ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第百話 我ら多勢であるが故に

 

 量VS量。

 

 本来、質でもって抗うべき兵隊蟻の大軍勢。それにプレイヤー一人で、量を持って対抗する。

 

 戦端を切ったのは、こちらの自律ドローン部隊。

 

 彼らはフォトンビーム砲のマテリアルを削り出して作った、小型ビーム発振装置を備えている。組み込まれたプログラムに従い、一斉に押し寄せる兵隊蟻へと射撃を行う。

 

 一発一発は貧弱なフォトンビーム。だがそれが、今や10機ほどに増えたドローン達全員で発射すればどうなるか。

 

「おぉ……」

 

 洞窟が一瞬明るく見えるほどの光と共に、押し寄せる兵隊蟻の前列が撃ち倒される。さらにそこへ、2号機からバルカンでの援護射撃が飛び、生き残った兵隊蟻にトドメを刺していく。

 

 小口径だが思った以上の威力。今だ新しいビームの計算式は不明な点が多いが、戦力として数えられるぐらいの制圧力はあるようだ。

 

 しかし、敵もやられてばかりではない。

 

 突撃を試みた前列はビームとバルカンになぎ倒されるが、そうでない後列は腹部を持ち上げ、蟻酸による間接射撃を試みている。バシャバシャとコールタールのような酸が降り注ぎ、何機かの自律ドローンがそれを浴びてダメージを受けた。

 

『ピキィイ……』

 

『ピキキッ!』

 

 強酸によって足が溶け崩れ、その場に倒れ込む自律ドローン。光を失って沈黙するその機体の傍らを、しかし新しく生産したドローンが闊歩して前に出る。

 

 戦闘中も自律ドローンの生産は進み、戦力は補充される。すでに最初の10機は倒されてしまっているが、それを埋めるべく新たに20機のドローンが進軍している。放たれるビームが、押し寄せる兵隊蟻の隊列を押し返した。

 

 素晴らしい光景だ。

 

 やはり銃口が多ければ多いほど強いのである。

 

 絶景に魅入っていると、しかし現実に呼び覚ますようなテレサの呼びかけが聞こえてきた。

 

『ショウさん、2号機のサブエネルギーが半分を切りました、補充が必要です』

 

「え、もう?」

 

『はい。修復装置、もともとそんなにエネルギー効率よくないですから』

 

 それもそうか。効率がよかったらどいつもこいつも背中に修復用のアームを一本背負って延々回復する、終わりの見えない戦闘ばかりになっちまうもんね。

 

 一応自律ドローンは無茶苦茶構造が単純でその分消費エネルギーが少ないはずだが、それでもやはり無理があるか。

 

「わかった、ドッキングする」

 

 素早く2号機の元に戻り、機体の側面から太いケーブルを引っ張り出す。それを私の乗る1号機の胴体に接続。

 

「接続完了、サブエネルギーを吸い上げてくれ」

 

『はい、お願いします』

 

 エネルギーケーブルを通して、ぐんぐんこちらの機体からサブエネルギーが吸い出されていく。

 

 計画通りだ。

 

 2号機は生産能力に偏重しているせいで、身動きは取れないし、サブエネルギーの回復能力も持たない。可能な限りサブエネルギータンクを増設して水増しはしているが、それにだって限界がある。

 

 だからこその1号機。ビーム砲を搭載したこちらが護衛や敵の殲滅を行いつつ、熱エネルギー再転換でサブエネルギーを回復させながら適宜2号機に補充を行う。

 

 理論上は互いに補完し合う無限サイクル。しかし、なかなかそう上手くはいかないものだ。

 

『! 不味いです、隊列が突破されそうです、援護を!』

 

「わかった」

 

 まだ補充が途中だが、ケーブルを切り離して前線に向かう。見れば、兵隊蟻の一部がドローンの形成した隊列に食い込み、その大顎で次々と撃破している所だった。

 

 どうやら私も後方に下がった事で兵隊蟻のターゲットが集中し、その圧力で迎撃しきれなくなったらしい。即座にビーム砲を撃ち込んで兵隊蟻達を薙ぎ払うが、今の数秒で出た味方部隊の被害は大きなものだ。

 

 蟻酸にくらべればやはり、大顎による直接攻撃の方が効率がいい。短時間接近戦を許しただけで、生産のサイクルが追いつかないほどの被害が出てしまっているようだ。

 

「しかたないか……!」

 

 あまりサブエネルギーは使いたくないがそうも言っていられない。一時的に戦線を立て直すのを確認すると私は機体を跳躍させ、自ら兵隊蟻達の群れの中へ飛び込んでいった。犇めく蟻達の間に一度着地し、再び跳躍。蟻達の数が少ないよそのエリアへと移動する。

 

 そうすれば、一部のメタルインセクトはこちらに誘引されて前線を離れる。それによって圧力が減じ、ドローン達が前線を押し上げる。

 

 代わりにコッチは敵に囲まれてピンチだが……。

 

「ええい、こっちくんな!」

 

 大顎で齧りついてきた兵隊蟻の頭を砲身で殴打して怯ませると、スラスターを短く噴射して距離を取る。ええい、サブエネルギーは出来るだけ温存して2号機に補充したいのに、これでは減っていく一方だ。変換効率が減少したせいで、大型ビーム砲を二つ冷却中なのに全然サブエネルギーが増えない、増加分を差し引いても赤字の計算だ。

 

