ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

119 / 156
第百十三話 過負荷をかけると千切れる

 

 有線ビームクローの軽いテストを終えて、いよいよ先に進む。

 

 見覚えのある渓谷沿いの道を進んでいく。思えばここを友人と訪れたのはもう一月以上前の事か? なかなか濃いゲーム体験をしているのもあって、もっと昔の事のような気もする。

 

 さて。

 

 以前と同じなら、そろそろ猿型のメタルインセクトが大量に現れるはずだが……。

 

『ショウさん、正面から接近してくる複数の熱源を確認しました。メタルインセクトの群れだと思われます』

 

「早速おいでなすったか」

 

 テレサの警告に操縦桿を握り直す。

 

 さて、敵の数はなかなか多い。いきなり優先アームクローを撃ち込んでもいいが……。

 

「せっかく装備しているんだし、まずはこれだよね」

 

 武装を切り替えて、胸部の大口径フォトンビーム砲を展開。正面には雪煙を巻き起こしながら向かってくる猿型メタルインセクトの群れが目視できる。その群れにアバウトな感じに狙いを定めて……。

 

「ファイヤ!」

 

 迸るビーム砲。大口径なだけあって反動も大きいが、『アインソフオウル』はその巨体でもって反動をものともせず、砲身を薙ぎ払った。

 

 押し寄せてくるメタルインセクトの群れがピンク色の奔流に巻き込まれて姿を消す。が、アイツら耐久力はそこそこあるから、今の一撃だけでは死んでくれない。事実、視界には無数のHPバーが表示されたままだ。

 

 ここからは有線ビームクローの出番である。

 

 操縦席の前に投影されている立体映像に、ぱぱぱっと触れる。複数のターゲットをマルチロックオン。

 

 それではお手並み拝見といきましょうか。

 

「クロー、射出!」

 

《キュキキキキキ……》

 

 嘶くような音を立てて、ワイヤークローが射出される。ビーム砲の攻撃から立ち直っていないメタルインセクトの群れに、粉雪を巻き上げてクローが襲い掛かった。

 

 クローAはまず、真正面から突撃してメタルインセクトを捕縛。HPの減っていたその個体は一瞬で粉砕され、群れを突っ切ったクローは大きくしなると、複数の個体をそのワイヤーで絡めとった。そのままメリメリと締め上げる。

 

 それを見た他の個体が、仲間を助けようとワイヤーに爪を振り上げた。強度はあるといっても、鋭いメタルインセクトの爪で引っかかれれば損害は必至……もっとも、それは当たればの話。フォローするように飛んできたクローBが、至近距離からレーザーを撃ち込んでその個体を仕留める。蛇のように鎌首をもたげたクローBはそのまま先端を発光させ、内臓されていたビームで3匹ほどのメタルインセクトを薙ぎ払う。

 

 まあそんな感じで、二つのクローは互いに連携しながら、無数のメタルインセクトの群れを瞬く間に蹴散らしていく。

 

 恐るべきはこれがターゲット指定しただけでオートメーションで行われるという事だ。これまで培ってきたドローンの制御技術が生かされてるというかなんというか。私はなんもしてないけどね。

 

「……うーん、いいのかな」

 

『? どうかしましたか?』

 

「いんや、なんでも」

 

 きょとんとするテレサの顔に思わず苦笑が浮いてくる。まあ、ゲーム外部のツールを使ったならともかく、正式に実装してるシステムに作らせたものだから問題はあるまい。

 

 もし怒られたらそれまでである。

 

 とりあえず、有線ビームクローの性能は想定以上だ。正直、猿の群れぐらいなら相手にならない。

 

 実証が出来たのだからそれで目的は果たしたのだが、うーん。物足りないというのが本音という所。

 

 となると……。

 

 私はちらり、と渓谷の下を見る。渓谷の底は影になっていて真っ暗でよく見えないが、友人の話だと腕に覚えのあるギルドはここを降りた先で狩りに励んだりするという話だった。

 

 ……この機体ならいけるのではないか?

