ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
と、いう訳で完成しました新型機体!
脚部は安定性と歩行力を重視した三本足のテトラレッグ。その上に載っている胴体は装甲重視の頑丈なもの。最大の特徴は両手で支えた巨大な大ナタで、振り回す事に特化した両腕は大ナタの峰と一体化している。峰部分を手先がスライド・回転して、大ナタを自由に構えられる、という仕組みだね。
この大ナタは頑丈な合金を使っているのは勿論、その内部に量子転送装置がずらりと並んでいる。この作用によって、刃先に接触した物体の分子構造を虫食い状態にして破壊するという思想な訳だ。テストでは、それなりに頑丈な金属インゴットをクッキーみたいに割り砕けたので、発想は間違っていないはず。あとは本物のメタルインセクトにどれだけ通じるか、である。
とにかく細かい制御は考えず、上半身を回転させて大ナタをぶん回していくという発想なので、コクピットはかなり頑丈に作ってある。
んでもって頭部は、センサー系を保護する為に頑丈なマスクを装備している。覗き穴が開いてるので視界もばっちり! そもそもロボットはメインカメラだけで外を見ている訳じゃないしね。
そして、秘密兵器もばっちり搭載。実は腕部に、ビームシリンダーを搭載している。小型のビーム砲を転用しているから出力はさほどでもないけど、ただの金属の矢をレールガン並みの速度で射出するあの圧力を腕部の駆動に使用すれば超パワーで相手をぶった切れるのではないか、という発想だ。ただテストでは何をどうやっても勢いが付きすぎて腕が千切れてぶっとんでいったので、その勢いを受け止められるぐらい頑丈で強い敵相手にしか使えない文字通りの奥の手である。
んでもって、最低限の射撃能力も必要という事なので、両肩には自律ドローン君が収まるスペースも作ってある。射撃武器が欲しいときはここからドローン君が展開して、マシンガンで援護してくれる。同士討ちによる自滅を避けるために威力は控えめ、万が一に撃たれても装甲を数発では貫通しない程度のヘボ銃だが、Gの巣にあるガスボンベを爆破するには十分な威力があるはずだ。
そんな感じで、ホネホネフレームを作った経験を活かしつつ、軽量かつ頑丈に仕上げた新しい機体、その名も“サーティーン”!
その機体に対するテレサの反応はというと。
『……安いホラー映画のクリーチャーみたいですね』
「酷い!?」
なんて酷い事を言うんだこのAI!?
「どこがそんなホラー映画の怪物なんだよ!?」
『いやその。ホラー映画の怪物とか殺人鬼って、無駄に大きな刃物をちらつかせて迫ってくるじゃないですか? この機体、コンセプトからしてそういう機体ですよね……』
「それはその。まあ」
冷静に言い返されて言葉につまる私。た、確かに言われてみれば……。
『まあでも、運用目的がはっきりしてそれに実直な機体ではあります。シンプルで質実剛健、いいんじゃないでしょうか? 私的には腕がもげるような過剰出力の機構は要らないんじゃないかと思いますが……』
「そこはまあ……ビーム的な浪漫は外せないというか……」
浪漫はその、捨てられなくて……。
えへへと誤魔化し笑いしていると、テレサは腰に手を当てて、はあ、と諦めの溜息をついた。
なんかほんとに人間臭くなったなあ……。
『まあ、いいですけど。今更の事ですし……』
「酷くない? その言い方」
『事実でしょう? あれだけ色々やって完成させたコールド・アビスも、パイロブラスターもあっさり倉庫に仕舞いこんでしまうんですから……』
いやいや、それは反論させてもらうよ。
あれらは今、あまり必要ではないと判断しただけで、必要になったらまた引っ張り出すよ。
というか最終的には統合して新しい機体を作りたいね。
氷と炎を操る機体って浪漫じゃない? なんか合成したら物質破壊光線とか生まれないかな……。
『なんで+と-をかけ合わせたらヌルが出来るんですか。そもそも熱量は常に+の方が勝つって言ってたのショウさん本人でしょう?』
「そこはまあ、ほら、浪漫だから……」
『頓珍漢な意見を全部浪漫で誤魔化さないでくださいませんか?』
ご、ごまかしてないよ、ホントの事だよ。
氷と炎を全く等しく融合させたら超破壊力が生まれるっていうのは昔からのお約束なんだよぉー。ひーん。私、誤魔化してなんかないもん……。
「ごほん。それはともかくとしてだ。これまでは不相応にテクニカルな機体を使っていたのがよくなかったんだ。これぐらい割り切った機体ならきっと私でも戦果を出せる筈! さっそくいくぞぉ!!」
『……はぁ。この人はこの期に及んで何を言ってるのか理解できません(ボソリ)』
「ん、なんか言った、テレサ?」
『いいえ、なんでも』
ほんとかー? なんか最近ボソボソ呟くのやっぱ増えてない。
ちょっと疑問に分かったが、ペカーとしたテレサの笑顔を見ていると、それが誤魔化しとわかっていてもなんだかどうでもよくなってきて、私はコクピットへ急いだのであった。
「という訳で出撃だー!」
リフトからおりて、まずは歩き心地を確かめる。どこぞのマーズ星人の陸戦ポッドよろしく、先端の鋭く尖った脚部でがつんがつん、と凹凸に満ちた床を踏みしめてみる。
「おっ、意外と安定している感じかな」
『歩くというより、ツルハシを打ち込んでる感じですね。この宇宙船内部程度の強度なら、軽く突き刺さっているようです』
後ろからやってきたテレサ機が覗き込むようにして所感を述べてくる。確かに、歩く度にカツンカツンと火花が散る様子をみるとそんな感じだ。もしかすると近接攻撃手段に使えるかもしれない、これ。
まああんまり長時間歩き回ってるとすり減って歩きにくくなるかもしれないから、そこはちょっと様子見ながら改良していこう。例の超高度セラミックスを先端に用いるのもありかもしれない。
『随分と贅沢なレアメタルの使い方ですね……』
「わははは、細かい事は気にしないー」
まあ確かに、普通こういう消耗前提の所は交換できるようにして使い捨てにするもんだが、逆だっておかしいアイディアではない。ディスクカッターとかも、金属切断用の機械だと刃の一部分だけ高強度金属にして切れ味を保ってる訳だしね!
