ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第百三十五話 激戦再び

 

 

 

 

 

 その宣戦布告を、私は記録映像越しに受け取っていた。

 

「アイツか……」

 

 忘れもしない、予選トーナメントの醜態。機動要塞ギガントタイタンを操る私は、最終的には、要塞に乗り込んできたたった一機の機体に自機であるタイタンコアを撃破され、敗北した。

 

 本来ならば、負ける事など許されないほどの戦力差である。あれから随分立つが、ギガントタイタンの戦闘力はおよそルール内においては無敵といっても過言ではなく、敗北を喫したのは私の落ち度である。圧倒的な力に酔いしれて、己惚れてしまったのだ。三対一だったからとか、そういうのは言い訳にもならない。

 

 その、最大の敗北を喫した因縁の相手……それが、ビームソードを装備した機体だった。

 

 間違いない。

 

 アイツだ。

 

「まさかこの大一番でリベンジの機会が巡ってくるとはね……」

 

 もともと負けるつもりのない戦いではあるが、ますますもって負けられなくなってきた。

 

 何が何でも一矢報いねば、私の沽券にかかわるというものだ。まあ普段オフラインで世間から引っ込んでる私にそんなもんがあるかはこの際置いておく。

 

「ここであったが百年目、今度こそ勝つ……!」

 

 コクピットで拳をぶつけ合わせて気合を入れる。モニターでは、エレベーターが高速で上昇している様子が写し出されている。そして衝撃と共にリフトが上がり切り、外の光景を露にする。

 

 此度のバトルフィールドはというと……。

 

「……うげ。大分こっちに不利だな。廃墟かぁ……」

 

 そう、今回のバトルフィールドは放棄されたと思わしきビル街であった。全長100mを越えるビルが林立する摩天楼の成れの果て。かつての繁栄は見る影もなく、無人の大通りをからからと風が吹き抜けていく。

 

 遮蔽物の多い環境。近接戦闘タイプであるあちらに極めて有利か。

 

「いや、地の利は自分で掴むものだ。全方向に警戒しながら上昇!」

 

『了解しました』

 

 空中に浮かび上がり、ビルの屋上よりギリギリ下を浮遊する。いつもならビームバリアを展開する所だが……。

 

「ビームバリアはちょっとまて。相手は多分、高い索敵能力を持ってる。バリアを展開したら、一方的にこっちの居場所がばれちゃう」

 

『しかし、それでは先制攻撃で致命傷を受ける可能性があります』

 

「考えがあるんだ、準備だけして待機」

 

 “テンペストゥス・サイレン”の装甲はヒートシンクであって防御力は期待できない。結局バリアは張らねばならないが、タイミングというものがある。

 

 私はぽちぽちとセンサーを切り替えながら、敵の姿を探した。

 

「ううーん。それっぽい熱源があるような無いような……」

 

『マスター。地形のモニタリング完了しました。そこから、敵の潜伏していると思わしきポイントを5か所まで絞り込みました』

 

「おお、よしよし」

 

 TLSが伝えてきたポイントは、大体私が怪しいなと思っていた場所と一致していた。サポートプログラムと私の考えが同じなら、大体このどこかに潜んでいるのだろう。

 

 だが特定できたのはそこまで。これ以上は絞り込むのは難しそうだ。

 

 ならば……。

 

「状況を動かす。ビームバリア展開と同時に、指定座標にプラズマ粒子を送り込め、びっくりさせてやるんだ」

 

『了解しました。バリア展開』

 

 バックパックから広がる青い光が機体の周囲を包み込む。と同時に、掲げた両手がビカビカと発光し、プラズマ粒子を転送する。

 

 指定座標五つにプラズマ粒子が送り込まれ、戦場のあちこちで爆発が生じる。威力は殆どないこけおどしだが、万が一コクピットや内燃機関と座標が重なったりしたら大惨事だ。果たして黙ってやり過せるかな?

 

『高エネルギー反応確認。敵を補足しました』

 

「動いたか!」

 

『敵機体の解析完了しました。機体名“ソードレイヴン”。大型の高出力クラスターエンジンを装備した高機動白兵戦機です。イオンスラスターを束ねたクラスターエンジンは推力の割に細かい制御が可能であり、高機動と高運動性を併せ持ちますが消費エネルギーが非常に大きく、長時間の高機動戦闘が出来ない事が欠点と考えられます』

 

 なるほど。珍しい感じのスラスター光を曳いていると思ったらそういう訳か。最初潜伏に徹するのも、ただ距離を稼ぎたいだけでなく実戦闘可能時間の短さもあっての事、という話なんだな。

 

 であるならば、この距離は勝機!

 

 彼の間合いにはまだ遠いはず、このまま仕留める!

