ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
前回と同じく、家からでは参加できないのでネットカフェに向かう。
持参したVRセットをゲームハードに繋ぎ、メモリカードを読み込ませる。
ログインすると、私一人だけのホーム画面が映しだされた。
「テレサがいないと逆に変な感じがするなあ……」
いつもログインするとすっとんでくるサポートAIの姿が無い事に物寂しさを覚えつつも、出撃の準備を整える。
今回の試合はスコア稼ぎ。各々のチームに分かれて戦場に転送され、そこで他のプレイヤーやメタルインセクトの撃破数で勝負する訳である。
前回あったような前線基地は無し。直接、機体が戦場に転送される形になる。なお、一つのフィールドにどれだけのプレイヤーが転送されるかは秘密。少ないかもしれないし、多いかもしれない。
その不確定要素をどうとらえるかが、勝負の重要な要素と言えるかもしれない。
「ま、私からしたら転送してくれるなら有難い事だけど……」
なんせ、ホームのエレベーターから一機ずつ搬出する手間が省けるからね。
キャットウォークを渡り、唯一の有人機である『アインX』に乗り込む。改良の果てに、かつては両腕のみに装備されていた有線ビームクローは脚部にも搭載されており、踵の先からブレードがにょきんと生えている。昔の特撮番組だとヒーローのニセモノが出てくるときは大体つま先がとんがっていたが、まああんな感じだ。そしてバックパックにも折りたたんだ状態で有線ビームクローが搭載されている。こっちは合体後にしか使えない、流石に『アインX』単体で六つも有線ビームクローを振り回したら応力で機体が捩じ切れちゃう。結構反動が半端ないからね。
ちなみに腕と足、バックパックが同じフレームを流用しているので、変形して多脚で歩き回るインセクトモードにもなれちゃう。ただこちらはテレサにいたく不評だった。キモカッコいいと思うんだけどなあ。
残る『ソフX』『オウルX』は基本的に仕様は変わっていない。こっちはあくまで土台として踏ん張るのが目的だからね。ただ、ちょっとした改良は加えて、小規模な製造ラインを組み込んでいる。プレイヤーが一人なのでアイテム持ち込み数に制限があるが、ある程度の自律ドローンを製造可能だ。
まさに、前回のトーナメントの試合が終わってから育まれたカスタマイズの集大成である。
とはいえ色々と悔いは残っている。
一つは結局単なるクローしか装備できなかった事だ。本当は、前回の試合でボコされたビームクローにしたかったのだが、何をどうやってもクローにビーム粒子を纏わせる事が出来なかった。どうも、素材自体が特殊な物だったというのがテレサの見立てだ。偏向粒子をアレコレしたらできそうな気がしたのだが、現実は厳しかった。かなりの試行錯誤に時間を費やしたが、結局それらしきものはできなかった、残念。
ただ代わりに、ビームの偏向についてかなりのデータが取れたので、別の武装を搭載している。これに関しては本番でのお楽しみだ。必要になったら惜しげもなくぶっ放すつもりである。
「お、そろそろ試合の時間が近づいてきたな」
試合の時間が近づき、ホームに警報が鳴り響く。オフラインプレイではまず聞く事のないそれを聞き流しながらコクピットを閉鎖し、機体を起動する。
各種システムをチェック。
「問題なし。あとは、無人機が無事に転送されればいいのだけど……って、お……」
目の前が、突如白い光に包まれていく。
どうやら転送が始まったらしい。足元から噴き出すような白い線に、少しずつ視野が分解されていく。
やがて全てが真っ白になって……突如として、私の乗る機体は、赤茶けた荒野に放りだされていた。
「っと、おぉ……」
思わず機体を操作しようとして、制御を受け付けない事で我に帰る。まだ試合は始まっていないようだ。
正面モニターに映るのは戦場跡のような、荒れ果てた荒野。そこかしこに爆発か何かのクレーターが刻まれ、ロボットサイズの巨大な塹壕が彫られ、兵器の残骸が転がり、まだあちこちから黒い煙が立ち上っている。
メタルインセクトとの戦争、その古戦場といった所か。そして今から、オイルでオイルを洗う激闘が始まる訳である。
「っと、見入ってる場合じゃない。他の機体は……」
