ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第百九話 今だ、パワーを私に!

 

 多方から押し寄せる狼の群れ。その数、実に八匹。

 

 これまでは二匹で組んでいたが流石に数が桁違いだ。こっちはドローン六機と本体で一機。

 

 数の上では大幅に不利だが……。

 

『ど、どうしますショウさん!? 分離すれば数の不利をカバーできますが……』

 

「冗談! このままいく!」

 

 “マーナガルム2”は合体状態での運用を前提に設計されている。そもそも敵の前でのたのたと分離なんかしていたら恰好のよい的だ。たかが一機の数の振り、こっちの技量で覆してやる。

 

「ドローンを前に出せ!」

 

『りょ、了解!』

 

 指示に従って前に出たドローン達が、チカチカとレーザーを光らせて牽制する。雑魚狼達はその迎撃を嫌って進路を変え、左右に回り込む動きから混雑したわちゃわちゃとした動きになった。

 

 こいつは……そうか、普段ツーマンセルが基本だから、この数での集団行動は慣れてないのか、もしかして。ボスに呼び寄せられてきただけで、連携なんか何もできてない。

 

 これならやれる。

 

「砲撃いくぞ、カバーしてくれ!」

 

 合図だけしてビーム砲の引き金を引く。

 

 砲口に満ちる破壊の光を見て取って、射線上に居た雑魚狼が跳躍して離脱する。相変わらずの反応速度、だが結局は所詮考えなしの反射的行動だ。

 

 どれだけ早く回避した所でその先が詰んでいたら意味はない。

 

 発射したビームは射線上に飛び込んできたドローンによって偏向され、角度を変えて回避先の雑魚狼を貫いた。さらにドローンが体を捻り、狼の群れを薙ぎ払うようにビームを一閃する。

 

 3体の雑魚狼が、ビームの照射によって大きくHPを削られた。

 

「勝機!」

 

 ここを逃す手はない。虎の子の残り少ないミサイルを、立て続けに3発撃ち放つ。狼達はそれらも回避しようとするが、ビームのダメージで弱った四肢は以前のような瞬発力を失っている。緩慢に回避する彼らを、誘導ミサイルは逃さず食らいつき爆発と共に粉砕する。

 

「よっし! このままいくぞ!」

 

 数的不利をひっくり返し、ドローン達を引き連れて突撃する。雑魚狼は何匹かがこちらの巨体の死角に回り込んで来ようとするが、それを角を振りかざしてドローン達が牽制。逆に、狙いを定めた一匹にこっちが真正面からぶちかましを仕掛けた。

 

 岩壁に叩きつけるようにして拘束し、パイルバンカーを連打。

 

「これで、4!」

 

 砕け散る相手を他所に、背後に忍び寄ってきていた敵を後ろ足で蹴り飛ばす。吹っ飛ばされる敵との間に2匹の敵が割り込んでくるが、それらの横腹にドローン達が突撃する。動きが泊った所で、一匹ずつクローで握りつぶしてトドメを刺す。

 

「5,6!」

 

『そして7ですね』

 

 テレサの声に確認してみれば、蹴り飛ばした一機は複数のドローンが寄ってたかって突きまわして仕留めた所だった。

 

 一連の攻防で、8匹いた敵はすでに2匹。それに対してこっちはまだドローンの一機も脱落していない。

 

 このままいけば余力をもって前座を突破してボスと……。

 

『! ショウさん、敵ボスが動きます!』

 

「なんだと? っ!」

 

 突然、対面していた雑魚狼達が上から降って来た何かに押しつぶされる。巻き上がる土煙にドローンともども一旦後退して様子を見る。

 

 拭きあがった灰色の煙、それが晴れるとそこには、仲間であるはずの雑魚狼を踏みつけるボス狼の姿があった。

 

 こいつは……。

 

「……大きい」

 

 思わず呻いたように、その体格は雑魚狼より二回り以上大きい。一般的な機体と比べても明らかに大柄だ。メガフレームを用いた合体機体である“マーナガルム2”より大きいと言えばそのサイズが分かるだろうか。

 

 まあ、これまで交戦してきたボスはどれもこれも大きかったが。ただ奴らはそれ相応に動きも鈍かったのに対してコイツは見た所、この巨体でかなりの機動力を誇っているようだ。油断は禁物である。

 

 緊張して見守る前でボス狼はフン、と鼻を鳴らすとぐっと前足に力を込めて雑魚狼を踏みつぶす。弾け飛ぶようにしてその頭部が吹き飛び、ガラガラと地面を転がった。

 

 テレサの息を呑むような声が通信越しに聞こえる。

 

『あ……』

 

「ふん。役に立たない部下は不要、といった所か。随分な暴君じゃないか」

 

 見ている前でもう一機にもトドメを刺すと、ボス狼は待たせたな、とでも言いたげにこちらにようやく視線を向けた。その背中でバチバチと音を立てる発電機関らしきものの光が一層強くなる。

 

 ……来る!

