ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
なんやかんやで無事に優勝者インタビューを終えてから数日。
ゲーマーとして一つの頂きに上った事を遅れてようやく実感しながら、私は上機嫌で日々、機体の調整を続けていた。
いや、新しい機体が意外と難航していてね。細かい調整をずっと重ねていたのである。
さらにいえば、テレサも自分の機体の改良にお熱であったので、彼女の時間を奪うのも申し訳ない気がして、一人でチマチマ、改良を続ける毎日(でもなんかテレサは遠巻きにずーっとチラチラこっちを見ていたが。なんだったんだろう? 構ってほしかったのだろうか、まさかね)。
それでもそろそろ飽きてきたな、テレサを誘って試運転に行こうかな、なんて思った所で、携帯端末にメッセージが届いた。
オンラインでのフレンドメッセージである。ゲームの方には届かないので、同期させて携帯の方にお知らせが来るように設定しておいたのだ。
呼び出し人は、テミス。優勝を巡って激突したライバルからのお手紙である。
私は慎重に、心して内容を確認した。
「リベンジを申し込む果たし状とかだったりしないよね……どれどれ」
果たして、その内容は、というと……。
『共闘の依頼、ですか?』
「うむ、そうなのだよ」
相も変わらず気味の悪いホーム。机っぽいでっぱりに腰かけて、私はテレサとくっちゃべっていた。
「なんでも最近、感じの悪い新勢力が進出してきたらしくてね。そいつらと一戦交える事になったから、是非力を貸してほしい、と」
『はあ。感じの悪い新勢力、ですか』
「うむ」
まあ具体的にどういう風に感じが悪いかというと、あれだ。ロボットものの話題になると必ず出てくるあの勢力。
名付けて『ロボットを作る技術で戦車作った方が強くない?』ことミリタリー部の皆さんである。
某SNSでも定期的にこの話題で荒れるあたりホント人類は不毛な論争が大好きである。いや実際には各々が好き勝手にくっちゃべってるだけだから論争ですらないのだが。
まあとにかく、トーナメントが善くも悪くも話題になったせいか、そういう連中が新しくビルドロボオンラインにやってきたらしいのだ。
彼らは戦車や自走砲、攻撃ヘリといった現実に存在するミリタリー兵器で他のギルドに喧嘩を売り、勝利を収めているらしい。それだけなら、まあ相手の設計力とか戦術、力量を褒めるだけの話なのだが、調子にのった彼らは他のプレイヤーを腐し始め、初心者狩りみたいな事まで始めているとあっては流石に看過できない。
ぶっちゃけ、確かにロボット兵器というのは効率が悪い。戦車とかヘリとか、そういった現実の兵器は予算やら実用性やらをカリカリのカリに突き詰めて生まれたのだから、強い事には強い。戦車とか装甲と火力を極限まで圧縮した訳で、あのサイズであの装甲と火力はまあそりゃロボット兵器に比べれば強いに決まってる。
だがロボットはそもそも浪漫という別枠で語られるべき存在であると思う。効率を突き詰めた先にロボットがあるんじゃなくて、ロボットに乗りたいから色々皆考えているのだ。そもそもビルドロボオンラインはタイトルどおり自分の考えたロボットで遊ぶためのゲームであって、攻略やら何やらは二の次だと言っていい。皆が考えた、自分だけの最強ロボットを形にする夢のゲーム、それがビルドロボオンラインなのだ。
そこに現実のミリタリーバランスを持ち込んで他を否定するのは、ちょっと大人気ないのではないか? ぶっちゃけその方が子供っぽいと思う。
大人の遊びには余裕が必須だよ、きみぃ。
まあそういう訳で、いっちょロボット乗りの意地を見せてやろうじゃないか、って事になったらしく。それで、テミスさんから力を貸してほしい、という事にあいなった訳である。
そのあたりの事情を、テレサさんにも通じるよう、ちょっとゲーム世界に合わせて言い換えつつ、私は説明した。
『なるほど、話はわかりました』
「うむ。で、テレサさん的にはどう思う?」
『子供ですね』
おおう、ずっぱり。
『まず大前提として、この惑星は地球ではないし、戦ってる相手も人間ではなくメタルインセクトです。地球で人類相手に有効だったからと、その兵器が全くこの環境で同じように働くとは思えませんね』
「ま、そりゃそうか」
『最近急激に進出してきたという事は、恐らくまだ奥地には進出していないのでしょう。仮に彼らが万全の状態であっても、極端な例を言えばクラウド・センチピードに遭遇すれば壊滅するでしょうし、私達が現在いる腐食洞窟でも真価を発揮できるとは思えませんね。人型ロボットは効率的でこそありませんが、人型だからこそ人間にとって動かしやすい、予想もつかない環境に適応しやすい、というのはショウさんも体感したばかりでしょう?』
そりゃま確かに。実際、レッドスカラベのコクピットだけになったあとはちょっと苦労したしね、移動にも。
しかしなるほど、テレサはミリタリーに懐疑的か。
『? なんか嬉しそうですね?』
「いやあ。テレサさんも浪漫を分かってきたなあ、って」
『そりゃあショウさんと長く付き合っていればそうなりますよー』
そうかな。そういうもんかな?
