ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
『こりゃまたボッキボキですねえ』
「だよねえ」
居住区の中央、一応の安全地帯で合流したテレサの第一声である。
ボッロボロに朽ちたブレードを見て、彼女は興味深そうに首を傾げた。
『しかしまあ、普通の壊れ方じゃありませんね。何百年も放置されて朽ちたみたいな……いやそれともちょっと違うか。腐食? メタルインセクトの体液がそういう成分があったとか……』
「うーん。どうだろ、流石にそれだと機体の装甲に何の影響もないのは変だし」
少なくとも現状は汚れる以外の悪影響は見当たらない。まあそれだけでも、事実上の目潰しみたいなことになってて聊か面倒だが。
しかしナイフだとあんまり問題にならなかったが、こういう大きな刃物でぷちっと潰すとオイルが飛び散るんだねえ。オンラインで近接武器が流行らない理由がまた一つ分かった気がする、これはちょっと良い気分ではない。
うーん、と二人で首を傾げつつ、砕けたブレードを見る。
しかしこうしてみると、スポンジ状に虫食いされてるっていうか、虫歯みたいだな……あっ。
「あっ」
『どうかしました?』
「ああ、いや、もしかしたらだけど……」
この機体に装備した大ナタは、量子転送装置によって相手の装甲を劣化させて破壊する、という構造になっている。その為、刃の内部に転送装置を組み込んで、転送波とでもいうべきものを刃から照射するようにしている訳だが。
もしかすると、その転送波が刃を構成する物質まで少しずつ転送して、虫食い状態にしてしまったのではないだろうか?
「どう思う?」
『……あり得ますね。考えてみれば、これまで散々自分の機体から発射したビームやら何やらを転送していたのだし、都合よく敵だけ転送分解されるはずもありませんでしたか……』
「ううーん、どうしようね、これ。何か対処法ある?」
二人で首をひねるが、好いアイディアは出てこない。
『……難しいですね。転送対象を分別できれば一番早いのですが。そもそも、どういう原理で物質転送が行われているのかがよくわかっていませんからね』
「うーん。使い勝手そのものはかなりよかったんだけどなあ。これも対策法が見つかるまではお蔵入りかな」
『こう、自己再生するような素材があれば、それをブレードに使えば解決するんですが。流石にそんなものはないでしょうしね』
まあ、一応現実でもある程度の自己修復作用を持った素材はあるけども、量子転送装置に巻き込まれての劣化をリカバリーできるほどの再生速度ではない。
漫画とかなら、ナノマシンで修復、みたいな方法で対策するんだろうけど、今の所ビルドロボオンラインでナノマシン的なシステムは聞いた事がないしね。
そもそも現代の科学では、分子サイズの機械なんてどうやって作るんだよ&どうやって動かすんだよ、という話で、近い物があるとしてもナノサイズではなくマイクロボットぐらいが関の山で、魔法のように物質を修復したり分解したりは無理だという考えが主流だし。
一番近いのは……腐食洞窟のボスが見せたポリマーみたいな再生液か? ああいう感じのものを刀身に漬け込んでおいて、転送装置で虫食いになった部分を埋めるあるいは肩代わりできれば……。
しかし残念ながら現状ではあれはプレイヤーには使用不可能である。
「ま、とりあえずアイディアとして取っておくのは悪くない。それより、部屋の探索、どうしよう?」
『ここはもうしょうがないので、私が見て回ってきます。ショウさんはおとなしくここで待機していてください』
「はーい……」
まあ唯一にして最大の武器の大ナタがバッキバキだしね。G型一匹でも今の私には命取りだ。
しぶしぶテレサ機を見送って、私はここでお留守番である。
『ピキピキ』
「? どうした、お前達。……もしかして、お前達も探索に行きたいのか?」
『ピィッ』
と、大人しくしていると、肩に収納していたドローンが自分から見を乗り出して何やら自己アピール。最初は何が言いたいのか分からなかったが、ふと思いついた事を尋ねると、コクコク、と彼らは首肯を返してきた。
……気のせいだろうか。何だか彼ら、日に日にコミュニケーションが達者になっていている気がする。
「まあいいか、それじゃあよろしく頼む。無理はするなよ」
『ピキキ』
『ピキュー』
