ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
思わぬ障害に苦しめられつつも、なんとかガンコな汚れを振り払って私達は先に進んだ。
相も変わらず、生き物の内臓みたいな空間をノシノシ進んでいく。気分は宇宙海兵隊だ。
「オートロックする機関砲とか持ってたらさらにそれっぽいな」
『??? 私達の使う武器は基本的にオートロックが前提では?』
「ものの例えだよ例え」
流石にそろそろ古典の領域に入ってる作品だしテレサは知らんかー。
いや私も最初から最後まで通しで見た事はないんだけどね、怖いから。
宇宙ゴキブリに例えられる完全生命体の事を脳裏に浮かべたのが不味かったのか、途端にモニターに広がる光景がおっかなく感じる。
同じ人類が作ったはずなのに、一体全体どうしてこんなデザインにしてしまったのか。もしかして搭乗員全員が熱心なファンで、地球から遠く離れて監督されないのをいいことに宇宙船を魔改造したとでもいうのか。
そういえばあのシリーズもそもそもの起源の宇宙人って巨人サイズだったっけ。
「……いやいや。やめよやめよこの考え」
『???』
考えれば考える程状況にどんぴしゃりで気分悪くなってきた。思考を無にしていこう、無に。
そんなこんなで先に進んでいくと、何やら大広間っぽい場所にでた。
吹き抜けの二階構造になっていて、左右にも奥にも、無数の扉が並んでいる。サイズを無視すれば、社員寮の共通エリアと、そこから見える各々の個室、といった風に見える。あるいは小さなホテルというか……船員の生活空間だろうか?
そう考えると、部屋の中央で何やら盛り上がっているあれはテーブルか何かか?
異様な形状ではあるが、慣れ親しんだ人間的な空間と重ね合わせる事が出来ると安心する……いや、安心……?
「いやそんな事ねえな……」
『さっきからどうしたんです、ショウさん? 一人でブツブツ……はっ、これが噂に聞くSAN値減少という奴ですか!? しっかりしてくださいショウさん、傷は浅いですよ!!』
「いや大丈夫大丈夫。どうにも変な光景が続くから……」
というかそういうサブカルチャー文化は知ってるのね、テレサって。ゲームのサポーターとはいえ知識が偏ってない??
「それよりこの空間、見た所船員の生活空間っぽくない? 調べたら何か情報が手に入るかも」
『大丈夫ならいいんですが……をほん。確かに、それっぽくはありますね。聊か部屋の規模がちょっとおかしいですが……』
「まあそれは今更の話だし」
もしかしたらホントに異星人の宇宙船だったりするのかもね、ヤックデカルチャー! みたいな。
ただそれだと、ホームが私達にも使える理由が分からんが。言語は違うものの利用できたという事は共通規格なはずで、となるとやはり人間の生み出したもののはず。
それともあれか、この世界的には人類もどこかの誰かが生み出した被造物みたいな感じなのか?
まあいいや、その辺の考察は後にしよう。考えるのは楽しいが、情報が不足しすぎている。
それを補うためにもこの部屋を調べたい所だが……。
「そう上手くはいかないか」
『! レーダーに突然、無数の反応を確認……!』
「待ち伏せされていたか」
レーダーも完全ではない。動力を落として完全に停止していれば、発見する事は困難だ。まあこれまでそういう事をしてくる相手は殆どいなかったが、森エリアみたいに視界が極端に悪かったり地形の見通しが悪い所ではレーダーがあっても不意打ちを食らう事はしばしばある。
この宇宙船内部は構造があまりにも凹凸に満ちているせいか、レーダーもしばしば敵影を見落とす。ここに潜むメタルインセクトはそのあたりの事情をよくご存じのようである。
ガサガサ、と無数の部屋の奥から這い出して来る黒い影を掃討するべき、臨戦態勢に入る私達。
だが、いざ目視した敵の姿を確認して、私の口元がひくっと引き攣った。
「うげえ」
姿を現したメタルインセクトの見た目。
流線形かつ扁平で、やたらとテカテカした体表。長い触角に尾角、地形を這うように高速移動するその姿。
それはまさしく……。
「Gじゃねえか!! うわあああ来るな!?」
『ショウさん!?』
突然あらわれた人類の宿敵の姿に反射的にトリガーを引く。放射されたパイロブラスターが床を焼き、灼熱地獄を作り出す。炎の壁で、押し寄せてくる外敵達の脚が止まる。
そりゃあメタルインセクトは人類の天敵だけどさ!! そういう意味じゃねーだろ! うおおおおこっちくんなあ!!
