ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第百十話 既視感に似た期待

 

 

「うぉわああああ!?」

 

 爆発に煽られて大空を舞う私の体。

 

 やばい!

 

 絶対にヤバイ!

 

 このまま地面に叩きつけられたら確実に死ぬ!

 

「うおおおおパラシュートパラシュート……これかあ!!」

 

 慣れない操作に戸惑いながらも、腰を固定するベルトのスイッチをカチリと押し込む。

 

 途端、ガクンと落下速度が停止し、頭上に落下傘の花が咲いた。

 

「ふぅ……」

 

 一安心しながら、ゆっくりと落下するままに任せる。と、下の方にキュラキュラ音を立てながら“スコル2”が走ってくるのが見えた。拡声器からはテレサの声。

 

『ショウさーん、ご無事ですかー?』

 

「おーい、テレサさーん、こっちだこっちー」

 

 手を振って無事を伝えると、ちょうど落下地点に回り込むようにして“スコル2”が停止する。そのうえにふわりと着地した私は、覆いかぶさってくる落下傘に悪戦苦闘しながらも腰のベルトを外し、体の自由を取り戻した。

 

「ふぅ、なんとかなった……ぶわ!」

 

『ショウさんご無事で何よりですー!』

 

 “スコル2”の装甲の上でふー、とリラックスしていると、横から飛びつくようにしてテレサがしがみついてきた。体感型VRじゃないから衝撃とかは感じないけど割とびっくりする。

 

「こ、こら、はしたない。離れなさい、全身使ってしがみついてくるな!」

 

『だってぇー』

 

「いいからいいから、ほら操縦席に戻るぞ」

 

 ごねるテレサを宥めつつ、コクピットに向かう。AI専用なんて事はなく、こちらのコクピットにも私は乗れるし、サブシートだってある。

 

 さきにさっさと乗り込んでサブシートを引っ張りだしていると、テレサもしぶしぶ操縦席に座って機体を再起動した。頭上のハッチが閉じて、モニターに周囲の景色が投影される。

 

 ステータスモニターを確認すると、どうやらドローンは爆発に巻き込まれて全滅してしまったらしい。正真正銘、こちらに残された機体はこの“スコル2”だけのようだ。

 

「ほれ。ボスはどうなった?」

 

『よくわかんないです。爆発が凄くて……私はショウさんが上に飛んでったのを見た瞬間、頭が真っ白になっちゃって……』

 

「いいから戻った戻った」

 

 キュラキュラ、と音を立てて“スコル2”が引き返す。どうやら俺達は来た道を引き返す形になっていたらしい。ボス戦の最中に離脱なんかしたから、最悪最初からやり直しになってるかもしれない。

 

 おっかなびっくり戦闘エリアに戻ると、広場にはまだモクモクと黒い煙が立ち上っている所だった。

 

 よかった、どうやら戦闘離脱と見なされてリセット、という事にはならなかったようだ。

 

「うーん。ボスはどうなったんだ……? 煙の中か?」

 

『……というか。落ち着いてきたから言うんですけど、ショウさんもショウさんです! 動力炉誘爆なんて無茶な事して……! 上手くいったからいいものを、あんなの成功率は半々未満ですよ! 一応、メインジェネレーターには暴発防止の安全装置もあるんですから!』

 

「うげ、そうだったのか」

 

 メタルインセクトを狙った時はほぼ確殺だったからそういう仕様だったのかと。いやでも考えてみれば、得体のしれない機械生命体と違ってこっちのは工業製品だからな。安全装置の一つや二つあって当たり前か。

 

『というかそもそも、爆発に巻き込まれたらどうするつもりだったんです!? つい命令されるがままに撃っちゃいましたけど、場合によっては私の手でショウさんを殺してたかもしれないんですよ!! その辺はどう考えていらっしゃるんです!?』

 

「そ、それはその、悪かった。御免。あやまるよ」

 

『あやまって済む問題ですか! そ、それに、その……さっき呼び捨て……ゴニョゴニョ……ゴニョ……』

 

「?」

 

 なんだ、急に激おこモードから縮こまっちゃって。勢いあまって言いすぎて恥ずかしくなったとか?

 

 うん、まあ、よくある事だ。恥ずかしいよねあれ……。

 

 それはともかくテレサが落ち着いたならそれでいい。私は正面モニターの映像に視線を戻した。

 

「お、段々煙が晴れてきたぞ。どれどれ……」

 

『……! ショウさん!』

 

 黒い煙が薄れてきて、その向こうに見えてきたものにテレサが硬い声で警告する。

 

 大地を四肢で踏みしめて立つ、大型の肉食獣のシルエット。ボス狼。

 

 だが……。

 

「いや。もう、こいつは動かないよ」

 

 その頭上には、もうHPバーは存在していない。かつてはオレンジ色に輝いていた目も、今は真っ黒に染まっている。

 

 見守る前で、ぐらり、と傾いだその巨体が地面に倒れ込む。地響きを立てて横たわったその巨体は、さらさらと砂のように崩れ、完全に形状を喪失した。

 

 同時に、奥の行き止まりになっていた岩の壁が崩壊し、先に進む道が開ける。

 

 それらの演出に目を取られている間に、いつの間にかシステムメッセージが送られてきていた。

 

 

 

《ルプスレクス を 撃破しました》

 

 

 

「どうやら。私達の勝利のようだ」

 

『…………ふぅーーー………。焦りましたあ……』

 

 私の勝利宣言に、ぐったりと座席に潰れるテレサ。なあに、そんなに緊張する事あった?

 

『だってまだボスが死んでなかったら、私が戦わなきゃならないんですよー。そんな大仕事背負える自信ないですよーぅ……』

 

「私だってそこまで鬼畜じゃないって、その時は撤退指示してたさ」

 

『本当ですかー?』

 

 本当だって。

 

 そもそも“スコル2”にはまともな武器がないんだぞ。どうやって戦うんだい?

 

『…………愛、とか?』

 

「ははははははは随分冗談が上手になったなあ」

 

『えへへ……』

 

 まあジョークは置いといて、とにかく勝ちは勝ちだ。このまま先に進んでホームにピットインと行こう。

 

 テレサを促し、先に進む。

 

 爆心地の黒い焼け跡と、その周辺に散らばるドローン達の残骸。それらに労いを込めて敬礼を送り、私は正面に視線を戻した。

 

 岩壁に空いた穴は洞窟のようになっている。多少こすりながらも進んでいくと、急に光が差し込んできた。

 

 そこには……。

 

『ふー、やっとたどり着きました』

 

「ここが、渓流のホームか……」

 

 洞窟の中腹。そこそこ広い空洞は壁が崩壊し、そこから断崖絶壁の絶景が垣間見えている。そんな空間の真ん中に、苔生したエレベーターの出入口があった。

 

 近づくとこちらを認証したエレベーターが稼働を始める。

 

 動き出したリフトに、私はようやく安堵の息を吐いた。

 

「これでようやくひと段落、か。そして……」

 

 次はいよいよ、雪マップだ。

 

 友人に連れられて向かったのが随分遠い昔の事のようだ。ついにここまでやってきた。

 

 そして、そこにはアイツがいる。

 

 雷鳴轟く、大百足。

 

「……成長を確認する意味でも、一度挑んでみるかね。ま、とにかく今は機体の修理と再設計が先だ。ふふふ、どんな武器とかパーツとか、作れるようになったかなー」

 

『楽しみですねっ!』

 

「ああ、全く」

 

 

 

◆◆

 

 

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