ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
という事で、機体も新たに宇宙船の探索を開始した私達。
流石に二度目、という事もあって少しはスムーズに動けるかと思われたが……なかなか、そうは問屋がおろしてはくれない。
『敵機発見しました。支援お願いします』
「ほいほいっと」
先行したテレサ機が、頭部の複合センサーで地形に一体化している敵の存在をこちらに伝えてくる。その情報を元に、冷却機関を稼働。コールド・アビスによる先制攻撃をしかける。
ひんやりとした冷気が立ち込め、メタルインセクトを柔らかく包み込む。一転して鋭い冷気がその身を切りつけるが……完全に凍り付く前に、メタルインセクト達は素早く動いて冷気の致死圏から離脱してしまう。
『ギギィ!』
『ギ……!』
「ええい、やっぱ即死とはいかないか、なかなか!」
素早い動きで凹凸を這いまわるシデムシ型メタルインセクトを前に思わず舌打ちが出てしまう。
こないだのミリタリーチームとの戦いでは、冷気という特殊な攻撃方法にあちらが馴染みがなかった事や、走行車両の運動性の低さ(想定外の展開に弱いという意味で)、総質量の小ささ、といった点がこちらに有利に働いたが、メタルインセクト相手だと逆だ。
機械的に反応する彼らはそれが何か理解するよりも早く行動を起こすし、人型は勿論車輛に比べても節足動物型は瞬発力に優れ、何より総質量は戦車や自走砲より大きい。パイロットのようなウィークポイントも持たない彼らは、この手の概念攻撃にはかなり強いようだ。
ただ、無傷ではない。
影響範囲から離脱し、こちらに向かってくるメタルインセクトの動きは記憶のそれにあるよりもかなり鈍い。即死は免れられても、冷気によるデバフは避けられないようだ。HPバーも何やら継続的に減少し続けている。
本来、機械は冷たければ冷たい程有利ではあるが流石に限度があるという事だ。例えば外気を吸いこんでメイン機関を冷却する空調ラジエーターが、突如マイナス200度の冷気を吸い込んでしまったら当然異常をきたす。他にもこのエリアのメタルインセクトは有機的な素材を多用しているので、それらが急激に冷やされたら悪影響はあるだろう、罅割れるとか硬くなるとか。
そういった影響が顕著に出ているようだ。
『なるほど。仰る通り、顕著に影響が出ているようです。量子転送装置で冷媒を転送する際に粒子化する影響でしょうか。興味深い』
過冷却を始めてみるテレサがしみじみと呟きながら、ブルバックマシンガンを手に前へ出る。連続する射撃が、動きが鈍ったメタルインセクトを捕らえ、次々に撃ち砕いていく。
もちろん私も見ているだけではない。のっそりと鎌首をもたげ、鼻先に追加装備したバルカンで攻撃に参加する。そんなに威力の高い装備ではないが、冷気デバフが入った敵を仕留めるには十分だ。
しかし、分かっていた事だが、このエリアの敵もなかなか一筋縄ではいけない。
攻撃に夢中にならないように適宜レーダーに目を落としていると、不意に頭上に覚えのない敵の反応が増えているのに気が付いた。
「テレサ、上だ!」
『!』
ボトボト、と天井から落ちてくる敵の奇襲。それそのものは互いに回避するが、そのせいで分断されてしまった。後方にいた私はともかく、テレサが前面の敵と奇襲してきた敵に挟まれてしまっている。
「こいつら、天井に隠れてたか! 狙ったみたいに遅れて起動しやがる!」
『見落としていましたか……!』
レーダーに対する嫌がらせみたいな地形という事もあって、どうしても見落としが出るのは仕方ない事だ。だが厄介なのはアクティブになっても即時動き出すのではなくこうしてタイムラグがある点である。そのせいでこうして、偶然の生み出した時間差攻撃による奇襲に対応せねばならない。
冷気攻撃を受けていない新手の動きは素早い。
一刻も早く片付けてテレサの救援に向かわなければ。
「ええい、だったらこれならどうだ!」
バルカンで牽制しつつ、ビームチェーンソーを振り回す。長い尾をムチのように振るい、迫るメタルインセクトを纏めて切り裂いた。
流石にこの一撃には耐えきれず、纏めて砕け散るメタルインセクト達。
