ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第百二十四話 マッガーレ

 

 まさかの新アビリティが期待外れ。

 

 その衝撃にしばらくつっぷしていた私だったが、いつまでも気落ちしては居られない。

 

「……しょうがない。とにかく、せっかくの新アビリティなんだ、色々試すぞ」

 

『了解しましたー』

 

 とりあえず一旦ホームに戻って、カスタマイズ画面の前に。

 

 カタログ画面を前に、うんうん頭を捻らせる。

 

「ええーと、とにかく、高エネルギーでなければ遠くに転送できるんだよな。テレサさん、データはとったんだろ? 具体的には何が飛ばせそう?」

 

『ううーん。少なくとも、量子転送装置で直接攻撃力のある何かを転送する、ってのは出来なさそうです。あくまで補助的な使い方がメインになるんじゃないかと』

 

「補助的ねえ……」

 

 ぱっと思いつくのはレーダー波かな。レーダーの電波を転送して遠くに……いや戻ってきたのキャッチできなきゃ意味がないからダメだ。

 

 あとは通信か? 通信を妨害されてるような状態でも、音波とかそういうのを転送して長距離通信……まあ試してみないと分からないができなくもなさそうだ。でもそこまでして通信する相手が私にはいない。ぼ、ぼっちって意味じゃないぞ、オフラインだからだ。

 

 うーん、うーん。ぱっと思いつかないなあ。

 

「そういや、しばらくスキル確認してなかったな。何かよいものが増えてるかもしれない」

 

 最近はテレサが作ってきたフレキシブルワイヤーとか、無人機運用とかの、設計面での創意工夫がメインだったからな。戦闘中にいちいちレベルアップの表示とか説明とか見てられないし。

 

 久方ぶりにプレイヤーメニューから確認してみると、おお、増えてる増えてる。

 

 一番伸びてるのは『粒子砲スキル』だな、やっぱ。ただ、運用を大きく変えるような革新的スキルは増えてない、冷却時間短縮とかチャージ時間現象とかのサブスキルが生えてきているだけだ。まあ露骨に狙い撃ちで修正食らったのと、すでに大分レベルが高くなってきて伸びが悪くなってきているのもあって、今回は特に影響なさそうだ。

 

『機関砲スキル』とか『熱線砲スキル』は地味に結構伸びてきてる。特に熱戦砲スキルは、お決まりのサブエネルギーに関わるスキルを新しくゲットしているな。ふむふむ、相手に与えたダメージに応じてサブエネルギーが回復する……倍率次第だけど腐る場面はなさそうな良いスキルだ。あればあるだけ助かるね。

 

 あとは……。

 

「お、偏向装置の形状が増えてる。へえー……」

 

 みれば、以前はリング型しかなかったビーム偏向装置のバリエーションが地味に増えてる。レール型とか、コイル型とか……なんか広範囲に偏向フィールドを発生させるみたいなのもあるな、これってようはビーム防御バリアみたいなもんか。

 

 うーん、なんか悪い事に使えそうな気も……あ。

 

「……ふふふ、閃いたー。閃いちゃったー。ねね、テレサさん。この力場、転送装置の対象になる?」

 

『え? うーん、どうでしょう。磁場を用いてビームを曲げる原理ですが、その磁場を生じさせる粒子の方が飛ばせれば……え? ま、まさか……』

 

「そう。そう。つまりは、そういう事だよ」

 

 私はテレサの肩を控えめにぽんぽんし、意気揚々とカスタマイズ画面に指を走らせた。

 

 

 

 そんでもって、試作機第二弾!

 

 今度は胴体のビーム砲を小口径三連に換装! たくさん撃てないと実験がやり辛いからね。んでもって、機体の両腕にコイル型のビーム偏向装置を追加で装備。

 

 部分的な改装に留まるので、所要時間はそれほどでもない。ちょっと30分ほどログアウトしてお風呂入ったりしてきたら、さあ、実験だ。

 

「よーし、出撃ー!」

 

『しゅっぱーつ!』

 

 再び雪山エリアに再出撃。

 

 早速、試運転……の前に。

 

「流石にターゲットも何もないと逆にやり辛いから、ちょっと準備しよう」

 

『? ターゲットドローンとかを持ち込めばいいのでは?』

 

「それも悪くないんだけど、せっかく雪山なんだし……ね?」

 

 あとは人型である事の利点も、たまには利用しないとね。

 

