ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
「なんじゃいまのーー!?」
イコンで復活しての私の第一声は理不尽に対する絶叫だった。
ビームが跳ね返ってきたぁ!?
いや、どちらかというと一度吸収してそれを打ち返したというか弾いた!? ログを見る限り、自滅扱いになってないから放ったビームがそのまま跳ね返ってきた訳ではないようだが……。
「い、いや、そんな事はどうでもいい。テレサさんは無事か?」
慌ててホームを見渡すと、ブシュウ、と圧縮蒸気が解放されるような音が聞こえてくる。そちらに目を向けると、ちょうど今まさに再生を追えたらしいテレサがふらふらと這い出して来る所だった。
「テレサさん、大丈夫?」
『あっ、ショウさん。いえ、なんとか。記憶の連続性も保たれているようです。はい、無事です』
そういってにこやかに笑うテレサさん。その頭の上で、ぴょこりん、と白いウサ耳カチューシャが揺れる。
……あれ?
「テレサさん、それ……」
『え? ……え、あっ、きゃああ!?』
私の指摘にようやく気が付いたのだろう。テレサは頭の上で揺れる愛らしい耳を押さえて、可愛い悲鳴を上げてしゃがみこんだ。
『なんで、どうして!? 着替える時にこれは外したはずなのにぃ……!』
「あ、やっぱついてたんだ、本当は」
あそこまでアリスとウサギ、って感じの衣装で、うさ耳が無いのは片手落ちだと思ってたんだ。恥ずかしいから付けなかったのね。んでもって、復活時はそういうのが絡まないから、フル装備させられたと。
……なんか、そういう好き嫌いで判断できるのってほんとに随分高性能なAIだなあ?
『えっ、あっ、えっ、と、取れない!? どうして!?』
「アバターにプリセット一式になってるのかね……まあ、可愛いからいいじゃない。なでなで」
『あっ、ちょっ』
必死になってうさ耳を引き千切ろうとしはじめるテレサに苦笑しつつ、その頭を気安く撫でる。きめ細かい髪と、まんまるい頭の輪郭。私がその感触を堪能していると、あれだけ必死になって引きはがそうとしていたテレサの動きもおとなしくなった。
『そ、その、可愛い、です……?』
「うんほんとほんと。このまま持ち帰りたいぐらい」
『今時その発言はハラスメントになりますよ? でもそっかあ、かわいいかあ……えへへ……?』
あらあら。
さっきまでの嫌がりっぷりはどこへやら、何やら満更でもない顔のテレサ。
うーん、チョロすぎて心配になってくるね。ちょっと煽てられたら人類征服とかに乗り出したりしないこの子?
ま、オフラインだし大丈夫でしょその辺。
その後しばらく、テレサが落ち着くまで私はいい子いい子、と頭を撫でてやったのであった。
それからしばらくして、我に返ったのかテレサは控えめに私の手の中から逃れると、わざとらしくをほん、と咳払いをして話を切り替えた。
『え、えっと。それにしてもびっくりしましたねえ』
「ああ、うん……なんだったんだろね、あれ」
あまりに露骨な話題転換は微笑ましくあったが、確かに話が進まないので彼女の振りに乗る。それに、色々びっくりしたのも事実ではあった。
これまでビームで破壊できない物質はまああるにはあったが、反射してくる物質なんて初めて見た。外殻を破壊して強引に侵入されない為のシステム的なものなのか、あるいはそういう素材なのか。
テレサの無事を確認できると俄然気になってきたぞ。
「悪いけどすぐに出発しよう。さっきのあれが何だったのか調べないと……」
『りょ、了解しましたー』
という訳で、再びやってきました高射砲基地。今度はすぐに中に入らず、周囲を調査する。
「よし。まずはさっきの現象の調査だ。反射されても直撃しないように、曲げて撃ち込もう」
『まかせてください!』
とりあえず本体は安全地帯へ、万が一を考えて岩陰に機体を隠す。そこから、発射したビームを曲げて基地の外壁に撃ち込む。するとビームを受けた外壁は黄色く輝き、ビームは壁を突き破るでも飛散するでもなく、そこで押しとどめられているように見えた。これは……。
「テレサさん、解析は?」
『やってます! どうやらあの構造材は、ビームをまともに受け止めても破壊されないようです。それどころか、そのエネルギーを分子構造の間に蓄積しているみたいです。そして、それが一定値を越えると……』
「撃ってきた方に反射するって訳か」
どひゅうん、と壁から撃ち返されるビームを眺めながら納得する。やっぱり、反射というよりエネルギーを吸収して撃ち返してくる感じか。反荷電粒子シールドみたいなもんかね。となると材質はセラミックなのかな?
