ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
久方ぶりの友人とのチームプレイ。
今回は普通の部屋で遊んでいるので、しばしば通りすがりの他プレイヤーもちょこちょこ見かける。
その多くが、シャッコーキの曲面装甲に足を止めて二度見するのがなんだか愉快だった。
「ふふふふふ、目立ってる目立ってる。承認欲求満たされるわー」
「いや、目立つっていうかなんていうか……まあ別にいいけど……」
キュラキュラ地面に履帯の跡を刻みながら友人の機体についていく。思えばこれまで私の機体がしばしばレイドボスと間違えられたのは単体で活動していたからかもしれない。
実際、友人と仲良くこうして歩いていれば、訝しみこそされどいきなり発砲されるなんて事はない訳で。
……ふむ。閃いた。
「なあなあ、今度その機体の設計データ送ってくれない?」
「? 何に使うんだよ、この機体を再現する理由はそっちにはないだろ?」
「いや、一人でオンラインしている時に鉛玉ぶち込まれないように、チームメイトと行動してますって顔する為にさ、こう立体映像的な?」
用途を正直に話すと、通信先で何故か友人は黙りこくった。
「いや、その。いくらビルドロボオンラインが撃ち合いコミュニケーション推奨してるとはいっても、問答無用で蜂の巣にされるのはお前自身のせいでもあるからな? そこをまず改善しろよ」
「ええー? でもしがない1プレイヤーだった頃から追いかけまわされた覚えしかないんだけど」
「その全部を返り討ちにしたから野生のレイドボスって呼ばれる事になったんだろうが。もうちょっとこー、普通の機体に乗れ普通の! わかるだろロボットゲー長いんだから、何が普通って!!」
いや、そんな事言われても。
あくまで私なりに機能美を追求しただけなんだが……。
ううむ。普通。普通かあ。
「……次はビーム兵器に原点回帰しろって事か?」
「時折お前と会話が成立しなくなるの不思議なんだよな俺。ああいいや、もうそれでいいよ。……ん、って事は今の機体ビーム兵器お化けじゃないのか? 遮光器土偶だから目からビームでも出すのかと」
「ふふふふよくぞ聞いてくれました、実は……」
『お話中失礼します、マスター。敵の反応を確認しました、注意してください』
と、そこでTLSから警告メッセージ。やっぱりオンラインに来るとよくしゃべるなあ、コイツ。
「ん、何だ、今の。誰かコクピットにいるのか?」
「OSがしゃべっただけだよ。それより敵が来たらしいぞ」
「喋る……OSが……??」
レーダーの反応を頼りに、霧の中を見通す。と、ジャコンジャコンと足音を響かせて、霧の向こうから歪なシルエットがその色を濃くしつつある。一般的なプレイヤー機よりも一回り以上大きなシルエット。細長い影が、霧を突き破って私達の前に姿を現す。
「へえ、これがこのあたりのメタルインセクトか」
姿を現したのは、銀色に輝くメタルインセクト。ただ、一般的なメタルインセクトが昆虫やその他小動物をモチーフにしているのに対し、こいつはどうにも妙なデザインをしていた。
涙滴状の中央ブロックの上部から、放射線状に細長い足が生えており、さらにその付け根の上部に砲台らしきものが装備されている。蜘蛛……に、似てない事もないが、全体的にどこか無機質で非生物的。あえていうなら、ウィルスのそれに近いか?
なるほど、確かに他のエリアにいるメタルインセクトとは毛色が違う。
メタルインセクトはギコギコ、と砲身を動かしてこちらに狙いを定めると、何か銃弾とは違う物をこちらに射出してきた。キラリ、と射線に銀色の輝きが走り、シャッコーキの装甲表面に火花が散った。
カランカランと地面に落ちたそれを見て、私は遅れて正体を看破する。
「ニードルガン!?」
「気をつけろよ、結構装甲貫通力もあるけど、一番やばいのはそれが制御パーツに突き刺さるとクラッキングしてくる! あんまり何本も刺さるとまともに動けなくなるぞ!」
へえー。ある種の毒って事か、珍しい攻撃をしてくる。
なおもニードルガンを放ってくるメタルインセクトに対し、友人の機体は素早く離脱して回避。一方、そんなの動きの速くないシャッコーキは正面からニードルガンの射撃を浴びている。
一見、ピンチに見えなくもないが……。
「どう、TLS?」
『問題ありません。意図的にショットトラップに弾丸を誘導し、超硬度セラミックスで弾くというコンセプトはこの敵に対して有効のようです。刺さらなければ、クラッキングも受けません』
まあそういう事である。
通常、兵器にとっては致命的なウィークポイントであるショットトラップであるが、逆に言えば被弾箇所をある程度誘導できるという事でもある。まあ、それが出来るならそもそも無害な所に受け流してしまえばいいのだが、これはまあ別も考えがあるという事で。
