ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第百七話 合理的連携

 

 新型の自律ドローンを用いた戦いに勝利した私達。

 

 しかし、無傷、という訳には残念ながらいかなかった。最初の奇襲で破壊されてしまった、アップデートが間に合わなかった機体達。

 

 その残骸に近づき、私は“マーナガルム2”を腹ばいにしゃがませた。

 

「なんとかなるか?」

 

『恐らくは……激突の衝撃で、強度の低い接合部から分解したようです。逆に言えば、簡単に壊れた事でダメージそのものは軽減されたのかも』

 

「それなら助かる。早速修理しよう」

 

 クレーンを腹部から降ろして残骸を回収する。ビームの使用や戦闘中の高速移動でサブエネルギーはわずかながら回復している。これだけあれば3機を修理する事は可能だろう。

 

 さて、修理する間に今の戦闘を評価する事にしよう。

 

 正直言うと……。

 

「まあまあだな」

 

 まずは本体評価。巨体の割に機動力があり、その分打撃力もある。白兵戦だけでなくミサイルやビームを用いた射撃戦も出来るので、それを布石に接近する事が出来た。明らかに機動戦特化型である狼型メタルインセクトを同じ土俵で倒せたというのは大きい。

 

 そしてドローン達。少なくとも彼らは、奇襲で数を減らした状態でも狼型の片方を倒すまで状況を膠着状態に持ち込む事が出来た。二機目もトドメを刺したのは彼らだ。

 

 とりあえずは本体、ドローン共に及第点と言ってもいいだろう。

 

 だが問題は、それが通常の機体に対してどれだけアドバンテージを取れるか、という話だ。

 

「ううむ……」

 

 例えば先ほどの狼型。確かに反応速度はずば抜けていたが、かといってマシンガンの弾幕をいつまでも回避し続けられるほどではない。初弾は回避されるかもしれないが、あらためて狙い直せば何とかならなくもない、その位の機動力だ。どれだけスラスターを吹かしても銃弾より早く移動できる訳がないし、必然的に格闘戦よりの機体は射撃戦よりの機体に対して不利になる。

 

 包囲殲滅に対する対応も、一般的な機体であれば一時的にスラスターを思い切り吹かして挟み撃ちから離脱すればいい。そう難しい事ではない。

 

 それらの事実を客観的に見た場合、いささか“マーナガルム2”に降す評価は厳しいものにならざるを得ない。

 

「失敗ではないけど、うーん。求めるものには届いてない感じかなあ。方向性を変えるしかないのかな」

 

『あの、ショウさん』

 

「ん?」

 

 結果にもよもよしているところで、テレサが語り掛けてくる。画面の向こうの彼女は、どうやら私と違う考えに至ったらしい。

 

『その、もっとドローンと連携をとって戦ってはいかがでしょうか?』

 

「連携?」

 

『はい。そりゃあまあ性能的に信用ならないかもですけど……ショウさんは敢えて、ドローン単体をぶつけているように見えます。もっとドローンを手足として使ってみてはいかがでしょうか』

 

 ドローンを使う、ねえ。

 

「ふむ……」

 

 言われてふと、どうやら彼女と私とでは自律兵器への扱いが違うらしいという事に思い当たる。私からすると、自分で考えてつっこんでいって戻ってくるミサイルのような認識だったのだが、テレサからすればドローンは一緒に戦う仲間、という事らしい。

 

 成程、確かに。消耗品として使い倒すのが悪い事だとは思わないが、一緒に連携して戦うのも王道といえば王道だな。

 

 まあその仲間を容赦なく自爆させたりするんだけど、彼女。

 

「そうだな。次はもうちょっとドローンと歩調を合わせて戦ってみよう」

 

『はい!』

 

 返事をしたのはいいものの、はてさて。ドローンとの連携って具体的にはどうすればいいんだ?

