ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
さらなる試験の為、雪山を奥に進む。
試験機は単独でも戦闘可能に設計したアインをベースにしている為、メタルインセクトとの交戦にも十分耐えられるはずだ。さらなる改良の為に、ある程度問題点をここで発覚させておきたい。
『レーダーに感あり、敵です!』
「おいでなすったか」
山を登っていると、テレサの警告。その言葉通りに、崖の上からわらわらと、そろそろ見慣れてきた猿型メタルインセクトの群れが姿を見せる。
耐久力、数、ともにちょうどいい相手だ。早速実戦テストと行こう。
その場で機体を停止させ、殺到してくるメタルインセクトに向かい合う。本来なら、後退しながら戦った方がこの手の相手には有利に戦えるんだが……。
「あんまり激しく動くと、転送が上手くいかないんだよな?」
『はい。それに座標設定が絶対座標ではなく相対座標になっているので、大きく位置をずらすと再設定が必要になってしまいます』
「おけおけ」
早速問題が発覚である。実戦において棒立ちなんていい的だからまた何か対策を考えないとな。
それはそれとして、これぐらいの相手ならそれでもなんとかなるだろう。
『座標設定、転送装置起動。ショウさん、いつでもどうぞ!』
「そんじゃ、発射!」
胸部から発射されるフォトンビーム。それは一つ目のポイントでぐぐっと曲がり、斜めに敵の群れを打ちぬいた。数体がビームに巻き込まれてダメージを受ける。
そのままビームは勢いあまって群れの反対側に突き抜けるかと思われたが……。
『ここで、こう!』
「おぉー」
さらにその先で、転送されてきた偏向力場で軌道修正。曲がったビームが、まだ崖の上に居た一体を撃ちぬいた。
いいね、いいね。普段は過剰気味なビームの粒子量だが、これを再利用できるとなるとかなり美味しい。
『まだまだいきますよ! ショウさん、次は2時方向に!』
「おけおけ」
今度はほぼ真横といっていい角度に出現した座標にビームを撃ち込む。曲がったビームはメタルインセクトの群れの最前列を横切るようにして彼らを焼き払い、さらにその先でもう一度曲がる。N字というにはちょっと角度が浅いな、いいとこS字ってところか?
単純な殲滅効率なら薙ぎ払った方がいいが、曲がるビームに思わぬ角度から攻撃されてメタルインセクトも何やら混乱しているようだ。いつもであれば一目散に駆け寄ってくるか、手あたり次第に氷を投げつけてくる連中が揉みくちゃになって交通渋滞を引き起こしている。
想定外の確度、意識の外から飛んでくるというのはそれ自体が脅威だ。対人戦でも、かわしたと思った攻撃が横や背後から戻ってきたら、単純なダメージ以上に相手に与える影響は大きい。オールレンジ攻撃ってのはそれが怖いんだ、それが。
「へっへっへ、こいつはなかなか面白いな」
『ふっふっふ、いいえ、まだまだこんなもんじゃありません。次は、連続で座標を切り替えながらいきますよー!』
「ほほう、ほほう。どれどれ?」
いつになくテンションの高いテレサに促されつつ、ビーム砲の狙いをつける。やはり三連装にして正解だった、テンポよく実験が出来る。
『それではどうぞ!』
合図に従ってビームを発射。指示されたポイントに撃ち込まれたビームはそこで曲がって、その先で曲がって……さらにその先で……おおっと、これは。
ジグザグに軌道を変えるビームが、まるでテニスのラリーのようにメタルインセクトの群れを縦横無尽に薙ぎ払う。狙いは流石に甘いので直撃はしないが、おかげでビームがなかなか途切れない。もともと耐久は高いが防御力は高くない猿型の群れは、縦横無尽に飛び交うビームに焼き払われて忽ちのうちに壊滅した。
「おぉおお……すっげえ……」
『うふふふふ、凄いでしょう? ビームが消えるまでは、ご覧の通り』
群れを焼き払ってもまだ勢いが残っていたビームが、空中をひゅいんひゅいんと飛び回る。まさに自由自在だ。
『ビームはもともと射程は長めでしたし……過剰気味のエネルギー量を持っているのは変わりませんからね。突然、性質が変化しましたけど、それはあくまでメタルインセクトに与えるダメージや周辺環境への影響の方ですので、本質はそのままですから』
「あー、なるほどなあ」
思い返せば、調整食らって影響力激減したけど、例えばプラズマビームだったらその余剰熱量でジェットエンジン回すぐらいのエネルギーがあった訳だしなあ。フォトンビームも、敵に対してダメージになるのは全体の数割、って所だし、そのエネルギーを余すことなく使う事が出来ればこんな感じになるのか。
しかし、これって一発のビームのヒット数が増えてる形になるんだけど、そういう場合ってダメージ判定が途中で消えるんじゃなかったっけ? 偏向力場を間に挟んだ事で計算式が変わってるのか? あるいは、アップデートでそのあたりも変わった?