 

「テレサさん、ちょっと渓谷の下に降りて見ない?」

 

『え? この下……ですか?』

 

「うん。話によれば大型メタルインセクトが多数いるって話なんだけど、この機体ならなんとか戦えるんじゃないかと思うんだ。それにほら、さっきの猿の群れじゃ正直物足りないというか、この機体がどこまでやれるかの限界なんて見えないし。どう?」

 

 私の提案に、しばし考え込むテレサ。とはいえ、彼女はこちらの意見を断る事なんてそうそうない訳で……。

 

『……分かりました! ショウさんがお望みでしたら、是非!』

 

「よし。じゃあ、ちょっとやってみようか」

 

 道を外れて、谷間の底を覗き込む。底までの高さは目算で見積もっても100m以上……この機体とはいえど、飛び降りたら大破する恐れがある。渓谷の斜面になっている所を探して、そこから滑るように下に降りていく。

 

 やがて谷底に辿り着くと、周囲はまるで夜か洞窟のように真っ暗だった。

 

「何も見えないな……」

 

『サーチライト照らしますね』

 

 頭部カメラに搭載されたライトが、ビカア、と暗闇を強烈に照らす。脚部に変形した『ソフ』

 

『オウル』も頭部を展開して合わせて照明を点灯させて、前方だけならかなりの範囲が見渡せるようになった。

 

 これなら地形が把握できずに激突する心配はない、無いのだが……。

 

「……眩しい光に敵もお目覚めのようだ」

 

『あっ』

 

 ビカァ、と暗闇の中に灯る無数の赤い瞳。のっそのっそと揺れながら近づいてくるそれが、照明の下にその姿を露にする。

 

 いつぞや交戦した、ゾウ型のメタルインセクト。三体合体機体である『アインソフオウル』に匹敵する巨体を誇る大型のエネミーが、恐るべきことに複数、列をなして現れた。

 

「いきなり団体様のお出ましか。思った以上に歯ごたえがありそうだ」

 

『はわわわ』

 

「まあやれるだけやってみるさ、いくぞ!」

 

 テスト相手に不足なし。これぐらいの敵を突破できなければ、トーナメントで戦うなんて土台無理な話。

 

 私は胸部大口径ビーム砲の引き金を引き、それが交戦の狼煙となった。

 

 迸るビーム砲が渓谷をピンクの光で見たし、ゾウ型の巨体を後方に押しやる。この狭い渓谷内であの巨体、回避する隙間も無い。超高熱源を浴びて、防弾繊維の毛皮がチリチリに焼け落ちる。

 

「そこ!」

 

 その隙を逃さず、有線ビームクローを射出。

 

 護りを失ったゾウ型に、捕鯨の銛の如くクローが突き刺さる。

 

 そして始まるのはワイヤーの引き合い合戦。質量はゾウ型の方が上だが、こっちだってパワーだけならそれなりだ。

 

 膠着が続いたのは数秒。ふんぬ、と操縦桿を強く引っ張ると、ずるずるずる、とゾウ型が根負けしてこっちに引き寄せられてくる。

 

『はわわ、蛮用が過ぎます! ワイヤーちぎれちゃうー』

 

「でええい、これで!」

 

 引き寄せたゾウ型に渾身の蹴りをぶち込む。衝撃でクローが外れて、巨体がどんがらごろと地を転がり、動かなくなる。

 

 爆発四散するメタルインセクト。それに巻き込まれて、渋滞を起こしていた後方の敵がたじろぐように後退った。

 

「よぉし!」

 

『よおしじゃないですよショウさん!? あんな無茶苦茶な使い方想定してませんよぉ! ワイヤーの部品がバラバラに弾け飛ぶ所でしたよもう! 修理するまで30秒、射出しないでくださいね!』

 

「ご、ごめんごめん」

 

 隣から飛んでくる苦言に肩を竦める。思ったより無理が効かない……いや当たり前か。ちょっと勢い任せで考えなしだった。

 

 見れば、ワイヤーを収納した腕部から火花が散っている。内部に搭載した修理装置でワイヤーの補修を行っているようだ。これが終わるまでは無理は禁物、という事かな。

 

 腕部の構造を頭に思い浮かべて、よし、と頷く。殴るぐらいは行けそう。

 

『バオオオオ!』

 

 そうこうしている内に前に出てきたメタルインセクトが、雄叫びと共に突撃してくる。牙と鼻を振り回しての突撃、まともに受ければ合体機体でも危ない。

 

 迎撃するべく、両腕のビーム砲を発射。さらに脚部からマシンガンの掃射を浴びせかける。

 

 正面から灼熱の粒子砲を浴びせかけられ、さらに剥き出しになった体表にマシンガンの火花が乱れ咲き、目に見えて突進の勢いが落ちる。

 

 その隙を逃さず、長い歩幅を生かして懐に飛び込む。そして振りかぶった右腕のクローを思い切りその顔面に叩きつけた。

 

『パオオオッ!?』

 

「よぉっし、どうだっ! 少しは効いたか!?」

 

『効いたじゃないです、修理が終わるまで無理はしないでっていったじゃないですかー!?』

 

 ご、ごめんなさい……。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。