ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第百二十九話 跳ねた油は危ない

 

 

「うーん、順調、順調!」

 

 さくっとメタルインセクトの群れを片付けて、私は機体の性能に一しきり満足した。

 

 防御力も攻撃力も想定通り。ビームバリアも歪曲ビームも狙い通りに機能した。機体スペックそのものは申し分ない。

 

 合体せずこれだけの性能を発揮するなら十分である。

 

「ただ、やっぱり特化機故の難点もあるなあ」

 

『そうですか?』

 

「うん。攻撃防御をビームに依存しすぎる。というかこれ、ビームバリア展開してたら自分のバルカンも相殺しない?」

 

 ゲームなんかでは都合よく自分のバリアと攻撃が干渉しないものだけど、流石にビルドロボオンラインではそうはいかない。もっと細かくバリアの対流をコントロールできるなら可能かもしれないが、流石にそこまでの微調整は無理っぽい。

 

『バルカン撃つ時だけバリアを解除するとか?』

 

「自分から守りを捨ててどうすんのさ」

 

『……それもまあそうですね。うーん』

 

 そもそも考えてみれば、補助武器がバルカンだけというのもしょうもない。仮に相手がビームを無効レベルまで対策している機体だとして、バルカンだけ使えれば勝てるか? というとそうではない。

 

「うーん。まあもうちょっと試してみるか。例えばビームのわずかな粒子でも敵機体内に直接転送したら致命傷になったりしない?」

 

『えげつない事かんがえますね……』

 

 そう? 割とロボットものでは定番の攻撃方法だと思うけど。

 

 そんな感じでぐだぐだしゃべりながら山を登っていくと、やがて山頂を覆う黒雲が見えてきた。その内部に突入する。

 

 視界は霧に閉ざされたようで最悪だ。しかも時々、落雷が遠くで瞬いている。雷が落ちてきたら、どれだけ感電対策をしていてもイチコロだ。早いとこ駆け抜けてしまおう。

 

「うひー。いかにも竜の巣って感じだ」

 

『住んでたのはオオムカデですけどね』

 

「昔話だと、化け百足は竜でも逃げ出す大妖怪だったらしいね……」

 

 そういう意味だと、最上級メタルインセクトのモチーフとしてはふさわしいのかもしれない。まあでも、メタルインセクトって名前の割に虫型じゃない奴もたくさんいるから、そんなに細かくきにする事はないのかな。

 

 もっと先にいったらドラゴン型メタルインセクトとか普通にいるのかもしれないね。

 

「ちょっと楽しみになってきたかも……ああ、いや、なんでもないよ」

 

『?』

 

 そんな感じでフワーっと先に進むと、暗い靄の向こうに何かが見えてきた。途方もなく巨大な何かの影……近づくと、私達の前に現れたのは巨大な灰色の壁だった。視線を上げると、天を衝く柱のようなシルエットがぼんやりと雷鳴の中に浮かび上がって見える。

 

 もしかして……これが高射砲施設?

 

 高射砲っていうから、大昔の対空砲みたいなのをイメージしていたけどなんだこりゃ? 展望台を数十倍にでっかくして、望遠鏡の代わりに何かのビーム砲みたいなものを生やしてるように見える。一体何を撃つんだろう……そう思って見上げていると、突然闇の中で砲身が光り始めた。ぷわわわわ……と青い光が輝いて、一瞬の後に世界がまるで太陽を覗き込んだみたいに白く染まる。徐々に薄れていく光に大きく遅れて、ジュババババァ……といった何かが蒸発するような射撃音が嘶きのように響き渡る。

 

 それらのエフェクトに私は覚えがあった。

 

「……ちょ、超大口径、超高出力のプラズマビーム砲……?!」

 

『みたいですね、観測数値が振り切れるぐらいの高出力です。私達が運用できる最大出力のそれの数千倍、これなら地上から衛星軌道上どころか宇宙空間まで狙い撃てますよ』

 

「だとしても……今、何を撃ったんだ?」

 

 今はオフラインプレイだから、他にプレイヤーは居ないはず。それにあの発射角度からすると、あきらかに地球上の標的ではない。

 

 もしかしてテレサの言葉通り、宇宙にいる何かを狙って射撃したのか? ……何かって、なんだ?

 

 そういえば、と思い出す。このゲーム、宇宙進出するコンテンツがなかった気がする。惑星開拓、なんていうのも売りの一つなのに、それだったら宇宙との往来が無いのはちょっと変だなと今更ながらに思う。

 

 なんだろう。

 

 このゲームの世界観設定が、今更になって気になってきた。

 

「……まあいいや。気にしてもしょうがない、か」

 

『案外、衛星軌道上にデブリみたいなのが大量にあるのかもしれませんね。それらを撃ち落とすのがこの砲台の本来の仕事なのかもしれません』

 

「ああ、ありえそう。つまりこの砲台は宇宙ゴミの掃除機かも、ってことか」

 

 それなら納得がいく。現実でも、無計画な国がじゃんじゃか打ち上げて放置している人工衛星の塵が深刻な問題になりつつあるからね。一部の国がそれを除去する試みをしているけど、スペースデブリってのはずいぶんと厄介な代物らしい。

