ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
尚、その友人の第一声がこれである。
『ああん? 自慢か?』
「違うよぉ!?」
通話先の友人はめちゃくちゃ不機嫌だった。
『良かったなあ、決勝トーナメントに出られて! 噂話にもなって! 流石は野生のレイドボス様だよなあ! それでレイドボス様が予選失格の俺に一体何の御用ですかね???』
「ごごごごめんて……悪気はなかったんだ悪気は……」
『ちっ』
けっこう本気の舌打ちにびくっと肩が跳ねる。苦手なんだよそういうの。
まあ友人も本気では無かった……まあ一応多分恐らく……のだろう、その舌打ちを最後に、険悪な口調は鳴りを潜めた。
『まあでも、一対一でもやりようはあるんじゃないの? ってかどうせ、またへんてこりんな機体用意してんだろ? 前に一緒に遊んだ時、スラスター使わずに空飛んでたの忘れてないからな』
「ま、まあ、そりゃね……。一応とっておきを……」
『へえ、どんなんだよ、教えろよ。ネットに流出させてコピー機体流行らせてやるから』
それは本当にやめてほしい。
まあでも、流出させた所で、コピー機体は作れないと思うなあ。
「む、無理かな。ちょっと特別なアビリティ使ってるから……」
『? 特別なアビリティだあ? いや、お前精々雪山ぐらいまでだろ、進んだの。その程度の進行段階でユニークアビリティなんて……おい』
ブツブツ言ってた友人の呟きが途中で途切れる。あ、そういうのあるんだ、ユニークアビリティ。MMOでそういうの結構揉めそうな気がするけど。
『おい。……まさか、まさかだと思うけど……倒したのか?』
「え、何を?」
『クラウド・センチピード! あのあたりで未知の要素っていったらアイツしかねーだろ。お前の事だ、ネットで噂の機体でアイツを倒したんじゃないの?』
ううむ。流石に付き合いが長いだけあって見透かされてるかー。
「ええと、まあ。実は……」
『攻略法教えろよーう。そしたらさっきの失言は無かった事にしてやるからさー』
「まあ別にいいけど……」
元々教えるつもりだったしね。それに私が倒したのはあくまでオフライン版、オンライン版のアイツに同じ戦略が通じるとは思えないし。
という事で気前よく、詳細について伝えると……。
「まあ、そういう感じで。こう」
『うわあ(ドン引き)』
待ってほしい、その反応は納得がいかないんだが。
『あ、悪い悪い。ドン引きしたのはお前じゃ……いや何割かはそうなんだけど、大半はクラウド・センチピードの方な? あの大型ミサイル食らっても本体にダメージはいらない防御フィールドって何だよ……』
「あれってオンラインじゃ使われてないの?」
『分かってて聞くなよ。あんなの、固定標的相手にでもしないと持ち出さないよ。ステータスだけ見てるプレイヤーをひっかける罠みたいな装備だな、あれは。額面上の攻撃力はすげーんだが、弾速が遅いうえに誘導がほとんど入らないから、図体の大きいボス相手でも滅多に当てられないんだわ。おまけに爆発が凄すぎるのが逆に、自爆しやすいし』
「あー」
なんとなくわかる。
あと、弾体がむき出しなのもね……。ボス戦にもっていくまでの間に破損してしまう可能性もある。ある程度レベルが高くなってから使えるようになるミサイルとかは、ちゃんと頑丈そうなケースに収めてあるしね。
『ごーくまれに対抗戦で持ち出した奴が狙撃されて花火になるのは風物詩だな。まあそれでも、それだけ条件整えて不意打ちだったら当てられない事もないのか』
「そうだね。逆に言うと、それぐらいの火力を最初に中てないとそもそも勝負の土俵にも上がれないよ、あれ。防御フィールドの出力が高すぎる」
伊達にアップデート前とはいえプラズマビームを防ぎきっただけの事はある。というか防御フィールドには満額ダメージはいるはずだから、むしろ弱体化前のプラズマビームのダメージを吸収しきったのか、あれ。考えるとインチキ防御力にも程がある。
『んでもって、その後即死雷撃だろ? そこから先に進んだボスでも、そんな攻撃しかけてくる奴はいねーよ。聞いた限りだと滅茶滅茶感電対策してきたのにブレーカーごとフッ飛ばされてるじゃん』
「いやー。あそこまでガチガチに対策して駄目とはねー。吃驚したよ。で、どうにかなりそう?」
『無理に決まってるじゃん』
デスヨネー。
