ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
その後も遭遇するメタルインセクトを氷漬けにしながらマップを辿り、やってきました船の居住区。
相変わらずぱっと見では何もいないけれど、今の私は知っている。
感じる……感じるぞ……部屋の奥で、悪魔たちが息をひそめて今か今かと飛び出す機会をうかがっているのを!
その手にはもう二度と引っかからぬ、次はお前達がびっくりさせられる番だ。
「よーし。今度こそここで連中を殲滅する。テレサさん、ぬかりなくね」
『了解しました!』
カバーに入るテレサをよそに、冷凍兵器を展開する。コォオオ……と放出される冷気によって、部屋の温度が急激に下がっていく。
なんだかんだで、閉鎖空間だと火炎だの冷気だのは有効だな。特に冷凍兵器は、多少効きは悪いが逆に言えば自爆する可能性が低い。炎みたいに燃え広がったりしないからね。
いっそ両方使えれば最強なんだが。次のコンセプトはこれでいくか?
そんな事を考えつつ、下準備が終わったので直接攻撃に入る。
「んじゃ、連中をあぶりだすよ」
『はい。それで動きが鈍った所を、私が撃ちますね』
段取りを確認し……コールド・アビス照射開始!
まずは手前の部屋から、冷気攻めをする。途端、無人に見えた部屋の中が騒がしくなり、どたばたと黒い影が飛び出してきた。
怨敵、G型メタルインセクトである。
纏わりついてくる冷気に敏感に反応し飛び出してきた連中であるが、それを待ち構えているのはより低温に包まれたホールである。冷気の罠にひっかかったその動きが、急激に鈍くなる。
「今だ、テレサさん!」
『了解!』
バタタタ、とマシンガンが火を噴いて、次々にメタルインセクトを仕留めていく。
ふはははどうだ衛生害虫ども!
これこそが、人類が長年にわたり貴様らと鎬を削った末に辿り着いた最終回答!
毒がやがて利かなくなるなら、物理に限る!
温度変化と物理的衝撃相手なら、学習して耐性のつけようもあるまい!
「ふはははは、愉快愉快! 次に行くぞー!」
テレサの処理キャパシティを越えないように様子を見ながら、部屋のメタルインセクト達をあぶりだしていく。所詮虫けら、状況を理解しないまま反射的に動いた結果、待ち構える冷気の罠に自分から突っ込んでいき、弾丸の餌食になっていく。真っ黒な手足や翅が飛び散っては砕けてゆき、撃破報告がじゃらじゃらと飛び込んでくる。意外と経験値が美味しいのは思わぬ産物だ。
でも正直、こいつらの経験値欲しくないな……気分的に汚されちゃったという感じ……。
『! ショウさん、二階の連中が一斉に動き出しました……!』
「ちっ。流石に異変を察知したか」
ただ段取り通りにいっていたのもここまでだった。恐らく、同じグループではなくとも近隣のメタルインセクトが一定数狩られると入るスイッチみたいなものがあるのだろう。残りの部屋からわっと、メタルインセクト達があふれ出すように動き始めた。
流石にこの数は冷気の罠もテレサ機の処理能力もキャパを越えている。
しぶしぶこちらも攻撃に加わり、鼻マシンガンで処理に参加する。
幸い、冷気によるデバフはそこそこ入っているようで相手の動きは鈍い。それでも押し寄せるメタルインセクトに、じりじりと後退を余儀なくされる。
「ええい、なんだったらセントリーガンでも持ち込むべきだったか!」
『どれだけいるんです、これ!?』
「知らんが一匹みたら30匹はいると考えるべきだな!」
見た感じもっといそうな気がするけど!
多分これ正攻法は部屋を一つ一つチェックする事なんだろうけど、それで何部屋目かに差し掛かったら残りが一斉に動き出して、一転して部屋での籠城戦を強いられるっていうシチュエーションなんだろう。腐るほどホラー映画で見た展開だ。
こちらは幸い、居住区の入口に陣取っているので駄目そうなら後退する事もできるが、あちらの方が移動速度があきらかに早い。追いつかれて交戦になるのは見えているし、なんなら最悪リポップした他のメタルインセクトに挟み撃ちにされる。
やはりこの場で殲滅するしかない。
『ギギィ!』
「ええいくそ、気持ち悪いわ!」
真正面から翅を広げて飛び掛かってきたメタルインセクトを尻尾のビームチェーンソーで薙ぎ払う。ぶったぎると真っ黒なオイルが傷口から飛び散り、機体にふりかかった。エンガチョ!