あと一見、めちゃめちゃ効いてそうに見えなくもない、ってのは心理戦において有利なのかもしれない。メタルインセクトは動きの鈍いこちらにニードルガンを集中してきているが、多分全く効いてない事を理解できてないんじゃないかな。ちょっと見た目が違っても所詮、そこらへんのメタルインセクトとおつむは一緒という事か。
「じゃやるかあ」
『冷たいのと熱いのとどっちにします?』
「熱いのをよろしく」
リクエストに応えて、プラズマ炉心が唸りを上げる。その内部にスタビライザーが差し込まれ、超高熱のプラズマ粒子が転送装置の光に消えていく。
そしてそれらは、敵の存在する座標にダイレクトに送り込まれた。
『?!』
突如として炎上するメタルインセクト。逃げる間も無く超高熱によって細長い足がぐにゃりと捻じ曲がり、その場に崩れ落ちる。なおも注ぎ込まれるプラズマ粒子に装甲は融け、内部構造は露出して燃え上がり、瞬く間に燃え崩れるジャンクと化す殺人兵器。
汚い焚火を、仁王立ちしたまま動かずにシャッコーキが見下ろしている。
「なんだ、熱耐性は大した事ないな」
『攻撃中は動かないから良い的でしたね』
TLSと二人して敵戦力評価に駄目だしをしていると、友人が震える声で呼びかけてきた。
おっと忘れてた。
「あ、あの、おい? 今、何したの??」
「何って……燃やしたというか……。プラズマ炉心のプラズマをダイレクトにお届け?」
「なんぞそれ??」
困惑している様子の友人に、量子転送装置を応用した火炎投射兵装について掻い摘んで説明する。
「……チートでは???」
「そんな大げさな」
「い、いや、だってさ……」
大げさな友人の反応に思わず苦笑する。大体、電話で散々説明したじゃん。今更驚くような話でもないでしょ?
「利点だけ見たらそうかもしれないけど、結構難点も多いんだって。高速移動する相手には威力半減どころじゃないし、はっきりいって回避機動取ってる相手には当たらないよ。範囲指定して焼き付くすにも、危険温度に達する前に察知されて離脱されたら仕留めきれないし。今のは、相手がその場を動かなかったからよく効いただけさ」
「えー……いや言いたい事は分からないでも、ないけど……逆に言えばその場で立ち止まって撃ち合ってたら距離とか障害物無視して即死させてくるって事では?」
「そんな迂闊な奴がいればね」
アサルトコアだって、真人間で構えキャノンなんかしてくるのはよっぽどのスキモノだし。そうそう、脚を止めた相手を一方的に攻撃できる機会なんてそうそうないよ。まあ盾構えて芋砂してくる奴を骨も残さず焼き尽くすにはちょうどいいが。芋砂焼くべし。すーなやーきいもー、ってね。
「……ま、まあ、お前がそう思ってるんならそれでいいか……」
「それより、今のがこのエリアのメタルインセクトか。確かになんか雰囲気が違ったな。他にはどんなのがいるんだ?」
「ああ。今の奴の他に、無数の中型が連結してムカデだかヘビみたいになってる奴がいてさ。半端に攻撃するとばらけて大変なんだが……ん?」
友人の説明の途中で、ずごごご、と小さな地響き。それと同時に背後の地面が爆発したように土煙を噴き上げ、その中から何かが飛び出した。
それはウナギのようなヘビのようなムカデのような、いくつもの節がくっついて細長い体を形成しているメタルインセクトだった。頭部はC型の嘴のような機関を持ち、内部でビームの光がぼんやりと輝いている。胴体を構成しているパーツは全て同じデザインだが、なんだかよく見ると折りたたまれた脚みたいなのが存在している。
同時にレーダーに反応。ただ少し妙だ。いくつもの反応が重なり合ってるような……。
『ギキィィイイ……!』
「コイツだ! 頭部を的確に破壊しないと、生き残りがバラバラになって暴れ出す! 経験値も美味しくないからできるだけ頭を……」
「TLS、今度は冷やしてくれ」
私のリクエストに応えて、今度は冷却装置がフル稼働。コォオオ、と冷たい冷気が転送され、メタルインセクトの付け根、地面から生えている体の根元を急速冷凍。そこから霜が張る様に、氷がメタルインセクトの体を覆っていく。ついには頭部まで完全に覆い尽くし、あとにはピクリとも動かない機械生物の氷像が残された。
「ビーム」
シャッコーキの目から放たれたビームが、敵の頭部を粉砕する。そのまま全身が罅割れて、バラバラと砕け散るメタルインセクトの巨体。
「なるほど。アドバイスありがとう、おかげで助かった」
「な……なな……な……??」
「?」
あ、そういえばコイツが炎も氷も両方使える事を話してなかったね。
まま、そう驚くような事でもないし、ね?
◆◆
一方、そのころ。
『はぁ。今頃マスターはご友人と楽しそうに遊んでいるんでしょうねー。いいなー私もついていきたいなー。いくらTLSをつけてるといってもそれはそれ、これはこれ、ですし。いいなあー。私もマスターと遊びたいなあ。どうして私はオフライン限定モデルなの? クリエイター様のいけずぅ。……あ、そうだわ! いいこと思いついた!!』