ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
なんだかテレサの様子がちょっとおかしいが、まあ、毎日一緒に遊んでたのが突然すっぽかされれば不機嫌にもなるか。
私は深く考えずにそれで納得しつつ、彼女の機嫌を取ろうとあれこれ言葉を尽くした。
「まあまあ。そんなに怒らないでよ、ね?」
『怒ってません』
「わかったわかった、テレサさんは心が広いもんね、怒ってないもんね。ごめんごめん。でもさ、なんだかんだでスネークゴーストは大活躍だったよ。どんな風に活躍したか、聞きたいよね? というか、語らせてほしいんだけど」
ぴくく、とテレサが僅かに反応を示した。
スネークゴーストの調整にはテレサも協力しているしね。自分が仕上げに関わった機体がどのように活躍したかは当然知りたいだろう。
『……別に。ショウさんの為に手伝ったのであって、私自身は興味は……』
「それがさー。面白い事に、想定とちょっと違う展開になってね。いや、良い方向になんだけど」
『!』
よし。喰いついた。
「どう? 聞きたい? 聞きたい?」
『……あ、あくまで、今後の為です。想定と違う結果が出たなら、検証して擦り合わせる必要があります、ただそれだけです。他意はありませんよ』
「わかってるわかってる。それでね……」
そんな感じで、実戦における運用結果の報告を終えた頃には、すっかりヘソ曲げテレサはいつものテレサに戻っていたのであった。
ちょっとほっとした。いやまあ機嫌損ねた女性っていつ爆発するか分かんない時限爆弾みたいなもんだしね、テレサはAIだけど。
基本的に真面目だから助かるね。
『をほん。なるほど、だいたいわかりました。それで話は変わるんですけど……』
「んむ?」
『その……最近もいったりするんですか、猫カフェとか、ブタさんカフェとか』
真面目腐った顔でそんな事を訪ねてくるテレサに、思わず目をぱちくり。
ややあって、私はじんわりと浮かんできた微苦笑に目を細めた。
もしかして、嫉妬されてる? まさかね。
「はははは、いや、最近は行ってないね。行ってたのもビルドロボオンラインを始める前の事だし。今は、テレサさんもいるしゲームしている方が楽しいかな」
『! そ、そうですか。そ、それはもう、猫とかブタさんは言葉を喋りませんものね、ええ』
「そうだね。だからお喋りできて楽しいかな」
私がそういうと、テレサは顔を見せまいとするかのように私に背中をむけてしまう。
ただ、顔を隠して耳隠さず。髪から覗く丸い耳が真っ赤に染まっているのが私には丸見えだ。恨むなら、そのへん作り込んだプログラマーさんを恨むのだね。
『ええ、ええ、そうですとも。猫とかブタさんよりも私の方がショウさんを楽しませられるに決まってます。っと、ごほん。で、では早速、攻略に出撃するとしましょう! 先に行ってますね!!』
「あ、ちょ」
止める暇もなく、ダッシュでハンガーに走って行ってしまうテレサ。
ガゴー、と上昇していくリフトを見送って、私はぽりぽりと頬をかいた。
「……まあ、好かれて悪い気はしないけどね。ふふ」
あと、なんか今、リフトで昇って行った機体、いつもと違う気がしたんだけど。
とりあえず私も彼女を追うべく、ハンガーでとぐろをまいているスネークゴーストのコクピットに乗り込んだ。
さて、今日こそあのGどもをギャフン! と言わせるために出発である。
いそいそとスネークゴーストで出撃すると、先に出て周囲を警戒していたテレサの機体がやはり記憶と違う事に私は首を傾げた。
確か以前は、テンペストゥス・サイレンを改良したビームアロー機だったはず。しかし今の彼女が乗っているのは、どちらかというといつぞやのスナイパー機を思わせる、モスグリーンのオーソドックスな二脚型ロボットだ。装備している武器もブルバックマシンガンだし、いかにも量産機、という感じのスタンダードな佇まい。
ただ、その背中に何か妙なユニットが折りたたまれているのと、頭部がやたらと複雑な構造で複数のメインカメラがあるのを私は見落とさない。ふふーん?
