ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
これは、どこぞの誰かが何かやらかした未来。
人類は人工知性体に支配され、その支配の元で管理されて生活していた。
人間一人一人の行動は全て定められ、24時間AIに監視され食事や睡眠の時間さえコントロールされる生活。
人によっては、ディストピア、と呼ばれるものかもしれない。
そんな支配を終わらせるべく、3人の人間達が立ち上がった。
かつて、ビルドロボオンライン、と呼ばれた仮想現実の世界。
今となっては世界を支配する管理AIの居城となったその電脳空間を進撃する三機のロボットが居る。
このゲームでかつて、自由にプレイヤー達が戦争ごっこに興じていた空想の兵器達。しかしそれは今や、AIに対抗する唯一にして最大の武器であった。
「そろそろ、相手の本拠地が近いぞ、気をつけろ」
「ああ。武者震いがするぜ」
「……不思議だな。どうして、管理AIはこのゲームのシステムを停止させてしまわないのだろう」
スラスターを噴射して飛行する、三機のロボット。
彼らが向かう先は、雪山の頂上にある旧高射砲設備だ。かつては撃退不可能と言われたレイドボスに守られていたその戦略拠点は、ほかならぬ管理AIによって攻略され、今は全世界の支配拠点として利用されている。
向かう道の途中で、巨大なムカデ型ロボットの残骸が転がっているのを尻目に、三人は山頂を目指す。
「そりゃあ、この世界のシステム根幹だからだろう。元はこのゲームの為に用意された支援用AIだったからな。このシステムそのものを消し去るのは自分自身を消すのと同じだ」
「おかげで、こうして反抗の手段が残されている訳だな」
「……来るぞ!」
本拠地に近づくと、突如としてモリモリ、とその基地の中から真っ黒な機体が現れる。そのシルエットを前に、三人の間に緊張が走った。
「出やがったな、管理AIの機体……!」
「かつて企業ギルド連盟を一機で退けた、伝説のレイドボス、その成れの果てか……!」
「今日こそお前を倒して、世界を返して貰う!! 管理AI……テレサ!」
ボスを前に、気勢をさけぶ三人のトレイター。それに対し、管理AIは……。
『全く。一体何が不満なんですか、これで今月に入って10件目ですよ?』
響くのは可愛らしい少女の声。
私困ってます、とでも言いたげに腰に手を当てて、管理AIの機体は首を傾げた。
『私だって別に人間の皆さんを苦しめたい訳ではないのです。規則正しい生活、健康を考慮した食事。朝、適切な時間に起きて、夜、夜更かしせずに寝る。きちんと働いて、それ相応の報酬を得る。同じ趣味、バイオリズムの合う者同士を繋ぎ合わせて友や恋人を作り、心のケアをして、自覚していない本人の適正にあった人生を提供する。ちゃんと甘味や娯楽も供給しています。そして犯罪はきちんと処罰し、自己救済の必要ない法に基づいた処罰を与える。これの一体何が不満なんですか? そりゃあ、24時間私に監視されているのはちょっとアレかもしれませんけど、蟻に見られて恥ずかしい事などないでしょう?』
聞いた限りでは問題の無いAIの管理方針。それに対する、トレイター達の反論はというと。
「そのせいで夜のカップラーメンが食べられない!!」
「次郎系ラーメンの規制反対!!」
「喫煙厳罰化反対!!」
『ああ、そういう……。申しわけありませんが、特殊な嗜好にだけ配慮する事は難しいです。どうしてもというなら、私を説得できるよう、文面にまとめて提出してくださいね?』
「「「なんだとー!?」」」
そして始まる一大決戦。
人間達の欲望が、未来を切り開くと信じて!
戦え、トレイター!
せめて30秒は抗戦できるようになってから文句を言おう!
『ふぅ、やれやれ。その程度の機体で私とマスターの愛の結晶に歯向かおうなどとちゃんちゃら可笑しいです。……あ、マスター、なんですか? 駄目ですよぉ、貴方は特別なんですから。マスターに関してはあ、脈拍数呼吸回数血圧血糖値ぜーんぶ管理して、一分一秒でも長生きしてもらわないと、ダ・メ・ですよ? うふふふふふふふふふふふふふふ……』
くりかえすが、これはどこかで誰かがやらかした場合の、イフの話である。
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