ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
という訳で、三つ目のハンガーを購入するためのプリペイドを購入して、帰宅。
準備を整えて、ゲームにログイン。
視界が開けると、ダダダダ、と文字が見えるような勢いでテレサがカッ飛んできた。
『おはようございます、ショウさん! ハンガーの準備、できてますよ!!』
「お、おぅ。……機体の設計は?」
『ばっちりです!!』
スキップするような歩幅で回りをぐるぐる回るテレサはこれ以上ない笑顔だ。今回、自分が発案した装備がメインで組み込まれるのが嬉しくてたまらない様子と見える。
ちょっと微笑ましい。
「そんじゃ、増えたハンガーに高速建造チケットで三号機を建造するけど……」
『はい、そのまえにどうぞ機体を確認してください!』
二人ですでに完成した機体の様子をチェックしにいく。今回、用意した機体は三機合体。うち二機は同型だから、仕様が違う二機を用意しておいた訳である。
カラーリングは優しい黄緑がメインだ。あんまり派手なカラーリングは悪目立ちするからね。
一機は、メガフレームレッグを採用した土台になる機体だ。まあ、ティラノサウルスの時もそうだったが、メガレッグって機体の基礎にすごく都合がいいんだよ。積載量が無駄に有り余ってるから、合体の負担を受け止めやすい。代わりに消費エネルギーが凄いけど、それも合体で複数のジェネレーターを接続する事で補えるし。あくまで合体パーツとしての役割を重視して、武装は護身用のマシンガンぐらいしか装備していないので、戦闘能力は期待していない。
そしてもう一機、私が乗り込む機体は合体後は勿論、単体でも運用可能な仕様になっている。
基本的な構造は合体を考えて多少手を加えたものの、原型はタイタンコアだ。機動要塞を制御できるだけの処理システムを持っている事が決め手になった。ただし、その外見上の特徴だった両肩のメガアームは取り外されており、本来の腕は先端にクローを装備した別種のものになっている。胸部に大口径ビーム砲が内臓されており、頭部はその放熱システムと一体化しており、冷却時には銀色の繊維が放出されるようになっている。あれだ、ポニーテイルというかああいう感じ。
クローの基部には照準用の同軸レーザーと、本命のビーム砲が搭載されている。だがそれ以上に大事なのが、それらは遠隔攻撃端末としてテレサ開発の機動ワイヤーでつながれているという事だ。
つまり、有線ビームクロー!
これもまたロマンだよね。
「よし、問題なさそうだね。三機目も高速チケットで建造して……と。じゃあさっそく、雪山エリアでテストと行こうか」
『いきなり新エリアですか?』
「うん。エリア自体は前に友人と経験済みだから問題はないよ。コイツらなら十分やれると思う」
ふふふ、先のエリアに進出する新鮮さはちょっと薄れたけど、だからこそ最新型の機体を投入できる楽しみもある!
さあ、頑張るぞ!
「それじゃあ……『アイン』『ソフ』『オウル』出撃だぁ!」
『イエーイ!!』
そんなこんなで出撃した雪山エリア。
有線ビーム砲を搭載した機体『アイン』で先に出撃した私は、前に出てテレサが機体を用意するのを待つ。
地下から出撃してきたテレサがまず二号機『ソフ』を置いて、コクピットの脱出装置で離脱、ガレージに戻っていく。それを見守り、私は遠景に視線を向けた。
前来た時と変わらず、銀嶺の名にふさわしい雪景色。このまま山間の道を渡っていくと、猿型メタルインセクトの群れに遭遇したり、象型のひしめく谷間がある訳だ。
そして、その先にはアイツが……。
「…………」
『ショウさん、『オウル』も準備完了しました! ……ショウさん?』
「ああいや、なんでもないよ。ちょっと物思いにふけってただけだから」
いつの間にか準備が終わっていたらしい。
物思いを打ち切って、さっそく合体の準備に入る。
「よし、合体開始だ!」
『了解しました!』
三機を合体位置に移動させて、データリンク。赤いレーザーの光が走り、機体の位置を確認する。
『データリンク問題なし。各種サーボモーター、設定同期確認。制御システム、バックアップ確認。……オールグリーン! 合体、開始します!』
テレサの合図とともに、脚部を担当する『ソフ』『オウル』が変化を見せる。
この二機はどちらも、メガレッグをベースにした機体だ。そういう意味ではいつぞやの合体ビームサウルスと同じだが、変形の仕方が大きく違う。
脚部を大股開きにして、開脚どころかほぼ開きというか平たくなるまで展開する。左右ではなく前後に脚を広げると、後方に展開した脚部の先端をクレーンのように操って私の乗る『アイン』のバックパックに接続。そのまま背後の二機に吊り上げられるようにして持ち上げられる『アイン』。
同時に脚部を畳み込み、複数の接続箇所で『ソフ』『オウル』の脚部と接続。伸びたシリンダーが機体を強固に接続する。
『合体完了。起動、『アインソフオウル』!!』
ブオン、とアインの頭部だった部分のカメラアイが青から赤に色を変え、放熱繊維が展開された。
そう、今回の合体は戦隊ロボによくある、二機の脚部担当と胴体担当の合体なのである!