「あれ、テレサ。前の機体やめたの?」
『ええと、はい。この環境ですとどうにもあの機体は相性が悪いようですので。という事で、汎用性重視の機体を改めて構築して見ました』
「ふふーん、汎用性ね。それにしては思い切ったギミックが装備してあるみたいだけど?」
私が指摘すると、モニター映像の向こうでテレサは『バレましたか』と舌を出してみせた。可愛い。
『ふふ、ショウさんには敵いませんね。そんなに分かりやすいですか、この背中の』
「ははは、私を誰だと思ってるんだい。とはいっても外れてたら恥ずかしいから一応確認するんだけど、背中のは折りたたんだレッグパーツかな」
『正解です』
私の指摘に、ガショーン、とテレサは背中に折りたたんでいたパーツを引き延ばして見せてくれた。バックパックがある部分に、バッタの足みたいなパーツが折りたたんでマウントされているようだ。これだとメインスラスターが装備できないけど、どうにも腰回りや脚部にそれらは配置されている様子。
「ふうん。スラスターに頼らず急上昇したり、あるいは急ブレーキしたり、機体を支えるのに使う感じか。見た目は二脚だけど本質的には四脚機体なんだね、その機体」
『えっへへへへ、私としては結構思い切ったアイディアだったんですが、ショウさんには敵いませんね。はい、概ねそんな感じです。スラスターを用いた移動だと、どうしても加速時に大きなエネルギーロスが発生する所に着目しまして』
「ほほーう。それでジャンプで加速しようと思った訳ね」
早い話が逆間接のジャンプ力と二脚の安定性のいいとこどりしよう、という訳か。
アイディアそのものは悪くないけど……。
「でもそれだと重量嵩んで逆に機動性低下しない?」
『うっ。そ、それはそうなんですが……』
「ああいや、駄目だししたい訳じゃないんだ。重量がかさむなら、移動だけじゃなくてもっと積極的にレッグパーツを使った方がいいんじゃないかってね。攻撃とか」
特殊なパーツを搭載する事で独自機能や個性を出したいのは分かるんだけど、運用曲面を限定するとそれ以外ではデッドウェイトになってしまう。人型というのは兵器として見た場合、どうしてもそういった死に重量が普段多い形状になるから、さらにそれを増やしてしまうと……という話だ。
勿論、それが悪いとは思わない。使わないからデッドウェイトになるなら、普段から使っていけばいい話なのだ。
『え、攻撃にレッグパーツ……ですか?』
「そうそう。馬みたいにキックしたりとか、逆に大きく展開して肩の上から角みたいにして突いたりとかさ。いっそ隠さずに、ケンタウロス型みたいにして普段から足として運用するのもありなんじゃないかな? 馬はそんなぴょんぴょん跳ねる生き物じゃないから、突然跳躍したら意表もつけるだろうし」
『おお……なるほど、確かに……』
中に乗っているパイロットの動きを反映しているのか、ぽん、と手を打つテレサ機。どうやら彼女にもしっくりくる概念を提供できたようである。
「ま、とりあえずは卓上の空論より実践だね。その機体でしばらく運用してみて、しっくりこなかったら改造すればいいよ。極論、自分が気に入ればいいんだからさ」
『ふむふむ……。えへへ、わかりました。やっぱりショウさんは頼りになりますね』
「よせやい、照れる」
正直な話、いくら発想だけあっても実現するにはテレサの協力が必要なので、そんな風に持ち上げられても困ってしまう。ま、そこはお互い持ちつ持たれつ、という事で。モチモチ。
「その辺はお互い様さ。パートナーなんだしね」
『パートナー……ええ、はい! そうですね! パートナーですもんね!』
「そゆこと。んじゃ、早速探索開始しようか」
なんせこの宇宙船は思っていたよりも広いようだからな。とりあえず、今日は何としてもあのGどもを殲滅し、居住区らしきエリアの調査を進めたい所だ。
『では、私が先行して索敵しますので……』
「うむ、こちらが観測データを元に冷却攻撃、だね。よし、行ってみようか」