『それで、どうするんです?』
「そりゃもう参加はするさ。せっかくのお誘いだしね」
『いえ、そうではなくて。機体はどうするんです?』
んー。そだねえー。
あちらさんは当然、決勝戦でカチあったテンペストゥス・サイレンを期待しているんだろうけど、ヘリはともかく戦車とか相手にするのはあんまり向いて無さそうなんだよね、あの機体。地表スレスレの標的を狙うのは苦手っていうか。
かといってレッドスカラベはね。いや、相性が悪い訳じゃないんだろうけど、ビームチェーンソーがちょっとオーバーキル気味。接近するまでのリスクと釣り合ってない。それならいっそステルス機を持ち込むのもありだけど、一度見つかったら一巻の終わりだしなあ、あれ。
となると、やはり今設計中の新型機が適している気がする。ま、こいつに関してもまだ設計を詰め切れてないんだけど……それなら、試合までに完成させればいいだけの話さ!
「やっぱり、今開発中の新型をもっていきたいね。常に新鮮な楽しみを提供したいところさんな訳で、私としては」
『新鮮な恐怖の間違いでは……』
「ん、なんかいった?」
『いいえ、なんでもー』
そう? それならいいんだ。最近テレサ、こんな感じでぼそっと何か言う事が増えた気がするけど……ま、テレサに限って私の陰口とかは言ってないだろうしな。
それにしても最近のテレサはなんていうかこう、話してて不思議な感じがする。元々かなり人間っぽい感じだったけど、最近はちょっとこう、人と話していると一瞬錯覚する事があるぐらいに、こう、会話が自然だ。妙に知識も豊富だし……。
アップデートの影響かな? 開発も頑張ってるんだなあ。
「んじゃ、とりあえずテストも兼ねて、宇宙船探索いってみようか」
『了解しましたー』
テレサと二人して、とててて、とハンガーに向かう。
彼女の機体は、例のビームアロー搭載の機体だ。彼女的には何か琴線に触れるものがあったらしく、基本設計はそのままにビームアローの運用に特化しているようだ。
環境と相性が悪いビームバリアはオミットし、左手の籠手に斥力場装甲発生装置を搭載する事で防御面をカバー。ビームアローは弾数問題を解決する為に、矢の軸部分は積み込んだコイル材から適宜生成、鏃と尾翼をそれにくっつける、という構造の組み立て式に変更された。とにかく鏃を飛ばせればいい、という事で、さらに弾数節約で尾翼をオミット、弾頭である楔も戦場でドロップした適当なアイテムで代用する事も可能なサバイバル運用も想定しているとの事。
中距離支援としてはなかなか頼もしいといえる。
んでもって、私の機体はというと……。
「よろしくな、スネークゴースト」
『パイロットの登場を認識。システム起動します』
ハンガーの中でトグロを巻いた、黒々とした蛇の骨のような機体。スカスカの肋骨内部には、まるで卵のような銀色に輝く機械を大事そうに抱えている。
頭部に開いたコクピットから乗り込むと、制御OSであるTLSが迎えてくれる。システムが立ち上がると、尻尾の先にあるビームチェーンソーがジャララララ……と不気味な音を立てた。
そう。今回の機体はレッドスカラベから着想を得て、非人型でありながら環境への適応力を考慮した蛇型である。コイツの最大の特徴は、肋骨のようなフレームに小型の動力炉を分散させている事だ。それにより、機体の強度を上げるんじゃなくて最低動作保証限界を引き延ばす事で耐久性を確保している。ちなみに、肋骨の内部にデカイ動力炉を抱えているがこれは武器であって本体の動力ではない、危なくなったらパージできる。
さらにいえば蛇の尾みたいな長い部分はほぼ武器としての扱いであり、破壊されても本体には一切の問題がない。
だがコイツの最大の特徴はそこではなく、胴体の肋骨部内部に搭載された新機軸のプラズマビーム機関だ。ビーム兵器の最大の欠点、使う度に長大なクーリング時間が発生する、というものを克服する為に、オプションブースターを併用した全く新しい武装を搭載しているのである。
長い間ホームに籠って調整を続けたので、理論上は問題なく動くはず。あとは、実戦で冗長性や運用を試す段階だ。うひょー、楽しみ。
「よおし、出るぞ! 出撃!!」