ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
ドローン達によるキーカード発見後も部屋の探索は続けられたが、それ以上のめぼしい収穫はなかった。
文字化けした住人の日記らしきものや、多少のアイテム。そういったものが関の山である。
日記情報は世界観の考察に役立ちそうだが、残念ながらテレサをもってしても破損が激しく、解析はできないらしい。ただ、似たようなものがいくつかあれば、比較して内容の解析はできそうだという。
まあ、本来有償オプションであるAIサポーターが居ないと解読できないとかアレな仕様だし、もともと複数集めて意味があるものなのだろう。
それはともかく。
「結局見つかった重要そうなアイテムはこれだけか」
『どこかの部屋を開ける鍵って事ですかね?』
「たぶん……」
ドローンが見つけてきた、朽ちかけたカードキー。恐らくこの部屋の住人の物だったと思われるそれは、一回使ったら壊れてしまいそうだ。
思い返せば、居住区に来るまでにいくつか分帰路はあった気がする。とりあえず真っすぐ突き当たりまでいったら居住区にぶちあたった訳だが、道中隈なく探していればどこかで鍵のかかった扉に道を塞がれる、という構造だったのだろう。
それにしても、この宇宙船に入ってからゲームのジャンルが随分変わった気がする。分帰路に、次々と現れるホラーなクリーチャー、さらには扉を開ける消費型の鍵とか、ホラーゲームかな?
まあ、それはともかく。
「それならこの居住区の調査はこれで終わりかな。しかし、むぅ。鍵一つの為にえらい目にあったもんだ……」
『まあまあ、そこは鍵の向こうがリターンに見合う何かがあるっていう事で……』
「それを期待したいもんだね」
とにかく、本日の調査はこれで切り上げだ。こちらの機体はボロボロだし、帰り道の事を考えればこれ以上無茶は出来ない。時間も時間だし、大人しくホームに帰る事にしよう。
「ほんじゃホームに戻ろうか。悪いんだけどテレサさん、護衛お願いしていいかな」
『勿論ですっ。私に全部お任せください!』
ジャキッ、とマシンガンを構えて士気の高いテレサ。やっぱりサポートAIの本能っていうのかな、頼りにされるのが楽しくてしょうがないという感じだ。
その隣では、ドローン君が僕達の事も忘れないでね、といった感じで手足をパタパタさせて自己アピールしている。わかってるわかってる、お前達の事も頼りにしてるよ。
『ピキキキィ!』
『え、貴方達は邪魔ですよ、脚が遅いんですから。大人しく定位置に戻っててください』
『ピキィ!?』
そしてテレサに駄目だしを食らっていた。いや、その、もうちょっと手心加えてあげても……。
前から思ってたんだけどテレサってドローン達に当たり厳しくない? 気のせい? そっかあ……。
「うーん。さて、どうしたもんかなぁ」
そして翌日の昼休憩。
私は新しい機体のアイディアを求めて、適当にスマホからネットサーフィンをしていた。
が、どうにも良い感じのアイディアが思いつかない。完全に煮詰まっている。
「うーん。量子転送装置を武器に応用する、ってのはいいアイディアなんだが……ブレードはボロボロになっちまうのを回避する策がちょっと思いつかないし。火炎や冷気の転送は即効性に欠けるんだよなあ……あと重たいし……」
まあそういう訳である。ブレードは思いのほか効果を発揮したが、それが自分にも返ってくるというのは想定外だった。それに宇宙船内という閉鎖環境だから接近戦に持ち込みやすいのであって、外のフィールドだと相手に追いつく手段も考えなくてはならない。
そして火炎と冷気は、やはり機動性の高い相手への即効性とストッピングパワーに問題がある。戦車相手ならともかく機動力のあるロボ相手だと、外気温の異常を察知した瞬間でスラスターで離脱されてしまう。それでも炎であればある程度のダメージは見込めるだろうが、相手がこちらの位置を特定すれば多少の損害は無視しても突っ込んでくるだろう。
初見なら意表をつけるかもしれないが、それだけだ。こないだのミリタリーチーム戦は相手が即応性の低い装甲車輛でかつ、主力部隊とやり合ってる隙をつけたから大活躍できたのだ。
最初から私一人では袋叩きにされてお終いだ。
「んー、なんかいいアイディアないかなあ。これらの要素を無理なく纏められる形状というか運用……」
そんな感じでぽわぽわしつつ、そろそろ休憩時間も終わりそうなので仕事場に戻ろうと、食堂を出る。
と、そこで出口の横に吊るしてある掲示板が目に入った。近所のイベントだとかなんだとかを告知している町内掲示板みたいなものだが、そこに見覚えのないチラシが張り付けられている。
どうやら近くの図書館で、縄文時代だか弥生時代だかの発掘展示会があるらしい。
「ふーん……」
時間も急いている訳ではないし、しばし足を止めて写真に魅入る。
メインはどうやら縄文時代の発掘品らしい。縄文土器、器といては分厚いし実用性は低いのかもしれないが、あの縄模様や凝った造形がなかなか見どころがあって私個人としては結構好きだったりする。他にも土偶をはじめとする色んな形の出土品があって、最近だと人形というかぬいぐるみみたいなものだったのではないか? という説もあるらしいと聞いた。特に遮光器土偶とか、今でいう美少女フィギュアみたいなものだった可能性があるとかでなかなか縄文人の性癖みたいなのが垣間見えるというか……うん?