 

 確かに可能性の一つとして、それが可能なら地上に高出力のビーム砲を設置して地上から安全に除去するというのは考えられなくもないな。

 

 まあ問題は、メタルインセクトなんていう人類に敵対的な自動兵器が跋扈してる状態でそんなものが今必要かって事と、誰がそんなもんを建てたのかっていう事か。

 

 しかもそのメタルインセクトの中でも最強格のクラウド・センチピードがそれを守っているっていうね。

 

 仮定に仮定を重ねてもわからない事ばかりだ。ワクワクする。

 

「さってと。この砲台設備には入れないのかな? 出入口がどっかにないかな?」

 

『探してみましょう!』

 

「おっけー」

 

 破壊を試みるのは最後の手段だ。私は出入口を探して、高射砲設備の周囲をうろうろ、うろうろ。すると……。

 

「あ、なんかそれっぽいゲート発見」

 

 しばらくして、設備の陰に見覚えのある感じのゲートを発見する。なんか、地底湖にあった放棄都市のそれと形式が似ている。同じ勢力が作ったものなのだろうか。

 

 あちらはメタルインセクトがゲートをロックしていたが、話によればここはクラウド・センチピードを無視してはいれたはずだ。コンソールに機体の指を触れさせて、ロック解除を試みる。

 

「なんか色々でてきたな……テレサさん、意味わかる?」

 

『問題ありません! カチャカチャ、のカチャではい! ロック解除です!』

 

 彼女のハッキングでロックが解除される。いやあ、本当にテレサさん様様だねえ。

 

 よっこいせっと中に入っていく。流石に内部は通常の機体サイズで、合体機体では入れそうにない。今回ばかりは通常サイズの機体で探索に来て正解だったか。

 

「まあ、人間から見たら途方もない巨大建造物なんだけど……」

 

『人間の運用を考えていない設備のようですね。外に降りての探索はお勧めしません』

 

「頼まれたって降りないよ……」

 

 なんせ聞いた話だと、この内部は超高難度ダンジョンらしいからな。とはいえ、ビルドロボオンラインでダンジョンか……砂漠の超大型ボスの体内とか、鉱山の地下空間とかがダンジョンになるのかな。

 

 ああいう感じだと、ビーム曲げられてもあんまり役に立ちそうにない。ビームバリアも展開できるだけのスペースがあるかな。

 

 まあもともと様子見が目的だったし、やべっと思ったら撤収しよう。

 

 そう思いながら、何もないまっすぐな回廊を進んでいくと、壁に新たなゲートが見えてきた。廊下はまだまっすぐ続いているようだが、マップを見る限りこれは高射砲設備の外周をぐるりと回るだけの通路のようだ。このまま歩き続けてもスタート地点に戻るだけの様子。

 

 またロック解除かな、そう思って指を触れさせると、帰ってきたのはいつもと違う反応だった。

 

「……アクセスディナイド?」

 

『これは……ロックではありません。こちらの機体システムが、扉を認識できていません。これは一体……』

 

「ああ……そういう事か」

 

 考えてみればここはオフラインモードだ。オンライン、それもエンドコンテンツに近い特殊ダンジョンに入れるはずもない。しまった、その視点が抜けていた。

 

 となると、ここでは収穫なしか……?

 

『うーん、なんででしょう。やはり、この設備はイコンを作った人類勢力と関わりがある……? 機体の中枢システムに何か細工があるとしたら……ううん、流石に私でもそこまでは……』

 

「テレサさん、ここはあきらめよう。とりあえず他を見て回る事にしてさ」

 

『ええ、らしくないですよショウさん。あ、そうだ、いっそビーム砲でぶち抜いて穴を空けちゃいましょうよ!』

 

「過激な事はやめよう???」

 

 なんか最近の彼女、気に入らない事があったらすぐ暴力で突破しようとしてない? 一体誰の影響?

 

『えー。試すだけ試してみましょうよ』

 

「まあ、言いたい事はわからんでもないけどさ……」

 

 まあ試す分にはただである。ガコン、とビーム砲を壁に向ける。

 

 せっかくだから、プラズマビームとフォトンビームの同時撃ちだ、奮発しちゃう。合成ビームはもう発生しないらしいが、それでも高火力であるのは変わらない。

 

 果たして壁の素材はこれに耐えられるかな?

 

「ファイヤ!!」

 

 引き金を引くと同時に、壁に向けてピンクと青の光が迸る。それは容易く薄い壁をぶち抜くように見えたが……。

 

「え?」

 

『は?』

 

 いつまでたっても、ビームが壁を貫かない。直撃を受けた壁は真っ赤に赤熱しているものの溶ける様子はなく、逆にぐんぐんビームを吸収しているように見えた。

 

 次の瞬間、まるで立て板に水をぶっかけたみたいに、すごい勢いでビームが跳ね返ってくる。

 

 コクピットのモニターが自ら放った光で染まり……直後、装甲を突き破った何かが私のアバターを蒸発させた。

 

 

 

 

 

 プレイヤー:ショウ、DEAD。

 

 死因:反射されたビームによる蒸発死。

 

 

 

 

 

 

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