ま、それにゲームだし。すり減ってもホームに戻れば元通り。気にすることはなーい。
歩き心地が悪くない事を確認して、今度は上半身をぐるぐる回しながら操作感を確かめる。手にした大ナタを振り回してブンブングルグル。勿論、コクピットは独立してるから、機体の回転に振り回される事はない。ギュインギュイン回りながら宇宙船の壁に刃をぶつけると、花火のように派手に火花を散らして深い亀裂が穿たれた。
おおう、思ったよりもざっくり切れる。
「いいね、いいね。光の巨人もやってたけど、困った時は回るに限るね」
まあ、グルグルしながら範囲攻撃って、ゲーム製作センスが全くない開発者がやたらと使いたがるモーションだけど。
しかしながら私はプレイヤーなので関係ないのだ。
攻撃範囲広い! 威力もある! そして分かりやすい!
押し付ける側からすれば非常に楽でいい。
「うはははは、予定通り予定通り。んじゃ、次は実戦と行こうか。テレサさんは支援頼むねー」
『わかりました。気をつけてくださいね、ショウさんあまり近接戦得意じゃないでしょう?』
「あ、ばれてる? 間合いの管理が苦手なんだよねえ……」
こう、距離感がね、難しいの。
まあでもこの機体は刃物ぶん回して突撃するだけだから問題ないでしょたぶん。
とりあえずやってみなければ何とも言えない。敵の姿を求めて、カシャカシャ宇宙船の通路を進んでいく。やはりこの凹凸、人間の二本足よりこう、三本足とか四足歩行が馴染む形状してるなあ。まあシャカシャカ蟲みたいな足で歩いてる三本足の人型とかオンラインだったら新種のメタルインセクトと勘違いされて撃たれても文句いえないデザインだけど。はははは。
「っと、早速おいでなすった」
レーダーに反応、敵さんのお出ましである。攻略の時はめんどくさいがテストの時はこの高出現頻度は有難いね。
まだ奥の方に進んでないから、出現したのはシデムシ成虫型が2匹。数的にも手ごろな相手である。
「よぉーし、いっくぞぉー!」
『頑張ってください!』
俊敏な動きでこちらに向かってくるメタルインセクトに、自らも突撃していく。対する相手は、こちらの急な接近に何かリアクションを示すでもなく淡々と距離を詰めると、最後の間合いを素早い跳躍で埋めて飛び掛かってきた。咄嗟に盾にした大ナタとメタルインセクトの間で火花が散る。
「ふはははは、負けるかあ!」
『ギシュアア!』
ここで刀身に埋め込んだ量子転送装置を起動。ヴオン、という起動音と共に、刀身がぼんやりと発光する。軽く当身を入れて互いの間合いを確保し、身体全体で振り回したブレードを叩きつける!
『ギ……ッ!』
触感再現グローブを通して伝わる手応えは、なんていうか白菜を包丁で切った感じだった。ザックリとした繊維系の手応えを残して、メタルインセクトが真っ二つに両断される。びしゃあ、とオイルが切断面から飛び散って、モニターに点々と散った。
「ほほう」
思った以上の威力に、手元の大ナタを見下ろす。非起動状態で壁を切った時とはあきらかに違う手応え。これまで何度かナイフなどでメタルインセクトを攻撃した事があるが、あの時はこう、最初に硬い殻にひっかかったあと、無理やり押し込んでいく感じだった。だが、量子転送装置を対象の外殻分解に用いたせいか、その最初の引っかかりが随分薄い手応えに感じた。それとも単にシデムシ成虫型が思ったより硬くないのだろうか?
このあたりは色々切ってみて確認せねばならないだろう。
「ふふん。それでは次はお前だな」
距離を置いてこちらの様子をみていたもう一匹に狙いを定めて、今度はこちらから突撃。ブゥン、と振り回した刃の一撃を、メタルインセクトは素早い動きで回避した。そのまま、こちらの背後に回り込んで飛び掛かってくる。
甘いな!
「そりゃあ!」
上半身をブンブン回転させて、大ナタ大回転。自らミキサーに飛び込む形となったメタルインセクトは、哀れブツ切りになってその体を飛び散らせる事になった。
そのまま回転してまとわりついてくるオイルを振り払い、勝利を祝って大ナタを掲げる。
「よーし、いいぞいいぞ、このままじゃんじゃんぶった切っていこう!!」
ふはははは楽しくなってきたぞぅ!