ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
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思えばこうしてただオンラインで遊ぶためにオンラインモードに繋ぐのは久しぶりだ。結局、アパートの工事上手くいってないみたいだしなあ。大家さんからもしばらくその話はないし。
そんなこんなでホームに来てみたが、どうにも様子が変だった。
「んー?」
なんだかちょっと薄暗い。それに、あちこちに浮かんでいる空間ディスプレイにはノイズ映像と、何かメッセージが……あくせすでぃないど?
「なんだこりゃ」
ぽちぽち操作してみると、機体カスタマイズ画面などには問題なく移行できるが出撃ボタンがブラックアウトしている。こいつは……ふーむ。
「なるほど。やっぱこのマップはオフライン専用か」
気味の悪い内装を見上げて一人納得する。
前々からこの宇宙船、オフライン専用のマップじゃないかと疑っていたがほぼ確定のようだ。出撃するには、オンライン対応のホームに移動しないといけないようである。
もしかすると、人によって宇宙船の埋まってる場所が違うのかもしれないな。見た感じ墜落したようだし。これ以上の憶測は、ネットに情報を流して反応を見てみないと分からないが。
「しかし運営もオンラインゲームなのにオフライン要素に力入れすぎじゃないか? まあ有難いんだけど」
オンラインゲームは基本的にサービス終わったら遊べないしね。オフライン要素もある程度充実してるにこした事はない。
ま、それはあくまで後々の事。今はせっかくのオンラインを楽しむべきである。
「えーと。確か待ち合わせは工業地帯のホームだったな。テレポート、と」
普段は使う事のあまりないホーム間の移動ボタンをぽちっとな。
途端、視界が白い光に包まれて、気が付けば私は賑やかな雑踏の中に居た。
「おぉう……」
目の前を行き来するのは、無数のプレイヤー。普段は閑散としてだだっぴろいホームの中が、さながら日曜日のデパートのように人で犇めいているのはなんだか異世界に来たような気がする。
いや私が普段異世界に居るってだけなのだが。どう考えてもこっちが普通だよね、オンラインゲームなんだし。
ハンガーに目を向けると、全てのハンガーが機体で埋まっている。見ている端から次々と機体がリフトで射出されたかと思うと、間髪入れずに次の機体が下からせり上がってくる。と思ったら再び射出。せわしない。
ふと好奇心に誘われて端末を弄ってみると、その途端にハンガーの一角が私の機体に入れ替わった。なるほど、端末を弄ってない時は他のプレイヤーの出撃風景が写されるだけで、順番待ちとかがある訳ではないのね。
しかしずいぶんと賑やかだ。前に森エリアのオンラインホームに繋いだ事があるけど、あの時はここまで賑やかではなかった。地上はどうなってるんだろう。
まあいいや。とにかく、テミスに連絡を取ろう。
ぶつかり判定があったら一歩も進めないであろうホームの中をきょろきょろしつつ、ほとんど使った事がないメッセージ機能を操作する。
「来たよー」と一言メッセージを送ると、間髪入れずに即座に返事が返って来た。と同時に、ホーム共有の依頼も届く。
はい、いいえ、の選択肢にYESと返した途端、視界を埋め尽くしていたプレイヤーの姿が一瞬で消滅した。