 

 とっさに機体をサイドステップ。

 

 だが跳躍の途中で機体を強い衝撃が襲い、体勢を崩しながら地面にドリフトしながら着地する。

 

「くっ」

 

『避けきれませんでした、左肩の装甲ごとミサイルランチャーが脱落!』

 

「くそ、まだ一発弾が残ってたのに、勿体ない!!」

 

 姿勢を立て直しながらすれ違っていったボス狼に向き直ると、向こうも神速の踏み込みからゆっくりとこっちに振り返る所だった。その口元には、じたばたもがく一機のドローンが咥え込まれている。

 

 ことさら見せつけるように、その大顎でドローンが噛み砕かれる。スパークを散らしてだらん、と脚を投げ出したドローンを、ぽいっと投げ捨ててボス狼は再び牙をむき、背中の放電機関を活性化させた。

 

『そんな……ナンバー4、完全に機能停止。修復不可能です……』

 

「ちっ」

 

 どうやら今のは脅しのつもりらしい。のらりくらりとやり過すようなら、お前の子分を一匹ずつ噛み砕いてやるぞ、という。

 

 自分は群れの配下を仲間とも思わない行動をしておいてよくやる。

 

 オンラインプレイだったらなかなか有効そうな思考ルーチンではある。パーティプレイだったら、仲間は人間が入ってる訳だしな。

 

「さて、どうしたもんかな……」

 

 実際の所、自律ドローン達はもともと使い潰しても居たくない手駒として用意したものだからご自由に、といった所だ。が、彼らは同時に武器でもあるので、こちらの手札を一枚一枚引きはがされるのは面白くない。

 

 であるならば……。

 

「……いいだろう、挑発に乗ってやる」

 

『ショウさん! 私に考えがあります、合図をしたらビームを撃ってください』

 

「? え、まあ。別にいいけど」

 

 テレサからの思わぬ指示に眉を顰めるが、対面するボス狼が動き出した事で一旦棚上げにしておく。

 

 こちらとあちら、互いに間合いを図るようにノソノソと円を描くように歩きながら、タイミングをうかがう。自律ドローン達はというと、これから始まる高機動戦に巻き込まれないようにするためか、散り散りに散開して壁際に退避していく。

 

 しばしの沈黙が流れる。

 

 そして。

 

『ガルッ』

 

「!」

 

 何かの波長が合ったような気がした。全く同時に駆け出す両者。スロットル全開で、真正面からボス狼に突撃する。あちらの爪とこちらのクローが、空中でぶつかり合って火花を散らした。

 

「ちっ」

 

『前足関節の負荷増大! ぶつかりあいは不利です!』

 

 空中でお互い弾き飛ばされるようにして距離を取る。さきに着地したのはこちらの方、残ったミサイルを牽制に発射、噴射炎を回りこむようにして敵の側面に向かう。

 

 ボス狼はちらりとミサイルに視線を向けると、ギリギリまで引き付けると急ダッシュでそれを回避。虎の子の誘導弾は虚しく外れて地面を抉るのみに終わるが、それを予想していたこっちは相手の横腹に回り込んでいる。

 

「……取った!」

 

 ぐっ、と踏み込みつつ前足を振りかぶり、パイルバンカーを展開。固定せずの一撃はバンカーそのものを損傷する恐れがあるが、この一撃で有利を取る!

 

 その覚悟で突っ込んでいった私だったが、無防備に側面を晒しているはずのボス狼、その口元がニヤリと笑ったように見えた。

 

 その背中の放電機関が、より一層強い光を放って……まずい!

