ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

165 / 198
第百五十二話 にっちもさっちも

 

 何はともあれ、テストは互いに良好だ。

 

 一度戻ってテレサ機の矢筒を補給して再出発。群れとの交戦は避けつつ、遭遇するメタルインセクトを殲滅しながら谷の底に向かう。

 

「なかなかいい感じだね。やっぱ、戦力が二人だと全然違う」

 

『それはまあ、当然だと思いますけど……』

 

 私の失言に、テレサが苦笑を返してくる。まあそれもそうだ。

 

 そもそもビルドロボオンラインは複数プレイ前提のMMOなんだから、オフラインでプレイしているほうが可笑しいっちゃ可笑しいのである。

 

 いやこれは仕方ないんだよ、回線の問題で……。

 

 オンラインRPGとかなら問題ないんだけどなあ……ちょっと処理オチ気味になるだけで。ただロボットアクションはリアルタイム更新になるからどうしても、ね。

 

『それにしても、テレサの機体もなかなかいい感じじゃない。そのまま突き詰めたらいい感じの新機体になるんじゃない?』

 

 軽い気持ちでそう告げると、しかし通信先のテレサは苦い顔をした。なんで?

 

『いえ。あくまで私はショウさんのサポートがお仕事ですので……。ショウさんはこの機体に乗るつもりはないんでしょう?』

 

「乗るつもりがないっていうか……それはあくまでテレサさんのアイディアでテレサさんの機体だしねえ」

 

 ぶっちゃけると、発想というかいかにオリジナルの機体を作るかに腐心している私にとって、AIとはいえ他人のアイディアで作られた機体に乗るのはなんか違うのだ。

 

 ゲーマーとしての腕がへぼいからこそ、勝利は勿論敗北もまた自分のものにしておきたい。ここで、テレサの作った機体に乗ったらなんていうか、私は心が弱いからね。

 

 テレサが悪いんだ、って考えそうで嫌なのだ。

 

 いやまあ、現状でもアイディアだしが私なだけで、機体設計はテレサなのでいまさら何を、と言われてもしょうがないが、なんていうか個人的な線引きはやっぱりあるのである。

 

「自分の考えた機体で爆死したなら納得できるけど、ね……」

 

『むぅー。いくらステルス性があるといっても、そんな火葬の棺桶みたいな機体にいつまでもショウさんに乗っていてほしくないんですけども……』

 

 それは流石に酷くない?

 

『酷くないですよ、事実じゃないですか。強度があるといっても木材ですよ、火炎攻撃してくる敵に遭遇したらそれでおしまいですよ。それに、立体映像で攪乱するというのはよいアイディアですが、地形との相性がよくありません。雪原では足元の雪が舞い上がらないから人間相手ではすぐにばれてしまいますよ、上空から見てても違和感バリバリでしたし。ほかにも雨が降っていたり、とにかく地形にちょっとでも変化があれば一発でわかります、そんなに映像の彩度も高くないですし。それこそ虫だましですよ』

 

 そしてぼろくそにダメ押しを食らう。

 

 そこまで言わなくてもいいんじゃない? いやまあ、テレサの言いたい事もわかるけど。

 

「まだ試作段階だから……。これまでだって何度も改良を加えてきてようやく使い物になってきたじゃない? それに、ビームチェーンソーの威力はばっちりだったでしょ?」

 

『それだって実質ビームソードじゃないですか……』

 

「今日はずいぶん毒を吐くね……」

 

 まあ、しかしテレサのいう事もまっとうではある。

 

 やっぱりステルス機は難しいねえ……。やっぱり、他のゲームみたいにロックオンすらできないような強固なステルスはビルドロボオンラインでは難しいのかな。

 

 そもそも、接近戦を行うために距離を詰める手段として、ステルスを採用したのがそもそも間違いだったのだろうか。

 

 ステルスと近接機の組み合わせは王道だと思ったんだけどねえ。なかなかそううまくはいかないか……。

 

「ま、いいか。改良や再設計は戻ってから考えよう」

 

『んもー、あくまで自分の考えにこだわるんですねー』

 

「ごめんね」

 

 そんなこんなで軽口をたたいている間に、谷の底に到着する。

 

 レーダーには早くもこっちに向かってきているゾウ型メタルインセクトの群れの反応が表示されている。私のステルス機だけならともかく、テレサの機体は静かな場所だと意外と浮遊音がやかましい。それに反応したのだろう。