一応後で運営に問い合わせておくか……。
「いやあ、しかし最初はがっかりしたけど、なかなか面白い事に……っ!」
『? ショウさ……きゃああ!?』
咄嗟に機体を反転させる。直後、上から降ってきた猿型の一撃を、辛うじて交差させた両腕が受け止めた。されど、機体に決して軽くないダメージが入る。
そのままこちらに組み付いたメタルインセクトが至近距離で吠える。
『ギギギギ……!』
「まだ生き残りが……群れからはぐれた個体がいやがったのか!」
『す、すいません、レーダー反応を見落としました!』
「謝罪は後だ、こいつをとにかく突き放す!」
これだけ密着していたらビーム砲の射線も取れない。どうにか突き放して距離を取ろうとするのだが、まるでそれが分かっているように猿型はこちらにくみついて離れようとしない。ええい、こいつ、こういう思考ルーチンだったか……?!
まずい、この機体は近接武器どころかハンドガンだって持ってないぞ、このまま白兵戦に持ち込まれたら……。
「ぐぅ!?」
振り回された爪のひっかきが、左肩のアンテナに命中。火花を散らして部品が吹き飛び、ステータスが赤く染まる。くっそ、肩関節のいい所に入ったか!?
『機体稼働率低下……ショウさん!』
「ちぃ……っ! テレサ、座標コントロール、こっちによこせ! 早く!」
『は、はいっ!』
こっちのコンソールに転送装置の制御権が戻ってくる。たしか絶対座標っていってたな!? だったら、これをこうして、ああして……。
「よし! 食らえ!」
座標の入力を完了して、ビームをぶっ放す。が、猿型は発射前に胴体から離れて、発射したビームはかすりもしない。機体の頭にしがみつく猿型が、まるで無駄撃ちを嗤うように声を上げた。
『ギギギギッ!』
「ああ、笑えるな。お前が馬鹿で助かったよ」
『ギ?』
発射されたビームは、転送された偏向力場で屈折。それを数回繰り返して、撃った場所に戻ってくる。
直後、Uターンしてきたビームの一撃が、機体の頭部ごと猿型を撃ち貫き、爆散させた。
ダメージに揺れるコクピットの中で、ふう、とため息をつく。
「よーし、なんとかなった……」
『さ、流石です……。屈折させたビームで近接攻撃を行うなんて』
「まあテレサさん的には自壊前提の攻撃ってやり辛いか。まあ、あんまし褒められたもんでもないよ、こうならない方がいいに決まってるし」
しかし、ううむ。ちょっとこの近接戦の弱さは問題だな。
単に武装が無かった、という問題だけではない。それだったらあそこまで綺麗に不意打ちを食らう事は無かった。
偏向によってビームを曲げる事に夢中になってしまい、警戒が疎かになっていたのだ。言うなれば、思考リソースの不足である。
例えば仮に、自由自在にショットを曲げられる自機があれば、シューティングゲームは楽勝か? そうではない。敵の攻撃を回避しつつ、さらに自分のショットを制御するとなると、人間の脳みそでは処理能力が不足してくる。慣れれば出来るものかもしれないが、どっちにしろそれで手一杯になる。
今回も同じだ。
言うなれば、ビームを自在に曲げられる事こそがこの機体の欠点と言える。
「うーむ。どうしたもんかな……といいつつ、ふふふ。怪我の光明という奴かな。こうして実際に奇襲を受けた事で、良いアイディアが思いついたぞ?」
つまりは、攻撃に集中できるように本体が鉄壁の守りを得ればいいのである。
その為の方法は今の戦いが教えてくれた。あとはそれを形にするだけだ。
「よぉし、急いでホームに戻って機体をカスタマイズだ!」
『はーい!』
善は急げ。私はわき目もふらずに来た道を引き返した。