ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
蛇型なだけに、スネークゴーストは這いずって移動する……と見せかけて、多脚である。肋骨のように見えてる部品、これが蟲の脚みたいにガチャガチャ動いて、機体を移動させるのだ。ちなみにテレサが錯乱するのを防ぐために、12個ある肋骨のうち移動に使うのは8つまでである。戦闘中に錯乱して後ろからフレンドリーファイヤされたらたまったもんじゃないからね、ははは。
ホームから出て、宇宙船内部に。
相も変わらず薄暗く、ぬめりとした有機的な質感。ともすれば足を取られそうな複雑な地形だが、スネークゴーストはこの地形に適応した設計の機体だ。問題なく、地形に沿って移動を開始する。その背後には、フロートシステムでちょっとだけ浮いたテレサ機が続いている。
フリフリ尻尾を揺らしながら道なりに進んでいると、暇を持て余したのかテレサの方から話しかけてきた。
『相変わらず奇怪な地形ですねえ』
「見た目に惑わされるなよ、多分レーダーとか目視を遮る効果がある。物陰の敵機に注意しろ」
『わかりました。……それはそれとして、何故移民船と思われる船の内部がそんな事に?』
それは私も聞きたい。
墜落後に魔改造されたのか? それとも移民船の中で内乱でも起きていたのか?
ついでにいえば通路のサイズがロボット基準なのもどうかと思う、人間は隣の部屋にいくだけで一苦労だぞこれ。
いやまあ、移民船、というのもあくまで憶測でしかないから、実際は全然違うブツなのかもしれないが。
と、災いは口からというか。
さっそくレーダーに不審な影を見出し、私は警戒を促した。
「敵っぽいのがいるぞ、注意しろ」
『! 了解しました!』
機体の鎌首をもたげて警戒する。そんなこちらの動きに、潜伏がばれたと判断したのか、凹凸と一体化して隠れていたメタルインセクトが一斉に動き出した。
奇妙な滑りを帯びた、凹凸した甲殻。現実のそれと比べると随分奇怪なデザインだが、前翅からはみ出すでっぷりとしたお腹、というデザインにはどことなく既視感がある。
洞窟に居たのがシデムシの幼虫型メタルインセクトなら、こちらは成虫型、という事か。案外ホントに成長して脱皮するのかもね。
生命……生命? の神秘に思いを馳せながら、早速迎撃に入る。
さあ、今回の秘密兵器の発表だ。
「TLS! プラズマ融合炉、ジェネレーター出力上昇!」
スネークゴーストが肋骨のようなフレームに大事に大事に抱えている炉心が、俄かに出力を上げて緑色に怪しく輝く。超高出力のプラズマ融合炉、機体に使うとしてもいささか出力過剰気味のブツだ。その出力に見合った問題点も多くあり、放熱やらオーバーロード対策やら、とにかく扱いがめんどくさいのであんまり使用率は高くない。もしビーム兵器が旧来のクソデカ負荷のままだったらそれを補うために愛用していたかもしれないが、残念ながらこれが入手できたのはアップデート後の話だったので機体に一度も搭載した事はない。
なので、これは別に機体の動力炉として採用している訳ではない。そもそもスネークゴーストは機体各部に分散した小型炉で十分エネルギーを賄えている。動力炉はこれ以上必要ない。
ならば、何故こんなものを後生大事にぶら下げているのか……その、鉄の殻に覆われた卵の中身に用があるからだ。
『出力臨界。オーバーロード直前です』
「よし、スタビライザー展開!」
肋骨上のフレーム、その内側からトゲのようなパーツがいくつも伸びる。それは炉心表面に備わったソケットにカチリとはまり込むと、その内部に潜り込んでいく。見た目には手品の大脱出のクライマックス、手品師が閉じ込められた棺を剣で串刺しにしているようにも見える。
これらのニードルは全て、量子転送装置に繋がっている。そしてそれらは炉心の内部に潜り込み、強力な磁場で封じ込められているプラズマへと到達する。
圧縮された、超高エネルギープラズマ。核融合炉はこの一部を取り出し電力にする訳だが、この出力だと損傷した時に緊急停止が間に合わず、暴走したプラズマが爆発を起こす事がある。その時の破壊力は、それこそ武装として用いられるプラズマビームの比ではない。機体を爆心地に、巨大なクレーターが広がる事になるだろう。
……つまり。この炉心の内部には、プラズマビームの数十倍のエネルギーが閉じ込められている。それを、量子転送すればどうなるか?
普通のプラズマビームでは、チカッと光る程度……それでもコクピットにピンポイントで送り込めば、パイロットを焼くぐらいの事は出来る。
その数十倍の出力、さらに量子転送装置もオプションブースターで強化し、さらに数を用意すれば、十二分に敵を破壊できるだけの火力が得られるのではないか?
