ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

159 / 160
第百四十六話 見えない道

 

 

 猿型メタルインセクトの群れを全滅させた私達は、さらなるテストの為に谷底に向かっていた。

 

 あの大型メタルインセクト相手に攻撃性能を試してみる為である。

 

 道中はステルス能力のおかげもあって非常に快適だった。運動性も悪くないし、こっちは敵の位置が見えているので、ちょっと遠回りするだけで接敵が避けられる。

 

 MMOといえば、プレイ時間の大半は移動時間だ。その事を考えると、ステルスというのは快適な移動にも需要が見込めるのかもしれない。

 

「まあ、この先はこっちの放つレーダー波を感知して襲ってくる敵もいるかもしれないけどねー」

 

『それを考えるとパッシヴレーダーとか重要になってくるんですかね?』

 

「どうだろ、メタルインセクトは普段レーダー切ってるしな。振動センサーとかになるのかね、そうなると」

 

 テレサと今後を考えた技術ツリーの話をしながら先に進むと、見覚えのある谷底に辿りついた。前に来た時は到着と同時に待っていましたと言わんばかりにゾウ型が殺到してきたが、今回はステルス機故にまだこちらの存在を把握していないようだ。

 

 好都合である。

 

「ふむ。このままであった端から切り刻んでいくのも悪くはないが……せっかくだから奥まで行ってみるか」

 

『そういえば、前に来た時も途中で引き返しましたもんね』

 

 あの時はとんでもない数のゾウ型に絡まれてめんどくさかったなあ。最終的に撃破したけど、合体機体の試験運用中という事もあってそこで引き返したんだったな。

 

 友人の話でも、一部の実力派ギルドが狩りに来るぐらいで人気がないエリアという事だし、オンラインでも隅々までは探索されていないのかもしれない。

 

 渡りに船だ。テストの事を忘れた訳ではないが、ついでに謎に包まれた谷底の秘密、詳らかにしていこう。

 

 ただ、ここでは迷彩投影装置は使わないほうがいいだろう。プロジェクターの放つ光のせいで、逆に存在をアピールする事になりかねない。

 

「よし。ちょっと探索していこう」

 

『了解しました!』

 

 バルーンをバックパックに回収し、谷底の奥へと進んでいく。

 

 以前ゾウ型が渋滞を起こしていた細い道を進むと、急に先が開ける。暗い中に目を凝らすと、どうやらこの辺りは広場になっているようだ。

 

 そしてその中に、何体ものゾウ型がたむろしていた。

 

『はわわ……』

 

「これに一斉に襲われたら流石に助からないな……」

 

 柱か壁のようにそびえる巨体を迂回して、こそこそと先に進む。幸いこの暗さのせいで、雪にばっちり残っている足跡は敵にも見えていないようだ。

 

 とはいえ進むのは慎重に。この暗さでは、良く見ないと敵と地形の区別もつかない。いくらステルス能力を持っているといっても、ぶつかったら流石に気づくだろうし。

 

『えっと……そうだ、映像を補正してお手伝いします!』

 

「おっ、助かる」

 

 こういう時にテレサのサポートは役に立つ。彼女が後部座席でキーボードを叩くと、メタルインセクトらしきシルエットが赤い線で浮かび上がり、地形は緑色の線で強調される。これで随分動きやすくなった。

 

 そのまま、大広場を探索する。ここにいるゾウ型は全部で10体……広さもあって、確かに大規模部隊で狩りを行うにはちょうどいいのだろう。とはいえ、ソロだとかなりきつい。仮にアインXソフXオウルを持ち出しても、全方位から迫ってくる大質量の相手はちょっと分が悪い。

 

「この上は……崖になっているのか。マーカーを設置して、あっちから狙撃した方がまだなんぼか効率的だな」

 

『とはいえ、メタルインセクトも一方的に撃たれるのを良しとはしないでしょうから……物陰に隠れられたら駄目ですね』

 

「まあそこは曲がるビームとかでなんとか……」

 

 うだうだ雑談を交わしながら、マップを埋める。見た所、広場は全て探索したような気がするが……いや……。

 

「なあテレサさん。あの広場から伸びてる小道。なんか奥に続いてそうじゃない?」

 

 何やら広場の一角に小さな道が伸びている。岩壁が大きく張り出しているせいでテクスチャが一体化していてぱっとみ壁にしか見えないが、テレサが補正した緑の線ははっきりそこに曲がりくねった道があると教えてくれている。

 