 色々言われる人型ロボットだが、パイロットが人間である以上“動く様子がイメージしやすい”という点では断トツだと思うんだ。それは習熟時間の短縮にもつながるし、なんなら人間に出来る事は同じ動きをすればロボットでも出来る、という事である。

 

 こんな風にね。

 

 私は近くの雪を押し固めて雪玉を作ると、それをころころと雪原の上で転がした。最初は小さかった雪玉が、どんどん大きくなっていく。

 

 ま、サラサラの雪だからそこまでしっかりしたものは作れないけど、標的代わりにはちょうどいい。日本に降るようなしっとりした雪だったら、雪ダルマかなんかを作りたかったんだけど。

 

 とりあえず雪玉を三つぐらい作って、適当に雪原に並べる。

 

「まあ、こんなもんで……テレサさん?」

 

『ほわあ……』

 

 機体の手についた雪を払い落としつつ振り返ると、隣の席の彼女は画面に映る雪玉をキラキラした瞳で見つめていた。

 

「……興味ある、こういう遊び?」

 

『はっ!? あ、い、いえ、その、別に……そういう訳では……』

 

「ははは、照れなくていいよ。そうだね、じゃあ実験が上手くいったら、ちょっと降りて雪遊びしようか。エレベーターの出入口付近はメタルインセクトも出ないし」

 

『ほんとですか!? ……はっ!?』

 

 予想以上の食いつきを見せた後、慌てて口を手で押さえるテレサ。もう遅いって。

 

 たちまち顔を赤くして俯く彼女に、珍しいものを見たなあとちょっと得した気分で私は正面に向き直った。

 

「ははは、じゃあさっさと実験を始めようか」

 

『え、えと……はい……』

 

 恥ずかしそうな彼女の様子に微笑ましい気分になるが、いやいや、気持ちを切り替えないと。

 

 コンソールから、ぽちぽち、と転送装置の座標を指定。場所は、ターゲットである雪玉から大きくずれた位置に。この場所では、仮に転送した粒子に攻撃力があっても何の影響も与えられないが、それでいい。

 

「偏向力場、展開!」

 

 両手の拳を胸の前で突き合わせるように、腕を水平に構える。

 

 その両腕のビーム偏向装置から、青く光る粒子がキラキラと放出されていく。それに重ねるように、転送波を照射。ふわんふわん歪むエネルギーの波の中、青い粒子が溶け込んでいく。

 

 モニターの映像を確認。指定座標に、僅かなれど確かに青い光のようなものが見える。

 

 それに照準を合わせて、私はビームの引き金を引いた。

 

 ターゲットから明後日の方へ向かって放たれるビーム。それが、煌めく粒子に接触して、角度を変える。結果、30度ほど軌道を変えたビームが、標的である雪玉を消し飛ばした。しゅわわ……と立ち昇る蒸気にガッツポーズ。

 

「ようし! それじゃあ、今度は両肩それぞれ、別の座標に偏向力場を転送して、と」

 

 標的までの間に、互い違いに座標を設定。再び放たれたビームはそれらの影響を受けて、ジグザグに曲がりながら標的を貫く。

 

『お、おぉー……』

 

「よぉし、これで好きな所で、好きなタイミングでビームを曲げる事が出来る訳だ! いいぞいいぞ、面白くなってきた!」

 

 攻略wikiにかかれていたが、ビームはまっすぐしか飛ばないのが特徴にして最大の欠点でもある。だが、量子転送装置とビーム偏向装置を組み合わせる事で、いついかなる時でも、好きな処でビームを曲げられるようになった。

 

 勿論、曲げられる最大角度等制限はいくつもあるだろうが、ふふふ、応用範囲は無限大!

 

 これを使えば、あーんな事や、こーんな事だって……いえい!

 

「よおし、早速雪山の雑魚相手にテストと行こう! テレサさんは座標設定を頼む」

 

『わ、わかりました! うふふふ、腕が鳴ります!』

 

 こういう数値を弄る作業はテレサの方が得意だしね。ここは分業と行こう。

 

 さーてと。

 

 出来るだけ、弱点とか課題点を、今日中に洗い出したい所だね。

 

 

 

 

 

『ところで、ショウさん。この妙なポーズに何か戦術的意味は……?』

 

「え? いやなんかこう、オールレンジで転移攻撃仕掛ける時のお決まりのポーズっていうか……宗教上の理由で天の字の構えを取らないといけないというか……」

 

『は、はあ……?』

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

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