そしてそれを、電磁加速で指向性を与えて放射すれば、どうなる?
「パイロブラスター……発射!!」
引き金を引くと同時に、スネークゴーストの口腔部から青白く輝くプラズマが火炎放射のように迸った。
それは数百メートル先まで伸びると、瞬く間に輸送船内の通路、その凹凸を嘗め溶かしていく。超高熱によって黒い物質が飴のように溶けて、平たく均される。
当然、メタルインセクトもひとたまりもない。首を巡らせてぐるりと床から壁、天井に向かって炎を広げると、まるで殺虫剤を吹きかけられたかのように、メタルインセクト達は忽ちひっくり返って砕け散った。
「はっはっはっは、燃えろ燃えろー」
『スタビライザー耐熱限界、排出します』
ガシュウ、と炉心からスタビライザーが排出される。超高熱に触れた事で当然ながら、その全部は溶け落ちてしまっている。まあそれは当然想定済みなので、自動的に交換が始まる。溶け落ちたスタビライザーを切り離し、フレームに閉まっていた予備と交換作業を開始する。
と、そこでレーダーに遅れて反応。
これは……後ろか!
『ショウさん、危ない!』
「いんや、問題ない」
天井から降ってきたメタルインセクト、テレサが弓を引くよりも早く、尾の先端のビームチェーンソーでそれを切り刻む。空中で薙ぎ払われた残骸がバラバラになって降り注ぎ、次々に砕けて消滅する。
「時間差で仕掛けてくる奴もいるのか。レーダーばかりを頼りにもできないな」
かといってこの凹凸に一体化している敵を目視でチェックするのもなかなか大変だ。
となると、しらみつぶしに焼き払っていくのがいいのかね。
「汚物は消毒していこう」
スタビライザーの交換を終えて、再びパイロブラスターを放射。
超高熱に炙られて、一見何もない所につぎつぎとHPバーが出現する。
そう、これはビーム兵器と違って、一射ごとの砲身冷却が必要ない。
なんせこのパイロブラスターは本来砲身に押し込める事が出来ないほどの高プラズマエネルギーを、量子転送で電磁レールの間に飛ばし、電磁力によって押し付ける武器だ。文字通りに原理としては火炎放射に近い。
よって砲身が圧力と熱でオーバーヒートするまでかなり余裕がある。
まあ、炉心に突っ込んでるスタビライザーが熱で溶解するという問題はあるけども、それだって扱っている熱量を考えればかなり長持ちするほうだ。これだけの熱量、もし炉心に穴でもあけて直接取り出す方式だったら、砲身も炉心もとてもじゃないけど持たない。たちまち熱暴走して大爆発だ。
なんせ全体の10パーセント前後の熱量でご覧の有様だからね!
「よし、テレサさん、追撃よろしく!」
『おまかせください!』
文字通りにあぶりだした敵機へ向けて、テレサ機が弓を引く。
背中の矢筒が火花を散らして矢を編み上げると、それを掴んでビームアローに装填。
一泊置いて射出された矢は、狙いたがわず隠れていたメタルインセクトを一撃で射抜いて撃滅する。
改良によって、矢数は勿論連射性能も上昇しているようだ。矢継ぎ早に放たれる矢が、見える範囲の敵を忽ち殲滅する。
これで一通りの敵は全滅だ。確認の為にもう一度炎を吹き付けて反応がない事を確認し、私達は移動を再開した。
「よし、これで安全は確保できた。先に進もう。やっぱエイリアンは火炎放射に限る」
『? ここは移民船で、敵はメタルインセクトですよ?』
「こっちの話だよ、気にしないで」
苦笑しながら、地面を這いずって先に進む。
いやまあ、ほんとにエイリアンみたいな敵が出てきたら困るのはこっちだが。嫌だぞ撃破したら強酸ばら撒いて道連れ狙ってくるような敵とか。
……いやでもあの開発の事だからなあ。絶対狙ってきそうだなあ。いやだなあ。
あの映画苦手なんだよなあ……。
そんなこんなでぼんやりとしていたせいか、歩行脚が溶けた地面を踏みしめた途端コクピットに警報が響いた。
『警告、警告。機外の温度が危険領域です』
「おっとやべえ」
慌てて距離を取るが、溶けた床と脚の裏がタールのように粘ついて糸を引いた。たちまち冷えて固まったそれはゴムのようにしぶとく、なかなか取れない。
「あっ、くそ、このっ、夏場の吐き捨てたガムより面倒……!」
『ぷっ、ふふ、ショ、ショウさん、なんか悶えてる姿がだだっこみたいです』
「ああくそ笑うなー」
必死になって床に擦りつけるが、しつこい汚れはなかなか取れなかった。
エンガチョ!!