ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
トーナメントは終わった。
優勝である。そう、優勝である!!
第一回、色々不備もあったとはいえ、私が全ビルドロボオンラインプレイヤーの頂点にたったのである!!
やっほーい!!
とはいえ、そんな自惚れても居られない。
操縦技術でいえば、ビームソード使いのマサムネ、それとあの赤い機体に乗っていたプレイヤーの足元にも及ばない。
私が優勝までもっていけたのは一重に、テレサという優秀なAIの後押しあっての事である。その事を忘れてはいけないのだ。
「と、いう訳で。テレサさんにプレゼントです! どうぞお納めください」
『は、はわわ……?!』
サポーターへの課金アイテムは色々あるが、この際なので全部買う事にした。
衣装コンテンツ全部! サポーター用VIPルーム!
ホームの一角に追加された扉の先、ぴっかぴかに磨き抜かれたホテルの一室を思わせる豪華絢爛な個室と、そのドレッサーに並べた衣装を前にテレサは目が><になっていた。可愛い。
『ちょ、ちょっとショウさん!? こ、こんな、勿体ない……!』
「いやいやいやいや。私が優勝できたのは9割ぐらいテレサさんの御蔭だからね。これはほんの気持ち。いやマジで。まだ何か欲しいものある??」
『え、ほ、欲しい物……?!』
私の申し出に、目を白黒させるテレサ。
「そうそう。なんでもいいよ、とりあえず言ってみて」
『な、なんでも……?! じゃ、じゃあ……あれは……いやでも……だけども……しかし……で、でも……』
何やら、頭を抱えて懊悩しはじめるテレサ。おかしいな、そんなに難しい事言ったか?
まあでも気持ちは分かる。突然、こんな事言われたら欲望と自制心でせめぎ合いが生じるのも仕方ない……だけどAIだよなこの子?
まあどのみち、課金要素とはいってもたかが知れてる。何十万もする指輪とか鞄とかねだられるでもないし。
『じゃ、じゃ、じゃ、じゃあ、わ、わわわわわわわたし……』
「うん」
『あの……その…………きゅぅ……』
懊悩の果てに、ようやく要望らしきものを口にしかけたテレサだけど……それが言葉になる前に、彼女は舌を縺れさせた挙句ひっくり返ってしまった。ふらり、と倒れ込む彼女を慌てて支える。
「ちょ、テレサさん!?」
『はらほろひれはれ……』
「失神してる……」
文字通りに目を回して気を失っている彼女。私はちょっと途方に暮れた後、彼女をVIPルームのベッドに寝かせる事にした。
うぉ……このベッドめっちゃふかふかする……。
『その……すいませんでした……』
「いやいや。私も急な話だったしね」
数分後、意識をとりもどしたテレサは、恥ずかしそうにベッドに顔を埋めたまま、もぞもぞと謝ってきた。私は枕元に置いた椅子に腰かけて、のんびり看病である。
「ま、とりあえず、今無理に決めなくてもいいよ。何かどうしても、っていうのがまた出来たら教えてね」
『は、はい。その時はお願いしましゅ……』
「ははは、楽しみにしておくよ」
ベッドに横たわるテレサの頭をわしわしと撫でる。ううーん、この感触再現グローブ、大した性能である。さらさらとした髪の毛の感触が手に伝わってくる、心地いいね。
『あの……』
「あ、ごめん。いやだった?」
『い、いえ。その……もっとお願いしてもいいです……?』
勿論ですとも。
上目遣いのテレサのお願いに、私は優しく頭を撫で続けた。一瞬、これでお願いは消費かな、なんて意地悪な考えが頭に浮かんだけど黙っておく。流石にそれは底意地が悪い。
しばらくの間、VIPルームには沈黙と、髪をすくサラサラという音だけが響いた。
そんでもって、10分ぐらいすればテレサも調子を取り戻し……そうなったら、いざ、カスタマイズの時間である!