 

 ま、これはこれでやりようがある。

 

「んじゃ、私は連中をやり過ごして背後から奇襲するね」

 

『了解しました。私は正面からメタルインセクトに対処します』

 

 フィイイン、と高度を上げるテレサ機を見送って、私はいそいそと谷間を先に進み、小さなくぼみに機体をかがみこませた。

 

 そうしていると、奥からドスドスと地響きを立てて、巨大なメタルインセクトが列をなして駆け抜けていく。

 

 前と同じ、方向転換もままならないほど狭い道を、ためらわずもせずに一直線だ。

 

 正面から相対すると、終わる事なく押し寄せる波濤のような巨体に圧殺されるのだろうけど……。

 

 最後の一匹が通り抜けるのを確認すると、私はそっとその背後に回り込んだ。

 

 と、列の先から爆発音と光。テレサが攻撃を開始したようだ。流石にこの巨体相手にはビームアローといえど一撃貫通とはいかず、そこそこ苦戦しているようだ。

 

「ま、それをどうにかするのがこっちの仕事だけど、ね!」

 

 コンテナからビームチェーンソーを取り出し、展開。背後から、最後列のメタルインセクトに切りかかる。

 

『バオオオ!?』

 

「はい、ごめんね。後ろからちょっと通りますよー」

 

 火花を散らして、チェーンソーで切り捨てる。防弾繊維の毛皮も、強固なフレームも、荷電粒子の奔流の前では形無しだ。

 

 容易く切り裂き、一匹を仕留めるとそのまま次へと襲い掛かる。

 

 メタルインセクトの群れは前からだけでなく、後ろからも襲われてパニック状態だ。反転しようとするもの、前進しようとするもの、それぞれがもみくちゃになって進むも下がるもできなくなった群れを、私達は容易く殲滅した。

 

 残るのは大量の経験値とお金とアイテムである。

 

 流石にレベルアップとはいかないものの、ぐーんと伸びた各種スキルの必要経験値にホクホク。

 

「よしよし。何回か機体を作り直しても余るぐらいには稼げたね。ここができるなら人気の稼ぎスポットというのもうかがえる」

 

 まあ、普通はこんなやり方せずに、出口で待ち構えて集中砲火を浴びせるんだろうけど……。それでも、こいつらの耐久性を考えると突破される可能性があるし、一度そうなったら立て直すのは難しそうだからあんまり人気がない稼ぎ場というのもうかがえる。

 

 ま、今はビーム兵器もあるからね。もしかするとオンラインで人気が上がりつつある狩場かもしれないが、オフラインの私には関係ない事だ。

 

「テレサさんもお疲れ様」

 

『いえ。思ったよりもてこずってしまいました……』

 

 ふわり、と降りてくるテレサ機は、背中の矢筒の中身がだいぶん減ってしまっている。思ったよりも火力が発揮できなかったか?

 

「あー。ビームを機構に利用しているけど、実体弾攻撃だからね。防弾繊維が仕事するのか」

 

『そういう感じです。実弾への耐久力が想定以上でした。おかげで予定よりも消費が激しいです』

 

 んーむ。まあ確かに、携行弾数の少なさは由々しき問題かあ。

 

「こう、液体金属で矢を作るとかできないの?」

 

『試しては見たんですけど、やっぱ強度不足ですね……。威力を大幅に落とせば可能ですが……』

 

 そっかあ、ダメかあ。液体金属なら運搬できる質量を最大限活用できると思ったんだが……。矢って意外とかさばるからね。

 

 あとは……そうだな。

 

「折り紙……とか?」

 

『????』

 

「ほら、こう、薄い金属の板を折って強度を出すみたいな……」

 

 手をパタパタさせて説明するが、テレサはピンとこないようだ。まあ、いっか。あくまで思いついたアイディアだし、ホームに戻ったら説明しよう。

 

 今はそれより大事な事がある。

 

「っと、洞窟についたね。流石に今度は門番はいないか」

 

 目的地に到着し、脚を停める。

 

 眼前では、壁にぽっかりと穴をあけた洞窟の奥から、赤い光が零れ出している。

 

 謎の腐食洞窟……ふふ、一体奥に何があるんだろうね。今度こそ、その秘密を突き止めてやる。

 

 

 

◆◆

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。