ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
仇討特攻を無下に撃墜したみたいな後味の悪さと、ピンチを乗り越えた感慨。
その両方を味わいながらも、とりあえず私は気を取り直して状況確認に入った。
「“ハティ”はなんともないけど、“スコル”の状態は?」
『機体へのダメージはあまりないです、多少ひっかかれたぐらいなので。ただ、随伴機が大分やられました』
「うん。メタメタにされてるね……」
生き残った自律ドローンは3機。修理可能な状態の機体は2つで、残りは全部撃破されてアイテムになって転がっている。それを回収し、再び合体して“マーナガルム”へ。
システムを接続した事で機体の状態がよくわかる。
自己申告通り、“スコル”にはほとんどダメージが無いようだ、頑丈に作った外装部の装甲が仕事をしてくれたらしい。
とりあえず回収した制御コアとアクティブマインのアイテムをあちらに手渡し、生産ラインを再稼働させる。バチバチバチ、と自律ドローンの建造が始まるが、どうにもサブエネルギーが足りそうにない。
「うーん。数を減らして質を上げるのは失敗だったか……?」
『いえ、あの敵相手だとバージョン1の自律ドローンでしたら20機いても30機いても何の足止めにもなりませんでした。多少の耐久力があったからこそ、排除するべき対象と認識されて時間を稼げたので……。敵が少数精鋭タイプのエリートエネミーであったら、小口径ビーム砲は足止めにもなりませんね、残念です』
「今回の相手、かなり耐久力があったからなあ」
マイクロとはいえミサイルを数発被弾してもHPが半分以上残ってたしな。それにこれまで戦ってきた感じ、強さに比例して判断能力も上がってる感じがするし。自律ドローンを無視して本体を叩く、って判断をされたらどれだけ数を用意しても意味はないか。
「となると、数を減らしてでももっと質を上げるしかないか。近接戦闘能力というか、肉迫された時にただのスコアバルーンにならないようにする工夫がいるね」
『そういう事になりますね。今後の課題です……』
「んまあ、いくつか案が無い訳ではないし。頑張ってみよう」
そんでもって問題は、この状態で先に進むかどうかであるが……。
「一旦引き返そう。現状だと自律ドローンも“スコル”もこのエリアに適していない」
『残念ですが、そうしましょう』
という訳で、残念無念、今日はここまで。
私達は来た道を引き返す事になった。
『あっ、狭くて旋回できない……』
「私が見ているから、バックでいこう。バックで」
『すいませんー』
もたもた、もたもた。
帰り道で別の狼型に襲われなかったのは正直ラッキーだった。
そんな訳で、戻ってきました地底湖のホーム。
道中に時間をかけすぎて、新エリアの探索はほとんど進んでいないのに結構な時間だ。
やはり、機動力も根本的に足りない。
これをカバーするには……。
「自律ドローンの改良も大事だけど、本体の性能もどうにかしよう。特に“スコル”の機動力の低さがやはりネックだ」
『それはそうですけど……生産ラインを抱えている以上、どうしようもないのでは?』
「うむ。そこで発想を変えてみようと思う」
テレサとカスタマイズ画面を覗き込みつつ、私はカチャカチャと合体モードの図面を書き換えた。
「さっきの実戦でそうだったけど、ある程度強度のある自律ドローンなら、再生産とまではいかなくとも修理でどうにか出来る。となると、そうそう簡単には破壊されない強度のドローン機を、複数機体に抱える方向にシフトして、それを修理・強化するための最低限の設備さえあればいいんじゃないかと思うんだ」
確かに最初は、地平線を埋め尽くすほどの大量のドローンで制圧! スウォーム攻撃で圧勝だ! みたいに思ってたけど、この戦術、このゲームだとあんまし有効ではないのがわかった。
というのも、あくまでゲームであるが故にこの世界ではコスト戦の概念がないからだ。
説明すると次のような話になる。
一発数千万円のドローンで、一台数十億円もする戦車を破壊する。あるいは、育成に何十年という時間が必要な兵士を、一週間かそこらで製造できるドローンで撃破する。そういった、圧倒的な資金・時間面でのコスト比によってやられた側の戦力維持を困難にする、というのがドローン攻撃の神髄である訳だ。
が、メタルインセクトは文字通り無から無制限に湧いてくる。それに対し、自律ドローンは安価とはいえどコストがかかり、さらにホームから大量に持ち出せない以上現地で時間とコストを支払って生産する訳で、自律ドローン群を維持すれば維持するほど損耗していくのはむしろコッチなのである。
であるならば、コスト合戦をするのではなく、単純に数的有利を取る、という事に集中するべきであり、それならば簡単にアドバンテージを奪われないために一機当たりの性能を上げるほかない。
『しかし、その路線はイーグルドローンで失敗したのでは? メタルインセクトを相手にするには火力が足りないと』
「ああ。だけどその路線を打破する手段はメタルインセクトが教えてくれた」
そう。自律ドローンには大した火器は搭載できない。だが、白兵戦武器ならどうだ?