『まあでも、勝ちの目は出てきたな。やっぱり、あのボスとは上空で戦っちゃ駄目だわ。お前の教えてくれたやり方で地上に降ろして、何か大技でバリア剥がして、ドローンの進路が特定できないのはとにかく弾幕でドローンを片っ端から撃墜すればなんとかなるか……? 落雷攻撃に関しては、何か囮を用意すればワンチャン……いや、でもなあ。オフライン版のレイドボスはあくまでお試し要素で、オンライン版になると強化されてる事が多いからなあ』
「え、そなの? いや、そりゃそうか」
『ああ。あと個人的な予想だが、勢いあまってドローン全滅させたりすると逆に特殊な行動パターンとかとってきそうだな。うーん。でも、ちょっと今度、フレンド誘って挑んでみるわ。勢いあまって倒せたら御の字、HPを何割か削れるだけでも話のタネにはなる』
「その程度でいいの? いっそここは倒してやるぜー、って気概じゃないと」
私の無責任な囃し立てに、通話の向こうは深ーい溜息をついた。
『お前な。アホみてーな化け物機体ばっか作ってるから感覚がマヒしてんのかもしれねーけど、ビルドロボオンラインの流行りは対人戦に最適化したライフル主軸の機動戦なの! あんな押し寄せるメタルインセクトを片っ端から薙ぎ払う触手のお化けみてーな機体は普通の奴は作ってねえの!! っていうかなんだよあれ、お前どうやってあんなの設計したんだよ』
「んー。そこはテレサに頑張ってもらったっていうか」
『テレサァ? あの、オフラインモード専用の支援AIか? 俺もちょっと触ってみたけど、あんなのバーチャルキャバクラというかコンパニオンというか、可愛い置物みたいなもんじゃん。お前一体どういう学習させたんだよ??』
友人の言葉に、逆に私も首を傾げる。
いや、言ってる事は分かるけど……可愛い置物? 割と最初からテレサはぐいぐい来てた気がするけど……最初に、BANを怖がって半ば無視してたせいかな? あれで承認欲求高まる方向の学習したとか……?
まあでもやっぱ基本的にはおとなしいモデルなのね。見た目的にもそんな感じだし。
まあよそはよそ、うちはうち。私んとこのテレサはちょっと火力偏重主義でバーサーカーなだけである。うん。
「まあ頑張ってくれたまえ、はははは。私は決勝トーナメント頑張るから」
『ええい畜生せいぜい無様に負けるがいいわ』
ふはははは負け犬の遠吠えは気持ちいいのう。
「とまあ、そういう事らしい」
『あらまあ……』
んでもって、その話を私はテレサに語り聞かせていた。
勿論、オフラインだのオンラインだの、彼女に負担になる所は美味い感じに誤魔化しての話である。
『友人さんが無事に勝てるといいですね』
「まあ、攻略法が分かった所でそれだけでどうにかなる甘い相手じゃあないしなあ。対策万全にした合体機体でも苦戦を強いられた訳だし……」
そもそも、私はテレサ謹製のオペレーションプログラムというある意味ズルを使っての話だからな。友人がそれに代わる物を用意できるかどうかはまあ高みの見物である。
「ん。まあ、そう何体も居る訳じゃないだろうから、私達はしばらく遭遇する事はないだろうけど。そういう訳だから、テストも兼ねてアイツが守ってたっていう高射砲基地の様子を見に行きたいんだけど、どうだろ?」
『ふむふむ。確かに、それは私も興味がありました。高射砲というからには人類の建造物なんでしょうけど、それをどうしてメタルインセクトが守っていたのか……気になります!』
どうやらテレサも乗り気の様子。
と、そうだ。今日はそんな彼女にプレゼントがあるんだった。
「それはそうと、決勝トーナメントに出れたのはテレサさんの御蔭だし、これからも頼りにしているって事で、今日はプレゼントがあるんですなこれが。はい、どうぞ」
『え、これは……?』
初めて使うプレゼント機能! テレサに送るのは、じゃじゃーん。NPC用コスチュームセットB! AIサポーター実装に伴って追加された課金要素である!
まあ、一着千円前後で、高いのか安いのか分からないが……どうかな。喜んでくれるかな?
『え、え、えっと。その。……嬉しいです! 早速着替えてきてもいいですか?』
「どーぞどーぞ」
実体化されたプレゼントアイテムの箱を大切そうに抱えて、ててててーとホームの端っこに走っていくテレサさん。ガシュン、とロッカーみたいな施設に姿を消す彼女を見送って、私はカスタマイズ画面に向き直った。
とりあえず、ビームが通じなかった時の為の予備装備に何か搭載しておくか。まあここは無難にマシンガンでも装備するか、っと。
「しかし一瞬で着替え終わるかと思ったけど結構またされるな……」
結局、テレサがもどってきたのはカスタム画面を弄り始めてから10分ほどの事であった。
『ショ、ショウさん……その。着替えてきました……』