やった、と言わんばかりに肩から飛び出して地面に着地するドローン。モソモソ這っていくその姿を見送っていると、TLSが気を利かせたのかメインモニターにドローンからの中継映像が表示された。
「お、気が利くね、ありがとうTLS」
『いいえ。お気になさらず』
「そうだ、考えてみればお前がいたな。別に黙りこくってお留守番する事はないか」
私はこの際だからとソファに大きく体を預け、第三者気分でドローン達の冒険映像を眺めながらTLSとお喋りする事に決めた。ま、たまにはこういうのも悪くないだろう。
「そういや最近、お前なんだか無口だよね。決勝トーナメントの時はすごいお喋りだった覚えがあるけど」
『あの時はマスターに通信相手がいませんでしたから。オフラインプレイの際はテレサがいますので、会話を邪魔しないように控えめにしております』
「ふーん」
テレサが作ったOSだけあって、彼女を優先するようなアルゴリズムが組み込まれているのだろうか。まあでもテレサはテレサ、TLSはTLSで別だと思うけど。
「私はTLSともお喋りしたいけど?」
『……ありがとうございます。ですが、可能な限りテレサを優先して頂ければ。私はあくまで会話型インターフェイスに過ぎませんので』
「そうか。まあ、慎み深いのも悪い事ではないしね」
とはいえ、私としては控えめな子ばっかりが割りを喰うのもよくない事だと思うのである。
無駄とはわかっていても、コンソールを良い子、良い子、と撫でてやる。
『…………』
当然ながら、その事に対するTLSからのリアクションはない。ま、あくまで対話でコントロールできるってだけのOSだものな。撫でられた所で何か思う事はないか。
別に自己満足なのでそれでいいのだが。愛されたいから愛したのではない、ただ愛したかったのだ、なんちて。
『ショ、ショウさん!!!』
「おわっ、びっくりした」
そんな感じで暇を持て余していると、いきなり大音量かつ特大画面でテレサが通信を繋いでくる。こら、いきなりビッグに自己主張するな、ドローン達がびっくりしてひっくり返っただろう。
『わ、わたし、私もショウさんの役にたってますよ!』
「??? え、まあ、そりゃそうだが……」
『ですよね! だったら、その、私もその、撫でてくれますよねゴニョゴニョ』
???
突然通信繋いできたから何かあったと思ったら、え? 何、TLSに嫉妬でもしたの? いやまあ、彼女はAIでTLSもある意味AIみたいなものだから情報コード同士似たようなものかもしれないが、テレサにその自覚はないはずだし……流石に数字情報に嫉妬するのはアレだと思うぞ?
大体……その、なんだ。
「いや、普段から撫でてるでしょ」
『そ、それはそうなんですが、もっと、こう……!』
どうやらテレサはもっと親密なコミュニケーションをお望みらしい。よーわからんが、それがお望みならまあ考えておこうか。
「わかったわかった。ここ最近は助けられてばっかりだしな、なんかこうスペシャルなふれあいを考えておくよ」
『!! やったぁ! 楽しみにしておきますね!!!』
「はいはい。でもあんまり期待するなよ?」
大体スペシャルといってもあんまりできる事はないぞ? ゲームの3Dモデルとはいっても、ハラスメントコードとかは在る訳だしな。スカートのあるキャラは大体その下は暗黒空間だし、そこに首を突っ込んだらプレイヤーの方がガオンされるし。なんかの格闘ゲームだとパンチラしながらヒップドロップするのが最強攻撃とかいう笑えない案件があったって聞いた事がある気がする。
……あれ? でもテレサ、なんどか際どい感じの所を見せてなかったか?
このゲームはその辺割と緩いのか……?
そんな感じでしょーもない事で頭を悩ませる私達ご主人様をよそに、せっせと真面目に働いている者達が結果を出すのは当然の事であった。
ドローン達から通信が入る。
『ピキキキィ』
「ん? 何か見つけた……?」
ドローンの映像に目を戻すと、何やらキラキラ光るアイテムエフェクトをドローンが確保している。即座に情報が共有され、私の元にそれが何かが通達される。
それは……。
「……朽ちかけたキーカード?」
何やら。とてもキーアイテムっぽいものを見つけたぞ。
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