二人でカスタマイズ画面の前に並んで、資材をチェックする。
『それで、まずは何をするんですか? やはり、ビームソードの完成を目指す感じです?』
「ううーん……」
早速のテレサの提言。当然といえば当然のその提案に、しかし私はちょっと渋い顔をした。
『? どうしました、何か問題が?』
「いや、そのさ……大会では確かに切り札としてビームソードを使ったけど、あれをそのまま使い続けるのもどうかと思ってさ。だって、あれは元々ムラマサが作り上げたものじゃん? それを真似て作ったものを使い続けるのはその……二番煎じもいい所だと思ってさ」
『はあ……』
そう。現状のビームソードは強度をはじめとして色んな問題があるが、それを解決した所で出来るのはムラマサの劣化コピーにすぎない。そして彼は今頃、敗北をばねに次のステージに進んでいるはずだ。
その影を追うばかりでは、次に戦った時敗北するのは私である。
よって、こちらはあちらとは違う、新しいアプローチを考えなければならない。
『まあ、確かに仰ることは理解できますが……何か案があるのですか?』
「うむ。実はちょっとこんなのを考えてみた」
カタカタカタ、とカスタマイズ画面を操作する。これをこうして、ざっくり切って、と……。
『? 荷電粒子砲の加速コイル……でも一部を切り欠いて……これだと外に荷電粒子が飛び出しちゃいますよ?』
「うむ。そこで、これだ。偏向装置で、飛び出さないように荷電粒子を制御して……」
『え、これは……もしかして……』
そう。カタツムリの殻みたいな荷電粒子の加速コイル。それを起動すると、切り欠いた一部からズババババ……と荷電粒子が高速で噴き出す。偏向装置で押さえ込まれたそれは、しかしバチバチと周囲に飛び出して激しく発光する。その光の軌跡はジグザグで、まるでノコギリのようである。
すなわち……ビームチェーンソー! である!
いやまあビームソードでもさ、漫画とかアニメの派生アイディアでビームを対流させて切れ味を強化したザンバー系列の装備があるからさ。そこから着想を得てみました。
これなら大気との干渉で急速に減衰するという荷電粒子の欠点を補いつつ、強力な近接武器として使っていけるんじゃないかなーと。
『な、なるほど……でもこれ、このままだと加速コイル自体が飛び散った荷電粒子でズタズタになりませんか? コイルの中に戻った分は磁場で制御されますが、切り欠いた部分から飛び散った分はどうにも……』
「そこでこれ。耐粒子超硬度セラミックの出番です」
破損しがちなところを、セラミックで防護する。これで問題なし、セラミック自体が滅茶苦茶強度がるから、乱暴に叩きつけても発振器が壊れる事もない! 完璧!
『え、それだけの量のレアメタルどこから……まって、もしかして、大会景品のレアコピーマテリアル使っちゃったんですか!?』
「もち。どんなレアメタルでも複製できるって凄いねー」
『ちょ、ちょ、ええ!? あれ、再び入手できるかもわからない特殊資源ですよ!? そんな、思い切りが良すぎるのでは……?!』
いやいや、テレサさん。ああいうレアなアイテムは、さっさと使っちゃうに限るのよ。
いつか使う、はずっと使わないという事なんだ。大事で貴重だから大事に使う、ではなく、いつか使う為に取っておくというのは死蔵である。
ゲーマーにとってエリクサー病は不治の病。対処法はただ一つ、手に入ったらすぐに思い切って使う! これが一番!!
『そんな、宵越しの金は持たないみたいな……』
「この場合は、泡銭は取っておくな、って感じかな。だけどこれで新しい武器が作れるなら万々歳じゃない? これだけのレアメタルがあればいろんなことができるし」
『は、はあ……。一応、言いたい事はわかりますが……ショウさんが納得してるなら、まあ、いいですけど……』
釈然としない顔のテレサだったが、最終的には納得してくれたようだ。
それならよし!
ただしかし、うーん。やっぱり荷電粒子砲は装備が大掛かりになるからそれなりの重さになるなあ……。そもそもビームバリアと近接武器の相性がよくないし、機体コンセプトを根本的に変えてみるか。
チェーンソーを確実に当てる事だけ考えると、高機動タイプか? いやでもなあ、私の技量であんまり機動力高い機体に乗っても持て余すしなあ。真正面からつっこんでズバー、で済むばかりではないだろうし。
なんかいい考えないかなあ。
「うーん……お? これは……」
あーでもないこーでもない、と考えながら備蓄素材を見ていた私は、とある素材に目を止める。横から覗き込んだテレサが、うげっ、としかめっ面をした。
『……え? しょ、ショウさん、まさか……』
「ふふふふ……そのまさかさあ! いいアイディアが浮かんできたぞー!!」
ふぃーっひっひっひ! 早速設計開始だぁ!!