とりあえずビームが効かない事は分かったので、今度はバルカンを壁に撃ち込んでみる。ダダダダ、と連射してみるが、装甲はチュインチュイン音を立てて攻撃を跳ね返しびくともしない。
物理的な強度も相当なものだ。バズーカとかでも持ってこないと駄目かもしれない。
あっ、そういえば……。
「バズーカはないけど、アイテムの地雷ならあったな。これで試してみるか」
『どうしてそんなものがあるんです?』
「子機の運用してた時からアイテムボックスの整理してなかったからかな……」
ただ単にずぼらだっただけだが、思わぬところで使い道が出来た。
壁に触れるように地雷を設置して大きく下がり、バルカン砲で狙撃して起爆する。火柱と土煙が上がり、基地の外壁が爆発に呑まれた。
普通の施設なら、これで大穴が空くんだが……。
しかし、煙が晴れた後に見えたのは、多少黒く汚れている程度でほとんど無傷の外壁だった。
「駄目か。もっと威力がないと無理か?」
『……っ! まってください、ショウさん! 何か上空にエネルギー反応が……!』
「げっ、もしかしてクラウド・センチピードが復活したとか?」
テレサの警告に慌てて機体を物陰に隠す。
空を見上げると、確かに何かが雷雲の上で蠢いているような気配がある。あるのだが……。
「おいおい、どういう事だ……? クラウド・センチピードよりも遥かにデカいぞ……?」
『このままだと探知される恐れがあります。機体のシステムをスリープモードへ』
ブゥン、とコクピットの照明が落ちる。暗闇の中で、正面モニターの映像だけが浮かび上がる。その中で、暗雲の雷鳴を背後に、浮かび上がる異形のシルエットがあった。
雲海にのたうつ長大な影は一見、大百足のそれに見える。だがだとしたら、あの巨大な円盤のようなものはなんだ。まるで、どでかいUFOに百足が巻き付いている、あるいはそこから大百足の体が伸びているように見える。
あれは一体……。
『対象、徐々に高度を上げていきます……』
「ふぅ……こっちに気が付かなかったのかな」
物騒なシルエットが遠ざかるのを確認して、物陰から顔を出す。頭上には今だ暗雲が立ち込めてはいるけど、得体のしれない気配は感じない。
「いまのは……もしかして、ここに潜んでいる大型メタルインセクトはクラウド・センチピードだけじゃなかったのか?」
『どうやら、そのようですね……。もしかして、高射砲基地への攻撃に反応して出てきたのでしょうか』
「その可能性は高そうだな。これ以上、変なちょっかいを仕掛けるのはやめておこう」
強いボスを倒すのはやり込みの一つだが、流石にクラウド・センチピードよりあれが弱い、という事はあり得ない。将来的にはともかく今挑んでも歯が立たないまま敗北するのは目に見えている。絡むのはトーナメント終わってからにしよう。
しかしこうなると、オフラインでは高射砲基地はただ意味深なだけのオブジェクトか?
うーん。まあ本来想定していない遊び方だんから仕方ないともいえるが……。
「いや、まだそういや調べ切っては居なかったな。内部、まだ未踏破区域があったよね」
『はい、マップは全部埋まっていません。でも、ぐるりと外周を一周するだけだから得るものもないのでは?』
「いやあ、そういう思い込みが危険なんだよ」
RPGとかでもよくある事だ。壁越しにマップを埋めたので探索済みだと思ってたところに次のエリアへの階段があるとかね。人間、しばしばしょーもない事で手づまりになるものだ。こういう時に横着しないでちゃんと調べておくのが何ごとも大事なのだ……たぶんね。
そんなこんなで再び内部に侵入。ゲートはやっぱり潜れないので、そのまま先へ先へと歩いていく。すると……。
「お、壁の一部が崩れてる」
『本当ですね……』
経年劣化か、あるいは過去の攻撃によるものか。内壁の一部が罅割れて、ごろっとした装甲の塊が床に転がっている。それを拾い上げて確認すると、アイテムとして取得できたメッセージが通知された。
《耐粒子超硬度セラミックスの欠片 を 手に入れました》
「やったね。レアモノだ」
『おぉー……』
機体の手から消失し、アイテムボックスに入った破片に思わずガッツポーズ。
友人の話ではこんなアイテムの存在は出てこなかったから、恐らく見落とされていたのだ。オンラインでの探索部隊はクラウド・センチピードの追撃を息も絶え絶え逃げ切ってこの高射砲設備に飛び込んだはずだから、呑気に隅から隅まで探索する余裕はなかったのだろう。となるとやはり、オンラインではこのゲートの先が続いていて、そこに超高難度ダンジョンとやらが広がっているのか?
私は埋めたマップを開いて確認し、うーん、と首を傾げた。
「しかし、この内部がダンジョンになっている、にしてはちょっと狭くないかな」
『本当にあのゲートの先がダンジョンになっているというなら、地下に続いているのかもしれません。この手の設備は、地上に出ているのは全体のごく一部で、動力炉や居住区といった主要設備の大半は地下に埋めてあるはずです』
「そういうもんかな。まあ、言われてみれば確かに」
戦艦の主砲とかも、砲塔部の下に結構大きな区画があるもんだしな。そういうもんか。
まあ、どっちにしろ入れないんじゃ考察してもしょうがない。それよりも今は、このゲットしたアイテムの方が気になる!
「さあ、さっさと戻ってこのアイテムを調べよう! なんかこう、面白い事が出来そうだ!」
『はい! もし複製できれば、機体全身をこれで包んでしまいましょう! そうすれば無敵です!』
「なんかそれはフラグに聞こえる……」
古今東西、無敵の素材で作られているから実質無敵、という触れ込みの機体は大体無敵じゃないんだよな……。
まあそれはともかく、せっかくのレアアイテムだ!
何が出来るか楽しみだね!