ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
という訳で、久しぶりの友人とのオンラインプレイである。
ホームに顔を出してみると、見覚えのあるオレンジ色のパイロットスーツがこちらを待ち受けていた。
「やっほ。お久しぶり」
「おひさー」
お互いにハイタッチのエモーションでコミュニケーション。なんだかんだでマジで久しぶりだ。トーナメントに参加してた時とかやり取りしなかったからね。
一通り旧交を温めると、話題は自然と最近の話へと移っていった。
「そういや、大会の優勝賞品とかどんなんだった?」
「え?」
「おいお前……」
勿論冗談である。流石に、未実装パーツの使用権とあってはチェックせざるを得ない。
だがまあなんていうか。
「一応目は通したんだけどさ。なんていうかその、えーと」
「……玄人向けだった?」
「そうそうそんな感じ」
現状でもビルドロボオンラインは割かしラインナップ充実してるからね。その中で単純な上位互換、という訳でもないとなると、自然とニッチ方向に尖っていく事になる。
いや、それはそれで別にいいんだけど、自分に合わないニッチ方向の武器ってとにかくひたすら使いづらいだけなのよね。困ったことに。
「連射力超高いけど目押しレベルで適宜トリガー緩めて冷却しないと一瞬でオーバーヒートするガトリングガンとか、威力凄い低いけどジャストタイミングでリロードすると高速連射できるスナイパーライフルとか、カタログスペックは高いんだけど重心がおかしな所にあって連射するとめちゃめちゃ照準が跳ねあがるマシンガンとか、まあそういう感じでさ……」
「あー。まあ、よくある話だなあ……。某アーケードゲームもそんな感じで、結局初期に実装された装備が安牌、って感じだったしなあ。ま、ビルドロボオンラインはカスタムの拡張性が高いから、それを素材にしてまあ色々やってくれって事じゃないの?」
「だといいんだけどねえ……」
少なくとも到底私には使いこなせそうになかった。今後、ああいった装備ばっかりが実装されていくのだろうか? 少し困ったなあ……。
「まあ先行実装だし、単純に強いパーツが無いのはわざとじゃないの? 本実装時にはパラメーター変わってるかもだし。ていうかお前もゲーマーなら未実装パーツ装備しまくって見せびらかせよ」
「やだよ使いこなせない武器ばっか装備するとか、さてはそこを狩って名を上げるつもりだな?」
「バレたか」
ペチペチ、とお互いにシャドーボクシングではたき合う。まあ気心の知れた仲という事で遠慮は小さい。
「ま、冗談はおいといて。なかったのか? ビーム兵器。……あったらお前の事だし嬉々として装備してくるか」
「あー、それね。そうなんだよ……新型のビーム兵器もなくってさあ。探索も雪山で止まってるから、しばらく新顔は見てない。というか、アップデートで大幅に使用感変わったから、新しいパーツの追加はしばらく様子見なんじゃないかと勘繰ってる」
「あー。一転して戦場でも普通に見るようになってきたしなあ……。割と直射火力としてはあなどれねーんだよ、今のビーム兵器。こないだ、●ンキャノン・ディテ●クターみたいなのの集団に遭遇してさ、弾幕やばくて近づけなかった。スキルあげたらビーム兵器って連射できるのな」
ほほう。それは興味深い。
ビーム兵器も普及してきているというのを友人の口から聞くとなんかしみじみとする。最初、ほんとに酷かったからなあビーム兵器の仕様……。アップデートで色んなアイディアが潰された時は愕然としたが、結果的にこうして一般で使われるようになったことを考えるとやはり最終的には良いアップデートだったというべきなのだろう。
それに今は今で色々やりようがあるしね。ふふふ。
「ふーん……じゃあアレはどうだったんだ?」
「アレ?」
「とぼけんなよ、優勝者景品の金ビキニ! どうせ例のテレサちゃんとやらに着せて楽しんでるんだろー?」
「ばっ、おまっ」
お前なんつー事を!