原始的な爪、牙。そういったものでも、質量と速度を乗せれば脅威となる。ましてや損耗を恐れない自律ドローン、状況を整えた上で我が身を顧みないバーサーカーを突撃させればいいのではないか? 損耗しても完全撃破されなければ修理すればいい訳で。
イーグルドローンの場合は飛行型、という事で本体から距離が開きすぎていちいち広いにいく必要があったが、陸戦型なら本体からそう離れた運用をする訳ではないだろうし。
「んでもって、“スコル”の装甲を大幅に削って、生産ラインもさらに簡略化。んでもって、空いたスペースで“ハティ”の腕兼脚部を流用したパーツを側面に接続して……」
『これは……合体形態が、四足歩行する獣のような形に……?』
そういう事である。内部に搭載した自律ドローンさえ放出してしまえば大幅に軽くなったので、この状態なら四本脚で警戒に動き回る事が可能だ。狼というにはちょっとブサイクだけどね。
「んでもって、自律ドローンはこういう感じで……収納スペースを節約する為にパーツを分解した状態で搭載。んでもってそれを現地で組み立てる、と。多分できるよねこれ?」
『はい! 問題ありません! なるほど……』
よし。それならいけそう。武装はというと……近接武器は搭載するとして、ビーム兵器も搭載したいな。プラズマピストルは……ううん、これ軽量なのと負担が軽い代わりに連射性は大したことないんだよね。なんか手段はないかな。
『それでしたら、レーザー兵器をこの際導入してみてはいかげですか?』
「レーザーか。そういう武器もあったね、そういえば」
フィクションだとレーザーとビームはしばしば混同されがちだが、このゲームでははっきり区別されている。本ゲームにおけるレーザーは質量を持たないエネルギーの波を投射する兵器であり、なんていうか……その、地味なのである。
そもそも光の波長は人間の目には見えない。モニターには処理された映像が映されるが、それでも糸みたいな光が伸びるだけで、その、ね。
さらに質量を持たないという事は簡単に対策もできるというか、ちょっと装甲に鏡面処置を施しただけで威力が半減する、重装甲は貫けない、実質有効射程も短い、と対甲兵器としては色々と残念な代物だ。
だが、逆に言えば威力に期待しない、射程も重視しない、というなら装備の負担は小さくて済む。本体を狙うミサイルなどの非装甲標的を迎撃するならそれでも十分だしね。
あとそうだ、ビーム偏向リングも搭載しちゃうか? 補助装備だから殆ど負担はないし。今回遭遇した狼型メタルインセクトみたいな高機動の相手に対し、発射したビームを子機を利用して曲げるとか、トリッキーでいいよね。
「いいね、いいね。考えが纏まって来た」
武装は安直に、頭部にあたる部分にナイフでも搭載するか。レーザーで相手のセンサーとか狙って牽制しつつ、勢いをつけて突撃して突き刺さる、みたいな。
それを、手足と本体を分割した状態で、六機分搭載する。とうとう完全に“スコル”の側はハリボテになってしまって単体では成立しないような有様だが、合体形態を基準とすれば問題はない。
「ここまでくるとベルトコンベアとかも要らないな。機体下部から出し入れする形にしようか。四足歩行する関係で、後ろから乗り降りするのも高さがあって不便だし」
『そうですねえ。簡易クレーンみたいなもので掴んで、上げ下ろし……ですかね?』
「いいね、そうしよう」
あとついでに見た目も整えよう。カラーリングを灰色に変更して、あと鳥の化け物みたいだった“ハティ”の意匠も獣っぽく変える。ビーム砲を覆うカバーを狼の頭みたいなデザインにして、翼のように広がる装甲版もミサイルを内蔵した肩当てみたいな形状に。後ろに合体する“スコル”とサイズ差がありすぎる部分を、装甲カウルである程度ごまかして、と。
あとは細かい所を調整して……完成だ!
「よぉし、できたぞ」
『わあい、パチパチパチ!』
「あとはこれを建造して、と。ふふふ、明日が楽しみだ!」
という訳で、おやすみ!