代わりに、10人ほどのプレイヤーが出現する。そのうちの一人には当然覚えがあった
「あ、来た来た。こんにちは、ショウさん」
「どもども。こんにちは、テミスさん。そっちはチームメイトの皆さん?」
「うっす。ギルド“パルティアン”っす。俺っちはライザー。よろしくっす」
挨拶を交わす傍ら、大量のフレンド申請が送られてくる。かたっぱしから返事をして、ふふ、一気にフレンドが増えたぞ、やったね。
「今日はよろしくお願いしまっす。んで、テミスからどのぐらい話を聞いてるんです?」
「んまあ、厄介ミリタリーオタクが挑戦状叩きつけてきたから、傭兵として雇われた、みたいな?」
「大体そんな感じっすね。一応、細かい事情も説明しておくっすね」
口調の軽い青年、ライザー君は語る所によると、次のような事情らしい。
「今回ちゃちゃ入れてきたのは、元々は別のオンラインゲームのプレイヤーギルドだったみたいっすね。ほら、知ってます? ライトニングサンダーウォーって奴」
「知ってる知ってる。硬派な感じに見えて大分はっちゃけてる奴だよね、世界大戦の兵器で疑似戦争してる奴。割としょっちゅうSNSでも論争引き起こしてたからやってないけど印象に残ってる」
ライトニングサンダーウォー。それはまあ、いわゆる戦争シュミレーターの豪華版みたいなゲームである。プレイヤーは戦車に乗ったり、戦闘機にのったり、戦艦に乗ったりして互いにウォーシュミレーションをして遊ぶのだ。
結構息が長いシリーズだったはず。それに伴いインフレが極まって、第二次世界大戦の兵器が主役だったはずが最終的に現用兵器まで実装されて、まあ大分頭の痛い事になっていたようだ。まあなんか、結局どれだけバランスが凹凸になっても最終的に核弾頭落とせば全部平らになるという感じの酷い意味で調律が取れていたらしいが。
んで困った事に、なんのオタクもそうだが悪い奴と良い奴がいて、大体悪い奴が悪目立ちする。現用兵器が科学技術の粋を生かした凄い物ってのはまあ事実なんだが、それを引っ張り出して頻繁にロボとかSFとか批判して悦に浸る奴が出るのである。んで炎上する。
それ自体はまあ、人類の宿業って感じでまあ仕方ない話ではあるのだが。
「ご存知なら話が早いっすね。んで、先日サービス終了したそれの大手ギルドがそのまんまビルドロボオンラインに乗り込んできて、他のギルドに喧嘩売ったんスわ。んでそれを買って、今に至るっす」
「はあ……。なんでまたよりによってロボゲーに移籍してきて、ロボット否定するんだか……」
「現状、戦車とか作れるビルド機能のあるオンラインゲームがここしかないからじゃないっすか? それで喧嘩売ってくるのは……まあ、そういう奴らばっかりだからサ終したんじゃねーの、としか……」
ライザー君と顔を見合わせて苦笑い。と、そこで横からテミスさんが割って入って話を引き継いだ。
「それで、ショウさんをお呼びしたという訳です! 是非ともそのお力で、彼らをコテンパンに叩きのめしてほしいのです! お兄様が心血注いで作っているゲームをコケにするなんて許せません!!」
「コイツは私情はいってますけど、まあ、そんな感じですハイ」
「おっけおっけ、大体状況は分かった。でもこれだけの人数で相手するの? 敵はかなり数が多いようなイメージだったけど」
ホームにいる“パルティアン”のメンバーは10人程度だ。これだけで戦争をするっていうのは数が少なくないか?