「着せてる訳ねーだろ! あんなの着せたらセクハラ……いやAIハラだろ! 訴えられるわ!」
「訴えるってどこにだよ? え、マジで着せてないの? あんな可愛いキャラに?」
「こっちはテレサの事をそういう視線でみてねーんだよ!!」
確かにテレサは可愛いと思うけど、それはなんていうか……ペット? マスコット? 的な方であって、そういう生臭い方向は求めてないの! 大体、あんな可愛いキャラがそんなセクシーな格好でホームをうろついていたらこっちが逆に落ち着かないわ。気分転換にゲームしにいって逆に気を使ってどうするんだよ。
「えー、マジで? お前AIに人権とか認めてるタイプ?」
「そういうんじゃないけどホントにああいう下品なのは好みじゃないんだよ。大体最近、ちょっとテレサがなんか気難しいし……機嫌損ねるような事したくないの」
「思春期の子供を持ってる親みたいな事言いやがる……」
友人の呆れた声。だが、思春期というのはある意味言い得て妙かもしれない。
テレサもうちのゲーム機で活動してそこそこたつし、AIとして学習した結果人間味が出てきた、という事なのだろう。まあその結果扱いづらくなっているのはゲームのサポートAIとしてどうなの、と思わなくはないが、優秀なのは事実だしそういうのも楽しめという事か。
「まあいいや、それよりさっさと出撃しようぜ。時間がもったいない」
「あいさー。ところで、今度のマップはどこに連れて行ってくれるんだ?」
「ふふふふ。まあ、今のお前なら大丈夫だと思ってな。勢力戦の最前線に連れて行ってやるぜ」
なんだってぇ?
そんなこんなで友人とパーティーを組み、一緒に出撃した先。
そこは深い霧に閉ざされた、灰色の渓谷であった。
そこかしこに柱のような岩が立ち並び、コォオオオ……と風が唸り声を上げている。
さして外気温が低い訳ではないが、見ているとなんだか寒気を感じる光景だった。マップを確認すると、雪山エリアからさらに西に向かったエリアらしい。うーん、地形的に雪山エリアは事実上の断絶エリアだから、あそこから一旦北にあがって海にでて、そこから回り込んだ感じ……?
ふとコクピットの計器に目を向けてみると、なにやら警報のようなものが表示されている。これは……有害な放射線が計測されている? モータルブラスターが発生させるそれに比べれば軽度な部類だが、少なくとも生命の活動には適さない数値に見える。
私は説明を求めて友人に通信を繋いだ。
「おい、見ればわかるって言われてついてきたけど、ここはどういうマップなんだ」
「へへへへ。や、俺も詳しくは知らないけど、なんでも過去に戦略兵器が使われた跡地らしいぜ。パイロットスーツ着てても危険なレベルの放射能に汚染された汚染区域って所だ。同時に、勢力戦のメッカでもある。ちょっとレーダー見ながら待ってみろ」
言われて待機していると、俄かにザザザ、とレーダーの表示が乱れ始めた。これは電波障害?
「使われた兵器の悪影響がまだ残ってるらしくて、この辺は空間が乱れてるんだと。そのせいで、そうやって時折レーダーが乱れるせいで乱戦になりやすい。それに加えて、この辺りに出てくるメタルインセクトは少し毛色が違っててな……より兵器っぽいんだ。そういった要素がアクセントになって、戦争に取り付かれた連中が今日もここで無為な争いに明け暮れてるって訳だ」
「へえ……」
まさに戦い続ける悦びを、という奴か。
「動画で見たのはなんか赤茶けた大地だったけど」
「あー。あれは砂漠地帯の一角にあるエリアでな。砂漠、とにかく広いから結構色んな地形があるんだぜ? 前線基地がないとまともに見て回れないから一部では不評だが」
「そういや私も攻略最優先で最短距離を横断したっけ。へえ、そうなのか……」
もうちょっと色々見て回ればよかったかな、と思いつつも、そんなに広いマップを隅から隅まで見て回ったらどれだけの時間がかかるか分からない。ま、今度の楽しみにしておこう。
「それよりさ、こっちも質問いいか? ……なんだその機体?」
「ん、シャッコーキの事か? なかなか味のあるデザインだろ?」
「味があるっつうかなんというか……」
見せびらかすようにその場でくるくる旋回するシャッコーキを、友人の機体がまじまじと覗き込む。そういう友人の機体は、いつぞや雪山で拝見したプロペラブレード機だ。まあ、彼は私より長い事ビルドロボオンラインをやっていて、ほぼアセンが完成しているからそうそう変わる事もないのだろう。逆にちょこちょこアセンが変わる私は、未だにコレ! というしっくりくる機体が完成していない未熟者という事でもある。
いやまあ、腕前が大したことないから、常に新しい初見殺しを模索しないと生き残れない、っていう事情もあるんだが……。
「ま、いいか。それがどんなもんなのかは、実戦で見せてもらおう。がっかりさせんなよ?」
「おうとも。そのあたりはまあ、期待してくれ」
「おっ、強気だねえ」
ふふふのふ。まあねー。
私は気心の知れた友人とくっちゃべりながら、霧に閉ざされた灰色のマップへと進んでいく。
さあて、ここはどんな敵が待ち受けているのかな?
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