構造的には、『ソフ』達二機は全身を使って一つの脚になるのが役割だ。合体後は脚部が極端に大きな、異様に背の高い機体になるがそれでいい。
重心が非常に高いので一見安定していないように見えるが、実際は巨大なだけでなく多関節の脚部はふんばりが効く。それによって、長く伸ばしたワイヤーを振り回した時に機体がそれにひっぱられないようにするのが目的だ。
なんせ、通常サイズの機体だと長く伸ばしたらそちらの動きに機体が振り回されないように踏ん張るのが精いっぱいで、まともに動けなくなってしまうからな。だがこれだけの脚部があれば、ワイヤーに振り回されずに済む。はずである。
とにかく、実際に試してみるしかない。
『合体完了しました! システムの確認をお願いします』
「ああ、こちらでも確認した。……ん?」
アイディアを出すのはこちらでも、設計したのはテレサだからな。意見の相違があるかもしれない。そう思ってチェックしていると、ふとコクピットの背後から聞こえてきた音に私は首を傾げた。
背部の装甲が開いて、なんか接続されてくる……って……。
「テレサさん!?」
『えへへへへ……コクピットの移動も仕込んじゃいました』
シートベルトで体を固定したまま、テヘヘ笑いをするテレサ。一体いつの間にこんなもんを……。
「まあ、いいけど……あっ、後ろじゃなくて横にくるの?」
『はい! 制御システムの具合を見たい、というちゃんとした事情もあるので!』
私のコクピットが少し横にずれて、左側にテレサが来る。なんかコクピットがちょっと広いなと思っていたがこういう理由だったのか。
「それじゃ、さっそくちょっとテストしてみようか」
『はい!』
とりあえず並列複座はビックリしたが、問題がある訳ではない。気分を切り替えて、操縦席のコンソールに目を向ける。見ている前でそれがガシャン、とスライドして小さなテーブルになり、その上に球場のホロプロジェクターが展開される。
立体映像には、『アインソフオウル』の周辺の状況が映し出されている。
中央に立っている巨体の周辺には、簡素なポリゴンで木々が立ち並んでいる。映像の範囲は大体直径2km、有線ビームクローが伸ばせる最大範囲だ。
「んじゃ、ぽちっとな」
指で触れるようにして、木々のポリゴンを指定する。対象のポリゴンが真っ赤に染まり、『アインソフオウル』のシステムが反応した。
《キュキキキキキキ……》
怪物が唸るような音を立てて、有線ビームクローが射出される。それは自動的にターゲットに指定された大木に食らいつくと、根っこから引っこ抜いた。
「おおぅ」
その際に発生するワイヤーの絶大な応力に機体がかしぐが、巨大な脚が踏ん張ってその反動にこらえる。思った以上に反動が強いが、それだけワイヤーのパワーがあるという事でもある。
これは頼もしいな。
見ている前で引っこ抜かれた大木が打ち捨てられ、ワイヤーが巻き取られていく。
『システムに問題はありませんね、思ったように動いています』
「有線ビームクローにドローンと同じ制御系が積まれていて、ターゲットを指定すれば自動的に攻撃してくれるんだよね」
『はい! アップデートを繰り返したお利巧さん達ですから、ワイヤーをからませたりしませんよ!』
それは心強い。
「それじゃあ、次は実戦テストいってみようか!」
『はい、やってみましょう!!』
ふふふ、さーて、どんな感じになるかな?