ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第百二十三話 ビーム直撃させたいな

 

 という訳で、翌日の事。

 

 夕飯の片づけを終えた私はルンルン気分でゲームにログインした。

 

「ふんふふん、試作機はできてるかな……ってんぉわ!?」

 

『ショウさんおかえりなさーい!』

 

 暗転から画面が復旧した瞬間、目の前でスタンバっている金髪美女。思わず身を引いてしまう私に全く頓着した様子もなく、テレサはにこにこと手を振った。

 

『お帰りお待ちしておりましたー♪』

 

「う、うん。……よくこのタイミングで来るってわかったね?」

 

『えへへー。統計の結果ですー』

 

 統計、統計か。まあ毎日似たようなスケジュールでゲームにログインしてるし、付き合いもそろそろ長くなってきたから予想の一つや二つできてもおかしくはない……か?

 

「ま、まあいいか。それより、試験機はできてるかい?」

 

『はい、ばっちりです! どうぞどうぞ』

 

 上機嫌なテレサに案内されて、ガレージの前に。

 

 ずらりとならんだ3つのガレージ。合体機体を使う為とはいえ、まあ随分増えたもんだ。

 

 そしてその1号ガレージ、アインXだった機体を改造したのが今回の実験機だ。

 

 違いといえば、異形と化していた両腕と脚部を通常の手足に交換し、バックパックもスラスターを内蔵したごくありきたりのものに変更。破壊された頭部は、データ取り用のセンサー類が充実したものに換装し、胸部はそのまま大口径ビーム砲を搭載している。

 

 そして最大の特徴が、両肩にとりつけられたアンテナのような装置。これが今回の目玉、量子転送装置の端末である。

 

 ちなみに実験機という事で、機体カラーはオレンジイエローに変更してある。このカラーリング、派手派手すぎるのでどこかに不具合が出たらすぐわかるのが便利なのよね。10円傷でも凄く目立つ、ともいうけど。

 

「よーし、よしよし、良い感じっぽいぞ。早速テストといこうか」

 

『はーい、いきましょう!』

 

 キャットウォークを渡って、コクピットに移動する。そして何故か後ろにぴったりついてくるテレサの姿が。

 

『?』

 

「……一緒に乗る気? 合体してないアインXは一人乗りだけど……」

 

 おずおずと切り出すと、ぺかー、とでも形容するべき笑顔が帰ってきて思わず気持ち仰け反ってしまう私。

 

『問題ありません! 許可を頂いておりましたので、こっちで複座に変更しておきました! 後ろの席からばっちり分析しちゃいますよ!』

 

「そ、そう……?」

 

 いやまあ確かに許可は出したけど、それは好き放題に機体をいじくりまわしていいって意味では無かったんだが。

 

 それにテレサには外で、別の確度から実験結果を観察してほしかったんだけども……まあいいか。何か不具合がある訳でもないし。

 

「ま、いいよ。ほれ、乗って乗って」

 

『失礼しまーす♪』

 

 覗き込むと、確かにコクピットは私が設定したよりも広く作られていた。っていうかこれ、現状作れる最高グレードのグリーン席みたいなやつじゃん。耐G性能とかスペース効率より、クッション性とか居住性能を重視した奴。

 

 ただ現行の没入型じゃないんで意味ないんだけどなこういうの……まあ、テレサの気持ちだと思って受け取っておこう。

 

 あっでも手の感触だけでもすげーいい感じ。ほわあ……超高いクッションって感じがする……。

 

『うふふふふ。いい座席でしょう?』

 

「っ、ふ、ふん、確かに悪くないけど実戦だとスペース効率と耐G性能が一番大事なんだからな、実験機だからいいけどっ」

 

『ふふふ、はーい。気をつけまーす』

 

 なんだか微笑ましい笑顔で見つめてくるテレサに何だか気恥ずかしくなって誤魔化す。べ、別に自分の部屋のクッションと比べてたとか、そういう事はないんだからね!