「まてよ」
しばしじっと写真に魅入る。
このくびれ……この膨らみ……。お、これは、案外もしかして……。
「……閃いた!!」
と、言う訳で。
早速家に帰ったらゲーム機を起動してホームに突撃である。
『あ、ショウさん。お帰りなさい、今日はですね……』
「ごめんごめんその話は後で! アイディアをちょっと形にするのが先ぃー!」
『え、あ、ちょ。……んもぅ!』
カスタムコンソールに飛びついて、カタカタと設計を進める。
設計するのは、目に焼き付いた真ん丸でふくよかな形状。その内部に、冷却装置とプラズマ炉を並列にならべ、頭部にはビーム砲。胴体中央で上半身をぐるぐる回転できるようにして……脚部はうーん、タイヤ的な感じで転がって移動して……よしよし! いい感じに纏まってきたぞ!
「ふふふふ……」
『んもう、ショウさん、一人でニコニコしてないで私にも説明してくださいよ。今回は一体何を作って……ゲ』
後ろから頬を膨らませながら覗き込んでくるテレサ。そんな彼女に、私は自信満々に新型機を紹介した。
「ふふふ、どうだね、テレサ君。これが私の新型機、その名も“シャッコーキ”だ!」
『……ええと。ショウさんにしては珍しく名前が先行しているのは置いておいて……な、なんていうか、また珍しい見た目の機体ですね……?』
なんだかちょっと目が泳いでいるテレサ。どうやら彼女のセンスにはそぐわなかったようだ。
まあ、言いたい事も分からないでもない。
新しい機体の見た目、まるきり銀色の遮光器土偶だもんな。
さて、ここでコイツの構造についてまとめると、遮光器土偶といえばあのふくよかな腰つきと大きな胸である。本機はその胸にそれぞれ冷却装置とプラズマ炉を収めており、ふくよかな腰部には強力なジェネレーターとサブエネルギータンク、コクピットを搭載。頭部には目の所にビーム砲を搭載しており、両腕の先は高速で回転するクロー。脚部は内蔵したキャタピラで移動する仕組みになっており、人型のタンク型機体、と呼ぶのが相応しいだろう。
当然動きが遅いが、量子転送装置によって任意座標に炎と冷気を送り込む事でその問題をカバー。それをかいくぐってきた敵には目からビームをぶち込み、最悪張り付かれれば上半身を高速回転させながら回転パンチで敵を追い払う! 曲面装甲は分厚いだけでなく、意図的に作ったショットトラップ部分に超硬度セラミックスを仕込んでおり、それによって計算上は高い防御力を誇る筈。
何よりこの見た目! 普通の機体に冷却装置とかプラズマ炉を積み込むと、それがどうしても外見上の特徴になってしまって対人戦相手では弱点として狙われてしまうが、逆に人間相手なら遮光器土偶そのまんまという見た目が気になりすぎてそっちまで気が回らないはず!
まさに人間心理を逆手に取った形状という訳だ、うははははは! そしてメタルインセクトにおいても、これまでの試行錯誤で得られた欠点を克服しているのでちゃんと強いはず。まあ、スネークや多脚ロボにあった地形適応能力は引き換えにしているがそこはトレードオフという奴だろう。
うひょひょ、なかなかいいんじゃないこれ? 何考えてんのか分からない細目もこう、味があるしさ!
「……という訳で。どう?」
『え、ええと。ええと、うーん、その、えと』
一通り説明を終えてテレサに感想意見を求めてみたのだが、どうにもすっきりしない反応。滅茶滅茶目を泳がせて、言葉に詰まりまくったテレサは、最終的に変な事を言い出した。
『つまり、その。……こういう体形が、ショウさんの好みだと……?』
「え? いや、ロボのかっこよさっていうのは多様性に溢れてるから、まあ、そういう風に言えなくもないのか……?」
『?!』
思わぬ質問に首を捻って真面目に考えたが、しかしそんな私の回答はどうやらテレサの望むものではなかったらしい。
突如として膝をつき、床に手をついて項垂れるテレサ。
「ど、どうした!? お腹痛いのか?!」
『い、いえ、痛いのは頭というかなんというか……』
「ちょ、テレサさん? 大丈夫? 膝枕する??」
何やら頭を抱えて具合が悪そうなテレサ。AIが頭痛ってのも変な話だが、考えてみると人工知能って即ち頭だけの存在だしな。どっか具合が悪かったら≠頭痛って事になったりするんだろうか。だとしたら大変だね。人間は低気圧で具合が悪くなったりするが、彼女らの場合は電圧とか情報量で気分が悪くなるのかな?
結局この日は機体の設計と、ついでにテレサに膝枕して終わったのであった。
なんか最近、テレサが甘えん坊になってきてる気がするが……ま、いっか。
あ、そだ。今度はちゃんと伝えておかないとね。
「そうそう。友人に誘われたんで、明日の夜はちょっとこっちには来れないから。言っておくね」
『えっ』
ふんふふーん。ちょいと最前線エリアに誘われてさ。
楽しみだなー、どんなマップだろ?
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