レーダーを確認すると、背後に二機の反応があった。背面モニターで確認すると、確かに無人機仕様の二機も転送されてきているようだ。ちょっとほっとする。
「他のプレイヤーの機体は……まだレーダーに表示されてないな。試合が始まるまでは探知できないか、当然だな」
時間を確認すると、あと数十秒で刻限だ。そして正面モニターにでかでかとカウントが表示される。これがゼロになると、試合開始という訳だ。恐らく全てのプレイヤーの条件は同じ。
まあ、私が最初にやる事は決まりきっている。
ボタンの場所などを確認しながら、その時をまつ。
「さて、あと5秒か。……頑張ってテレサに良い報告を持ち帰るぞ」
ぎゅっとグローブを握りしめる。目の前のカウントはもう残り少ない。
3。
2。
1。
0。
「バトルスタート!」
試合開始だ。
それと同時に、私は機体に仕込まれたスモークディスチャージャーを全弾放出した。背後の無人機も含めて3機全員が、真っ白な煙に包まれる。
まずは合体しないと話にならない。とにかく攻撃を受ける前に、合体、合体。
「制御アンカー射出、接続。機体制御開始!」
バックパックから射出された細い通信ケーブルが、問題なく無人機に接続される。自力では起動も出来ない無人機達を、外部から強制的に起動する。
彼らに組み込まれているプログラムはたった一つ、速やかな変形合体だ。
機体をアジの開きみたいに展開して脚部に変形した『ソフX』『オウルX』が、合体用アームで『アインX』を持ち上げる。
ステータスモニターの中には、順調に合体変形シークエンスが進んでいる事が表示されている。
よし、あと数秒。数秒さえ無事でいられれば……うし!
「合体……完了! 完成、『アインXソフXオウル』!!」
ででーん。完成。
荒野の戦場に君臨するのは、巨大な脚を持つ六腕の異形の巨神。
最大の特徴は勿論、その六本腕である。ちなみに何故6本なのかというと、現時点で足と合わせて八本……10本を越えたらテレサの絶許判定に引っかかってしまうからである。恐らくそうなると彼女に自爆スイッチを押される。
まあそれは冗談だけど。単純に、機体に残されたリソースの限界が6本腕だったからである。だけどその分凄いぞ。
まず合体によってフルパワーを発揮できるようになった事で、同時に六つの有線ビームクローを同時運用できるようになった。そして当然その全てにビーム砲とレーザーガン、そしてビーム偏向装置を組み込んである。イン●ムでありリフレクター●ットでありファ●グである、まさに某機動戦士シリーズのオールレンジ武器のいいとこどりしまくった武器なのである、まあ有線だけどね!
果たしてこれが、トーナメントの他のガチ勢にどこまで通じるか……楽しみだ!
とりあえずは早速自律ドローンの製造ラインを起動する。ガチャガチャ、ウィーンという作業音を聞きながら、私は戦場の様子を伺った。
「さあてと、流石にまだメタルインセクトのウェーブは来てないか。まずは様子見……おぉう!?」
いきなりコクピットに鳴り響くロックオン警報。慌てて回避した直後、バズーカの砲撃らしきものが大地を揺るがした。
さらに、四方から飛んでくるライフルやら機銃やら。幸いまだ距離があったことで装甲が大半を跳ね返し、ダメージは軽微である。
「な、なんだあ!?」
モニターに目を向けると、多数のロックオン反応。
これは……複数のプレイヤーが、私に向かって攻撃を仕掛けている?!
なんでえ!? 最初は様子見が鉄則じゃないの!?
困惑していると、高熱源反応を察知したシステムが自動的に対象をズームアップ。画面の中に、砲撃支援っぽい感じの機体が肩から二門のビーム砲を展開し、こちらに狙いを定めているのが見えた。
ビーム! なんか他にも使われるようになったって聞いたけどトーナメントで見るなんて! 嬉しい!
……じゃなくて!!
「へ、偏向力場最大出力!」
機体の正面でクローを組んで、ビームを捻じ曲げる。放たれたビームは直撃すればそれなりのダメージは免れられないものだったが、油に弾かれる水のように四散して本体への被害はでなかった。
せ、セーフ。
それにしても乱暴な。いいだろう、そっちがその気なら……。
「こっちだってやってやる! マルチロックオン!」
複数のターゲットを視界に収め、私はトリガーに指をかけた。
早速秘密兵器のお披露目と行こうか!!