ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第十八話 お髭の中の導火線

 

 そんでもって再び闇深い森の中に出撃。

 

 周囲を確認して敵の姿が無い事を確認した私は、頭上を見上げた。

 

 出発地点は巨大な木の根元にある。当然頭上は大きな枝葉に覆われていて空も見えない。このまま飛び上がっても枝に激突して死ぬだけである。なんせ、この森の木は中身は金属製なのだ。

 

「上に上がれる場所ないかなー」

 

 敵に遭遇しないよう警戒しながら森の中を歩く。5分ほど探し回った所で、暗い森の中に差し込む光の柱を見つけて私は駆け寄った。

 

 見上げると、木々の枝に隙間が出来ていてその向こうから青空が覗いている。ここからなら上に出る事ができそうだ。

 

「よし、ロケットブースター、オン!」

 

 装着したブースターで上空目掛けて舞い上がる。使っているブースターは同じだが、今回は脚部含めた総重量が少し軽いせいか、軽々と機体が宙に浮かび上がった。鋭く突き出した木々の枝を避けて、大森林の上空へ。

 

「……抜けた!」

 

 途端。

 

 目に見える景色が一変する。

 

 見渡す限りの青空。遥か頭上を僅かな雲が漂い、遠方には山脈が広がっている。下を見下ろせば、真っ黒な樹海が夜の海のように広がっていて、木々の梢は嵐の海の大波を思わせた。

 

 その中でひときわ巨大な大樹がある。ランドマークタワーのようにそびえるそれに向かって、私は機体を傾けた。

 

 ロケットブースターの噴射が終わり、自由落下し始める機体。余裕を持って、私は大樹の枝の一つに着地した。衝撃で枝がしなるかと思ったが、ロボットから見ても太い枝はびくともしない。鉄筋コンクリート以上の強度がある。

 

「ふぅ……」

 

 とりあえず無事に着地できたことに安堵して、素早く周囲を索敵。メタルインセクトが潜んでいないか警戒するが、少なくとも私の着地した枝にはその姿は見受けられない。

 

 まあ、他の枝にはそれらしき反応はあったが、今の所動く様子はないようだ。この木が巨大すぎて、私の存在は彼らの索敵センサーから外れているのだろう。

 

 とはいえ油断は禁物。狙撃に夢中になって襲われないように気を付けよう。

 

「さて、と」

 

 視界の片隅に目的地である火山地帯を捕らえながらも、私は当面の狙いに意識を切り替えた。愛機に片膝をつかせ、ビーム砲を構える。

 

 高さをとった事で、眼下には無数のメタルインセクトの反応が確認できる。が、視界に映るのは、真っ黒な枝葉の生い茂る大樹海。カーソルはその向こうに敵の存在を示しているが、これでは敵の姿が確認できない。一応カーソル頼りに狙撃できない事もないが、命中率は保障できない。

 

 なので、頭部の機能をフル活用だ。ちゃんと説明書きを読んだ私には、高性能なカメラには光学観測以外の機能もあるという事が理解できている。

 

「ええと、確か、こう」

 

 ぽちぽち、とコクピットのボタンを操作すると、モニターに映る光景が切り替わる。

 

 世界の全部が真っ黒に染まり、物体のディティールだけが白い線となって浮かび上がるような映像が表示される。その中に、真っ白くぼやぼやとしたものがいくつも浮かび上がり、蠢いているのが見えた。

 

 説明によれば、これはエネルギーを観測した画面らしい。サーモグラフィーのようなものだと思えばいいのだろうか。機体の持つエネルギーを直接視る事ができる視野で、それ故に森林を構成する機械樹のような存在はこの画面ではぼんやりとしか視認できず、活動状態にあるメタルインセクトはハッキリと見える。

 

 ああいや、ハッキリとは言いすぎか。白いシルエットが透けて見える感じ?

