むろん、答えは否である。無限城の射程が文字通り無限大なのだから、一度捕捉されたが最後なのだ。逃げる政宗たちを立ち塞ぐが如く襖が開き、鳴女が追撃に現れた。
『言っただろう? 勝った方が次の敵になるってな』
「こいつ……!」「まさに悪鬼羅刹か……」
見た目は荒ぶる姿のまま冷徹に死を宣告する鳴女に、政宗と小十郎は冷や汗を掻いた。殺人鬼の癖に、冷静に狂っている。無惨すらドン引きする、鳴女の異常性に政宗たちも気圧されていた。
と、その時。
―――――――ィィィイイインッ!
「「ドワォッ!?」」
『ゴヴァヴヴッ!』
瞬く星の一つが赫き流星となって墜ち、もう一つのクレーターを築き上げた。
『ソリテール様の懸念が見事的中という訳ですね! 颯爽登場、ユン・アルシュベルトです!』
そして、犯人自らが名乗りを上げる。
『キィイイイイイァァアアンッ!』
『ヴォァアアアアアアアアアッ!』
魔王VS鬼神、再激突。
◆放射線
高エネルギーの電磁波、もしくは高い運動エネルギーを持つ粒子物質の総称。一般的には前者の事を差す。それ自体が凄まじいエネルギーを有している為、様々な物質を透過してしまい、時には崩壊を齎す危険な物で、それが生物に作用して細胞を破壊してしまうのが、所謂「被曝」である。
しかし、強過ぎたり種類によっては危険というだけで、レントゲンに使われるX線も放射線の一種である事を考えると、恩恵も割と多い。ようは物は使いようという事だ。
むろん、核爆発を伴うような放射線は普通に危険物なのだが。