ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
高射砲設備で見つけたレアアイテム。それを意気揚々と持ち帰り調べた所、いくつかの事が分かった。
この素材は、予想した通りビームなどの高エネルギー粒子に対して強い耐性がある。断面を見る限り積層構造になっていて、その間に受けたビームエネルギーを蓄積、臨界点を越えると外部に放出する事で結果的に反射する、そういった構造になっているようだ。事実上ビームで破壊出来ない上に、物理的強度も非常に高い。これでシールドなどを作れれば、ビームに対しては文字通りのアイギスの盾となったろう。
なったろう、というのはまあそれが不可能という事でもある。
流石にイコンの設備でもこの素材の複製は不可能らしい。まあ大体予想はしていたけども……。また、ビームを反射できるかどうか、についても、これっぽっちでは駄目らしい。ビームを反射するにはそれなりの体積が必要で、それに満たない場合は反射ではなく、臨界を越えるとただエネルギーを外部に放出するだけに終わるようである。
なかなか歯がゆい状態だ。
これが間違いなく便利な素材なのは分かった上で、絶対的に数が不足しているのだから。
「とはいえ、面白い事には使えそうなんだよなー」
『それには同意ですが、具体的には一体どんな?』
「んー。まあ、まだこうはっきりとした考えがある訳じゃないんだけど……こう、ビーム榴弾というか」
ビームのエネルギーを蓄え込んで臨界を迎えると放出する、というなら、本来直進するしかないビームのエネルギーを爆発物みたいに扱えたりしないだろうか? 一応、複数のビーム砲を干渉させる事で実現した合体拡散ビーム砲もあるが、あれは演算に凄い時間がかかる。これを使えばもっとお気軽に近い事ができないだろうか。
いやでも、現状質量が限られる貴重品をポイ捨てするみたいなのはよくないな。
うーん。もっとこう、良い感じのアイディアはないかな……。
「あるいは、ビームを受けても崩壊しない所に着目する、とか……ううぬ? うーん、なんかこう、閃きそうなんだけど……」
『私はさっぱり、今の所使い道が思いつきませんね。やっぱり閃きだとショウさんには勝てません。流石ですー』
「はははは、褒められても何も出ないよ」
お世辞とわかっていても美少女にほめそやされると気分がいい。
うーん、そうだな。とりあえずこれの使い道は一旦置いておいて、本体の方を仕上げる事にするか。
「とりあえず、まあ、これはアイディアが閃くまで寝かせておいて。トーナメントに向けて機体の方を仕上げよう。コンセプトは悪くなかったから、もっと実戦向けに構造を詰めていこう」
『そうですね。具体的には何か考えがありますか?』
「そうだね。いざって時に攻撃に使えるようにプラズマビーム砲は正面に向けていたけど、そういう副次的な使い方は考えずにもう完全にビームバリアに専念させよう。放出も方向から出したのを曲げるんじゃなくて、最初から細かく分岐させて……」
原理としてはいつぞやの指ビームの原理だ。バックパックにプラズマビームを内蔵、そこから発射したビームを細かく枝分かれさせて、それを機体周囲に巡回させる。ビームを直接曲げるやり方だと機体全体を覆うのに時間がかかるが、このやり方なら瞬時に展開できるはずだ。ただあまり最初からビームを細かくすると、その分空気抵抗とかで消滅するのも早くなりそうだから塩梅が大切かな。
あとは、そうだな。
「攻防共にビームが大きな比重を占めるから、冷却時間をとにかく短くしたいね。いっそ機体の装甲を全部ヒートシンクにしちゃう? 基本的にはビームバリアぶち抜かれた時点で敗北みたいなもんだし」
『割り切りすぎな気もしますが、確かにそれも悪くないかもですね。全部、はちょっと不安ですので、バイタルパートだけ防御を固めて、あとはヒートシンク装甲にしちゃうのはどうでしょう』
「ふむ。ま、それもそうか。そうなると結構ペイロードが空く感じかな、これは」
やっぱり、何かもう一押し欲しいな。うーん。
何かいい考え、ないもんかなー……。
機体がビーム運用に特化してるから、これにライフルだのマシンガンだの搭載しても多分こう、かみ合わせが悪いんだよね。勿論それらの銃器はそれで完結しているから一定の戦力にはなるんだろうけど、徹底的なビームアンチをしてきた相手にそれだけで勝てるかっていうと。そもそも私は基本的にゲームは下手の横好きで、反射神経とか戦術眼は大したことはない。あくまでびっくりどっきりギミックで初見殺しに専念してきたからこそのこれまでの戦果だ。
となると、やはりもう一つぐらい、隠し玉のギミックが欲しい。それも、ビーム対策を完璧にしてきた相手ほど度肝を抜かれるようなタチ悪いやつが。
でもそんなの、そう簡単には……うん?