 

 さっさとコクピットハッチを閉鎖して出撃準備。

 

 やる事はたくさんあるんだから、こんなところで遊んでいられないのだ。

 

「よし、出撃ー!」

 

 上昇するリフトで、外に出る。場所は最前線の雪山近くのホームだ。

 

 この間、激戦の果てにクラウド・センチピードを下したものの、アイツはエリアボスでもなんでもないから、まだ雪山のホームは解放していない。

 

「さて。このあたりは敵も居ないし、ちゃっちゃとテストを始めよう」

 

『了解です』

 

 さて。問題の量子転送装置だけれども、結構エネルギーを喰う装備ではあるが、まあ流石にアップデート前のビーム兵器程じゃあない。運用のハードルは高いが、特化するほどではない、といった所。高負荷なオプション装備、というのが一番適切な表現か。

 

 仕組みとしてはアンテナから転送波を照射し、それに触れた物を任意の場所に転送する、というものになっているようだ。

 

 なので、今は両肩に搭載しているアンテナから前方に転送波を照射し、そこに向かって胴体のビーム砲を撃ち込めば、高エネルギー粒子であるビームを指定の座標に転送できるはずである。

 

 もしこれが実現できれば、物理的な障害を飛び越えて飛んでくるビームというとてつもなく恐ろしい物が出来上がるはずである。

 

 うひょー。楽しみ。上手くいくといいな。

 

『座標設定完了しました。上手くいけば、私達の隣にビームが転送されてくるはずです』

 

「よしよし。じゃあ実験を開始するよー」

 

 量子転送装置を起動。前方に向かって、ふにょふにょふにょ……といった感じでエネルギーの波っぽいものが放射される。

 

 それに目掛けて、ビームをシュゥーッ!

 

 さーて、どうだ? こっちの思惑通りなら、すぐとなりの空間からどばーっとビームが放射されてくるはずだけど……。

 

 機体の首をひねって、指定座標にセンサーを向ける。

 

 一見すると何もない空間。だが確かに、高精度のセンサーは急激なエネルギーの高まりを検出していて……。

 

「おおっ」

 

 ぴかー、とピンク色に光始める空中。いいぞ、いいぞ。

 

 ここからどばーっとビームが。

 

 どばーっと。

 

 どばー…………あれ?

 

『……光っておしまいでしたね』

 

「あれぇ?」

 

 視線を戻すと、胴体のビームは射撃を完了し、冷却に入っていた。そして転送波は変わらずうにょうにょと照射されている。

 

 ええっと。

 

 これはつまり……。

 

『どうやら、転送できるエネルギー量に限度があるようですね。少なくとも、物体を破壊するだけのフォトン粒子は転送できないようです』

 

「あのボスは大電量転送してたんじゃないのぉ!?」

 

『同じ装置でも、オリジナルかつ大規模だったであろうボスのものと、あくまでデータを参考に再現した劣化装置では、まあ出来る事に違いがあるという事ではないかと……』

 

 テレサの冷静な指摘にがっくりと肩を落とす。

 

 確かに、彼女の言う通りである。ボスの能力を使えるようになるタイプのゲームでも、基本的にプレイヤーが使えるのは劣化版だものね。そっくり同じなのが使えると流石にバランス崩壊もいいとこだ。

 

 それに考えてみれば、私達が倒したのはオフライン版のクラウド・センチピード。オンライン版のそれと比べれば、HPや防御力が大幅に劣化していると考えるべきだ。となると、倒した時の報酬もそれ相応にダウングレードしているのが当然であって……。

 

 恐らく、もし存在したとしてもオリジナルスペックのアビリティを手に入れるには、オンライン版のアイツを倒さないと駄目なんだろうなあ……いや無理だって。多人数で挑めるって一見メリットしかないように見えるけど、あの手の超高速攻撃を繰り出してくるボスの場合は誰がターゲットになってんのかわかんないっていう問題が生じる。タンク職っていうかターゲット吸い寄せが無いこのゲームだとそれは致命的で、ちょっと読み間違えた瞬間にチーム全滅である。

 

 そもそも、私には一緒に攻略不可能レイドボスに挑んでくれる酔狂なチームメイトも居ない訳なのでそれ以前の問題である。

 

 つまり。

 

「うわあーん……苦労してクラウド・センチピード倒して、これっぽっちかよぉ……」

 

『しょ、ショウさん……その……お気の毒に……』

 

 期待した分、衝撃も一入。私はショックのあまり、放心状態でコンソールにつっぷした。

 

 あいて、頭テーブルで打った。

 

 

 

 

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