ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
とはいうものの、必殺武器の発動には多少時間がかかる。マルチロックオンを維持しながら、コンソールに表示されるメッセージを確認した私は回避機動を取った。
「あと3秒ぐらいか……」
多数のプレイヤーからの攻撃にさらされながらも、致命傷だけは回避する。猛烈な攻撃だが、こちらの機動についてくる攻撃はそう多くない。この脚部だけが異様に大きな得意な体型が幸いしたのだろう。たぶん、二次ロックが誤作動を起こしてる。
他と違うのは悪い事も多いが、たまにはいい事もあるという事だな。
とはいえ流石に、誘導兵器はそうもいかない。戦場の片隅から噴煙が宙に舞い上がり、ミサイルがこっちに飛んでくるのが見えた。マイクロミサイルの類だと思うが、流石にこれは回避できない。
とっさに六つの腕を組んでガード体勢。誘導弾が命中、爆発が機体を揺るがし、コクピットにも衝撃が走る。機体のHPもわずかに減少。
このままでは防戦一方だ。
だが、それもそろそろ終わりだ。下手に手出しせずに回避に専念している間に、プログラムの演算が終わった。
防御姿勢から砲撃姿勢に移行。
胸部メイン粒子砲に、腕部ビーム砲を定位置にスタンバイ。偏光力場及びにビーム出力自動調整。
ターゲットの現在位置最終確認。
仮想空間レンズ最終調整。
……オールグリーン、いける!
「くらええ!」
トリガーを引き絞る。と同時に、胸部と腕部に搭載されたビーム砲が同時に光を放った。
放出されるのは、7つの粒子砲のエネルギーが複雑にまじりあった一撃。それは地平線の少し上、大空に向かって斜めに飛んでいく。
このままでは誰にも何にも命中しないが、これでいい。
……今撃ちだした粒子ビームは、実に七つのビームが、偏向粒子によって制御された状態で互いに干渉しあっている。今は発射の勢いもあってひと固まりになっているが、ある程度飛翔した所で互いに反発、反作用で射線を変える。それは花火のように分散して降り注ぎ、今度は上空からそれぞれロックオンしたターゲットへと降り注ぐ。
そう、ちょうど、目の前で起きているように。
空中で炸裂したビームから、流星のように戦場に降り注ぐビームの雨。
それは戦場のあちこちに身を隠していた敵に降り注ぎ、一撃死とはいかなかったものの大きなダメージを与えた。
敵から降り注いでいた猛攻が一時途絶える。
そしてここからが、この機体の本領発揮だ。
「全有線ビームクロー、最大展開。敵を蹂躙しろ!」
《ヒィイイイイイン!》
コンソールに取り付けられたトラックボールを転がし、ターゲットを指定。私の意思を受けたワイヤークローが、次々に射出されて敵に襲い掛かる。
敵の多くは反撃を警戒して塹壕に隠れているようだが、有線ビームクローの前には関係ない。奇怪な嘶きのような音を立てて伸びていくワイヤーが、塹壕内部に回り込み、あるいは上から襲い掛かり、次々と敵をクローで引き裂いていく。敵も咄嗟に反撃しているものもいるが、高度な自律制御プログラムを搭載したクローは自己判断でそれらの攻撃を回避し、反撃でレーザー、あるいはビームを放って敵を仕留めていく。
「ええい、この暴れ馬どもめ、存分に暴れるがいいわ」
同時に六つものクローを伸ばした事で凄まじい負担が本体にかかるが、合体機体ならばそれに耐えられる。キシキシ軋む機体がバランスを崩さないようにこらえていると、コクピットに接近警報が鳴り響いた。
「ん?」
モニターを確認すると、バイクみたいな機体が猛スピードでこっちに迫ってきているのが見えた。あれは合体機体……いや、違うな。本体はガリガリの骸骨みたいな有様になっている、おそらく機体のリソースの大半をバイクマシンに回してる構造。組み換えプラモみたいに、外装をビークルに変形させるタイプかな。
ああいうのもありだな。
すぐさま一番近いクローの一つを迎撃に向かわせる。
塹壕に隠れていた敵を蹂躙していたクローがすぐさま反応、真後ろから唸りを上げてバイクに向かう。が、見た所バイクがこちらに届く方が早い。
敵の機首が発光し、放たれたライフル弾が機体を穿つ。衝撃に軋むコクピット。
「チッ。……だがいいのかな、そのまままっすぐこっちに突っ込んできて?」
ニヤリと笑った直後、こちらに向かってきていたバイクが何かに横合いから飛びつかれ、バランスを崩した。
バイクに飛びついたのは、円盤に脚が生えたような小型の自律ドローン。製造ラインから放出したそれらを、周辺に近接防御としてばらまいておいたのさ。
蛇行して速度を落とすバイク型機体に、さらに2,3匹の自律ドローンがとびついて動きを封じる。目に見えて遅くなった機体に、背後から追いついたクローが突撃してドローン達もろとも木っ端みじんに粉砕した。
バラバラと飛び散る残骸たち。破壊されてアイテムに戻ったドローン達をワイヤーが巻き取るようにして回収、辛うじてまだ動いている敵の上半身をクローが掴んで私の元に持ってきた。
まるで見せつけるように本体の前で死にかけの機体をプラプラさせるクロー。……獲物を見せつけるネコかな?
