ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
「機体の耐久力が足りなかったか……」
またしても居住区で絶命した私は、ホームに戻ってきた後も床に座り込んで失敗を反省していた。
「考えてみれば攻撃力や攻撃範囲を生かして一方的に戦いを続けてきたから、被弾あんまりしてなかったんだよな。いけないいけない、この間の勢力戦で一発も被弾しなくてホントに良かった。あの感じだと戦車砲一発でも喰らえばお陀仏だったよ……」
別に防御力を犠牲にして攻撃や機動性を上げるアセンが悪いという訳ではなく、むしろ好きな部類なのだが中の人の性能を加味するとそういう訳にもいかない。
腕が平凡より下ぐらいである事を自覚している身とあっては、やはり防御力も大切である。それを忘れて一方的な試合運びに慣れ切ってしまった結果が、まさかの激突死である。
これは反省せねばなるまい。
「むむむ……なんか閃いてきたぞ……」
なんとなく、良いアイディアが閃き始めた、その時である。
ガゴゴゴゴ、と第二ハンガーのリフトが降りてきた。テレサが戻ってきたらしい、早いな。
ぼーっと見守っていると、やがてリフトが停止した機体のコクピットが開き、キャットウォークの展開を待つ事なく金髪の少女が躍り出た。
彼女はまるで崖を駆けおりる山羊のような身のこなしで地に降り立つと、全力でこっちに走ってくる。
『ショ・ウ・さーーーーーん!!!』
「あ、やべっ」
その鬼気迫る表情に思わず腰が引ける。怒ってる、めっちゃ怒ってるよ、いやまああんなクソ情けない死に方されたらそりゃあ怒るよね!?
ドドドドド、と走ってくるテレサに、ビビリつつも正面から向かい合う。え、ええいままよ、サポートAIのお説教が怖くてゲームなんてやれるかーっでやんす!
んだが。
目の前まで走ってきたテレサの勢いが急に衰える。全力疾走からとぼとぼ歩き、ついには足を止めたテレサは、私の前で俯くとそっと両肩に手を伸ばしてきた。
確かめるように私の肩に手を置いて、ぼそりと一言。
『……心配、したんですよ……』
「あ、うん……ごめん……」
涙ぐんだようなしょぼくれた声。私はコクコク頷きながら辛うじて一言二言返すのが精いっぱいだった。
……罪悪感っ!
何だかとっても申し訳ない気分になる!!
「その……アホな死に方してごめんね……」
『い、いえ……でも次からは、あんまり心配させないでいただけると助かります……』
「うん……」
なんだか妙な空気が漂う。そのまましばらく、私達はまごついたまま、無言のままで向き合っていた。
なんていうか、その。
今後は自爆装置とか無茶やってアホな死に方するとか、出来るだけ控えるようにしよう……うん……。
気まずい雰囲気はとりあえず10分ほど続き。
現実の私が傍らに置いていたスマホがアプリのお知らせでヴンッと震えたのをきっかけに、ようやく時間が動き始めた。
をほん、とわざとらしく咳をついて仕切り直し。テレサの手をそっと肩から外して、何事もなかったように話を切り出す。
「いや、でもスネークゴーストは悪い機体じゃなかったけど、流石にコクピットの防護を疎かにしすぎたね。試作型とはいえ」
『そ、そう、そうですね。ちょっと特殊な形状すぎたかもしれません』
「だね。その辺考慮して、新しく機体を設計し直そうか。全損したし」
ハンガーを見上げると、ちょうど頭からコクピットまでぺしゃんこになったスネークゴーストの姿が見える。どんだけの勢いで吹き飛んだんだか。
「んー。思ったんだけど、あの宇宙船内の探索するなら、変な事考えずに乱戦に対応した機体にするべきなのかもね」
『乱戦に対応、ですか』
「そうそう。不安定な足場でも安定して戦える脚部と、周囲を無数のメタルインセクトに囲まれても応戦出来る対応力。自然と閉鎖空間での戦いになるから、銃火器は射程よりも連射性能と弾数重視って事になるんだけど……ううん」