 

「んでもって、倍率をあげて、と」

 

 大きく拡大された画面の中、浮かび上がる虫っぽいシルエットに向けて、私はビーム砲の照準を向けた。

 

 調整は解放率30%、出力100%。狙撃砲らしく、出力はそのままにビームを細く絞り込んでみたが、果たしてどうか。

 

 例え狙えたとしても、この樹海の枝葉は金属だ。普通に考えれば遮られてビームは通らないが、私の予想が正しければいけるはず。

 

「……よし!」

 

 必中を期して引き金を引く。

 

 ワンテンポ遅れて光の充填した砲口から放たれたビームが、遥か彼方のメタルインセクトを撃ち貫いた。もんどりうって転がっていくそのHPバーが、ぐぐっと減少する。

 

 およそ半分で停止したそれを確認しつつ、私は自分の予想が正しかった事にガッツポーズした。視界を通常のそれに戻すと、一転して敵の姿は見えなくなるが、黒い枝葉の文字通り一点が赤く赤熱しているのが見て取れた。

 

 確かに、普通の弾丸ではこの森を射抜けないだろう。弾丸の運動モーメントは発射された時に発生する一回のみで、枝葉に当たればそれは減少し、最終的に失速する。

 

 だがビームは違う。これは、線上に絞り込んだ範囲攻撃を発射しているようなものだ。さらにビームはレーザーと違い質量を持つ。枝葉に当たって先端が消滅しても、それが空けた穴を後続が通過する。

 

 つまり全てのビームが対消滅しない限り発射されたビームは攻撃力を持ち続けるのだ。そしてビームの威力がやたらと低いのはヒット判定か何かの仕様だというこれまでの推測が正しければ、障害物を貫通して残ったビームでもこれまで通りのダメージを与えられるはずと見込んだのは正しかったようだ。

 

 やはりこのゲーム、作り込みと拘りが半端ない。

 

 理論通りに上手くいったことに満足しつつ、私はヒートゲージに目を向ける。

 

「80%か……」

 

 一発オーバーヒートではないのは助かるが、解放率を絞った割にはヒート率が高い。

 

 冷却を待ちながら、私はモニターの中の敵の様子を観察する。

 

 メタルインセクトは攻撃を受けてこちらを認識した様子だが、一方でどこに私が居るのか確認できていない様子で、とにかく周囲にやたらめったら動き回っている。てっきり一目散にこちらに向かってくるのかと思ったので少し意外だ。ゲームの敵キャラって、アクティブになると機械的にこちらの座標を認識してどこからともなく襲ってくるもんだと思っていたが、この辺りも開発・運営の拘りだろうか。

 

 十分にビーム砲が冷えたのを確認して、再び照準を合わせる。

 

 やたらめったら動き回って狙いが付けづらいが、移動先をある程度予想して……カチン。

 

 再び放たれるビーム。それは標的の腹部らしき部位を撃ちぬいてHPバーを消し飛ばした。直後、画面の中央が真っ白に塗りつぶされる。

 

「え、壊れた?!」

 

 ホワイトアウトする視界を、びっくりして私は慌てて画面を切り替えた。

 

 色のついた通常の視界が戻ってくる。相変わらずの黒々とした樹海……その向こうで、何やらモクモクと黒い煙が上がっているのが見えた。

 

「???」

 

 ログを確認するが、確かに記録では『ラッシュ・スパイダーを撃破』というメッセージが残っている。敵を仕留めたのは間違いないが、こんな風に爆発四散するのは初めて見た。

 

 これまで倒してきた敵は、爆発に巻き込んだカメレオンを除いて、テクスチャが分解されてバラバラになっていたものだが……。

 

「いや、まて。爆発?」

 

 ふとある事に思いついて私は画面を再びエネルギーサーチャーに戻す。

 

 黒い画面に浮かび上がる、白い敵の姿。よく見れば、そこには濃淡があって……一部の敵は、真っ白な点を体のどこかに持っていた。

 

 この白いのがエネルギー反応を示すというなら、それが濃い点はつまり、動力炉か弾薬? そこにビームが命中して誘爆した?

 

「……有り得なくはないな」

 

 前に見た対戦動画で、プレイヤー機は相手の頭部を破壊してセンサーを潰し、身動きが鈍った所でコクピットに集中砲火を行っていた。有人機ならコクピットを狙え、プレイヤーにもHPがあるこのゲームの仕様では当然の事だが、それはつまり、ロボットにも急所があるという事になるのではないか?

 

 考えてみれば当然の事だ。ゲーム的には無駄な作り込みかもしれないが、リアリティ的には末端に過ぎない脚部の先端と、動力炉や爆薬への攻撃が同じダメージであるはずがない。

 

「つまり、ビーム砲でも正確に敵の急所を狙い撃てば大ダメージが与えられる?」

 

 ふむ。

 

 ……なんだかワクワクしてきたぞ!!

 

 

 

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