『ちょ、ちょっとショウさん、貴方が錯乱してどうするんですか! 落ち着いて!』
「はっ、つ、つい!!」
テレサにとりなされて我に返る。
い、いや、Gの造形とか生態は嫌いじゃないんだ。ただ現実を生きる人間として、衛生害虫である奴らを目の当たりにすると防衛本能が働くというかなんというか……!
写真とかなら大丈夫なんだ。ただいざ目の前にすると、汚染物質を排除しなければ、という生物的な防衛反応が、その、ね!?
「す、すまん、取り乱した。トリガーが早すぎたな……」
本来なら群がってくるメタルインセクトでも一網打尽に出来る火炎放射だが、トリガーが早すぎた為にほとんど仕留められていない。敵は炎の壁の前で足を止めており、接近阻止、という意味では十分に仕事をしたのだが。
『しょうがありません。私が数を減らします。とはいえ、ちょっと数が多いですね。矢が足りるかな』
「そうだなあ。やっぱ普通の銃火器も搭載すべきかな……うん?」
テレサと対策を話あっていると、敵に動きがあった。
炎の壁から引いたメタルインセクト達が、壁を這い上って……二階に昇って……え、まさか。
「ぎゃああああ!?」
『飛んだ!?』
そのまさかでした。
高さを確保したメタルインセクト達が、一斉に翼を広げて滑空してくる。こちら目掛けて飛来してくる無数の黒い影に、私は半狂乱になりながら引き金を引いた。
「しぃねえええ!!」
『あ、ちょ、ショウさん!?』
再び噴射されるプラズマ火炎。超高熱の炎が、飛び掛かってくるメタルインセクトの群れを焼き尽くす。
が。
これまで活躍してきた火炎放射だが、実はこれには致命的な欠点が一つある。
それは物理的な衝撃力を殆ど持たないという事だ。
そしていくら超高熱でも、全長10m以上の金属塊を一瞬で蒸発させる事は不可能である。
それがどういう意味かというと、つまり。
「ぬわあああ!?」
燃え盛るGに飛びつかれるという事である。
まあ現実でもしばしばある事故だ。G憎しのあまり即席バーナーで火をつけたら、即死しなかったそれが逃げ回って家を燃やしてしまった、なんていう話をどこかで聞いたな、と頭の片隅で思い返す。
まあ今の私は一匹どころか何匹という燃え盛るGに取り付かれてるんだけどなははははは。
…………うわあああああああああああああああああああああああ助けてぇえええええええええええええええええええええええ!!!
「ちょぉおぉおうわあああおおおおあああああ!!??」
『ショ、ショウさん、落ち着いて!! ねえちょっと!?』
モニター全面に広がる黒い姿を振り払おうと滅茶苦茶に操縦桿を振り回す。床をごろごろ転がって、壁にゴンゴンと機体をぶつけ、とにかく機体をよじる、よじる。
ステータスモニタが真っ赤になってるがとにかくコイツらを振り払うのが最優先。他は些事!!
そうこうする内に、しがみついてきた最後の一匹が力尽きて砕け散り、ようやく私はとりつき地獄から解放された。
「ひっ、ひぃ、ひ~~……た、たすか……」
『助かってませんよ前みて前!!』
「前……?」
なんだかやたらと後方から聞こえるテレサの声に周囲を改めて確認する。
「げ」
気が付けば、最初に放った炎の壁は消えており。
今や機体の全周が、犇めく黒い影に取り囲まれていた。所狭しと蠢く何十体もの黒い影が、ギチギチいいながら距離を詰めてくる。
ちなみにテレサはちゃっかり、部屋の入口後方まで下がっていた。冷静だね。
「あ、これは終わった……」
『ギチギチギチギチ』
「ぬわああああーーーーーーー!!!」
まるでこちらが状況を理解するのを見計らったように一斉に襲い掛かってくるGの群れ。
尻尾を振り回してビームチェーンソーで薙ぎ払うが、あまりにも数が多すぎる。黒い波濤に飲み込まれた機体は、瞬く間に全身を押さえ込まれ身動きを封じられた。ステータスモニタが悲鳴のようにブザーを鳴らし、機体のあちこちから咀嚼されるような音がコクピットに響いてくる。
『ショウさん!? 今、助け……』
「いや、もう助からない! テレサさん、君はホームに撤退して! これは命令だ!!」
私はコンソールを操作し、シャッターに閉ざされたボタンを解放する。どくろマークの描かれたとっておきのボタンに指をかける。
「貴様らに食われるぐらいなら……」
ポチッとな。
途端、機体が抱えた高出力プラズマ融合炉が臨界運転を開始。限界を突破したプラズマが隔壁を突き破り、機体は青色の輝きに包まれた。
おぉう。きーれい。
ふははははこれが救済のひか……(ジュ。
《自機損壊により 撃破されました》
《ペナルティにより、経験値、資金がマイナスされます》