思い返せば、ホラー映画において怪物の住処に銃火器持ち込むのは大体同士討ちフラグである。宇宙ゴキブリ退治2でも、黙って勝手に兵隊が弾丸を持ち込んだ結果大惨事になった訳だし。
いっそ、近接武器に特化した方がいいのか? それなら同士討ちのしようもないし。
でもなあ、このゲーム、近接武器そんなに強くないんだよなあ。
ビームチェーンソーは威力は申し分ないけど、オーバーヒートしたらしばらくただの棍棒になるしね……。他にはビームソードっていう手もあるけど、あれ準備とか大変でどっちかというと必殺の一撃であって、普段からブンブン振り回すもんじゃないし。G相手にブンブン振り回してたらどっかで故障しそうだ。
となると、いっそ切れ味悪くても頑丈な刃物を、パワーでぶんぶん振り回すほうがいいのか? プレスカッターだって刃物自体の切れ味はそこそこで、圧力で鉄板とか切る訳だし。
うーん。でもなあ……メタルインセクトだってそんなに軟じゃないしなあ……。
「ううむ、うーむ」
『悩んでますねえ……』
「そうなんだよなあ。とりあえず、脚部は四脚……いやここはトライポッドにしてみるか? なんとなくだけど、こういうのって足が少ない方が制御しやすい気がするし」
ちらり、とテレサに視線を向けて意見を伺うと、彼女はうーん、と軽く小首を捻ってから応えてくれた。
『そうですねえ。脚が増えれば増える程、互いの干渉を考慮しなければならなくなるので、難しくなるといえば難しくなります。今回は二脚移動により安定性を加えたい、というのが主目的ですので、三本目の足をつっかえ棒みたいに考えればかなり安定性は高く出来るんじゃないでしょうか』
「なるほど。それは悪くないかもね」
『まあその場合、四脚タイプの売りである全方向への移動敵性は失われて、ちょっと偏った移動適正になるかもしれませんが……』
まあその辺は、中の人が性能を生かしきれてないから気にするほどの事でもない。とにかく凸凹な上に滑る足元に対応できて、がっちり機体を安定できればそれでいい。
んでもって、武器はどうすっかなあ。
「とりあえずでっかい大ナタでも持つか……。いざって時には盾にもなるような奴」
『まあ、シンプルで良いとは思いますが……流石にメタルインセクト相手には切れ味が鈍すぎるのでは?』
「そりゃーそうなんだけどさ。あー、なんかこう、超高周波みたいな感じで敵の装甲をガリガリ削るような装備、ないかなー」
もしかしたら格闘スキルツリーを伸ばしたらあるのかもしれないけど、現状はないんだよねこれが。というかあったら、あの赤い残像とか使わない理由がないし、このゲームにはまだ実装されてないのかもしれない。
いっそ巨大チェーンソーでも持つか? いやでもチェーンソーって衝撃に弱いしすぐぶっ壊れるしな……。うーん……。
……ん? まてよ?
「ねね、テレサさん。ふと思いついたんだけどさ……量子転送装置ってあるじゃん? あれって、転送できる対象、質量はともかく物質の種類に制限ってある?」
『え? い、いや……あれは原理的には物質転送装置の類ですので、転送対象に制限はないと思いますが……でも流石に弾丸の転送とかはできませんよ? あれで、敵の装甲を消滅させて倒す、なんてのも当然できませんし……』
「いや、そこまでは望まないよ。でも、敵の装甲表面を脆くする事ぐらいはできないかな? 何事も最初の、刃物を立てた時が大事っていうじゃん。量子転送装置で、対象の装甲表面の防御力を下げて、ぶったぎるとか……できそうにない?」
ぱちくり。
私のアイディアに、テレサははっきりと困惑に目を瞬かせた。
『え……それはまあ、理論上は……え、ええ?』
「よーし、いけそうならやってみよう作ってみよう! レッツビルド!!」
うほーい、楽しくなってきたぞー! あとは外にも、ビーム系の応用アイディアを盛り込んで……おほほほほほ! ドーパミンだかアドレナリンがでてきましたぞよー!