「そこは問題ないっす、今回の戦いはギルドで連合を組んで、お互い100人規模の大規模勢力戦になるっす。そうそうない規模なんでそういう意味では健全にもりあがってますね」
「私達は、割り振られた担当エリアの防衛を行う感じです。是非とも、ショウさんには“野生のレイドボス”としてその力を振るって頂きたいのです!」
「は、はあ。いやまあ、そんなに期待されても困っちゃうなあ、あははは」
いやあ、一応大人だからそっけなく流したけど、そんな風に頼りにされちゃうと照れちゃうなあ、えへへへ。野生のレイドボスかあ……悪名の意味合いの方が強いみたいだけど、うへへへ、なんか通り名みたいでカッコいい……。うふふふ……。
ひたすら照れ照れしていると、これまでとは違う感じのメッセージが届いた。どうやらこれが、大規模勢力戦への参加登録らしい。
それに返事をすると、視界の片隅に見た事がないウィンドウが浮かんだ。赤枠で縁取られた、危機感をあおるようなフォントには作戦開始時刻へのカウントダウンが行われている。
「それじゃ、状況説明が終わった所で早速出撃しましょう!」
「おおー!」
リフトから出撃し、工業地帯のゲートを通って砂漠地帯に移動する。ちょうど夕暮れらしく、黄土色の砂漠は赤色に染まっている。赤い太陽が沈みゆく果てしなく続く地平線には、同じように荒野を進む無数の砂埃が立ち昇っており、他にも出撃した機体が多数ある事が実感できた。
通常のプレイヤーの姿はない。あくまで勢力戦の為の別マップ、という扱いのようだ。まあ100人規模の対抗戦に一般プレイヤー巻き込まれたら大変な事になるしね……。
まあ一番大変なのは何の罪もない一般メタルインセクト君だが。
目の前で砂から湧いてきたサソリ型が戦車に轢殺される姿を見て、私はなーむーと手を合わせた。悪いけど成仏してくれ。
「しかし、テミスさんの機体は今回そっちなんだな。トーナメント決勝戦の奴を持ち出してくるのかと」
『あの機体は集団戦には向いておりませんので……』
キュラキュラとキャラピラを唸らせて砂漠を押し進むのは、やたらと全面装甲が分厚い真四角なタンク機体だ。両腕が丸ごとキャノン砲になっており、なんなら頭部の上にも三本目のキャノン砲が生えている。
装甲厚と火力投射に特化した、どっちかというとミリタリー側に居るべきなのでは? みたいなこの機体は確か、“バラックレイド”。ビルドロボオンライン決勝トーナメントにおいて、準決勝戦までテミスが使っていた機体だ。
と、その隣に緑色の人型機体が速度を上げて追随する。脚からキャタピラを展開して疾走する質実剛健な感じのWライフル機は、ライザー君の“グリーン・ソルジャー”である。
『いやマジであれは勘弁してくれっす。味方の砲撃の影響で全滅とか洒落にならないっすから。聞いてくださいよショウさん、コイツね、あの味方殺しマシンを嬉々としてボス狩りの現場に持ち出してきたんすよ、テストもロクにせずに!』
『だ、だって、レアアイテム投入して作った新装備ですよ!? ワクワクして使うに決まってるじゃないですか、ま、まさか、あのクラスのコクピットの汚染耐性抜いてパイロット殺すなんて思いもしませんでしたし……っ』
「あ、あー……」
何だかとても身に覚えのあるエピソードにほっこりとする。
あのビーム砲、TLSが口調乱すぐらいにヤバかったしね……。テンペストゥス・サイレンが無駄に高級なコクピット使ってたからギリギリ汚染を免れたけど、あんな高級コクピット普通の機体は採用してないもんねー。
つくづくテレサの過保護に助けられた戦いだったなあ、あの決勝戦。
それにしても、ふふ。なんだか親近感がわく。
「吃驚するよねー、あれ。覚えがあるから気持ちわかるよ。それにその後、エリア中のメタルインセクトが寄り集まってきてさらに大変だったんじゃない?」
『え、なんでそれを……』
『……あ、あー! そういや、“バーニング・スフィンクス”もショウさんの仕業だったんでしたっけ。多分そうだろうなと思ってたけど、やっぱあの機体も積んでたんすね、モータルブラスター!』
おぉう。思った以上に、私のやらかしエピソードは広まっているらしい。
懐かしい話に反応されて、私はちょっぴり鼻高々だ。
「ふふん。そういう事だね」
『へ、へー。なんだか急にあんたが野生のレイドボスって事に実感がわいてきたっすね……。となると、そのホネホネスネークも期待してよさそうっすね』
「へっへっへ。是非とも期待してくれたまえ」
まあ実際の所あんまりテストはできてないんだが、装置単位での実証は行ってるので大丈夫なはず。私はともかく、テレサからのお墨付きだからな!
そんな風に世間話をするうちにすっかり日は暮れて、砂漠は夜に。真っ暗な中、私達は担当の場所について、作戦開始の時を待った。
勢力戦まで、あと10分。