ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
と、いう訳で。
新しい装置を搭載した新機体でさっそくテストに赴く訳である。
いい加減、見飽きてきた雪原地帯。そろそろここを突破して先に進みたいところだ。そのためにも、新しい機体を完成させないとね。
「よーし、出撃だー!」
エレベーターから降りて、まずは機体の調子を確かめる。雪山に足跡を残しながら歩き回っていると、空になったリフトが再び動いて、新しい機体を搬出してきた。
テレサの改造したテンペストゥス、名付けて“テンペストゥス・アーチャー”だ。
本来は切り札であったビームアローを標準装備し、全体的にほっそりしたシルエットの機体がふわりと浮かび上がると、私の頭上でホバリングする。
『護衛は私におまかせください! この機体の性能も同時にお披露目しちゃいますよ!』
「それはいいけど、無茶するなよ?」
『大丈夫です!』
ほんとかなあ。
あと、こっちがステルス機だから敵との戦闘になったらあっちに負担が集中するんだけど、わかってるんだろうかそのあたり。
まあ、いいか、別に。
一人より二人の方が心強いというのは事実だし。
しかし、あれだな。こうやって特性の違う機体で組んで出発すると、なんていうかすごくオンラインゲームでパーティー組んでる気がするなあ。オフラインなのに。ふふ。
先行するようにふぃーんと飛んでいく後ろ姿を見守って、その後ろをついていく。幸いにしてスラスターさえ吹かさなければフローターによる移動は速度が出ないので、この機体でもなんとかついていける。
「と、さっそく敵のおでましか……」
レーダーに映る無数の敵反応。毎度おなじみ猿型メタルインセクトの皆さんである。
毎度毎度サンドバッグになっていただいてる彼らだが、今回も例にもれず実験台になっていただこう。お金も手に入るし一石二鳥だ。
『見ててくださいね、ショウさん! 貴方が発案し、私が洗練させたビームアローの性能を!』
通信越しにそう宣言し、高度を上げるテレサの機体。右手に装着した弓を構えると、ピンク色のフォトンビームの輝きがその内部に満ちた。
ほへえ。私の時は単なる飾りだった弓部分だが、テレサはそこにビーム砲の機構を組み込んだようだ。そこから放たれたビームがチャンバーに打ち込まれて、見た目だけは確かにSF系MMOとかで時々あるフォトンアローみたいな見た目になっている。まあ悪目立ちするという欠点はあるが、戦闘時はビームバリアを展開するから目立たないか。
オシャレだなあ。
そして、ビームの圧力が臨界を迎えると同時に、実体弾の矢が撃ち放たれる。
「あれは……長い!」
私が作ったものはアローとはいっても未完成のもので、実際の所飛ばしているのはボルトに近いものだった。だがテレサが改良した矢は、現実のそれにかなり見た目が似ている。おそらく尾羽の部分が軌道制御用のカナードになっているようで、放たれた矢はまるでミサイルのような機動を描いて地上のメタルインセクトに襲い掛かった。
『グゲ?』
哀れ、その直撃を受けて爆砕するメタルインセクト。最後まで彼には何が起きていたか理解できなかっただろう。
それにしても、まさか一撃とは。
「すっげえ威力……」
『そうでしょう、そうでしょう! レアメタルでチャンバー全体を構築する事で、圧力臨界が試作型よりはるかに高まったのです! しかも再チャージもそこそこ早いですよ!』
嬉しそうに説明しながら、テレサは再び弓矢をつがえると、次々にメタルインセクトを射殺していく。あれ、ビームは一発撃ったらリチャージにそれなりの時間がかかるはず……あ、そうか。一つの矢を放つのに全部の圧力を解放するんじゃなくて、段階的に開放してるのか。圧力源が不定形のビーム粒子だからこその仕様だな。勿論、その高熱と圧力に耐える特殊素材あっての事だが。逆流防止弁は、ビーム偏向粒子つかってるのかな。便利だなあアレ……。
見ている間にも上空から矢が降り注ぎ、次々と敵を撃破していく。
猿型もやられてばかりではなく、空中のテレサ機に投石で反撃するが、全てビームバリアで阻まれる。
一見すると順調だが……。
「でも矢がちょっと足りないね」
『うっ、それは……』
気が付けば矢筒の中身は空っぽになっている。まあ、これまでで10機近く射殺しているのだがら充分なものだ。勢力戦とかなら十分な性能があるんじゃないか?
