ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
さて。
今回、あらたに追加する機能は二つ。
一つは安全なポジショニング取りを可能とするもの。そしてもう一つは、直接的に身を護るための盾の搭載だ。
そのうちの一つ、機体を安全地帯に配備する為の装備を搭載する。
「という事で、この大型ドローンとかに使えそうなプロペラ。これを機体に四つ、搭載します」
『ふむふむ。機体そのものを、ドローンのように空中に静止させてしまおう、という事ですね』
そういう事である。テレサは察しが良くて助かる。
ただ空中に居るだけでもメリットは大きい。言うまでもなく地上を歩くタイプのメタルインセクトからは攻撃されないし、何よりこっちもより広い範囲を見渡す事が出来る。先ほどの戦いでは、本体から放つビームの射角に制限があった事で、それをフォローする為に偏向力場を用いるシーンもあった。空中に浮かぶことで、より攻撃に集中して偏向力場を用いる事が出来る筈である。
しかしこれには勿論問題もある。
『でも、空中に浮かぶと返って敵からの攻撃が激しくなるから不利、という話だったのでは?』
「それを解決するのが、追加で搭載したこのプラズマビーム砲とセットになった偏向力場って訳」
久方ぶりに持ち出してきた、青く光るビーム砲身。影響激化スキルが超絶弱体化された事で、プラズマビームの発する高熱がデメリットばかり目立つようになった事で最近使ってなかったが、今回想定している使い方にはコイツが最適だ。
「理屈はこうだ。発射したビームを意図的に拡散させて、それを規定の角度で屈折させる事を繰り返すと……」
『……ああ、成程! 発射したビームで、球状に機体を包み込んで守りにするのですね!』
「そゆ事、そゆ事」
つまりはビームバリアーである。敵の攻撃を、ビームの壁で相殺するという訳だ。相殺力だけでみたら荷電粒子砲が最強なのだが、あれは大気と干渉しあってものすごい勢いで拡散、消滅してしまって継続的に障壁として利用する事は出来ない。荷電粒子砲ほどでないにしろ、超高熱を持ち相殺する力が高く、それでいてそこそこ長射程のプラズマビームこそが、バリアーに流用するにはちょうどいい。ついでに、飛行用のプロペラローターに使うサブエネルギーの一部ぐらいは、弱体化した熱再転換スキルでも補えるしね。
「敵の接近は勿論、ちょっとしたミサイルとかライフルとかなら、これで防げるはず。まあ、Wトリガーからの集中射撃とか食らったらそれでお陀仏だけど、そこはまあ、ある程度ダメージ軽減はできるはずだからやられる前にやる、という方針で。それに本番は別にこの機体だけで戦う訳じゃないしね」
『なるほど、なるほど! そうですね、考えてみれば今は試験運用だから単体で戦ってますけど、トーナメント本戦なら他の二機と合体すればいい訳ですからね!』
「そういう事だね」
流石にフリービーム砲のギミックを積んだ上で、有線ビームクローまで一号機に搭載する事は出来ないから、2号機、3号機に一つずつ積むか?
合体中は本隊がビームバリア展開してダメージを軽減しつつ、有線ビームクローとフリービーム砲で攻撃する。これなら相手がビーム対策に偏向力場を持ち出しても、クローの攻撃で突破できる。
うん、いいんじゃない?
「よしよし、良い感じに纏まってきた。ふふふふ……巨大合体機体に、曲がるビーム砲にビームバリア! ボスらしくなってきたじゃないかー、ぐふふふ」
『ショウさんはボスじゃなくてあくまで1パイロットですけどね……』
それはいいっこなしだよテレサちゃーん。
誰だってね、一度はボスになってみたいのさ。まあ私の場合一度どころじゃない気もするけど。
「そうだ、ただプロペラをつけるだけじゃ面白くない、こう、肩アーマーの前後がパカパカするようにしてさ、そこにプロペラ仕込まない? こう、陣羽織みたいな感じで」
『それでしたら、転送装置のアンテナとかも装飾の一部みたいに組み込めたらいいですね。この際せっかくだからある程度見た目にもこだわってみましょうか』
「お、いいね、いいね。そうだな、武骨なのも悪くないんだけど、たまには機能的に意味が薄い角とか飾りとかつけちゃうか! はったりも強さのうち、ってね」
うふふふ、なんだか楽しくなってきたぞー!
基本的にガチャガチャカスタマイズする方だから、パーツ変えると外れちゃうデカールとか飾りパーツとかつけない派だったんだけど、せっかくだし今回は色々試して見ちゃうか!