「よしよし。よい仕事をしたね。次も頼むよ」
あとあんまり相手を苦しませるのもよくないからね。カチリ、とトリガーを引いて最低出力のビームで機体を処分。再びクローを生き残りめがけて放つ。
さて。これで最初に攻撃を仕掛けてきた敵は全部仕留めた。あとどれぐらい、プレイヤーが残っているのかな。
「今の暴れっぷりを見てこれ以上喧嘩はうってこないだろうから、これでようやくサバイバルに専念できるな」
こっちとしては専守防衛しただけなのである。別に好き好んで、相手プレイヤーを殺戮したい訳ではない。
しかしなんで彼らもまだ第一ウェーブも来てないのに喧嘩売ってきたんだろうな。戦闘狂の考える事はわからん。
「まあいいか。……おっ? 始まったか?」
《第一ウェーブを開始します》
メッセージと共に、レーダーに無数の敵反応が現れる。
たちまち、視界にもその姿が確認できる。戦場の地平線に立ち上る土煙……無数のメタルインセクトが、怒涛の勢いで古戦場に押し寄せてきているのだ。
とんでもない数だ。『アインXソフXオウル』であっても、この大量の数の敵を相手にするのは無理だ、上手い事ほかのプレイヤーとターゲットを分散しあわないと難しいだろうな。
逆に言うとほかのプレイヤーはこっちにターゲットを押し付けようとしてくるはずだ。そこの所を考えて、上手く立ち回らないとね。
「さあて、他のプレイヤーはどう動くかな……ん?」
そこで気が付く。
……なんか敵の動きが変だ。マップの全周囲から迫ってくる無数の敵……それが、一糸乱れぬ動きで、レーダーに綺麗な円を描いている。まるで全ての敵が、ただ私一人に集中しているように見えるんだけど……。
「いやいや、ちょっとまってよ。ほかのプレイヤーだっているでしょ? ……あれ? 何人生き残ってるんだ?」
撃破ログをさかのぼって、私が撃破したプレイヤー機の数を確認する。
計12機。1チームが3機だから、4チームを私が撃破した事になる。
一応、一つの試合における参加チームの数は公言されていないけど、私を含めるとこれで5チーム。……なんかこう、キリがいい数字というか、なんというか。
「まさか。まさか……この試合における他プレイヤー、全部撃墜しちゃった!? 最初のウェーブが来る前に!?」
もはや疑う余地もない。レーダーの反応は私を中心に全方位を埋め尽くし、すでにワイヤークローの射程に入ってきている。仮にステルス状態のプレイヤー機がいても、こんな全方位から押し寄せるローラー進撃にひっかからないはずがない。
つまり。
「私一人でこれ全部相手にするのぉーー!?」
いくらなんでも無茶がある。
しかし、それでもやらなければスコアを稼げず、次の試合に進出できない訳で……。
「く、くそぉおおお! うぉおおおおやれるだけやってやるさー!!」
《ヒィイイイイ……ン》
もはやヤケクソの心情で、私は迫りくるメタルインセクトの群れ目掛けて胸部ビーム砲のトリガーを引く。同時に全ての有線ビームクローを射出し、それらの先端からビームを照射しながらぶん回した。
やるぞお前ら、テレサにいい知らせを持ち帰ってやる!
結局、その後もてる全てを尽くして抗ったけど、最終ウェーブの途中でとうとう脱落してしまったのであった。やっぱ戦争は数だったよ……。
ぐすん。
撃墜スコアは頑張って稼いだけど、トーナメントの次の試合に進めるといいなあ……。
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