 どことなく、某飛行機ごっこゲー名物の谷潜りを思い出す。あれ普通にテクスチャが一体化してて道が分からんのだよね。事前にもっと詳しいマップを見せて欲しい。

 

『あ、ほんとですね。かなり分かりづらいですが、通れそうです』

 

「よーし。秘境探検伝だ」

 

『なんて??』

 

 ちょっとした冗句だよ冗句。アホを言いながら、こそこそと小道に入る。

 

 意外な事に、道そのものはかなり広かった。ゾウ型も出入りできるようにだろうか? まあもしプレイヤーの機体しか入れないような小道なら、そこからハンティングし放題だからね。そういう所には気を回す運営開発である。けっ。

 

 そして意外と長い。迷路のように曲がりくねった道を進む事数分。そろそろ引き返した方がいいかな、と思い始めたあたりで、ようやく終点が見えてきた。

 

 行き止まり……ではない。確かに道は壁にぶつかるようにして消えているが、その壁に穴が開いている。地下か洞窟か、とにかくこの先がある。

 

 しかし……。

 

「門番が居るな……」

 

 その道を塞ぐように立ちはだかるゾウ型メタルインセクト。偶然ではない、間違いなくここを守備する目的で運営から配備されている個体と思われる。ちょっと待ったぐらいではどいてくれないだろう。

 

 排除する他はない。しかし……。

 

『ですが、このあたりに生息しているゾウ型メタルインセクトは、あの巨体と戦闘能力にもかかわらず群れをつくる種です。この個体を攻撃すると、近隣のメタルインセクトが反応してアクティブになる恐れが……』

 

「問題はそれなんだよなあ……」

 

 悩ましい所だが、あまりぼさっとしている時間はない。

 

 もしここをやりすごせるとしたら、速攻でこのゾウ型を排除し、反応して集まってきたであろう増援の索敵を、ステルスでやり過すほかはない。ここは即断即決、何とかなるさの心意気でやるしかない。

 

「うっし! 仕掛ける」

 

『ご武運を……!』

 

 ちょっと距離を置いて、背中のコンテナからチェーンソーを取り出す。微かな物音にビク、とゾウ型が反応を見せてドキリとしたが、あちらも確信には至らなかったようで周囲を警戒するだけだ。

 

 ちょっとほっとしつつ、闇に紛れて背後に回り込む。そして、ゾウ型が警戒を解いたその瞬間、出力最大のビームチェーンソーで切りかかった。

 

「往! 生! せいやあ!」

 

『バオオオ!?』

 

 猛烈な荷電粒子の奔流が、真っ暗闇を明るく照らす。振りぬかれたチェーンソーの一撃は、ゾウ型のお尻から右わき腹にかけてを深々と切り裂いた。が、まだ僅かにHPが残っている、流石にしぶとい!

 

『バオオオ!』

 

「ちっ!」

 

 振り返っての反撃を、飛び退って回避する。長い鼻の一撃が地面を割り砕くのを尻目に、もう一度チェーンソーを振りかぶる。

 

 なんだかんだで発熱量の大きい荷電粒子砲だが、その熱量の大半を外に放出するせいか割と連続使用できるんだなこれが! まああんまりアイドリングすると使わなくてもオーバーヒートするけど!

 

「もういっちょう!」

 

『バオオオ!?』

 

 今度は、真正面からゾウ型の顔面にビームチェーンソーを叩き込む。

 

 流石に二発目は耐えられなかったらしく、HPバーの消滅と共にメタルインセクトのポリゴンが消滅する。だが同時に、連続で運用したビームチェーンソーもオーバーヒート。

 

 そしてそれだけではない。通路の向こうからドスドスという激しい足音……恐れていた、他のメタルインセクトのアクティブ化だ。

 

 押し寄せてくる敵。このまま洞窟らしき入口に飛び込んでもいいが、あの先に何があるかもわからないし、最悪トレインを引き起こしてどうにもならなくなる可能性もある。

 

 なんとか、ここでやりすごさねば。

 

「ショウさん、チェーンソーを……」

 

「おっと、そうか」

 

 テレサに指摘されて、慌ててオーバーヒートしているチェーンソーをその場に投げ捨て、距離を取る。こいつの熱源を感知されたらおしまいだ。

 

 ごめんね、あとでちゃんと回収するから……。

 

「南無三……!」

 

 間一髪、壁に身を寄せた直後。モニターの映像の中、メタルインセクトの群れが袋小路になだれ込んでくる……。

 

 

 

◆◆

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。