 

『まあ、とりあえずは私の方でドローン達をコントロールするので、ショウさんは気にせずに好きなように戦ってみてください』

 

「んむ。そんなんでいいの?」

 

『はい! ショウさんの戦闘パターンはある程度解析できていますので!』

 

 おぉう、AIらしいセリフ。しかしそれって遠回しに貴方の戦い方は単純ですね! って言われてるようなもんなのでは……いやでも別に私もゲームでランカーとかだった訳じゃないしなあ。どっちかというと動きをパターン化していくターン制バトルみたいなのが得意で、アドリブが要求されるタイプのアクションゲームは苦手だったしな……。

 

 どことなくもにょっとした気持ちを抱えながらもとりあえず納得し、私は敵の姿を求めて先に進んだ。

 

 以前は2号機が微妙にひっかかりがちだった森林地帯だが、今の所は特に問題を感じない。合体したままという事で機体はさらに大型化しているが、機体の前後のドッキング部分が稼働するし何よりキャタピラじゃないので高低差を問題にしないのが大きいか。

 

 やはり四足歩行というのは安定した機構なのである。まあそれでもある程度操縦には気を遣うが、おかげで速度に劣る子機が置いていかれる事にはなっていないので痛しかゆしか。

 

「ふんむ……」

 

 しゃかしゃかと必死に早歩きしてこちらと並ぶ、あるいは前に出ようとしている子機達。なんていうか、愛嬌も何もない機能性100%な見た目なのにじっと見ていると愛着を感じてくる。せかせか動く様が可愛らしいというか。

 

 なんだろねこの感情。人間っていうか日本人ってせわしなく動くものに愛着を覚える傾向ってない? 工場の生産ラインとかさ。

 

 魂の奥底まで社畜精神が沁み込んでいるのだろうか……そんな事をぼんやり考えていた私の意識を、テレサの緊張気味な警告がゲームに引き戻した。

 

『ショウさん! 新手です、狼型が二匹!』

 

「!」

 

 はっとして視線を前に戻すと、林の向こうに見え隠れする灰色のシルエット。

 

 またしても二匹1セット。この連中は基本的にペアで行動するようだ。まあ、狼は群れるものだしな……。

 

「よし。じゃあ、テレサ、よろしく頼む」

 

『任せてください!!』

 

 威勢のいい声と共にドローン達が前に出る。敵機の接近を防止するつもりか、唸るように駆動音を上げて角を振りかざしてレーザーをチカチカさせるドローン達。大して狼達も応えるように雄たけびを上げて、さっと二手に散開してそれぞれ左右へ回り込もうとする。

 

「そうはさせるか」

 

 ビーム砲の照準を合わせ、引き金を引く。0,5秒ほどのチャージ時間、その短い時間に反応した狼型が射線から離脱する。

 

 まあそれぐらいは想定済みだ。とにかく戦闘のイニシアチブを握る為にも先手を取る、相手の好きなように動かれるのが一番危険。

 

 そう思っての一撃だったのだが、しかしそこでドローンの一機が思わぬ行動にでた。

 

 ぴょーん、と射線上に飛び込んでくる一機のドローン。その背中には、おまけで搭載していた偏向リングが展開されている。

 

「え、まさか……」

 

 そのまさかである。

 

 放たれたビームはドローンを経由して角度を変え、紙一重で回避したつもりだった狼型への直撃コースへと変化した。

 

『ギャウ……ギャッ!?』

 

 最初の狙いを跳躍で回避した狼型、流石に続けて即座に回避する事はできなかったようで、そのどてっぱらにビームが突き刺さる。一撃では死ななかったものの手痛いダメージを受けて脚が止まった所にドローン達が殺到してトドメを刺した。

 

「やっるぅ!」

 

 掛け値なしの称賛を送りながら、残る一機に突撃する。

 

 白兵戦をしかけようとするコチラに対し、敵は状況不利と見なしたのか一旦その場を離脱しようとする。が、その目前には回り込んだドローン達が立ちふさがる。

 

 逃げ道を塞がれて一瞬脚が止まる狼。

 

 そこに、こちらの前足が追いついた。

 

 甲高い金属の破砕音と共に、狼型が一撃を受けてたたらを踏む。そこに反対側の前足で一撃を加え、トドメにパイルバンカーを連打。相手のHPを消し飛ばす。

 

 砕け散る敵の姿を見下ろし、私はふんすと鼻を鳴らした。

 

「よし! いい感じだ。やるじゃないかテレサさん」

 

『えへへへ……ショウさんに気をつかわせずに戦えたなら幸いです!』

 

「ばっちりばっちり、やってほしい事を的確にやってくれた。グッジョブ!」

 

 最初は多少不安だったが、今の戦いはとてもいい流れだった。

 

 成程。ドローン達はこう使えばいいのか。

 

 あくまで決定打は本体、その決定打を通すための伏線として彼らを使う。

 

 これならジャンジャン進めそうだ。

 

「よし、ミサイルは節約しつつ、このままどんどん奥に向かおう!」

 

『了解しました!』

 

 

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