私のセンスが壊滅的に死んでる事だけが問題だけど、テレサの意見も交えれば少しはマシになるだろう!
「よーし。じゃあさ、まずは機体を真っ白にして……」
『……んー。ショウさん、ショウさん。そこはただRGBを全部最大にするよりも、場所によってちょっとトーンを変えた方がいいですよ。どっちかというとグレーで、あくまで相対的に白って感じにした方が……』
「な、なるほど」
そして開始数秒で早速センスの差を見せつけられる私なのだった。というか、AIに芸術的センスで負けてる私って……うぅ……。
そんなこんなで、トーナメントを楽しみにカスタマイズに励み。
合体機体もより凶悪、強力にしあがってルンルンウキウキだった私の元に、ついに運営からトーナメントについてのお知らせが届く。
待ちに待った、決勝トーナメントのお知らせ。しかし、そこに書いてあったのは……。
「な、何故だ……」
パソコンの前で、ガーン、と頭を抱える私。画面には拡大された運営からのお知らせメールの文面が表示されている。
そこには、確かに私がスコアトップ20に入っており、決勝トーナメントへの参加が決定した、という旨の表記がなされている。
それはいい。
いやホントこれは嬉しいのだ。最終ウェーブで脱落したのもあって、もしかしたらポイント足りないんじゃないかとか思ってたからね。ほら、あの手のスコアって、終盤で急激に増えるもんだし……。
問題は、それに続けて書かれていた次の文面である。
『決勝トーナメントについてですが、チーム戦ではなく個人戦で行われる事に変更されました』
そう。
チーム戦から個人戦への変更。
それはつまり……。
「せっかく合体機体用意したのに使えないじゃないかぁ……!!」
そうい事である。
一体どういう事だ運営。直接戦闘が苦手な、支援系のプレイヤーだって活躍できるように、チーム戦を採用したって話じゃないか! それがここに来てどうして突然、個人戦への変更だなんて……!
「な、納得いかない……! そ、そうだ、ファンコミュニティの反応はどうなっているんだろう? きっと皆だって不満を感じてるに違いない!」
確かにトーナメント形式を決定するのは運営のさじ加減一つだが、不平不満があまりにも多ければ再考せずにはいられないはず!
ここに来ての突然の前言撤回、きっと他のプレイヤーも同じように不満を覚えているに違いない!
そう思って、私は攻略サイトの掲示板など、他プレイヤーの意見が見られる場所を覗いてみた。
11.名無しのプレイヤー
『妥当』
12.名無しのプレイヤー
『しゃーないね』
13.名無しのプレイヤー
『やむを得ないか』
しかしそこに並んでいたのは、しぶしぶとはいえ運営の判断を受け入れる方向の意見ばかり。反対意見は殆ど見当たらなかった。
「なんでだー!?」
おかしい、クセの強いロボゲープレイヤーがここまで大人しいはずがない! きっと何か理由があるはず……そう思って、情報を求めてログを読み進めていくと……。
112.名無しのプレイヤー
『まーたルールの裏をついたような化け物機体に暴れられても台無しだしな』
113.名無しのプレイヤー
『そもそも前線基地ルールが本戦で無くなったのもビグ●ムが暴れたせいだろ?』
114.名無しのプレイヤー
『それに対策したら今度は意味不明な合体機体が大暴れだしな……なんだあれ、脚の生えたラフレ●アかよ』
115.名無しのプレイヤー
『このゲーム、基本的に合体のメリット殆どないはずなんだがなあ』
116.名無しのプレイヤー
『合体したら出力上がるけどそれで得られるメリットってあんまないしな……普通、合体しなくても使えるように武器はできてる訳だし』
117.名無しプレイヤー
『トーテムポールみたいに積み重なるだけだもんな、普通なら。的がデカくなるだけで、装甲も分厚くなる訳でもないし。浪漫だよ浪漫、あくまで普通なら。あくまで本当に普通なら』
118.名無しのプレイヤー
『だが奴は弾けた。いやほんとにいい加減にしてくれよ、あの“野生のレイドボス”って荒らしか何かかよアレ』
「…………」
なんだか。
その。
身に覚えのある話が、色々と……。
「そ、そうか……私、野生のレイドボスだなんて呼ばれてたのか……えへへへ……じゃなくて!」
うわーん!
これは、もしかして……自業自得、という奴なのでは!?
「……ちょっと友人に相談してみるか」
私は携帯を手にポチポチと画面を操作した。