その向こうで、至近距離の敵をマシンガンで迎撃しているテレサ機の姿が見えた。そしてその背後ににじり寄る新手の姿も。
『なんのぉ!』
『ギゲッ!?』
それを、折りたたまれていたレッグパーツが蹴り飛ばす。バッタの後ろ足のような強力な一撃を受けて有利から一転、痛打を受けて吹っ飛ばされるメタルインセクト。壁に叩きつけられてひっくり返って動かなくなるソイツを、バルカンで蜂の巣にしてトドメを差す。
今ので奇襲してきた奴は全滅だ。
あとは冷気デバフを受けた相手を倒せばいい。幸いな事に、そうてこずる事はなく、私達は敵グループとの交戦に勝利を収めたのだった。
「ふぅ。やっぱりここの戦闘は疲れるなあ」
『そうですねえ……』
んでもって、勝利後の反省会。
特に思ったほど冷気が通じないことについてだ。
「直接座標に吹き付けるより、ちょっと工夫したほうがいいかな、これは。異常を感じるなり離脱されては……」
『うーん。ちょっと思ったんですけど、直接攻撃というよりトラップみたいにして使う方がよろしいのではないでしょうか』
「どゆ事?」
冷気をトラップ? 尋ね返す私に、テレサは『んー』と言葉を選ぶ仕草の後に分かりやすく説明してくれた。
『メタルインセクトは直接的なあれこれには敏感に反応しますが、影響がない事にはかなり鈍感なので。まずは敵の周囲を冷却して冷却だまりみたいなのを作って逃げ場を無くしてから、わっと冷気を浴びせるほうがいいんじゃないかと』
「あー、なるほど。確かに。ダメージゾーンをあらかじめ作っておくわけか」
『そうそう、そんな感じです』
「おっけ、次はそうしてみるわ。んでもって、テレサのカスタマイズだけど……」
私の機体だけでなく、テレサ機についても話を振ってみる。彼女は見せつけるように、バックパックに折りたたんだ足を何度か伸ばし縮みしてみせた。
『ショウさんの言葉のおかげで咄嗟に反撃する事ができました! あちらも完全に背後に回り込んでいたのに蹴り飛ばされるとは思わなかったみたいですね!』
「まあ、実際に馬に蹴られる事故ってそんな感じみたいだからね」
馬は人間とは目つきが違うのでちょっと横を向いただけで後ろまで見えるんだっけな。ロボットの場合背後モニターがあるから、ちょっと意味合いが違うけど。
『あくまで高機動ユニットのつもりでしたけど、これならもっと攻撃的に使ってもいいかもしれませんね! ふふ、なんか色々やれそうでワクワクしてきました』
「ふふふふふ、テレサさんもカスタマイズの味が病みつきになってきたみたいだね。何より何より」
『はい!』
そんな感じで対策法を考えつつ、奥に進む。
実践の機会はすぐにやってきた。ある程度進んだ先に、再び敵の反応。前から薄々感じていたが、この宇宙船内部、敵の密度が高い気がする。ハイヴって事だろうか?
『レーダーに敵を感知。今度は見落としはないはずです』
「おっけい。TLS、まずは連中がアクティブ化した後の移動ルートを予想。その進路上に冷気トラップを作ろう、頼む」
『了解しました』
人間がまじまじ見るとなんだか気が遠くなってくる凹凸模様だが、対話型OSはすんなりと地形を把握、座標を設定してくれた。そこにじゃんじゃん冷気を送り込んで、メタルインセクトカンチコチンゾーンを作り出す。
準備が終わったら、いざ本命。
『ギギ!』
『ギィ!』
いきなり冷気をぶっかけられて、弾かれたように動き出すメタルインセクト。その移動コースは想定した通りで、その足が冷凍地獄へ踏み入る。
その途端、凍り付くメタルインセクトの動き。
『ギ……ギギ……』
即死とまではいかなくとも、まるで冷気で足が張り付いてしまったかのように動きを鈍くするメタルインセクト達。止まった的の如き彼らを排除するのは、それこそ射撃の練習程度の難易度だった。
『いい感じでしたね!』
「うむ。ふっふっふ、これならあの部屋に犇めくG共も必ずや根絶やしに出来る事でしょうぞ。ふっふっふっふっふ」
『ショ、ショウさん、キャラ変わってません……?』
そりゃ変わるよ、今度こそあの屈辱を晴らしてくれる。
待っていろよG型メタルインセクト達。今度こそ、コロリと殺虫してくれるわ!
「よぉし行くぞテレサさん!」
『あ、はい、まってくださーい』