さらにいえば流石にビームのエネルギーも切れたようだ。輝きを失った弓を手にしたテレサ機は、反撃を避けて後方へと退避していく。
「じゃ、次はこっちの番だな」
代わりに、私の機体を前に進ませる。本来、ステルス機であるこの機体は物陰に隠れての強襲を想定しており、このように敵の真正面に突き進む事はやってはいけない事だが……。
「ミラージュドローン、展開!」
バックパックから展開されるのは、ステルス素材で出来た自律ドローン。アクティブマインの構造を参考にしたが、いつぞやの子機のように機体で生産する事は考えていない。
ごろごろと地面に転がされたドローン達がころころ転がって、コテンと倒れると短い脚を展開してシャカシャカと歩き始めた。それが六機。
ドローン達のカメラ部分が持ち上がって、ビィー、と空中に交差するようにライトを点灯させる。
その光の中に、ジジジ、と浮かび上がるのは、ステルス機の立体映像。
それが三つ。
本物を含めれば全部で四つのロボットのシルエットが、隊列を組みながら雪山を進む。対面する猿型メタルインセクトが、明らかに困惑したように唸り声をあげた。
『そ、それは……』
「ふふふ、つまりそういう事。完全なステルスも透明化もできないなら、逆だよ。本体を特定させなければいい」
そういう事である。当然、立体映像にレーダー反応はないが、本体もレーダーそのものにはかなり写りづらい。正面から向かっても、敵にはぱっと見でどれが本体か、よくわからないという奴である。この立体映像は、ヴィジョンデコイとしてゲームシステム的に搭載されているものなので、映像の立体感もなかなかのものだ。攻略サイトなどを見ると「所詮立体映像、レーダーには反応しないので一目でわかる。これならバルーンデコイの方が増し」とか酷評されていたが、本体がステルス機能をもってるならその欠点も一転して利点になる。
それに自律ドローンは視認率の低い、扁平な形状をしており、地形に埋もれてよく見えない。ステルス素材で作っているのもあって、敵からはほぼ認識できないだろう。過去の戦いでも、いざ戦闘が始まり銃火が飛び交えば、たいていの場合自律ドローンの存在は忘れ去られている。
これなら真正面からビームチェーンソーで切りかかっても問題ない!
「いっくぞお!」
立体映像達を引き連れて、敵陣に突撃する。敵からは迎撃の投石攻撃が飛来するが、その大半は立体映像を狙っていて、こちらには飛んでこない。立体映像も見た目上は回避機動を取らせているので、敵からすれば何が何やら、だ。そうして距離を詰めた私は、手にしたビームチェーンソーを振りかぶって一息に敵を切り裂いた。
「ひゃっほーい!」
改良されたビームチェーンソーは自壊する事なく、メタルインセクトを一刀両断にする。それを見て、他の敵がこちらが本体か、と狙いを変える。
NPCにしてはそれなりに高い判断能力だが、ふふ、果たしてそれはどうかな?
退避するこちらにとびかかろうとするメタルインセクト。跳躍したその姿が、空中で音なき弾丸に撃墜され、地表に落下する。
ドローン達に搭載したサプレッサーガンによる攻撃だ。流石に色々と制限があり、リロードできないなどの問題があるが、これは攻撃手段というより敵の疑心暗鬼を加速させるための装置だ。
撃墜され、身を起こした敵が、きょろきょろと周囲を見渡して困惑した様子を見せる。
サプレッサーガンの発砲は、それこそ発射の瞬間を着目していないと見えないし、リアルを重視してるこのゲームではFCS等の補正がなければ飛翔している弾丸は認識できない。となると、メタルインセクトからすれば突然ほかの誰かから撃たれた、という認識になる訳で、その視線が向くのはほかの立体映像だ。銃を構えているその映像に、「あっちが本体じゃなかったのか!?」と困惑に困惑を重ねているのがありありとわかる。
そのメタルインセクトに再びビームチェーンソーを振りかざしてトドメを刺し、爆発から退避する。
爆炎で姿が隠れた所で、再度立体映像を再展開。一機から四機に分裂したような動きで、再び敵を幻惑する。
肝心のレーダーが働かず、目に見える映像も当てにはならない。
二重、三重に仕掛けた幻惑によって、敵機は混乱したまま、次々と殲滅されていった。
数分後には最後の一機を殲滅し、私はオーバーヒートしたビームチェーンソーを雪原に突き刺し、冷却しながら空中で様子を伺っていたテレサ機に振り返り、指でVの字をとってみせた。
「どうよ。ざっとこんなもん」
『…………あ、相変わらずえげつない事思いつきますね……』
「え、ひどくない?」