「ええい、くそ、それにしてもキリがない。まさか無限沸きじゃないだろうな……そうだ、ドローン!」
ポコン、と機体に格納していたステルスドローンを展開する。ころころ転がって足を開いたドローンは、きょろきょろと状況確認にカメラアイを左右に振る。
『ピ……ピキキ!?』
「悪いが見ての通り修羅場の真っ最中で、手が離せない! 頼む、こっちが敵をひきつけている間に、部屋の奥を偵察してきてくれないか?!」
『ピキィ!』
了解しました! と言わんばかりに足を掲げて、数匹のドローンが隅っこを伝って部屋に向かっていく。
その間も、こちらはがさがさと沸いてくるメタルインセクトと激闘中である。
流石にこの物量を相手にするとは思っていなかったので、そろそろ弾薬がきつい!
『警告。冷媒減少につき、冷却装置の機能低下。コールド・アビス使用不能です。追加報告、マシンガン残弾30%』
「ああくそ、ここまでか! テレサさんは?!」
『こっちも残弾が50%を切りました!』
最大の武器であるコールド・アビスが使えなくなっては、こちらの機体はもろっちい骨骨フレームだ。鼻マシンガンも使い切ればいよいよ、戦う術はない。
幸い、テレサ機は通常のマシンガン機という事もあって弾はたっぷり持ってきているようだが、それでも半分を切っている。
敵の勢いも大分減ったが、まだまだたくさん残っている。冷気デバフが消える事を考えるとトントンか。このままではこちらが押しつぶされる……。
その時だ。
敵陣に潜り込ませたステルスドローンから報告があった。
『ピキピキ。ピィ』
「こいつは……!」
モニターに投影される映像情報。そこには、奥の部屋の壁に開いた亀裂と、そこから這い出して来るメタルインセクトの姿があった。
やっぱり。いくらなんでも数が多すぎると思ったんだ。やっぱり、発生オブジェクトみたいなものがあったんだな。
そしてその亀裂の隣に、赤いガスボンベらしきものが配備されているのを見て、もう対処法は確定しているようなものだった。
ただ、ここからは狙えない。イベントクリアには、ちょっと無理をする必要がありそうだった。
「テレサ、ちょっとこの場を支えてくれるか? 敵陣に切り込む!」
『え? わ、わかりました。支援します、ご武運を!』
流石に長い付き合いもあって以心伝心。メタルインセクトを押し返すべく一時的に前に出るテレサ。その彼女にヘイトが向いた隙をついて、するすると部屋の奥へと潜り込む。このマップの凹凸の多い有機的な地形は、敵ばかりに利するものではない。蛇の体形を生かして奥へもぐりこんだ私は、コッチコッチ、と足をふるドローンに導かれて、最奥の二階の部屋へと向かった。
部屋の中は荒れ放題で、特段ぐちゃぐちゃになっている。パソコンらしきものもあって興味を惹かれるが、今はそれは後だ。
見れば部屋の奥の壁が大きく引き裂かれ、その奥で無数のメタルインセクトが犇めいている。その手前には、これ見よがしに赤く彩られたガスボンベ。
なんで居住区の中にこんなもんがあるのかとかはまあ置いといて……。
「ドローン、退避しろ。……喰らえ!!」
鼻マシンガンを発射。それは赤いボンベに火花を散らして風穴を開けて……直後。
真っ赤な炎が吹きあがる。部屋をなめ尽くし、目の前に迫る爆炎の壁に、ちょっと遅れてひやり、と背筋が泡だった。
あれ。なんか炎大きくない??
危機感を覚えたが、しかし時すでに遅し。
爆炎が部屋を崩壊させ、吹き寄せる圧力にスネークゴーストは軽々と吹き飛ばされ、コクピットの視点が何度も横転。
最後に私が見たのは、逆さになって迫ってくる居住区中央のテーブルらしきものだった。
『ショ、ショウさーん!?』
グシャリ。
プレイヤー:ショウ、DEAD。
死因:圧迫死。