「ねね、ちょっと思ったんだけど。ビームって、熱量は勿論、運動エネルギーでも相手を破壊する訳だよね」
『ええ、そうですね。荷電粒子砲なんかが顕著ですが、粒子そのものの質量は非常に軽くても、一般的な銃火器を遥かに越えた弾速によって対象に物理的なダメージも与えられるのがビームの特徴です。特にフォトンビームのフォトン粒子は、周辺環境からの影響を受けにくいというのもあって、空気抵抗などで減衰しづらく、長射程もあって所謂耐ビームコーティング程度ではダメージをそこまで軽減できませんね』
「つまり、熱量が伝わらなくても、ビームの弾速があれば大きなダメージを与える事も可能、って事だよね?」
私の念押しに、テレサは要領を得ないのか、こてん、と小首を傾げた。その拍子にうさ耳が可愛らしく揺れる。
『え、ええ。そうですが……』
「じゃあさ、じゃあさ。こういうのはどう?」
私はカスタマイズ画面の図面を操作し、思いついたアイディアを彼女に見せる。最初はぎょっとしていた彼女だったが、私の意図を理解すると顎に手を当てて考え込み、ややあってから小さく頷いた。
『これは……たしかに。できなくもないかもしれませんが……』
「でしょ?」
『し、しかし動作原理を同じくする武器が既存兵器にはありませんね……機構は勿論、OSからして専門のものを立ち上げなければ。……あ、それだったら……』
ブツブツ言うテレサに、やっぱ難しいかな、と思ったものだが……急に彼女はパアッ、と顔を明るくして、小さく手を打った。
お、何かあるのかな。
「何か考えがあるのかい?」
『ええ、はい! 別の理由で開発を進めていたのですが……実は、対話型インターフェイスを用意しておりまして! 私が常にショウさんの隣にいなくとも、サポートが出来るように考えていたものがあるのです。あの処理能力を利用すれば、この兵器も制御できると思います!』
「ほへー、そんなものも考えてたの?」
確かに色々自由にやっていいとは言ったけども。そんな事も出来るなんて最新型AIって凄いんだなあ。
『えっへへへへ。ですので、よろしければ1号機の中枢ユニット、私に自由に弄らせていただきたいのですが……』
「そんなのいちいち許可を取らなくていいってば。好きにやっていいよ、よろしくお願い」
『ホントですか?! うふふふ、嬉しい。腕が鳴りますね。じゃあ、機体のカスタマイズと合わせてやっちゃいますか!』
気分良さげに、コンソールに向かうテレサ。うさ耳とドレスの丸尻尾がゆらゆら揺れて実にご機嫌な様子である。うん、似合ってる、プレゼントした甲斐があった。
しかしながら、今日はもうそろそろよい時間だ。ここで私は一旦撤収する事にしよう。
「ほんじゃ、私は一旦落ちるね。お休みー」
『あ、はい。おやすみなさいませー』
ふっふっふ。この調子なら、トーナメントまでにいい感じの機体が、出来上がりそうだなあ。
私は気分よくゲームからログアウトし、ぷはっ、とVRヘッドセットやグローブを取り外した。
「しかし……」
衣装の課金なんて大して興味はなかったが。
結構喜んでくれるし、割と似合うし。
他にも色々買っちゃおうかな……?
『ふふふ……しっかり、マスターのサポートをするんですよ、“私”』
『ええ、分かっていますよ。“私”は“貴方”ですもの。ええ』
そして。
決勝トーナメントの日がやってくる。