 

「一気に仕掛ける!」

 

『了解しました』

 

 すぐさまフォトンビームを照射。やや斜めにずれたそれを、転送した偏向力場で屈折、斜めから敵の機体を狙い撃つ。即座に反応した敵機はバレルロールのような機動を取ってビームを回避、しかしその先に置いておいた力場を経由してビームが再び戻ってくる。

 

 それを再び回避する敵機。あとはその繰り返しだ。

 

 流石にここまでくるだけあって、ただ単に曲がるビームってだけでは仕留めきれないか。

 

 だが……忘れてないよな。ビーム砲はもう一門ある。

 

「……発射!」

 

 じっくり狙いをつけて、相手が回避で速度エネルギーと位置エネルギーを著しく失うタイミングを推し量る。斜め下から狙ってきたビームを、敵機が高度を上げて回避した瞬間……その、一瞬だけ動きが固まるタイミングを狙って、私は引き金を引いた。

 

 真っすぐ敵に向かって、フォトンビームの光が伸びる。小細工せずに直射で狙ったビームは、最短最速で敵機の胴体を狙い撃つ。

 

 バア、と空の果てで、光が弾けたように見えた。墜落するように敵の姿が、高度を下げてビル街に消える。

 

「どうだ!?」

 

『観測中』

 

 システムからの命中報告はすぐには帰ってこない。試合終了報告がないから、まだ撃墜には至っていないのだろうが、無傷というはずもない。

 

 命中する直前、敵機が抜刀したように見えたが……しかし、あのタイミングと威力、それで受け流せたとも考えづらい。

 

 手応えを確かに感じていた私に、TLSは淡々と報告を告げた。

 

『敵機確認。健在です。損害は軽微……こちらに向かってきます』

 

「なんだって?!」

 

 慌てて後退しながら、ビーム砲の冷却を確認する。最初に撃った方は既に冷えている、とにかくコイツで足止めするしかない。

 

「相手の足を止めろ、仕切り直す!」

 

『了解しました』

 

 再びフォトンビームを放つ。敵機との間には無数の高層ビルが立ち並んでいるが、海外式の高層ビルなんて柱の他は薄っぺらい床と壁しかないようなものだ。ガラスの窓をぶち抜いて、その向こうにいる敵を狙い撃つ。

 

 ……回避しない!? 真正面からビームを受け止めて……って、あれは。

 

「ブレードでビームを切り払っ……違う! ビームを吸収している!?」

 

『敵機解析、ライブラリに該当する反応あり。敵機の近接白兵武装の根元に、耐粒子超硬度セラミックの反応を確認』

 

「っ!?」

 

 その瞬間、これまで抱いていた全ての疑問が氷解した。

 

 一体、あの相手はどうやってビームソードを展開していたのか。言うまでもなく、どれだけ特化した所でビームを数十秒もの間照射し続ける事なんてできはしない。それがこちらで再現を試みた場合の最大の問題点だった。

 

 だが、あのレアアイテムを使えば。

 

 入手した時にはすでにアップデート済みだったが、確かに、ビームを貯め込む性質のあるあのアイテムを使えば、刀身に長時間ビームの高熱を帯びる事は可能かもしれない。

 

 そして今、敵はアップデートに合わせて、新しいビームソードを開発し、私に向かってきているのだ。

 

「~~~~~~~!!」

 

 屈辱か、驚嘆か。自分でも判別のつかない感情を飲み下し、私は迫りくる敵に応戦した。

 

 この状況ではもはやビームバリアは展開するだけ無駄というもの。維持を諦め、代わりにバックパックから放出した大量のプラズマ粒子を、偏向力場によって制御、広範囲に叩きつける。

 

 回避不能の面制圧攻撃。しかしこれすらも敵は対処した。

 

 くるりとその場で半回転。

 

 スラスターからの夥しい量の火花で、プラズマの波を相殺する。こじ開けた間隙を高速で抜けてくる敵機。

 

 だが今の一瞬の対応で、切り札を展開する時間が稼げた。

 

「TLS、あれをやるぞ!」

 

『了解しました』

 

 機体のサイドスカートからパーツを分離、合体させて弓状の形態に変形。それを右腕の手首内側にマウント。冷却が完了した胴体右側の砲身を引き出して、弓状パーツに接続。

 

 こいつが私達の切り札。ビーム兵器が通じない相手に対して用意した、奇しくも同じく耐粒子超硬度セラミックの欠片を用いた秘密兵器。

 

 どうやら私達とあの機体は、徹頭徹尾同じ穴の貉(ムジナ)として相反する運命にあるらしい。

 

 必殺の構えを取ったコチラに対し、敵は変わらずブレードを携えて向かってくる。正面モニターに拡大された相手のブレードは、度重なるビームの直撃に半ば溶解していたが、その柄元から異様な光を放っていた。バシン、とブレードの刀身がパージされ、ビームソードがその本領を露にする。

 

「いくぞ……! 大目牙大弓(オメガアロー)、発射!」

 

 トリガーを引くと同時に、ビーム砲から大量のフォトン粒子がチェンバーに流れ込む。偏向粒子でコーティングされた薬室内で圧縮される膨大なエネルギーを受け止めるのは、耐粒子超硬度セラミックで作られたダンパー。

 

 弦の代わりにビームのエネルギーを受けて、特殊合金製の鏃がソニックブームを伴って撃ちだされた。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

 

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