 ゲーム修正ではよくある事だけど、強すぎたからって弱体化させすぎだろ! いやまあ、他のサブエネルギー回復手段は皆これぐらいであって、ビーム砲の実質専用スキルと化してた熱変換の倍率が高すぎただけってのは分かってるけどもぉ。

 

 そうこうする内に、最初にぶっぱなしたビーム砲の冷却が完了。

 

 躊躇わず最大出力でぶっ放したそれを薙ぎ払い、6体近い蟻をけしとばす。

 

「これだけ引きつけておけばいいだろ!」

 

 これ以上は私がやられてしまう。サブエネルギーの温存を考えず、スラスター噴射で一気に離脱。自律ドローン達が形成した前線の内側に舞い戻る。

 

 私が敵の一部を引きつけた甲斐はあったようで、前線は既に30体を越えるドローンによって盤石の様相を示していた。充分な数に増えた自律ドローン達は二機一組となり、互いのビーム砲の冷却時間を補うよに立ち回っている。そこにひっきりなしに飛ぶ2号機からのバルカンの援護射撃が重なり、兵隊蟻達は前線を突破できずにたじろいでいるようだ。

 

 ただ、被害がない訳ではない。むしろその逆。

 

 自律ドローン達の間には、夥しい数のアイコン化されたアイテムが転がっている。全て、機体に使われていたサーボモーターや制御コアだ。ゲームシステム的には機体の一部と見なされない自律ドローン達は、破壊されるとああやって残骸が残る。扱い的にはどうも、ミサイルにアイテムを積載している、みたいな感じなのだろうか? 一応、ドローンが敵を撃破する度にアイテムと経験値が入ってくるから、プレイヤーの行動の結果、という判定ではあるようだ。

 

 まあ、ドローンが機体の一部と認識されたら、破壊された端から修復装置で手元に再生できるから、そっちの方があくどい使い方が出来るんだろうけど……今回はこの仕様を最大限活用させてもらっている。

 

 それらのアイテムに近づいて回収するのも私の仕事だ。ドローン達の間を飛び回り、それらを回収すると再び2号機の元へ。

 

 大分目減りしてしまったけど、サブエネルギーを補充する作業に戻る。

 

「再接続完了。あ、それと回収した制御コアとサーボモーターも渡しておくよ」

 

『ありがとうございます! 生産する端から破壊されちゃうせいで、99個持ち込んでもあっという間に底をつきますね』

 

「まあ相手は文字通りの無尽蔵だからね……」

 

 とはいえ、経験値が入っている以上、無限稼ぎを防止するためにシステム側がそろそろ制限をかけてもいいころだが……。

 

 戦場に変化が現れたのは、それからしばらくの事だ。

 

「……やっぱりな」

 

 押されつつも拮抗していた兵隊蟻達の圧力が、目に見えて衰えていく。増援として現れる数が明らかに減り、ビームの弾幕がメタルインセクトを押し返す。ついには自律ドローン達は持ち場を離れて前進を開始し、それに追いやられるようにして兵隊蟻は物陰へと逃げ帰っていく。

 

 やがて、あれだけ無数の兵隊蟻で溢れかえっていた地底空間は、完全にこちらの制圧下へと置かれる事になった。

 

「我々の勝利だ! E・D・M! E・D・M!」

 

『え、ええと……? い、いーでーえむ! いーでーえむっ!』

 

「はは、無理して合わせなくていいよ。ありがと」

 

 意味が分からなかったのか舌足らずな英語の発音に苦笑する。思ったよりノリがいいよねテレサって。

 

 それはともかく、色々改善すべき点はあるにしろ、これは大きな勝利だ。

 

 多数の自律ドローンを現地で生産し、戦力として運用する。これが出来れば、ソロプレイは大きく変わるぞ! なんせ、ぼっちでもパーティープレイみたいな事が出来るって事なんだから!

 

 ふはははは! 今はお粗末な筐体しか用意してやれないけど、夢は広がるねっ!

 

「さて、気分よく勝利した所で、一旦ホームに戻ろうか。機体を修理と改良しないと」

 

『そうですね。データも取れたし製造効率も改良できそうです』

 

「それは良き良き。あ、でもドローン達どうしようか。彼らはホームのエレベーターに入れないよね」

 

 彼らは外付けのミサイルランチャーみたいなもんだからな。切り離したそれを持って帰れるかどうかっていうと……。

 

 ピキピキいいながらこちらを見つめている自律ドローン達に頭を悩ませていると、テレサから返答があった。

 

『そんなもの決まっていますよ、こうすればいいんですよ。ポチッとな』

 

『『『ピキキキィイ!?』』』

 

 チュドドドドドン。

 

 何の事はないようなテレサの一言と共に、自律ドローン達は一斉に爆死した。後には、彼らを構成していた制御プログラムとサーボモーターだけが転がっている。

 

 じ……自爆装置!? なんて浪漫を……ってそうじゃなくって!

 

「て……テレサさん!? 何してんの!?」

 

『何って、こうすればアイテムとして回収できるじゃないですか。ほら、拾い集めてホームに戻りましょう』

 

 頑張った自律ドローン達への労いも何もなく、あっさりと言ってのけるテレサに慄きながら、私も彼女に並んでアイテムを拾い集める。

 

 い、言いたい事はわからなくもないけど!

 

 わ、わからん。人工知能の考える事はわからん……! いや彼女に自分がそうであるっていう認識はないんだけど!

 

 テレサ……恐ろしい子……っ!

 

 

 

 

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