 

「しま……ぐわあっ!?」

 

『きゃっ!?』

 

 その場でベーゴマのように高速回転したボス狼に突撃を弾き飛ばされる。突き出していた右前足が、肘の部分から引き千切れて地面に転がった。

 

 地面に叩きつけられるようにして転がる“マーナガルム2”。各部のステータスランプが真っ赤に染まり、コクピットに警報が鳴り響く。

 

 中破し転がる合体獣機。それにトドメを刺すべく、にじり寄ってくるボス狼。ほぼ同質量の突撃を弾き返しただけあって無傷とはいかないようだが、明らかにコッチよりダメージが低い。当然か。

 

「くっそ、高速ダッシュだけじゃなかったのか……! ええい、ただでやられてたまるか!」

 

 反応の悪い操縦桿を操り機体を立ち上がらせるが、生まれたばかりの小鹿のようにふんばりが効かない。このままでは……。

 

『いえ、いまです! ショウさん、ビームを!』

 

「え、今?!」

 

 妙なタイミングだ。今、撃ってもかわされるだけじゃ……いや、そういう事か!

 

「分かった!」

 

 即座にボス狼目掛けて引き金を引く。ぐるん、と首を巡らせるようにして狙いを定めたビーム砲が、ピンク色の閃光を放った。

 

『ガルゥ!』

 

 が、当然それはこれまでの雑魚狼と同様、予兆の時点で射線上から退避されてしまい命中しない。何もない虚空を穿つビーム……それを、飛び込んだドローンが搭載した偏向リングで受けた。

 

 それにより角度を変えるビーム。さらにもう一機、二機、と複数の中継点を挟んで戻って来たビームが、回避直後のボス狼へと襲い掛かった。

 

「よし、いけっ!」

 

 このタイミングならば回避は不可能。そう確信した一撃だったが……。

 

『ガルッ!』

 

 命中直前、ボスの放電機関が再び輝く。コマ落としのようにボスの姿が掻き消え、再びのビームも外れてしまった。

 

『そ、そんなっ!』

 

 テレサの絶望の声が通信越しに響く。一方、ボス狼は超高速移動の無理な連発にか、背中の放電機関から煙を吹きながらその場に膝をついた。目と思わしきオレンジ色のバイザーも、不安定に明滅する。

 

 あっちもかなり無理をしての動きとみた。

 

 ならば……まだ勝機はある!

 

「……炸裂ボルト起動! “ハティ2”を強制分離!」

 

『ショウさん、何を!?』

 

 コンソールの緊急分離スイッチを押し込み、不可逆的なパーツの分離を行う。前後で分離した“マーナガルム2”の前半分、私の操る“ハティ2”が単独行動モードに切り替わる。

 

 そう、もともとこちらの機体は単体での戦闘も可能なように設計されていた。そしてこのモードならば、背面のスラスターが使える!

 

「最大出力!」

 

 残り僅かなサブエネルギーを全て注ぎ込み、機体をボス狼に突撃させる。そのまま残された左腕もとい左足で、がっちりと敵の胴体に組み付いた。

 

『ガルルルゥ!?』

 

「テレサ、ドローンのレーザーで“ハティ2”を撃て! “誘爆”させろ!!」

 

『!? は、はい!』

 

 抵抗するボス狼に振り回されながら、テレサに指示を飛ばす。

 

 そう、思い出すのは森での戦い。

 

 あの時、私は敵の武装だか動力炉だかを絞り込んだビームで狙撃し、誘爆させた。

 

 ならばそれと同じことを引き起こせば……!

 

「ジェネレーター臨界制御開始! 脱出装置、起動!!」

 

 誘爆を引き起こしやすいよう、自滅覚悟のオーバードライブで動力炉を動かしながら自分は脱出装置で離脱する。バフン、と機体の後ろ首のあたりの装甲が吹き飛ばされ、座席ごと私を射出する。

 

「んがぐぐ!?」

 

 加速度か何かで目の前が真っ黒になる。辛うじて視力が戻って来た私の視界に見えたのは、遥か下方、岩のステージで取っ組みあうボス狼と剥き出しになった動力炉がヤバげに輝いている“ハティ2”、そしてそれに向けてレーザーを撃ちながら突っ込んでいくドローン達の姿だった。

 

 閃光。

 

 そして、爆音。

 

「おうわあああああああ!?」

 

 結構高度があったにもかかわらず、爆発の衝撃波はすさまじかった。それに煽られるようにして、私の体は座席ごと大空を舞った。

 

 

 

◆◆

 

 

 

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